09/08 私の音楽仲間 (533) ~ 私の室内楽仲間たち (506)
年季が入ってるよ
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年季が入ってるよ
聴くにはいいが…
今回は、まず[演奏例の音源]をお聞きください。
曲は、シューベルトの 弦楽五重奏曲 ハ長調、第Ⅰ楽章
の一部で、[譜例 1]の最初からスタートします。
[譜例 1]
この後、10小節を挟み、下の譜例に続きます。
[譜例 2]
お気付きのとおり、楽譜は ViolinⅡ のパート譜ですね。 また
音源には、前回お聞きいただいた箇所が含まれています。
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さて、この曲は弦楽五重奏ですが、「一番よく聞えるパート
は?」…と訊かれたら? …もちろん Vn.Ⅰ ですね。
音域は高く、メロディーを任されることが多い、いわばプリマ
ドンナ。 この曲に限ったことではありません。 オーケストラ
曲でも、同じことが言えます。
それでは、「Vn.Ⅰ のパートがもっとも難しいか?」…
となると、そうは言えません。 比較の問題ではなく、
難しさの “質” が違うのです。
通常は目立たない Vn.Ⅱ パートですが、この曲では
どうでしょうか?
(1) Vn.Ⅰ に寄り添い、3度下を動く。
(2) Vn.Ⅰ の動きが止まったときに、相の手を入れる。
(3) Vn.Ⅰ が気持良さそうに歌っているのに、難しい
ことをやらされる。 完璧に弾くのは不可能なほど。
以上は[譜例 1]。 続く[譜例 2]ではどうでしょうか。
(4) Vn.Ⅰ にリズムを刻ませながら、たまに目立つことも。
しかしそれも、せいぜい1~2小節間だけ。
(5) 陰のリズムや、和声の充填に携わる。
(6) 3度下に Viola を従えて動くが、これも2小節間ほど。
…と、敢えて愚痴っぽく書いてみました。 これだけ色々な事
をやらされ、しかもその役割は、瞬間的に変わるのですから。
これらの態度を使い分け、しかも周囲を聴きながら、忠実に、
正確に…。
これは、容易なことではありません。 合奏経験も必要です。
「曲全体を把握し、また Vn.Ⅰ が何をしているのかを理解して
いないと、このパートは弾けない」…と言ってもいいほどです。
今回 Vn.Ⅱ を担当したのは I.さん。 技術的にもしっかりと、
主張すべき所は主張し、点ける付けるべきところは付ける…。
こうして、全体を支えてくれました。
この I.さん。 「Vn.Ⅰ を弾いてリードしてください」…と
頼まれても、固辞することが多いとか。 ひょっとすると、
「Vn.Ⅱ パートのほうが難しく、他人に任せられない」…
と思っているのかな…?
ところで、今回ご覧いただいた楽譜。 いかにも古めかしく
見えますね。 これ、実は古書店で入手したものです。
といっても、場所はライプツィヒでした。 1977年ですから、
まだ東ドイツ時代のこと。 でもどういうわけか、そこに私が
居たんです。
表紙には、“LEIPZIG, C. F. Peters” と印刷され、その下
に捺してあるのは、モスクヴァの楽器店のスタンプ。
この楽譜を使っていたのは、きっとソ連の音楽家でしょう。
それと思しき署名もあるのです。
その弦楽器奏者が、どういうわけかライプツィヒに居た…。
そして、不要となったパート譜一揃いを、古書店で売った。
それが今、私の手元にあるのです。
そして、書棚で30年以上眠っていたのに、あるとき急に
引っ張り出され、頻繁に働かされるようになった。
どんな楽譜にも、持ち主を巡る歴史があります。 しかし、
これが PETERS版であり、私が入手した場所を考えると、
色々な事に思いを巡らせてしまうのです。
キミが、ライプツィヒで印刷されたのは、いつ?
どんな音楽家がモスクヴァで買い、演奏していたの?
キミは、どうやってライプツィヒに帰ってきたの?
書き込みは、ほとんどがボク。 だいぶ汚しちゃったね…。
でもお蔭で、とても助かってるよ。 ミス-プリントらしい箇所
も多いんだけど、今は新しい版に代える気にはなれないんだ。
修正しながら使わせてもらうから、もう少し一緒に居てね?
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[五重奏曲 音源ページ]