これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

木材として利用される樹木 (その1)

2021-07-24 11:51:56 | 山林の問題
【はじめに】
 今回と次回は、樹木の種類と、その木材の特性について書きます。

 『(一般財団法人)日本木材総合情報センター』が木材に関する種々の情報を発信しています。 「木材の種類と特性」は素人向けの解説ですが、他に研究者向けのデータなども収集し公表しています。 政治家や官僚が、これらの情報を勉強して政策を立案してくれたら、日本は素晴らしい国になると思います。残念ながら、農林族議員達は政治資金集めには熱心ですが、日本木材総合情報センターの情報を読んだ事が無いのではと思います。

 野党の議員も同様のレベルだと私は推察します。蓮舫参議院議員に「日本木材総合情報センターの情報を読んだ事が有るか?」と聞いて見て下さい。「それ何?」と答える様に思います。 結局、このセンターは何の為に/誰の為に存在しているのでしょうか?!

【関連記事】
 森林や木材に関して、過去に投稿した記事を御参考までに列記しておきます。

★ 植林から製材まで (その2) :2021年7月10日投稿
★ 植林から製材まで (その1) :2021年7月3日投稿
★ 森林破壊と再生        :2021年6月12日
★ 木材価格が高騰している様です! :2021年5月29日
★ 過疎地の新しい産業は!  :2018年6月23日

【私の考え方】
 比較的成長が早い杉でも植林から伐採まで、最短で50~60年は掛かります。 檜の正目の板や、二面が正目の柱を得るためには150年以上掛かると思います。 今から50年前は木材価格は高く、国からの補助金無しでも山林経営はなりたっていました。 150年前は明治が始まったばかりの頃で、その時代に令和3年の木材需要を予想するのは、占い師でもギブアップしたと思います。

 「国土の2/3を占める森林をどうすべきか?」と言う問題は極めて重要です。「短期的な視点の小賢しい知恵では無く、森林についての経験と知識の有る、色々な人達が知恵を出しあって、試行錯誤して答えを探す様な難しい問題だ!」と私は思います。

〈1〉 緑豊かな森林と清流を後世に残す事を最優先課題にする。
〈2〉 杉や檜の植林を重視した森林政策は止めて、経済性に乏しい植林地は雑木林に戻す。
〈3〉 日本で育てられる樹木の特性を研究して、植林する木にも『適材適所』の考え方を導入する。 木材を加工する技術は既に十分進んでいます。 例えば、集成材の柱は、強度も見た目も無垢の柱より優れています。 現在は商品価値の低い樹種でも、まとまって生産したら活用される様になると思います。
〈4〉 木材の流通をより効率的にするシステムの創造とインフラ整備に国の予算を配分すべきです。 ヨーロッパ諸国では参考になりそうな政策が行われています。

【杉】
 杉は戦後・全国各地で多量に植林されて来ました。 正目の板や、二面が正目の柱は今後も高級木材として珍重されると思いますが、普通の杉材は米松や米杉などの安価な輸入材と価格競争が強いられます。 杉や檜の植林に偏重した政策を続けるのは国費の浪費だと思われます。

 日本は工業製品を輸出して外貨を稼ぎ、その金で地下資源を輸入する国です。農林水産省が所轄する分野の関税を高くして、国内産業を保護する事は難しいのです。 農民は美味しくて安全な農作物を作って、(細々ですが)輸出しています。 林業も工夫/努力して、国の補助金に頼らなくてもやって行ける様にすべきです。

【檜(ひのき)】
 昔から檜は最高級木材として扱われてきました。今でも神社・仏閣・城などは、殆ど檜が使用されています。神社・仏閣等に使用される木材は、百年とか二百年育てた太い木からしか得られません。

 檜材は不足していると言われていますが、神社・仏閣以外の用途では、檜の正目板を剥いだ(ピーラーした)厚紙状の物を、集成材や突板の表面に貼り付けた材で我慢すべきです。 逆に言えば、檜は太くなるまで育てるべきだと思います。 現在の国の補助金は杉も檜も植林後・40年間しか出ません。『 十把一絡げ』の政策は止めるべきです。

(余談 :檜皮葺) 古い神社仏閣に行くと、日本独特の檜皮葺(ひわだぶき)の屋根が見られます。 太い檜の立ち木の皮を、薄皮を傷を付けない様に慎重に剝ぎ取ったものです。皮を剝がされた立ち木が枯れる事は有りません。

(余談 :檜の花粉) 檜の花粉も花粉症の原因です。 檜は雌雄異株ですから、雌株だけ植林したら、少しは檜花粉症の方は楽になるのでは?と思います。

【翌檜(あすなろ)】
 翌檜(あすなろ)はヒノキ科の日本固有種で、葉の形は檜に似ていますが檜より幅広です。桧葉(ひば)とも呼ばれます。 能登半島では植林されています。変種の檜翌檜(ひのきあすなろ)は青森県で植林されており、木材は青森ヒバと呼ばれて、高級木材として取引されています。

 私の故郷・紀州では、翌檜は殆ど植林されていませんでした。 集落の裏山に5集落で建てた神社があり、境内に幹の直径が50cm以上ある太い翌檜が数本植えられていました。その内の一本を伐採した時、幹の端面を見た事が有ります。色白で綺麗でしたが、年輪の幅が広かったです。父は「翌檜は植えてはいけない!」と言っていました。「温暖で雨の多いい紀州では成長が早過ぎて、良質の木材が得られないのだ」と思いました。 真否不明です!

