【恬淡(てんたん)の人】5322
城山三郎氏の心に響く言葉より…
広田弘毅は、〈自ら計らわず〉を信条にしたくらいですから、地位や名誉を求めてあくせくしないし、利己的なところがなく、金銭にきれいだし、卑しさがない。
淡白度が高いというか、言葉がヘンですけれど、〈高淡白〉の人でした。
ついには自分の命を捨てることにさえ恬談(てんたん)としていられるくらい、きわめて淡白でいられる人。
そこが彼の魅力を形作った、最大の要素かもしれません。
日本人には、この高淡白でいられる人というのは、魅力があるのです。
中山素平さんも、「人を選ぶ時には、なりたくない人を選ぶんだ」と言っていました。
「なりたい、なりたい」という人は、リーダーの器ではないのかもしれない。
また、周りから見て、リーダーとしての魅力に欠けるのかもしれません。
中曽根さん流に言えば、〈ギラギラしない〉人がいいのでしょう。
いつだったか、ソニーの盛田昭夫さんと雑談している時に、私が、当時の鈴木善幸総理のどこに魅力があるのかよくわからない、と言ったら、盛田さんも「いや、私も そう思っていたんだ」。
ところが、ある日、盛田さんのところへ鈴木総理から電話がかかってきて、「日米首脳会談で私は初めてアメリカへ行くんだけれど、アメリカのことはよくわからんのです。あなたはアメリカに詳しいから、私があちらへ行って注意すべきことを教えて下さい」と訊いてきた。
盛田さんは、簡潔に、「アメリカで、大統領なり周りの偉い人なりに質問されたら、とにかくまずイエスかノーかをはっきり言えばいいんです。 その後に、理由を短く言う。それからあとは、あなたのいつもの調子で、ムニャムニャ言っていてもいいでしょう」とアドバイスをした。
そのおかげでしょうか、鈴木さんはとにかく首脳会談を乗り切って、帰国しました。
盛田さんは総理からの電話を黙っているつもりでしたが、鈴木さんは経団連の大会で自ら、「私がアメリカでうまくやれたのは、行く前に盛田さんから実に的確なアドバイスを貰ったおかげだ」と明らかにしたのです。
まあ、「ムニャムニャ言ってもいい」 と言われたとまでは明かさなかったでしょうけれど。
さらにその後、盛田さんが別件で鈴木さんに電話したら、夫人が出て、「主人がアメリカへ行く前には本当にいいことを教えていただいてありがとうございました。主人がうまくやってこられたのは盛田さんのおかげだと、喜んで帰ってきました」とお礼を言われた。
みんなから莫迦にされている…まあ、莫迦にはしていないでしょうけれど、「あの人は漁業の学校を出た人で、あまり本を読まない。家には漁業の本しかない」なんて悪口まで書かれる人ですから、アメリカでうまくやって帰ってきたら、普通なら 「見ろ、おれも莫迦にしたもんじゃないだろう。立派な総理だろう」と威張りたいところでしょう。
まして家で、奥さんの前ぐらいは、「おまえは莫迦にしてたかも」…奥さんが莫迦にしていたかどうか知りませんけど…なんて言いたいだろうに、公の場でも家でも、「うまくやれたのは盛田さんのおかげだ」と堂々と明かすのです。
盛田さんは、「ああいう人なら、また力を貸してあげたいと思った」と言っていました。
『少しだけ、無理して生きる』新潮文庫
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広田弘毅は、第三十二代の首相で、従容(しょうよう)の人と言われる。
従容とは、どんな危急存亡の時でも、ゆったりとして慌てたり騒いだりしないことであり、泰然自若(たいぜんじじゃく)としていること。
「風 疎竹(そちく)に来る 風 過ぎて竹に声を留めず」
これも、広田弘毅が広めた言葉として有名だ。
風がまばらな竹林に吹くと、竹の葉がザワザワと音をたてる。
しかし、風が一旦通り過ぎれば、もう竹林は何事もなかったように静まり返る。
何か事が起きたときは心が動くが、それが一旦終わってしまえば、いつまでもそれにこだわらずに淡々としている、ということ。
「風車、風が吹くまで昼寝かな」という句も広田弘毅のものだ。
誰かのおかげでうまくいった、と手柄を自分のものにしない人は恬淡の人。
反対になんでも自分の手柄にしてしまう人は、「俺が俺が」の欲深で強欲の人。
昨今は、なんでも、自分が前に出たり、自らをアピールして、目立つことも厭(いと)わない人の方がもてはやされるきらいがある。
しかし、古来より日本では、高淡泊が人物である大きな条件の一つだった。
それが、従容の人であり、こだわりのない人…
恬淡の人には限りない魅力がある。
