今回は、北朝鮮の三代目・金正恩の時代についてです。
【金正恩の時代】 2011年~
金正日は長男・正男を後継者にしようと考えていた時期もあった様ですが、三男・正恩を後継者に指名して、(正恩を神格化する事無く、)2011年に亡くなりました。 政権基盤を固めるために、金正恩は自分で粛清の指示を出す必要があったと思われます。
金正恩になってからは、韓国に対するテロ活動は行っていませんが、核開発と長距離弾道ミサイルの開発には本格的に取り組んできました。
核とミサイルについては種々・報道されますが、私は経済に注目してきました。
【金正恩が引き継いだ北朝鮮の経済】
北朝鮮の経済構造は非常に複雑で、全容は把握出来ません。 ①社会主義経済と②金王朝の宮廷経済の『二重経済構造』で説明する方がおられますが、私はそんなに単純では無いと考えています。
中国は北朝鮮に改革開放政策を推奨しましたが、拒否した様です。 ”闇市(市場経済)”は、改革開放政策のうち”国内体制の改革”すなわち市場経済化の役割を果たしていると考えられます。 正恩時代になって、市場経済化を容認したことで、北朝鮮は少しずつ豊かになっていると思われます。 経済封鎖が解除されたら、GDPは毎年確実に増加していくと、私は見ています。
【闇市→公設市場の誕生】 1996年頃~
1996年頃に配給制度が廃止され、戦後の日本の様に庶民が生活物資を得るための”闇市”が各地に出来ました。金正日は、当初は色々な規制を行い、2009年には『貨幣改革(デノミ)』によって個人の蓄財を没収しました。 庶民は逞しく規制を乗り越え、蓄財する人も増えてきました。 北朝鮮では成金の事を『トンジュ(金主)』と呼びます。
結局、国は闇市から、”的屋”の様に”所場代(税)”を取る、常設の『公設市場』を設けました。近年はどんどん増設して、2017年には500か所ほどになっているようです。 トンジュも増えて、公認で(販売業だけで無く)種々の事業を行う様になっています。
(現在は数千万円程度のようですが、)将来・数億円とか数十億円の資産を持つトンジュが誕生する事を、正恩は許容するでしょうか?
国の種々の機関が運営するデパート、スーパー、公営商店等が今でも存在しますが、一部の富裕層が顧客です。
【農業】
絶対権力者の金日成は、農業に関する知識が殆ど無かったために、苗を過密に植えさせたり、農地には適さない土地を開墾させたり、”誤った農業方法”を奨励(命令)しました。 そのために、収穫量が減少して食糧難になりました。
農業は、現在ほとんど民間共同経営の農場に変わり、金日成の”誤った農業方法”から、理にかなった農法に戻っています。機械化が進んでいないために農繁期には兵隊が駆り出され、軍は穀物を得ています。
農場から支給される食糧だけでは食べていけないために、農民は個人耕作地で栽培した作物を自由市場で販売して、やっと生きています。
畜産は設備投資が必要なために共同経営ではなく、今でも軍隊などの機関が直接経営している様です。
【漁業】
北朝鮮では漁業権を国の機関が所有していて、黄海と日本海側の漁業権を中国の組織に販売したと言われています。 80億円ほどが毎年”金王朝資金”になっているようです。 補足しますと、北朝鮮は自分たちの排他的経済水域では魚を取れなくなっているのです。(北朝鮮は公表していないために、詳細は不明です。)
漁民は軍などから委託された形で、小さな木造の漁船で排他的経済水域の外まで出て操業しています。 北朝鮮には職業選択の自由は有りませんから、 如何に危険でも乗船を拒否したら家族と一緒に強制収容所に送られるので、出漁しているのです。
デイリーNKが2018年6月に、『繊維強化プラスチック製の漁船を多量に手配した』と報じていました。 死体の漂着は減るかも知れませんが、大和堆での違法操業は今後も続くでしょう。
【工業】