【松】
 松は海辺の岩山から山奥の頂上付近にまで、生育する貴重な樹木です。

松の長所 :松は一般に、杉や檜が育たない土地でもユックリですが成長します。 火力が強い。
松の短所 :日本の松は、一般に幹が真っすぐに育つケースは非常に稀です。その為に、余程の大木で無いと板や柱にするのは難しいです。 昔の木造建築では、梁(はり)や垂木(たるき)等に使用していました。 製材後・松ヤニを出し続けます。(私の実家の松の梁は、50年以上経っても『松ヤニ』を出しました。)

① 赤松 :一般に海から離れた山林に植林される。 赤松林では、松茸や本占地(ほんしめじ)が採れます。
② 黒松 :海岸の防風林、防雪林など。
③ 唐松(からまつ) :寒冷地に植林されている。古木は高値で取引されている様です。
④ 五葉松(ごようまつ=姫子松) :日本固有種、盆栽・・・植林は殆どされていません。
⑤ 蝦夷松(えぞまつ) :北海道

(余談 :燃料としての松) 松ヤニを多量に含むためだと思いますが、松の火力は非常に強く、松明(たいまつ)として使用してきました。 京都の『五山の送り火』は松の幹を割って、松ヤニの多いい部分を約20kgを一束にして、『大』の字などに並べて燃やしています。 ウイキペディアに束の数が出ていました。 五山の合計は481束ですから、毎年10トン程の松明が必要です。

 阪神淡路大震災(1995年)の頃、私より数歳年上で残業拒否で/目一杯有給を消化する社員(KS氏)の面倒を見ていました。KS氏は陶芸家の弟子になって、修行していた様です。 その後・自分で登り窯を造り、年に二回窯焚きしていました。 震災後・直ぐに「陶芸家になる」と言って、早期退職しました。 松の薪代が、一窯で二十数万円掛かると言うのです。「僕が退職したら、一回だけ薪代を出し、窯焚きも手伝うから、僕が一番気に入った作品を1個だけくれ」と堅い約束をしました。 KS氏の展示会に行ったりしていていました。2010年にリタイアしたので、KS氏に電話したら、「最近、1個・50万円ほどで売れた、もっと良い物が出来るかも? 約束は無かった事にしてくれ!」と言い出し、以来音信不通です。

(余談 :米松) 私は北米産の米松(べいまつ)の木目が綺麗だと聞いていたので、1985年に家を建てた時、一部屋の和室の天井板として、突板(ベニヤ)の表面に米松を薄く『かつらむき(ピーラー)』した物を貼り付けた板を選びました。 「これは松だよ」と言っても誰も信じてくれませんが、私は気に入っています。

 2002年頃に某社が工場の建物の中に、高温(60℃ほど)に保つ特殊なハイグレードのクリーンルームを建設しました。 クリーンルームには無垢のぶ厚い米松の板と角材が使用されていました。 断熱性とホコリの発生を抑える為に、高価な米松を採用した様でした。

(余談 :ローマの松) レスピーギが私の好きな「ローマの松」と言う曲を残してくれました。 この曲は日本の松のイメージを払拭して聴く必要があります。 ローマの松は下の方が真っすぐで、葉の付いた部分は『傘』の様な形をしています。

(余談 :唐松) 松は常緑樹が殆どですが、唐松は落葉樹です。 それで、『落葉松』とも書きます。 私の故郷・紀州では見たことが有りませんでした。 北原白秋の『落葉松』を読んで、是非見てみたいと長年思っていたのですが、信州に冬出張した時に念願がかないました。車を停めてもらって、暫く眺めました。

【樅ノ木(もみのき)】
 山本周五郎の『樅ノ木は残った』は、NHKの大河ドラマを始め、映画やテレビドラマが沢山作成されました。 私の故郷では樅ノ木は植林していませんでしたが、所どころに大木が有りました。

 椴松(とどまつ)は松ではなく、樅ノ木の一種です。 北海道の森林面積の30%近くには椴松が生えているか、植林されています。 その一部は、建築材として使用されています。 然し、椴松には、幹に何故か多量に水を含む物が有り、それを『水食い材』と呼ぶそうです。 『水食い材』は結構な割合で存在し、紙の原料等にしか利用出来ません。

