リチャード・クー&村山昇作 『世界同時バランスシート不況』 ( p.47 )
銀行に資本投入を行って一息ついたが、まだ、問題は解決されていない。大きな問題は 3 つあり、1 つはオフバランスの問題、1 つは商業用不動産価格の暴落である、と書かれています。
ここでは、2 つ目の要因に着目します ( 大きな問題の 3 つ目は、あとで引用します ) 。商業用不動産価格が下落を続けているなか、
「今後、商業用不動産市場ではかなりの借り換え需要が発生することが予想されているが、これに応じるスタンスを見せている米銀は少なく、借り換えがスムーズに行く可能性はかなり低いと見られている」 とあり、
銀行に資本投入を行っても、銀行は資金需要に応えようとはしていない、
ことがわかります。銀行が借り換えに応じようとしないのは、不動産価格の下落が予想されるなか、貸し出したところで、返済されない ( 借り手はお金を返せない ) とみているからではないかと思います。
この現象は、「リフレ政策のまとめ」 で、リフレ政策の問題点として指摘した、
通常の投資にはお金がまわらず、国債にお金がまわる
状況が、現れ始めている兆候ではないかと思います。そしてこの場合、借り換えがスムーズにいかなければ、不動産価格はますます暴落するはずで、さらに悲惨な状況になるものと予想されます。
しかし、資本投入にあたってはいろいろな条件がつくのではないかと、最初は民間銀行側もずいぶん躊躇していた。それをニューヨーク連銀が「とにかくやるんだから文句を言うな」と、かなり強引に投入を実施してしまった。
(中略)
ただ、これでアメリカの金融問題が解決されたわけではない。実際に米国財務省が〇九年三月末に議会に発表した官民協同で銀行の不良債権を買い取るPPIP案を発表した後も、米銀のCDSスプレッドは高止まったままである。これは市場参加者がこれまでの資本投入や今後動き出す買い取り政策では不充分だと見ているからである。
大きな問題は三つあって、一つは前述したオフバランスの問題である。
(中略)
二つ目の問題は、ここに来て急速に下落している商業用不動産の問題である。
Real Capital Analytics 社によれば、〇九年七月時点で米国では既に一〇八〇億ドルの商業用不動産がデフォルト、差し押さえ、または破綻状態にあると言われ、これは年初の倍の規模になっている。
またムーディーズ社によると、図10にあるように米国の商業用不動産は今年四月から暴落状態に入っており、四月の一か月だけで八・六%、五月の一か月だけでさらに七・八%も下がり、二〇〇七年十月のピークからの下落率も三五%に達している。
今年の初めまで商業用不動産が大きな問題になっていなかったことを考えると、同市場の直近での落ち込みがいかに大きいかということであり、これは一五年前に日本が経験したのと全く同じパターンである。
つまり、商業用不動産は一度下落に転じると、住宅用よりはるかに速いスピードで価格が下がってしまうということである。
足元でこの市場が反転する兆しは全くなく、事態は悪化を続けている。しかも今後、商業用不動産市場ではかなりの借り換え需要が発生することが予想されているが、これに応じるスタンスを見せている米銀は少なく、借り換えがスムーズに行く可能性はかなり低いと見られている。
銀行に資本投入を行って一息ついたが、まだ、問題は解決されていない。大きな問題は 3 つあり、1 つはオフバランスの問題、1 つは商業用不動産価格の暴落である、と書かれています。
ここでは、2 つ目の要因に着目します ( 大きな問題の 3 つ目は、あとで引用します ) 。商業用不動産価格が下落を続けているなか、
「今後、商業用不動産市場ではかなりの借り換え需要が発生することが予想されているが、これに応じるスタンスを見せている米銀は少なく、借り換えがスムーズに行く可能性はかなり低いと見られている」 とあり、
銀行に資本投入を行っても、銀行は資金需要に応えようとはしていない、
ことがわかります。銀行が借り換えに応じようとしないのは、不動産価格の下落が予想されるなか、貸し出したところで、返済されない ( 借り手はお金を返せない ) とみているからではないかと思います。
この現象は、「リフレ政策のまとめ」 で、リフレ政策の問題点として指摘した、
通常の投資にはお金がまわらず、国債にお金がまわる
状況が、現れ始めている兆候ではないかと思います。そしてこの場合、借り換えがスムーズにいかなければ、不動産価格はますます暴落するはずで、さらに悲惨な状況になるものと予想されます。