1990年代から国営工場の多くは、電力や資材の供給が停止して、休業状態になっています。従業員に給料を支払う事が出来なくなりました。 従業員は工場にお金を払って休暇を取ったり、早退して他で働くようになりました。 (これを、『8.3ジル』と呼びます。)
トンジュ達が種々の事業を行う様になって、従業員が(8.3ジルを利用して)トンジュ達に雇われる様になりました。
2000年頃から、工場がトンジュの職場に従業員を派遣したり、工場の一部をトンジュに貸したりしているようです。
【為替レート】
北朝鮮の通貨単位は”ウォン〝です。北朝鮮の為替レートには『公式レート』と『市場レート』の二種類が存在します。 例えば、私が米ドル・1ドルを交換すると100ウォン貰えます(=公式レート)。北朝鮮人が1ドルを交換すると(80倍の)8,000ウォン程の札束が貰えます(=市場レート)。
現在は、人民元、米ドル、ユーロ、日本円が通用する様になっている様です。 2017年末の米の価格は1kg=6,000ウォン弱でした。タクシー運転手が外人を乗せて一日に50ドル稼ぎ、25日働いて、稼ぎの10%を給料として貰ったら、なんと167kgも米が買える事になります。
【アメリカとの国交が樹立されたら!】
北朝鮮は、今まで中国の援助を受けて来ましたが、産業を興して経済を発展させられるだけの資金は得られていません。”生かさず殺さず”の支援だったのです。
私が推測する金正恩の考え :①現在の様な貧しい国では無く、豊かな国を自由気ままに統治したい、 ②武力で韓国を併合する気はない。(自由を味わってしまった韓国を併合したら、厄介だ!)
金正恩の立場に立って私なりに考えてみました。『自力で経済を発展させのは不可能だから、外国から投資を呼び込む必要がある。そのためには、アメリカと平和協定を結び、国交を樹立しなければならない。アメリカを交渉のテーブルにつかせるためには、父・金正日が始めた、核開発とミサイル開発を進めるのが効果があるだろう。』 『核と長距離弾道ミサイルを放棄したら、アメリカと国交が樹立出来るだろう。』
マスコミ報道の影響で、私は『トランプ大統領は、”馬鹿”で金正恩の瀬戸際外交に切れてしまって、戦争を始めるのでは?』と心配していました。トランプ大統領は、金正恩の本音(国交樹立⇒経済発展)が分かり、金正恩の希望の線で交渉を纏めると私は期待しています。
【世襲制度が続く限り恐怖政治は行われる!】
金正恩はアメリカに「体制を保証しろ」と要求している様です。「私を暗殺するな」と要求しているのでは無く、「世襲制度と粛清に口を出すな! 強制収容所を問題にするな!」と言っているのだと私は理解しています。
将来、北朝鮮が豊かな国に成ったとしたら、隣に同族の韓国がありますから、国民は自由を要求し始める可能性があります。 『”金王朝”を維持する為には、国が豊かになっても連座制による恐怖政治は不可欠だ』と正恩は考えていると思われます。
【悲惨な強制収容所を忘れないでください!】
北朝鮮には、ナチスの強制収容所に匹敵する様な施設が多数あり、毎日100人ほどの罪の無い人が、悲惨な最後を迎えています! 最近の韓国とアメリカの対北朝鮮交渉では、この問題は無視されています。
李氏朝鮮では1894年まで、”連座制”による恐怖政治が行われてきました。北朝鮮では連座制が復活して、親族や友人が犯罪を犯したり、反体制人物と疑われると収容所に入れられるのです。勿論、北朝鮮は公表していないので、収容されている人数は不明ですが、私は人口の1%程度=20万人程度だと推測しています。第二次世界大戦後の70年間に、200万人程が収容所で亡くなられたと思われます。
強制収容所の”言語に絶する”悲惨な状況は、脱北者の著書やインターネットで読む事が出来ます。 余りにも惨い内容なので、デリケートな方は読まれない方が良いでしょう!
