MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

悪徐

2013-10-27 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/27 私の音楽仲間 (519) ~ 私の室内楽仲間たち (492)



                  悪徐




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                      悪徐
                  とめどない飛翔




 「気楽、安心、くつろぎ、ゆとり…。」

 今、イタリア語の辞書を引いている最中です。



 小学館の伊和中辞典で、1983年の初版。 決して
新しくはありませんが、私には充分でしょう。



 (なるほど…。 ちょっとやりすぎたかな。) 私の反省
の弁ですが、一体なんのことでしょうか?

 引いている単語は、agio。 最初にご覧いただいたの
は、その訳語です。



 勘の鋭い貴方は、もうお解りかもしれませんね。

 “agio” 自体は、あまりお目にかかることはありません。
でも読み方は、“アジョ” ですよ。




 それにもう一点。 「どうせお前のことだから、
音楽関係の単語なんだろう?」

 はい、そのとおりなんです!



 これに前置詞の “ad” (= a) が付くと、“ad agio”。

 意味は、「ゆっくりと、余裕をもって」。 “con agio” も同じです。




 もうお解りですね。 “Adagio” の語源を調べたところ、結果は
このようになりました。



 ちなみに “adagio” を引くと、「ゆっくりと、静かに。 アンダンテ
とラルゴの間の遅い速度; 遅い楽章」…とあります。

 そう、テンポを表わすだけでなく、緩徐楽章の意味もあります。



 私が真っ先に思い浮かべる緩徐楽章といえば、
ブルックナーの第8交響曲のアダージョなんです。

 聞けば必ず涙を浮かべてしまう。 こう書いて
いるだけでも、涙線が緩みそうです。



 ではラルゴ楽章は? 『新世界より』の
第Ⅱ楽章です、私の場合は。

 ちなみに “ラルゴ” には、“幅広い” と
いうニュアンスがあります。




 さて、最初から横道に反れてしまいました。



 [譜例1]はすでにご覧いただいたものですが、ハイドン
の弦楽四重奏曲、作品77-1 から、第Ⅱ楽章の Adagio。
その冒頭部分です。

 演奏例の音源]も、ここからスタートします。







 おや? アンサンブルの悪い箇所がありますね。

 私のテンポが遅すぎたのでしょうか?



 同じ傾向は、この先も続きます。

 [譜例2]は、さらに4小節が経過した箇所ですが、
ここでも意見の不一致があるようです。







 内声の刻む八分音符。 アンサンブルの一般的な原則
からすれば、Vn.Ⅰ も、そのテンポに従うべきですね。

 ところが私は、テーマを奏でるチェロと結託して、テンポを
譲ろうとしません。 さらに遅く! まったく頑固なものです。




 ちなみにこの録音は、三回目に通したときのものです。
一回目は、まるで “意見” が合いませんでした。

 八分音符が連続する、この形。 一見すると単純ですが、
とても難しいんです。 その前と同じテンポで刻むのが。



 その上、Vn.Ⅰ が頑固ですね。 いくらなんでも
遅すぎないか?

 しかし私にも、それなりの事情があります。



 この楽章には16分音符だけでなく、32分音符も
出てくる。 これは、いわば “8連符” に当ります
が、さらに “11連符” まであります。

 かなりテンポを落とさないと、すべてがせわしなく
聞えてしまうのです。




 「まるで別の音楽に聞えますよ。」 Violin の
U.さんは、そんなふうにコメントされました。

 ハイドンの音楽には人一倍詳しく、またご自分
でも積極的に演奏するかたです。



 ちょっと、やりすぎたかな…?

 自分のテンポに、今でも自信が持てない私です。




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