(余談 :クリスマスツリー) クリスマスに樅ノ木のツリーを飾るのは、ヨーロッパの風習が世界に広がったための様です。 日本ではプラスチック製が主流になっていますが、アメリカでは畑で育てた生木が年間・数千万本も販売されているそうです。

 杉を植林した林で、間伐と枝打ちをチャントすると、樅ノ木が生えて来ます。 子供の頃・クリスマスの前になると、町からトラックでやって来た業者が勝手に樅ノ木を多量に切って、持ち帰っていました。 日本では仏教徒や無神論者の家でもクリスマスツリーを飾りますが、現在はプラスチック製のクリスマスツリーが多いいので、樅ノ木の商売は無くなっているのでは?と思います。

【桐(きり)】
 桐は成長が早く、20年もすると箪笥に使用出来る太さに成長します。 私の故郷(紀州)でも桐の木が植えられていましたが、雑木林の中に自生した桐を見た記憶が無いので、多分・人間が全て植えたのだと思います。

 桐には、①木目が綺麗、②軽い、③割れや狂いが少ない、④湿気を通さない、⑤燃え難い等々、優れた特徴が有ります。 本格的な金庫の中には桐が使われていますが、燃え難いためだと思います。

 桐箪笥は今でも時々見掛けます。 桐箪笥にもピンからキリまで有ります。 1920年代に金持ちの旧家から嫁に来た女性が持参した最高級の桐箪笥を、1965年頃に見せて頂きました。かなり表面が黒ずんでいました。 後で聞いた話ですが、「再生修理業者に依頼すると、表面を薄く鉋で削って・新品同様に生まれ変わる。桐箪笥は曾孫や夜叉孫の代まで使える」と言っていました。然し、和服を着る方が少なくなっているので、「デザインを工夫してモダンで、洋服も収納出来る箪笥にしないと、販売数を伸ばすのは難しい」と思います。

 現在、棺(ひつぎ)の多くは桐製ですが、殆どが、中国から輸入されている様です。日本の一年の死亡数は140万人程ですから、棺として消費される桐の量は膨大です。 昔・土葬の頃は、杉板を桶(棺桶)にして亡骸を入れました。

【欅(けやき)】
 欅(けやき)は本州、四国、九州の山地から平地まで、幅広く分布しています。 樹齢1,600年の巨木も存在します。 街路樹として植えられており、東京近辺の公園にも植えられています。 早稲田大学と学習院女子大学の近くに、戸山多目的運動広場が有ります。 私は、10年程前から何回か欅を見に行きました。

欅材の長所 :木目が綺麗で、堅くて摩耗に強いので家具材や建材として、高級品です。(私は欅の木目が好きです。)

欅材の短所 :伐採すると、丸太の状態で長期間乾燥させる必要が有ります。乾燥中に丸太は大きく曲がります。 曲がりが収まった後で、製材します。

 欅の大木は非常に少なくなっており、欅材は庶民が手が出せない程の価格になっている様です。 和太鼓の胴は欅が最高だそうで、超大型くり抜き欅太鼓の価格は3,000万円もするそうです。

(余談 :欅林) 私は1965年頃に1.5年間ほど、西武池袋線の練馬駅から徒歩7~8分程の所に住んでいました。 少し歩くと昔ながらの松並木の街道が残っていて、更に十数分歩くと時代劇に出て来そうな小さな『茶店』が有りました。 赤いカバーを掛けた縁台に座って、ラムネを飲むか、アイスキャンディーを頂きました。

 この街道の周辺に広い欅林が結構沢山残っていたので、欅林の中も散歩しました。当時は枯れ葉が厚く積もっていました。 既に農家は化学肥料を使っていたのですが、昔は・欅林の枯れ葉を集めて畑に敷き込んで肥料にしていたそうです。 関東平野の農家出身の友人の話では、三、四町歩(3ha~4ha)の農家だと、その内・一町歩は枯れ葉を取る為の欅林だったそうです。

 雨の後でゴム長靴を履いて散歩した時、畑の畝の間を歩いてみました。新雪を歩く時の様に深い足跡が残りました。 私の故郷では雨が降り終わると直ぐに農作業を再開しましたが、「関東平野では雨の後は暫く休む必要が有るのだ」と気付きました。

【栗】
 栗は大昔から全国各地で、実(栗)を得るために栽培されて来ました。私の故郷でも小規模な栗林が数カ所有りましたが、現在は全て無くなっています。多分、全国的に栗林は減少していると思います。

 栗は成長が早く、栗材は「非常に堅くて重く、腐りにくい、狂いが少ない・・・」と言う長所があります。 これらの長所から、昔は鉄道の枕木に使用されていました。(現在の枕木はプレストレスコンクリート製です。)

(余談 :栗の花) 栗は5月中旬~6月に、奇妙奇天烈な白い花を咲かせます。 尻尾の様な部分は雄花で、その付け根に雌花が一つだけ付いています。雄花は花粉を出した後、落ちてしまいます。


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