★★予告★★
次回は、大戦後の李承晩時代の韓国の悲惨な歴史です。
【金正恩の時代】 2011年~
金正日は長男・正男を後継者にしようと考えていた時期もあった様ですが、三男・正恩を後継者に指名して、(正恩を神格化する事無く、)2011年に亡くなりました。 政権基盤を固めるために、金正恩は自分で粛清の指示を出す必要があったと思われます。
金正恩になってからは、韓国に対するテロ活動は行っていませんが、核開発と長距離弾道ミサイルの開発には本格的に取り組んできました。
核とミサイルについては種々・報道されますが、私は経済に注目してきました。
【金正恩が引き継いだ北朝鮮の経済】
北朝鮮の経済構造は非常に複雑で、全容は把握出来ません。 ①社会主義経済と②金王朝の宮廷経済の『二重経済構造』で説明する方がおられますが、私はそんなに単純では無いと考えています。
中国は北朝鮮に改革開放政策を推奨しましたが、拒否した様です。 ”闇市(市場経済)”は、改革開放政策のうち”国内体制の改革”すなわち市場経済化の役割を果たしていると考えられます。 正恩時代になって、市場経済化を容認したことで、北朝鮮は少しずつ豊かになっていると思われます。 経済封鎖が解除されたら、GDPは毎年確実に増加していくと、私は見ています。
【闇市→公設市場の誕生】 1996年頃~
1996年頃に配給制度が廃止され、戦後の日本の様に庶民が生活物資を得るための”闇市”が各地に出来ました。金正日は、当初は色々な規制を行い、2009年には『貨幣改革(デノミ)』によって個人の蓄財を没収しました。 庶民は逞しく規制を乗り越え、蓄財する人も増えてきました。 北朝鮮では成金の事を『トンジュ(金主)』と呼びます。
結局、国は闇市から、”的屋”の様に”所場代(税)”を取る、常設の『公設市場』を設けました。近年はどんどん増設して、2017年には500か所ほどになっているようです。 トンジュも増えて、公認で(販売業だけで無く)種々の事業を行う様になっています。
(現在は数千万円程度のようですが、)将来・数億円とか数十億円の資産を持つトンジュが誕生する事を、正恩は許容するでしょうか?
国の種々の機関が運営するデパート、スーパー、公営商店等が今でも存在しますが、一部の富裕層が顧客です。
【農業】
絶対権力者の金日成は、農業に関する知識が殆ど無かったために、苗を過密に植えさせたり、農地には適さない土地を開墾させたり、”誤った農業方法”を奨励(命令)しました。 そのために、収穫量が減少して食糧難になりました。
農業は、現在ほとんど民間共同経営の農場に変わり、金日成の”誤った農業方法”から、理にかなった農法に戻っています。機械化が進んでいないために農繁期には兵隊が駆り出され、軍は穀物を得ています。
農場から支給される食糧だけでは食べていけないために、農民は個人耕作地で栽培した作物を自由市場で販売して、やっと生きています。
畜産は設備投資が必要なために共同経営ではなく、今でも軍隊などの機関が直接経営している様です。
【漁業】
北朝鮮では漁業権を国の機関が所有していて、黄海と日本海側の漁業権を中国の組織に販売したと言われています。 80億円ほどが毎年”金王朝資金”になっているようです。 補足しますと、北朝鮮は自分たちの排他的経済水域では魚を取れなくなっているのです。(北朝鮮は公表していないために、詳細は不明です。)
漁民は軍などから委託された形で、小さな木造の漁船で排他的経済水域の外まで出て操業しています。 北朝鮮には職業選択の自由は有りませんから、 如何に危険でも乗船を拒否したら家族と一緒に強制収容所に送られるので、出漁しているのです。
デイリーNKが2018年6月に、『繊維強化プラスチック製の漁船を多量に手配した』と報じていました。 死体の漂着は減るかも知れませんが、大和堆での違法操業は今後も続くでしょう。
【工業】
