言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

中国の漁業監視船派遣に込められた政治的意図

2010-11-22 | 日記
産経ニュース」の「周辺に中国漁船いないのに…「正当な任務」尖閣諸島沖で航行中の監視船」( 2010.11.21 00:42 )

 沖縄・尖閣諸島沖の魚釣島沖の接続水域(領海の外側約22キロ)内で20日朝、確認された中国の漁業監視船2隻は、深夜になっても同水域内で航行を続けている。2隻は日本領海内には侵入していないが、接続水域内を領海線に沿って4~7ノットで周回。同庁の航空機と巡視船が警戒に当たった。

 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、2隻は漁業監視船「漁政310」と「漁政201」。同庁の航空機と巡視船が領海に侵入しないよう無線などで警告したのに対し、漁政310は「われわれは正当な任務に当たっている」と返答した。しかし、周囲に中国の漁船は確認されていないという。

 2隻はいずれも中国農業省漁政局に所属。310は今月16日に就役したばかりで、最新鋭ヘリコプター2機が搭載できるほか、最新の通信システムも装備。中国国営新華社通信は「海洋や漁業の権益を防衛する新たな有力武器」と評している。

 ただ、同庁によると、実際にヘリを搭載しているかは確認できなかったという。

 中国は漁船保護を理由に監視活動を常態化する方針を表明しており、16日には310が尖閣諸島へ向け広東省広州市を出港していた。

 官邸は20日午前、領海侵入の可能性もあるとみて、内閣危機管理センターに情報連絡室を設置した。

 同島周辺海域では、10月にも中国漁業監視船の航行が確認されており、海保では警戒を強めていた。


 中国漁船がいないのに、中国の漁業監視船がいる、と報じられています。



中国語翻訳者のつぶやき」の「大型漁業監視船、尖閣海域へ

中国の大型漁業監視船「中国渔政310」が16日、「日常のパトロール業務と漁業権益保護業務のため」、広東省の広州から尖閣諸島沖に出港しました。

この「中国渔政310」ですが、総トン数は2580トン、長さが108メートル、幅が14メートル、航続距離は6000カイリで、最高速度は22ノットにも達する中国最大の漁業監視船で、船上には2基のヘリが搭載できるヘリポートも備えてあるほど充実した設備が備わっています。

これまで当ブログで紹介した、以前尖閣沖で巡視活動をしていた「中国渔政201」「中国渔政203」は総トン数が900トン余りでしたから、今までのと比べると実に2.5倍の大きさだということが分かります。

この「中国渔政310」自体は、日中が尖閣諸島問題に揺れる9月29日に広東省湛江市で完成したのですが、実のところ「中国渔政310」建造の目的は尖閣諸島での漁業監視ではありません。今年3~6月に南シナ海の南沙諸島で多発していた中国と東南アジア周辺国との紛争に対し、中国が南シナ海での権益を拡大することを目的として建造されたものです。

その証拠に進水式の記事には、尖閣諸島に関する言及は1つも無く、「南シナ海での法執行を行う」とだけしか報じられていないことが分かります。しかも、「中国渔政310」は尖閣を含む東シナ海を管轄する東海漁政局ではなく、南シナ海管轄の南海漁政局所属の船舶なのです。つまり「中国渔政310」の今回の「尖閣諸島沖での漁業監視」はいわゆる「ついで」の任務であり、この後向かう南シナ海での漁業監視こそが本当の任務なのです。

ここから、今回「中国渔政310」が尖閣諸島沖に向かったことに関しては、中国政府の日本政府に対する1つのメッセージにすぎないことが分かります。ですから、「中国渔政310」がこれから尖閣諸島にずっと滞在すると考える必要はないですし、中国が日本に敵がい心をむき出しにしたと考える必要もないでしょう。

また逆に言えば、中国が尖閣海域に投入できる漁業監視船にはまだ限りがあり、常時尖閣付近の海域で巡視できる大型監視船を配備するにはまだ「駒不足」なのだということが分かります。


 尖閣諸島沖の中国の大型漁業監視船は、「日常のパトロール業務と漁業権益保護業務のため」である。本来の任務は南シナ海での漁業監視であり、日本政府に対する1つのメッセージにすぎない。中国が日本に敵がい心をむき出しにしたと考える必要もない、と書かれています。



 「中国語翻訳者」さんの意見は、中国政府が「日常のパトロール業務と漁業権益保護業務のため」であると発表していることと、南シナ海管轄の南海漁政局所属の船であることを根拠としているのですが、

 「尖閣沖に中国の漁業監視船 (ヘリ搭載)」で述べたように、漁業「監視」船とはいっても、中国漁船の取り締まりを目的としているとは考え難く、漁業監視船という名称は「名目・口実」である、と考えられます。

