MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

切実になった死

2011-11-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/28 私の音楽仲間 (337) ~ 私の室内楽仲間たち (310)



              切実になった死




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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               最後の曲は SCHUBERT
                 三連符の見え隠れ
                移ろいの背後の混沌
                 苦悶の果ての長調
                   揺れ動く転調
                   切ない半音階
               叫ぶ乙女、棒読みの骸骨
              死神だけが生まれ変わる?
                 束の間の小春日和
                   死神と踊る?
                  絶望感の表現
                   死神の訓示
                 彼方なるタランテラ
                  切実になった死
                  乙女の苦しみ




 Schubert の弦楽四重奏曲『死と乙女』については、この
場でも何度か触れてきました。



 その第Ⅱ楽章の下地となっているのが、自らの同名の歌曲
でした。 両作品の間には、7年間の隔たりがあります。

 歌詞は、前半が乙女、後半が死神のもの。 "低声" と指定
された歌い手が、一人で歌い分けます。

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 …と言っても、原曲に明確なメロディーがあるわけでは
ありません。 変奏曲の第Ⅱ楽章は、歌曲の一部だけを
材料にしていました。

 それは、① ピアノの前奏、③ 死(神) の歌、それに続く
短い後奏の部分だけ。

 ② "乙女の叫び、おののき" の箇所は、この四重奏曲
にはまったく取り入れられていません。



 それも、基本となるのは和声の進行。 ピアノのパートに
は、これに伴って幾つかの声部が生じます。 その動きを
断片的に取り入れ、組み合わせ、変化させたのが、四重
奏曲の第Ⅱ楽章でした。

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 [譜例Ⅰ]は既出のもので、楽章の冒頭です。 通常は
テーマが提示されるのですが、ここでは明確なメロディー
ラインはありません。 辛うじて Vn.Ⅰが、それらしきもの
を奏でます。

 しかしそれも、和声進行に伴うものであることが、ご覧
いただけるでしょう。 重要なのは、むしろチェロ パート
の役割かもしれません。 







 25小節目からは第変奏が始まり、同じ和声進行の中を
Vn.Ⅰが自由に動き始めます。

 この部分の演奏例も、既出のものです。




 次の[譜例Ⅱ]は新しいもので、続く第変奏の前半部分と、
後半の数小節です。



 目立つのはチェロの高音域。 ラインの骨格らしきものは
共通していますが、実際のテーマは、やはり和声です。

 副次的なラインは、Vn.Ⅱの低い音の動きに見られます。

 またアンサンブル的に重要なのは Viola です。 最低音
などで、リズムを受け持ちます。







 演奏例の音源]は新しいもので、Violin の O.さん、Viola
C.S.さん、チェロ の N.さんとご一緒したときのもので、
その場で即席に編成したメンバーです。



 "もっとも音の高い Vn.Ⅰの動き" は、あまり目立たない方
がいいでしょう。 この部分が終ったときに、「あれ? Vn.Ⅰ
は何をやっていたんだっけ?」…と、聴く者の印象に残って
いないようなら、それだけ「他のパートが聞き取れた」…こと
になります。

 その点、自分もまだまだ未熟です。




 これに続くのは、激しい第3変奏。 ff と p、pp が
交錯します。 しかし真の葛藤は、第5変奏の後半
以降に持ち越されます。




 [譜例Ⅲ]は既出で、第変奏の開始部分。





 また[譜例Ⅳ]も同様で、第変奏の開始部分です。






 演奏例は、やはり既出で、第3変奏の終り部分、
第4変奏、および第5変奏の開始部分です。



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 第5変奏後半の、激しい葛藤の後は、徐々に力が萎えて
いきます。 楽章は、最後に pp の安息で終ります。




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