「産経ニュース」の「【検事逮捕】大坪前特捜部長と佐賀前副部長の一問一答 「組織と断固として戦う」「トカゲのしっぽ切りだ」」( 2010.10.1 21:31 )
大阪地検特捜部の「データ書き換え」(証拠の捏造) 疑惑に対し、前特捜部長の大坪弘道氏と副部長の佐賀元明氏は、「故意にデータを改竄(かいざん)した」との報告は受けていないと明確に否定した、と報じられています。
この事件、詳しく追いかけていなかったのですが、要は、
ここで気になるのが、上記報道のなかの、
組織ぐるみで隠蔽したのではないか
と考えるのが自然だと思います。つまり、
(1) 証拠の捏造を組織ぐるみで隠蔽したが、発覚した。
(2) 「検察はトカゲの尻尾切りをするつもりだろう」が、
「断固として組織と闘う」、「組織防衛の怖さを感じる」
と述べている状況ではないかと思われます。
本当の「事実関係がどうなのか」はわかりませんが、すくなくとも、このような問題が発生していることそのものが、なんらかの意味で、捜査機関の質 (司法の質) を表していると考えなければならないと思います。
この構図、湯山孝弘弁護士 (湯山法律事務所代表者・第一東京弁護士会所属) が思わず、「いままで築き上げてきたものを失いたくないんだ!!」と怒鳴ったことを、あとで「なんのことでしょうか?」ととぼけていることと、似ている気もします。当時、湯山法律事務所に勤務していた弁護士の楓真紀子弁護士 (第一東京弁護士会所属) も、「なんのことですか~あ?」と、とぼけており、
「組織または自分を守るため」に「事実を否定する」「とぼける」態度は、
検察、弁護士など、法曹界に広くみられる態度
なのかもしれません。
これでは、司法に対する社会の信頼は、失われてしまうかもしれません。この問題についても、今後、私なりに考えてゆきたいと思います。
なお、「犯人隠避罪にあたるか」というのは、「こまかな」話であり、ある意味「どうでもよい」話だと思います。重要なのは「組織ぐるみで証拠を捏造し、捏造を隠蔽しているのか」であり、この問題は、「取り調べの可視化」論議や、「法曹増員問題」(法曹を増員すれば質が落ちるというが、増員とは無関係に質が落ちている) など、さまざまな論点につながる問題だと思います。
大阪地検特捜部の前特捜部長、大坪弘道氏と副部長の佐賀元明氏は、それぞれ複数回にわたって産経新聞の取材に応じた。2人は証拠隠滅容疑で逮捕された主任検事の前田恒彦容疑者から「故意にデータを改竄(かいざん)した」との報告は受けていないと明確に否定。大坪氏は「捜査は無理筋。断固として組織と闘う」と語気を強めた。主なやりとりは次の通り。
--フロッピーディスク(FD)データ改竄問題を把握したきっかけは
大坪氏「今年2月1日、佐賀前副部長から『前田容疑者がFDデータを書き換えたと同僚検事間で問題になっている」と報告を受け、『えー!』と天を仰いだ。ひょっとしたら(故意に改竄した可能性がある)と一抹の不安を感じ、本人に事情を聴くよう指示した」
--その結果、どのような報告を受けたのか
大坪氏「前田容疑者が『捜査の過程でFDの取り扱いを誤り、データを書き換えた可能性がある』と話したと」
--小林敬検事正や玉井英章前次席検事にどのように報告したのか
大坪氏「『前田容疑者がFDデータを書き換えたと同僚検事間で問題になっているが、本人は誤って書き換えた可能性がある、と話している。書き換えたFDはすでに押収元に返却されているため変更内容は確認できない。現時点では過失と認定せざるを得ない』と報告した。(小林検事正らが判断するため)隠さない方向で基礎データは渡した」
--小林検事正らは何と言った
大坪氏「発言は特になかった。調査の指示もなく、了承されたと考えた」
--改竄を「過失」と判断した根拠は
大坪氏「故意にFDデータを書き換えたなら押収元に返却するのは不自然。原本はすでに証拠化されており、公判に影響はない。捜査に熟練した部下を信じる気持ちもあった」
--前田容疑者から直接「故意に改竄した」と聞いたことはあるか
大坪氏「記憶にない」
--犯人隠避容疑で逮捕される可能性があるが
大坪氏「犯人隠避罪は積極的な隠避行為がなければ成立しない。仮に調査しなかった不作為があったとしても、不作為を隠避と認定するのは強引で捜査は無理筋。組織防衛の怖さを感じる。腹に据えかねるものがあり、断固として組織と闘う」
--FDデータ改竄問題を最初に把握したのはいつ