 漁業監視船が尖閣沖にいたとき「中国漁船はいなかった」と報じられていますので、漁業「監視」は「名目・口実」である、と断定してよいでしょう。実質的には中国による侵略 (または領土拡張) の一環である、とみてよいのではないかと思います。



 とすれば、上記「中国語翻訳者」さんの理解は、中国に対して「好意的すぎる」のではないかと思います。誤解のないように書き添えますが、私は中国に好意的であってはならないと言っているのではなく、「公平ではない (客観的ではない)」と言っているのです。

 南シナ海管轄の南海漁政局所属の船舶である点についても、漁業監視船という名称と同様、一種のカモフラージュであるとみる余地があります。また、わざわざ南海漁政局の監視船を尖閣沖に派遣した裏には、なんらかの政治的意図があるものとみられます。その政治的意図が判明していないにもかかわらず、「中国が日本に敵がい心をむき出しにしたと考える必要もない」とまで言い切ってよいのか、いささか疑問があります。



Searchina」の「中国は「尖閣諸島領海に進入成功」と報道、「日中が一触即発」―韓国メディア」( 2010/11/22(月) 11:13 )

  中国・広東省の政府紙「南方日報」は21日、中国農業省に所属する「漁政310」と「漁政201」が尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域に進入することに初めて成功したと報道した。 韓国メディアがこれを伝えている。

 「漁政310」に同乗した南方日報の記者は、20日の午前6時ごろに同船が釣魚島海域に、初めて進入したことを電子地図上で明確に確認したと伝えている。

  一方、日本の海上保安庁は20日、中国の漁業監視船2隻が、尖閣諸島から23キロ離れた地点まで接近したものの、領海を侵犯することはなかったと明らかにしている。

  韓国メディアは、尖閣諸島沖で中国の漁業監視船と日本の巡視船が対立しながら、日中の領有権紛争が再び激化する兆しを見せていると報じている。

 日本側は、中国の漁業監視船による尖閣諸島領海への進入を妨いだと発表したが、中国側は進入に成功したと主張し、継続的にパトロールに出る構えを見せていると伝えている。

  今回の中国による進入は、日本の実効支配に対して問題を提起し、国際社会にこの海域を紛争地域として認識させようとする攻勢的な対応と指摘。今回投入された「漁政310」は、Z-9A型ヘリコプター2機を搭載し、ブロードバンド衛星通信設備との光電子追跡システムなど、最先端の装備を備えている。60日間の航行が可能で、最高速度は22ノットに達する。 中国の漁業指導船の中での速度が最も速いハイテク船であると紹介している。

  これらの監視船は、尖閣諸島周辺で10日間ほど留まりながら作戦を継続する予定であり、領海進入を繰り返す可能性が高いとの見方を示している。(編集担当:李信恵・山口幸治)


 中国・広東省の政府紙「南方日報」は、漁政310と漁政201が尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域に進入することに初めて成功したと報道した、と報じられています。



 「日本の海上保安庁は20日、中国の漁業監視船2隻が、尖閣諸島から23キロ離れた地点まで接近したものの、領海を侵犯することはなかったと明らかにしている」とも報じられていますが、

 仮に日本領海を侵犯することはなかったとすれば、「南方日報」の報道は何なのでしょうか? これは一種の「敵がい心をむき出しにした」行為だといえるのではないでしょうか?

 また、中国の漁業監視船が日本領海を侵犯しなかったのかにも、まったく疑問がないわけではありません。日本の海上保安庁を信頼したいとは思いますが、現在の内閣は「中国に異様に配慮している」とみられますので、内閣が中国に配慮して「領海を侵犯することはなかった」と嘘を言っている可能性も (たんなる可能性としてではなく、現実的に)「ありうる」と思います。



 漁業監視船に込められた政治的意図は、「おそらく、中国による侵略 (または領土拡張) の一環である」とみてよいでしょう。

 日本としては、尖閣諸島に対する「実効支配」が奪われる危険性を考え、「中国との対立もいとわない」対応をすべきではないかと思います。

共産党は「優れた」リーダーである

2010-11-22 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.178 )

