【シリコンバレーのイノベーション】2581
西村康稔氏の心に響く言葉より…
シリコンバレーでは次から次へと新しいものが生まれています。
Googleの自動運転車も街のあちこちで見かけました。
多少スピードは遅いものの、走行する姿に違和感はありません。
ドローンもどんどん進化しており、ブレスレット型の超小型のものが、まもなく発売されるといいます。
普段はブレスレットのように手首につけるのですが、はずせば超小型のドローンとなります。
カメラを搭載しており、自律飛行するため、宙に浮かせて、写真やビデオを自撮りすることもできるのです。
また、アマゾンの「エコー」は水筒ぐらいの大きさで、話しかければ、様々な質問に答えたり、音楽を流してくれたりします。
天気、歴史的事実、世界各国の人口なども、百科事典やスマートフォンに代わって教えてくれるので、いまでは小学生が宿題をするのに重宝しているそうです。
電気自動車テスラの最新モデルXは車庫入れを無人で行ってくれるし、縦列駐車も全自動で楽ちんです。
また、毎週のようにソフトウェアがアップデートされます。
自動運転機能さえもソフトウェアのアップデートで付与される驚きの仕組みです。
一定の速度以下に設定しておけば、前を走る車との車間距離を保ちながら、スピードを上げたり下げたりするのを自動で行ってくれます。
何故、シリコンバレーでは、このようなイノベーションが次々と進むのでしょうか。
私はその理由を次のように考えます。
第一に、言うまでもありませんが、何よりも「失敗を恐れない気風」が挙げられます。
テスラにしても、安全性には細心の注意を払っていると思いますが、その他のソフトウェアはバグ(不具合)も結構あるといいます。
完璧な商品でなくとも世に出し、むしろ、消費者がバグを見つけ、オープンな環境で、消費者を巻き込みながら、商品を世に出した後に、だんだんと完全なものに仕上げていくという発想です。
この点、テスラに出資しているトヨタとテスラの共同開発の車「RAV4」について、興味深い話を聞きました。
RAV4を世に出すにあたって、そのバグを完璧に処理した上で発表したいトヨタと、発表のスピードを重視するテスラとの間で、議論があったそうなのです。
結局、RAV4の発表後にいくつかのバグが見つかりましたが、トヨタには苦情が寄せられた一方で、テスラには、ほとんど苦情が届かなかったそうです。
このエピソードは、重要な示唆を含んでいると思います。
トヨタに代表される日本のモノづくりには、高品質に基づく、高い信頼性とブランド力があります。
一方で、多少粗削りでも、次から次へと新しいものを世に問うテスラのようなシリコンバレーの企業は、そのチャレンジングな姿勢とスピードが支持を得ているのです。
日本企業のモノづくりの品質に対し、消費者の期待値は高く、不具合があればクレームに直結しますが、シリコンバレーの企業の品質に対してクレームが起こりにくいのは、「不具合があっても(ベンチャー企業ゆえに)そのチャレンジ精神を評価し、多少のことは許す」という文化が根付いているからではないでしょうか。
安定感、信頼感はあっても、消費者の目は厳しく、不具合が大きなクレームになりやすい日本企業は、トラブルにつながるリスクを回避することを最優先にしようとするため、チャレンジできず、動きに早さが出せないのです。
シリコンバレーでイノベーションが進む第二の理由は「多様性」です。
シリコンバレーの多くの方々からある種の不満を聞きました。
AIやIOTについて、多くの日本企業が視察にくるものの、どの企業も40〜50代の男性数人でやってきて(担当役員、部長、課長といったところでしょうか)、どの企業も同じような質問ばかりして帰って行くというのです。
女性も外国人もおらず、若い人もいない。
しかも、帰ったあと、何の反応、提案もない。
これではがっかりするのも無理はないでしょう。
シリコンバレーの企業は、多様な人材が、様々な新しい視点からの問いかけ、提案を待っているのです。
変化のスピードが極めて速い時代に、安定感があるが躍動感に欠ける、日本の大企業のこれまでのやり方では対応が難しくなっているのが現実です。
企業内「特区」、別ブランドによる挑戦、兼業の容認などを通じて、多様な人材を確保し、イノベーションを推進することが急務ではないでしょうか。
高品質な日本のモノづくりへの信頼感の維持と両立しながら、大胆なイノベーションを生み出す取組みが急がれます。
『第四次産業革命』ワニブックス「PLUS」新書174
今までの常識をひっくり返すような大きな技術革新が起こると、今まで先頭を走っていた企業が、一挙に最後尾になってしまう、というような事態が発生する。
それはあたかも、環境の急激な変化についていけなくて絶滅した巨大な恐竜のように、大きければ大きいほど変化への対応は遅くなる。
たとえば、2012年、デジタルカメラやスマートフォン登場による変化についていけなくなった世界最大の写真フィルムメーカーのコダックが倒産し、その130年の歴史に幕をおろした。
直近では、経営不振になり台湾の鴻海に買収されたシャープがある。
退任したシャープの高橋興三社長の最後のコメントは、「経営のスピードが世の中のスピードについていけなかった」、だった。
企業も人も、時代の変化に対応できなければ生きていくことはできない。
ITやIOTの進化により、20年後には、今の仕事の半分はなくなると予想されている。
時代の変化に取り残されないよう、チャレンジし続ける人でありたい。
