12/04 ハンカチが落ちましたよ
これまでの『音楽演奏・体の運動』目録 です。
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通りすがりに、女性がハンカチを落とした…。
男はそれに気付いて、拾い、渡す。
「もしもし、ハンカチが落ちましたよ?」
そして二人は…。
女性側が仕掛ける、古典的な手法ですね。
「おや、今回は、恋愛談議か…?」
…とんでもない。 私にはまったく似つかわしくありません。
さる SNS の掲示版で、次のような問いかけを目にしました。
「Vn, Va の方に質問があります。
子供が顎当てにハンカチなどの布を当てて弾こうとすると、
布が滑ってしまうと言います。
楽器の支持方法に問題があるようにも思いますが、先生が
ゴムを付けている子もいる…と仰るので、多少の一般性もある
のかな、と思います。 どなたか、布を単に当てる以外の工夫
をされている方がいらしたら、教えて頂けないでしょうか。」
お父さんの I さんの投稿です。 お子さんが Violin の
レッスンに通っておられるんですね。
Violin を弾くのに、なぜハンカチを使うのか? 念のため
にご説明すると、夏場の汗対策や、擦れて痛くならないよう、
クッションとして使う…などの意味合いがあります。
でも、せっかくのハンカチが滑ってしまうのではね…。
さっそく回答を寄せたのは H さん。 Violin の名手で、
私も面識があります。
「1.小手先技。 ハンカチの先が袋になっている物、
ゴムが付いている物が商品として有ります。 検索して
みれば自分でも作れそうです。」
なるほど、これなら落ちませんね。 親切心溢れる
回答です。
でも、なぜ “小手先技” と断っているのでしょうか?
記述はさらに続きます。
「2.肩当の高さ、位置の調整。 そもそも、顎当てが
滑るほどはさむのは変です。 顎当てからアゴを外しても
楽に支えられる場所に肩当の高さ、位置を調整すると良い
と思います。 私の想像では高さが足りないことと、顎当て
に肩当が近すぎるのではないでしょうか。」
なるほど。 ご自身の体験と努力が滲み出ているのが
よく窺えます。 今の私からすると、細部には違いもあり
ますが、内容には充分説得力があります。
“ハンカチ落とし” には、あまり興味の無い私。 しかし
H さんの記述には、どんどん引き込まれていきます…。
「3.更に進めて、顎当てに力を入れないでも1,3,5
ポジションが弾けるように練習する。 当然、左手と肩当
で楽器が支えられます。 最初は楽器を落としそうになり
ます。 これはすぐになれます。 次にビブラートを掛ける
と楽器が揺れて困るようになります。 これは、ビブラート
を手首、指を柔らかくしてかけるようにすると楽器が揺れ
なくなります。 ハイポジションは顎は下向きに押さえる
だけで左手なしで楽器が支えられるように練習します。
あくまではさむのではなく、肩当を支点にして顎当てで
バランスとる感じです。」
これも、今の私とは違う部分がありますが、書いて
おられることは充分に理解できます。
さて、ここまでは傍観者だった私。 でも次の一節を
目にすると、そうも言っていられなくなりました。
「4.一番過激な方法。 顎当ても外し、肩当も外して
しばらく練習する。 最初は全く弾けませんが、しばらく
すると楽器は強固に支えなくてもよいということを実感
すると思います。 バロックの人たちは皆こうやって
います。
私は 3 (顎当てに力を入れない) がおすすめ。
さらに練習を続け、肩当なしをめざしましょう。」
まだ小学生のお子さんですから、いきなり…と言うのは
無理があるでしょう。 ただし、「本来はどうあるべきか」
…を考えると、現状は本末転倒のようにも思えますが。
音楽界は大変保守的なのです。 日本に限らないが。
さて、なぜ私が “心中穏やか” でいられなくなったのか?
それは、私も【顎当て無し、肩当て無し】…で、常時弾いて
いるからなのです。
Violin と Viola の両方を。 バロックに限らずですが…。
これを見て、I さんは答えます。
「肩当ては***を使っていますが、どれがよいと
いう選択をする機会がありませんでした。 先生
は。『楽器を肩に載せて、下がらないようにする』
という抽象的な指示は下さいますが、肩当てを
選んで頂く時間はなさそうです。」
私に言わせれば、【この二つの道具の選択は、
教授内容の一環である】のが理想です。 しかし
現実には、そこまで徹底するのは難しいでしょう。
ちなみに先生ご自身は、別のタイプの肩当てを
使っておられるようです。
I さんはさらに続けます。
「ハンカチに関しては、汗のために使い始めた。
楽器を下ろした時に、ハンカチが落ちてしまう。
『ハンカチが顎当てに留まる手段があるとよい。』
というのが先生の問題意識であるようです。
滑るというのは、本人の訴えです。」
…そうか…。 お子さんの悩みと、先生の着眼点には
ズレがあるんだな。
どうしたものか…。 この私には〔滑って困った〕…と
いう経験は無いし…。
私はいつしか、自分の数十年前を思い出していました。
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