 世界恐慌の渦に呑み込まれた中国経済はこの先どこへ向かうのか。この危機を小康状態にとどめてやり過ごし、ふたたび成長に向かうことができるのか。それとも急降下して、またもや貧苦に喘ぐことになるのか――。答えは三年以内に出るだろう。
 しかし、たとえ経済が失速しようと、それは中国共産党の政権機構の維持とはほとんど関係がない、というのが中国の、あるいは共産主義の国家体制である。なぜなら、共産主義国家は市場原理などあっさり無視することができるからだ。日本の中国崩壊論者たちはここのところを間違えている。
 彼ら論者たちが中国共産党の一党独裁体制崩壊の原因として真っ先に挙げるのが、経済破綻の問題である。
 専門家たちの論法に小異はあるが、大同は概ね次のようなものである。
 北京五輪後、中国国内のバブル崩壊と世界経済の失速が⇒不動産・株価の暴落と輸出急減を招き⇒企業倒産が相次ぎ⇒国中に失業者が溢れて不会不安が拡大し⇒不満を募らせた民衆が各地で暴動を起こし⇒それが現政権に対する反乱へと発展してゆく……。
 反乱がやがて内乱、内戦へとつながってゆくのではないか、という「予測」もある。もちろん仮定の上ではどんな予測も成り立つわけで、その可能性を一〇〇%否定することはできない。
 しかし、これまで見てきたような中国共産党の精緻な国家統治システムを考えたとき、人々の不満が現政権に対する大規模な反乱へと転化してゆく公算は限りなく低いと見做さざるを得ない。
 すでに何度も述べたた通り、中国の国家体制を支えているのは、北京の中国共産党中央政治局常務委員会を頂点とするピラミッド型の党細胞機構である。この強固な骨組みは、容易なことで壊れないし、壊してしまったらそれに代わる器がない。そして、そのことを一番よく知っているのは中国人自身である。つまり、バブル崩壊は共産党独裁体制維持の阻害要因とはなり得ない、と考えるのが常識的な線なのだ。
 実際問題として、土地と株のバブルはすでに崩壊しはじめており、人々の不満は充分燻って (くすぶって) いるにもかかわらず、それを原因とした暴動はほとんど起こっていないし、(チベットやウィグルなどの民族問題を別とすれば) この先にも大規模な暴動が予想されるような兆候もあらわれていない。


 共産主義国家の中国においては、経済が失速しようと独裁体制は崩壊しない、と書かれています。



 この主張には説得力があると思います。

 ここまで、私がこの本を読みつつ考えてきたところによれば (私の引用は部分的なので、必要であれば本を買ってください。いい本だと思います) 、

  1. 中国人は「独裁そのもの」を否定していないうえに (「中国人は民主化を望んでいない?」参照 ) 、
  2. 中国共産党は分裂しない」し、
  3. 中国人民解放軍は共産党の一部であり、党に反抗することはあり得ない。民衆による反乱が起こっても即座に鎮圧される (「中国人民解放軍における軍内党組織 (政治委員)」「林彪事件と人民解放軍人事」参照 ) 。
  4. 共産党は民衆の不満を解消すべく手を打っている (「中国共産党の「ガス抜き手法」」「中国における戸籍制度改革」参照 ) 、

と考えられます。したがって、私も著者と同様に、共産党の独裁体制は簡単には崩壊しないと思います。



 しかし、私は著者の主張に完全に納得しているわけではありません。中国人の圧倒的大多数がいま、中国共産党を支持しているのは確かだと思いますが、その支持が完全に失われれば崩壊してしまうかもしれない、と思ってしまうのです。



 中国人が共産党を支持している理由は、なんといってもやはり、

   共産党は「優れた」中国のリーダーである、

と (中国人が) 思っていることに尽きると思います (「江沢民理論=「三つの代表」論」参照 ) 。

 そしてなぜ、共産党が中国の「優れた」リーダーかといえば、なんだかんだ言っても (小さな不満はあるものの、トータルでみれば) 、

   中国は侵略されず、徐々に中国が大国になった
       (政治的・経済的・軍事的など、さまざまな面で)

   中国人の生活レベルは、確実に上昇してきた

という、この二点に尽きるのではないかと思います。中国の地位も、中国人の生活レベルも向上している以上、共産党は「優れた」リーダーである、と (中国人は) 思っているのではないかと思います。



 逆にいえば、この二点が崩れれば、共産党の独裁体制は崩壊する (可能性が高くなる) と考えられます。それはたとえば、台湾問題での中国の譲歩 (中国が台湾を放棄し、独立を認める) であったり、中国人の生活レベルの低下 (これは格差の拡大とは異なります。「自分の」生活レベル=「絶対評価の」生活レベルです) であったりするのですが、この二点が崩れないかぎり、中国人は共産党を支持し続けるのではないかと思います。

 そしてこの観点からみれば、

   中国が台湾を「あきらめる」ことも、
   中国が「大幅な」人民元高を容認することも、あり得ない、

という予測が成り立ちます。これらは、共産党が中国人の支持を失うことにつながりかねないからです。