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西村康稔氏の心に響く言葉より…
シリコンバレーでは次から次へと新しいものが生まれています。
Googleの自動運転車も街のあちこちで見かけました。
多少スピードは遅いものの、走行する姿に違和感はありません。
ドローンもどんどん進化しており、ブレスレット型の超小型のものが、まもなく発売されるといいます。
普段はブレスレットのように手首につけるのですが、はずせば超小型のドローンとなります。
カメラを搭載しており、自律飛行するため、宙に浮かせて、写真やビデオを自撮りすることもできるのです。
また、アマゾンの「エコー」は水筒ぐらいの大きさで、話しかければ、様々な質問に答えたり、音楽を流してくれたりします。
天気、歴史的事実、世界各国の人口なども、百科事典やスマートフォンに代わって教えてくれるので、いまでは小学生が宿題をするのに重宝しているそうです。
電気自動車テスラの最新モデルXは車庫入れを無人で行ってくれるし、縦列駐車も全自動で楽ちんです。
また、毎週のようにソフトウェアがアップデートされます。
自動運転機能さえもソフトウェアのアップデートで付与される驚きの仕組みです。
一定の速度以下に設定しておけば、前を走る車との車間距離を保ちながら、スピードを上げたり下げたりするのを自動で行ってくれます。
何故、シリコンバレーでは、このようなイノベーションが次々と進むのでしょうか。
私はその理由を次のように考えます。
第一に、言うまでもありませんが、何よりも「失敗を恐れない気風」が挙げられます。
テスラにしても、安全性には細心の注意を払っていると思いますが、その他のソフトウェアはバグ(不具合)も結構あるといいます。
完璧な商品でなくとも世に出し、むしろ、消費者がバグを見つけ、オープンな環境で、消費者を巻き込みながら、商品を世に出した後に、だんだんと完全なものに仕上げていくという発想です。
この点、テスラに出資しているトヨタとテスラの共同開発の車「RAV4」について、興味深い話を聞きました。
RAV4を世に出すにあたって、そのバグを完璧に処理した上で発表したいトヨタと、発表のスピードを重視するテスラとの間で、議論があったそうなのです。
結局、RAV4の発表後にいくつかのバグが見つかりましたが、トヨタには苦情が寄せられた一方で、テスラには、ほとんど苦情が届かなかったそうです。
このエピソードは、重要な示唆を含んでいると思います。
トヨタに代表される日本のモノづくりには、高品質に基づく、高い信頼性とブランド力があります。
一方で、多少粗削りでも、次から次へと新しいものを世に問うテスラのようなシリコンバレーの企業は、そのチャレンジングな姿勢とスピードが支持を得ているのです。
日本企業のモノづくりの品質に対し、消費者の期待値は高く、不具合があればクレームに直結しますが、シリコンバレーの企業の品質に対してクレームが起こりにくいのは、「不具合があっても(ベンチャー企業ゆえに)そのチャレンジ精神を評価し、多少のことは許す」という文化が根付いているからではないでしょうか。
安定感、信頼感はあっても、消費者の目は厳しく、不具合が大きなクレームになりやすい日本企業は、トラブルにつながるリスクを回避することを最優先にしようとするため、チャレンジできず、動きに早さが出せないのです。
シリコンバレーでイノベーションが進む第二の理由は「多様性」です。
シリコンバレーの多くの方々からある種の不満を聞きました。
AIやIOTについて、多くの日本企業が視察にくるものの、どの企業も40〜50代の男性数人でやってきて(担当役員、部長、課長といったところでしょうか)、どの企業も同じような質問ばかりして帰って行くというのです。
女性も外国人もおらず、若い人もいない。
しかも、帰ったあと、何の反応、提案もない。
これではがっかりするのも無理はないでしょう。
シリコンバレーの企業は、多様な人材が、様々な新しい視点からの問いかけ、提案を待っているのです。
変化のスピードが極めて速い時代に、安定感があるが躍動感に欠ける、日本の大企業のこれまでのやり方では対応が難しくなっているのが現実です。
企業内「特区」、別ブランドによる挑戦、兼業の容認などを通じて、多様な人材を確保し、イノベーションを推進することが急務ではないでしょうか。
高品質な日本のモノづくりへの信頼感の維持と両立しながら、大胆なイノベーションを生み出す取組みが急がれます。
『第四次産業革命』ワニブックス「PLUS」新書174
今までの常識をひっくり返すような大きな技術革新が起こると、今まで先頭を走っていた企業が、一挙に最後尾になってしまう、というような事態が発生する。
それはあたかも、環境の急激な変化についていけなくて絶滅した巨大な恐竜のように、大きければ大きいほど変化への対応は遅くなる。
たとえば、2012年、デジタルカメラやスマートフォン登場による変化についていけなくなった世界最大の写真フィルムメーカーのコダックが倒産し、その130年の歴史に幕をおろした。
直近では、経営不振になり台湾の鴻海に買収されたシャープがある。
退任したシャープの高橋興三社長の最後のコメントは、「経営のスピードが世の中のスピードについていけなかった」、だった。
企業も人も、時代の変化に対応できなければ生きていくことはできない。
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