言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

軍事技術の民間転用

2009-11-07 | 日記
安達誠司 『恐慌脱出』 ( p.185 )

 第2は、戦争放棄によって、ハイテク技術の民間転用が実現する可能性である。
 たとえば、IT革命のきっかけとなったインターネットは、元来、米軍の情報収集のための情報網(エシュロン)が、冷戦終結によって民間転用されたことをきっかけとして、始まったものである。アフガニスタン戦争やイラク戦争で明らかになったように、アメリカの軍事技術は、日進月歩で進化を実現している。これが民間転用されれば、中長期的には、アメリカ経済は「第2次ニューエコノミー」という新たな繁栄を迎える可能性も否定できない。
 筆者には、この「第2次ニューエコノミー」がもし、実現するならば、現在苦境に立たされている自動車産業で起きるような気がしてならない。その鍵は「自動車の家電化」にあるのではないか。
 1990年代半ば以降、自動車のメカニックの多くの部分がコンピュータ制御となっているように、自動車にもIT化の波が押し寄せている。この流れに加え、動力源が従来のガソリンから電気や電池になれば、自動車も家電製品化する可能性がある。
 もしこれが実現すれば、たとえばアップルの「iPod」がソニーのウォークマンを凌駕したような「日米大逆転」が、自動車産業にも起こるのではないだろうか。

(中略)

 いま必要とされている産業政策は、単なる延命措置ではなく、産業の脱成熟化のカタリスト(触媒)でなければならない。これをオバマが実施できるかどうかも注目材料である。


 脱石油化による戦争放棄によって、米軍の軍事技術が民間転用され、再び、米国が繁栄への道を歩み始める可能性がある、と書かれています。



 引用部冒頭、「第2は」 とありますが、「第1」 は、「脱石油化と世界平和」 で引用した、世界経済の大きな枠組み転換における脱石油化の流れ ( と、それがもたらす世界平和 ) です。



 脱石油化の流れは、たんに、環境問題の視点でのみ、捉えていたのでは状況を読み誤る。地政学的・軍事的見地が重要であるばかりか、その帰結として、ハイテク技術の民間転用 ( 軍事技術の民間転用 ) がもたらされる可能性がある――。

 言われてみれば、たしかにその通りで、アメリカの未来は明るい、という著者の予想は、現実的なものに思われます。



 著者は、電気自動車の普及は、「日米大逆転」 であり、日本がアメリカに負けることにつながる、とされています。私は、「電気自動車がもたらす日本の未来」 で、日本が新興国に負けることにつながる、と予想したのですが、どちらであれ、日本にとっては、厳しい局面になることが予想されます。

 「アメリカの没落と新興国」 について、電気自動車のもたらす未来も含め、大きな視野で考えなければならないと思います。

脱石油化と世界平和

2009-11-07 | 日記
安達誠司 『恐慌脱出』 ( p.184 )

 また、世界経済の大きな枠組み転換には、「脱石油化」の推進という、もう1つの重要な論点がある。これには、2つの大きな意味がある。
 第1は、「代替エネルギー政策」の推進である。代替エネルギーの開発が成功すれば、地政学的な見地から、中東や中央アジアなどに軍隊を駐留させるインセンティブは、相対的に低下する。これは中長期的には、「戦争の放棄」と軍事支出の削減にもつながる。
 これまでアメリカが、アジアやアフリカで戦争や紛争に関与してきた理由の1つは、アメリカおよび他の親米先進国の、資源の安定供給の確保であった。イラク戦争などは、そのような意味合いが強かったのではないだろうか。代替エネルギーの開発によって、そのような戦争への関与は減少するだろう。
 ただし、必ずしもこれが世界平和につながるとは限らない点には注意する必要がある。米軍がこれらの地域から撤退した後は、その地域でかつての親米勢力と反米勢力の抗争が激化する可能性が高まるためである。
 そのためアメリカが、別の手段でのエネルギー確保を計画・立案し、開発していくことが世界経済と世界の安全保障に与える意味は大きい。


 「脱石油化」 に成功すれば、中東や中央アジアから米軍が撤退する可能性が高まる、と書かれています。



 現在、太陽光など、代替エネルギーへの転換が摸索されています。これが成功すれば、経済的にはもちろん、地政学的・軍事的に、大きな変化がもたらされ、

   「戦争の放棄」 と軍事支出の削減にもつながる

という点は、重要だと思います。

 戦後の日本は、平和の実現を国是にしてきたのではないかと思います。日本としては、ビジネスの面のみならず、平和の観点からも、「代替エネルギー政策」 を推進すべきだと考えられます。



 著者は、「必ずしもこれが世界平和につながるとは限らない点には注意する必要がある。米軍がこれらの地域から撤退した後は、その地域でかつての親米勢力と反米勢力の抗争が激化する可能性が高まるためである。」 と書かれていますが、

 親米勢力と反米勢力の抗争も、根っこのところには、現地住民の 「資源の権益をめぐる争い」 という側面があり、資源そのものの価値が下がれば、「争う意味がなくなる」 のですから、世界平和につながると考えるのが、自然ではないかと思います。

 また、現地住民間の抗争には、背後に、欧米の謀略があった、ともいわれており、資源に対する関心 ( 必要性 ) が薄れれば、謀略をする必要性も少なくなるのですから、この面からも、世界平和につながると考えるのが、自然ではないかと思います。



 日本の経済的繁栄はもちろん、地球環境のみならず、世界平和の観点からも、「代替エネルギー政策」 は重要だと考えられます。