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城山三郎氏の心に響く言葉より…
広田弘毅は、〈自ら計らわず〉を信条にしたくらいですから、地位や名誉を求めてあくせくしないし、利己的なところがなく、金銭にきれいだし、卑しさがない。
淡白度が高いというか、言葉がヘンですけれど、〈高淡白〉の人でした。
ついには自分の命を捨てることにさえ恬談(てんたん)としていられるくらい、きわめて淡白でいられる人。
そこが彼の魅力を形作った、最大の要素かもしれません。
日本人には、この高淡白でいられる人というのは、魅力があるのです。
中山素平さんも、「人を選ぶ時には、なりたくない人を選ぶんだ」と言っていました。
「なりたい、なりたい」という人は、リーダーの器ではないのかもしれない。
また、周りから見て、リーダーとしての魅力に欠けるのかもしれません。
中曽根さん流に言えば、〈ギラギラしない〉人がいいのでしょう。
いつだったか、ソニーの盛田昭夫さんと雑談している時に、私が、当時の鈴木善幸総理のどこに魅力があるのかよくわからない、と言ったら、盛田さんも「いや、私も そう思っていたんだ」。
ところが、ある日、盛田さんのところへ鈴木総理から電話がかかってきて、「日米首脳会談で私は初めてアメリカへ行くんだけれど、アメリカのことはよくわからんのです。あなたはアメリカに詳しいから、私があちらへ行って注意すべきことを教えて下さい」と訊いてきた。
盛田さんは、簡潔に、「アメリカで、大統領なり周りの偉い人なりに質問されたら、とにかくまずイエスかノーかをはっきり言えばいいんです。 その後に、理由を短く言う。それからあとは、あなたのいつもの調子で、ムニャムニャ言っていてもいいでしょう」とアドバイスをした。
そのおかげでしょうか、鈴木さんはとにかく首脳会談を乗り切って、帰国しました。
盛田さんは総理からの電話を黙っているつもりでしたが、鈴木さんは経団連の大会で自ら、「私がアメリカでうまくやれたのは、行く前に盛田さんから実に的確なアドバイスを貰ったおかげだ」と明らかにしたのです。
まあ、「ムニャムニャ言ってもいい」 と言われたとまでは明かさなかったでしょうけれど。
さらにその後、盛田さんが別件で鈴木さんに電話したら、夫人が出て、「主人がアメリカへ行く前には本当にいいことを教えていただいてありがとうございました。主人がうまくやってこられたのは盛田さんのおかげだと、喜んで帰ってきました」とお礼を言われた。
みんなから莫迦にされている…まあ、莫迦にはしていないでしょうけれど、「あの人は漁業の学校を出た人で、あまり本を読まない。家には漁業の本しかない」なんて悪口まで書かれる人ですから、アメリカでうまくやって帰ってきたら、普通なら 「見ろ、おれも莫迦にしたもんじゃないだろう。立派な総理だろう」と威張りたいところでしょう。
まして家で、奥さんの前ぐらいは、「おまえは莫迦にしてたかも」…奥さんが莫迦にしていたかどうか知りませんけど…なんて言いたいだろうに、公の場でも家でも、「うまくやれたのは盛田さんのおかげだ」と堂々と明かすのです。
盛田さんは、「ああいう人なら、また力を貸してあげたいと思った」と言っていました。
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広田弘毅は、第三十二代の首相で、従容(しょうよう)の人と言われる。
従容とは、どんな危急存亡の時でも、ゆったりとして慌てたり騒いだりしないことであり、泰然自若(たいぜんじじゃく)としていること。
「風 疎竹(そちく)に来る 風 過ぎて竹に声を留めず」
これも、広田弘毅が広めた言葉として有名だ。
風がまばらな竹林に吹くと、竹の葉がザワザワと音をたてる。
しかし、風が一旦通り過ぎれば、もう竹林は何事もなかったように静まり返る。
何か事が起きたときは心が動くが、それが一旦終わってしまえば、いつまでもそれにこだわらずに淡々としている、ということ。
「風車、風が吹くまで昼寝かな」という句も広田弘毅のものだ。
誰かのおかげでうまくいった、と手柄を自分のものにしない人は恬淡の人。
反対になんでも自分の手柄にしてしまう人は、「俺が俺が」の欲深で強欲の人。
昨今は、なんでも、自分が前に出たり、自らをアピールして、目立つことも厭(いと)わない人の方がもてはやされるきらいがある。
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