佐賀氏「1月30日に『前田容疑者がFDデータを書き換えた。公表すべきだ』と同僚検事らから聞き、2月1日に大坪前部長に報告した」
--その報告内容は
佐賀氏「『前田容疑者がFDデータを故意に書き換えたと同僚間で問題になっている』と報告し、大坪前部長から前田容疑者に事実確認するよう指示された」
--前田容疑者は何と
佐賀氏「『FDデータを書き換えられるか確認するため、捜査の一環としてやってみた際に、誤って原本を書き換えた可能性がある』と。大坪前部長にはそのまま報告した」
--小林検事正らにどう報告したのか
佐賀氏「『同僚検事間で前田容疑者がFDデータを書き換えたという話が出ているが、本人は過失と主張している。書き換えたFDをすでに返却しているなどの客観的事実から証拠管理上のミスにとどまる』と、大坪前部長と一緒に報告した」
--小林検事正らは「データ書き換えの話は聞いていない」と話しているが
佐賀氏「きちんと報告した。私の『執務記録』にも報告の日時や内容が記してある。最高検にも提出している」
--組織ぐるみで隠蔽したのではないか
佐賀氏「あり得ない」
--前田容疑者が「故意に改竄したと大坪前部長、佐賀前副部長に報告した」と供述している
佐賀氏「当時、そんな話は聞いていない。最高検の描く事件の筋通りに素直に認めることで、罪の軽減を図るために言ったのだろう」
--最高検の構図とは
佐賀氏「『正義感のある部下の進言に対し、幹部は隠蔽するために上層部に報告しなかった』という筋立て」
--逮捕の可能性は
佐賀氏「私と大坪前部長を逮捕してトカゲの尻尾切りをするつもりだろう。ただ、部下が証拠を改竄したことには責任を感じており、辞職するつもりだ」
大阪地検特捜部の「データ書き換え」(証拠の捏造) 疑惑に対し、前特捜部長の大坪弘道氏と副部長の佐賀元明氏は、「故意にデータを改竄(かいざん)した」との報告は受けていないと明確に否定した、と報じられています。
この事件、詳しく追いかけていなかったのですが、要は、
主任検事の前田恒彦容疑者が「故意に改竄したと大坪前部長、佐賀前副部長に報告した」と供述しているが、という構図だと思います。
前特捜部長の大坪弘道氏と副部長の佐賀元明氏は、「故意にデータを改竄(かいざん)した」との報告は受けていないと明確に否定している
ここで気になるのが、上記報道のなかの、
佐賀氏「私と大坪前部長を逮捕してトカゲの尻尾切りをするつもりだろう。ただ、部下が証拠を改竄したことには責任を感じており、辞職するつもりだ」という部分です。常識的に考えて、
部下が勝手に証拠を改竄したのであれば、「トカゲの尻尾切りをするつもりだろう」といった言葉は出てこないはずだと考えられますから、記者の質問にもあるように、
組織ぐるみで隠蔽したのではないか
と考えるのが自然だと思います。つまり、
(1) 証拠の捏造を組織ぐるみで隠蔽したが、発覚した。
(2) 「検察はトカゲの尻尾切りをするつもりだろう」が、
「断固として組織と闘う」、「組織防衛の怖さを感じる」
と述べている状況ではないかと思われます。
本当の「事実関係がどうなのか」はわかりませんが、すくなくとも、このような問題が発生していることそのものが、なんらかの意味で、捜査機関の質 (司法の質) を表していると考えなければならないと思います。
この構図、湯山孝弘弁護士 (湯山法律事務所代表者・第一東京弁護士会所属) が思わず、「いままで築き上げてきたものを失いたくないんだ!!」と怒鳴ったことを、あとで「なんのことでしょうか?」ととぼけていることと、似ている気もします。当時、湯山法律事務所に勤務していた弁護士の楓真紀子弁護士 (第一東京弁護士会所属) も、「なんのことですか~あ?」と、とぼけており、
「組織または自分を守るため」に「事実を否定する」「とぼける」態度は、
検察、弁護士など、法曹界に広くみられる態度
なのかもしれません。
これでは、司法に対する社会の信頼は、失われてしまうかもしれません。この問題についても、今後、私なりに考えてゆきたいと思います。
なお、「犯人隠避罪にあたるか」というのは、「こまかな」話であり、ある意味「どうでもよい」話だと思います。重要なのは「組織ぐるみで証拠を捏造し、捏造を隠蔽しているのか」であり、この問題は、「取り調べの可視化」論議や、「法曹増員問題」(法曹を増員すれば質が落ちるというが、増員とは無関係に質が落ちている) など、さまざまな論点につながる問題だと思います。