1990年代から国営工場の多くは、電力や資材の供給が停止して、休業状態になっています。従業員に給料を支払う事が出来なくなりました。 従業員は工場にお金を払って休暇を取ったり、早退して他で働くようになりました。 (これを、『8.3ジル』と呼びます。)
トンジュ達が種々の事業を行う様になって、従業員が(8.3ジルを利用して)トンジュ達に雇われる様になりました。
2000年頃から、工場がトンジュの職場に従業員を派遣したり、工場の一部をトンジュに貸したりしているようです。
【為替レート】
北朝鮮の通貨単位は”ウォン〝です。北朝鮮の為替レートには『公式レート』と『市場レート』の二種類が存在します。 例えば、私が米ドル・1ドルを交換すると100ウォン貰えます(=公式レート)。北朝鮮人が1ドルを交換すると(80倍の)8,000ウォン程の札束が貰えます(=市場レート)。
現在は、人民元、米ドル、ユーロ、日本円が通用する様になっている様です。 2017年末の米の価格は1kg=6,000ウォン弱でした。タクシー運転手が外人を乗せて一日に50ドル稼ぎ、25日働いて、稼ぎの10%を給料として貰ったら、なんと167kgも米が買える事になります。
【アメリカとの国交が樹立されたら!】
北朝鮮は、今まで中国の援助を受けて来ましたが、産業を興して経済を発展させられるだけの資金は得られていません。”生かさず殺さず”の支援だったのです。
私が推測する金正恩の考え :①現在の様な貧しい国では無く、豊かな国を自由気ままに統治したい、 ②武力で韓国を併合する気はない。(自由を味わってしまった韓国を併合したら、厄介だ!)
金正恩の立場に立って私なりに考えてみました。『自力で経済を発展させのは不可能だから、外国から投資を呼び込む必要がある。そのためには、アメリカと平和協定を結び、国交を樹立しなければならない。アメリカを交渉のテーブルにつかせるためには、父・金正日が始めた、核開発とミサイル開発を進めるのが効果があるだろう。』 『核と長距離弾道ミサイルを放棄したら、アメリカと国交が樹立出来るだろう。』
マスコミ報道の影響で、私は『トランプ大統領は、”馬鹿”で金正恩の瀬戸際外交に切れてしまって、戦争を始めるのでは?』と心配していました。トランプ大統領は、金正恩の本音(国交樹立⇒経済発展)が分かり、金正恩の希望の線で交渉を纏めると私は期待しています。
【世襲制度が続く限り恐怖政治は行われる!】
金正恩はアメリカに「体制を保証しろ」と要求している様です。「私を暗殺するな」と要求しているのでは無く、「世襲制度と粛清に口を出すな! 強制収容所を問題にするな!」と言っているのだと私は理解しています。
将来、北朝鮮が豊かな国に成ったとしたら、隣に同族の韓国がありますから、国民は自由を要求し始める可能性があります。 『”金王朝”を維持する為には、国が豊かになっても連座制による恐怖政治は不可欠だ』と正恩は考えていると思われます。
【悲惨な強制収容所を忘れないでください!】
北朝鮮には、ナチスの強制収容所に匹敵する様な施設が多数あり、毎日100人ほどの罪の無い人が、悲惨な最後を迎えています! 最近の韓国とアメリカの対北朝鮮交渉では、この問題は無視されています。
李氏朝鮮では1894年まで、”連座制”による恐怖政治が行われてきました。北朝鮮では連座制が復活して、親族や友人が犯罪を犯したり、反体制人物と疑われると収容所に入れられるのです。勿論、北朝鮮は公表していないので、収容されている人数は不明ですが、私は人口の1%程度=20万人程度だと推測しています。第二次世界大戦後の70年間に、200万人程が収容所で亡くなられたと思われます。
強制収容所の”言語に絶する”悲惨な状況は、脱北者の著書やインターネットで読む事が出来ます。 余りにも惨い内容なので、デリケートな方は読まれない方が良いでしょう!
★★予告★★
次回は、大戦後の李承晩時代の韓国の悲惨な歴史です。