05/17 私の音楽仲間 (395) ~ 私の室内楽仲間たち (368)
旅に病んで
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
関連記事
逢うは別れの
思いを断つ
食休みも終り
いつも元気で
旅に病んで
達人のバランス感覚
無言の伝授
悪徐
とめどない飛翔
『挨拶』というニックネームが着いたばかりに、この場で
とんでもない扱いを受けている、ハイドンの弦楽四重奏
曲 ト長調、作品77-1。
これ、元より作曲者が命名したものではありません。
しかし今回は、"食休み" や "ティータイム" の時間まで
出てきます。 ハイドンも、さぞビックリでしょう。
さてこの曲、メヌエットもトリオも活発な音楽でしたが、
次の第Ⅳ楽章はどうでしょうか。
[演奏例の音源]は、その一部です。
ティータイムが終ると、再び "大忙し" ! …と言っても、
仕事が集中しているのは、1つのパートだけのようです。
[譜例]は、この部分の ViolinⅠのパート譜です。 音源
は、譜例の1小節前からスタートしていました。
これ、それとも、上司に鬱憤でもぶちまけているのでしょうか。
「こんなに忙しいんじゃ、やってらんねぇよ!」
そして最後の数小節では、同僚が駆け寄り、懸命になだめ
ようとします。
ところで、相変わらずの塗り絵ですね。 例によってこの楽章
でも、大事なモティーフが幾つかあるようです。
でも "荒れに荒れている" のは、そのモティーフとは無関係
な部分の音楽。 任務外の私的な事情でしょうか。 これでは
周囲もなだめようがありません。
実は、大事なモティーフは、Viola とチェロも交代で担当して
いたのですが、お聞きいただけるでしょうか?
前半の部分で、動きは、3つの八分音符です。
旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る
芭蕉の最後の句となったといわれますが、問題はその執念。
俳句への情熱は、枯野をも焼き尽くさんばかりです。
亡くなったのは、句を詠んで4日後の10月12日。 将軍綱吉
の治世、元禄7年のことでした。
それから105年後、1799年のヴィーン。 ハイドンは、
健康と創作力の衰えを感じていました。
彼が心から愛した、弦楽四重奏曲の世界。 あるときは
意欲的な実験の場となり、またあるときは、自己の心情を
つぶさに打ち明けた、四つの楽器の親密な語らいの場。
作品77の2曲は、その最後の機会となりました。
[音源ページ]