12/06 演奏者か、製作者か?
これまでの『音楽演奏・体の運動』目録 です。
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接着剤、掃除機…。 部屋の中は、足の踏み場もあり
ません。
30年以上前のこと、私は在京のあるオケで Viola
を弾いていました。 その頃の自室の様子です。
練習の合間の自由工作? いいえ、手先は不器用な
ほうだし、そんな趣味はありません。 止むに止まれず
やっているんです。
Viola 弾きですから、楽器も近くに転がっています。
ケースから顔が覗いているものもあり、全部で5~6
台ある。 もちろん中には Violin も…。
一体何を作っているのか? 勘の鋭い貴方なら
お解りかもしれませんね。
そう、顎当てを作っているんです。 自分で。
「そんなもの、買えばいいだろう。 金が無いのか?」
はい、もちろん当時の市販品はあらゆるものを試しました。
最初は肩当て選びから始めましたが、そのうちに気付いた
のは、【顎当てとの組み合わせが重要だ】…ということです。
「一度に色々なサイズの楽器に手を出すと、混乱しないか?」
いいえ、却って “共通の原則” があることに気付かされたほど
です。 根本的な原理と言ってもいいでしょう。
そして肩当ては、間もなく決まります。 自分には、出来るだけ
薄めのものが合う…と感じたので、クッション式にしました。 中
に空気を吹き込み、量の調節が可能なタイプです。
以後、長期間これを使い続けることになります。 しかし、顎当て
は簡単ではありませんでした。
ご存じのとおり、Viola には色々なサイズがあります。 当時
の手持ち楽器を、胴の長さ (㎝) で表わすと、38.5、40.5、42.5、
44.5…となります。 Violin がおよそ 36 ですから、超小型から
特大まで揃っていました。
もちろん〔大きいほうが弾きにくい〕…わけですが、そうも単純
に言い切れない場合があったのです。 【特大より、中サイズの
楽器のほうが弾きにくい!】 一体なぜだろう……?
そのうち気付いたのは、次の二点です。
(1) 同じ顎当てでも、取り付け位置をずらすだけで、弾き易く
も弾きにくくもなる。
(2) 楽器も顎当ても、厚いより薄いほうが、身体には楽だ。
考えてみれば、(1) 取り付け位置が変われば、構えも変わる
わけです。 人間の胴体を樹木の幹に例えれば、枝 (楽器) の
生える方向が変化することになる。
こうなると、“奏法の一環”…と言ってもいいほどです。
また、(2) 顎に分厚い物を挟むよりは、薄いほうが楽なの
は当然です。 ただでさえ楽器が厚い Viola の場合は、これ
に顎当ての厚みが加わるのですから、致命的です。
単に楽器のサイズが大きくなるだけでなく、厚みが障害に
なるので、楽器が余計に重く感じられるわけです。
これは、薄い Violin の場合でも同じはず…。
ちなみに、このとき寸法を測ってみました。 顎を引いて
構えたときの、自分の〔左顎骨~左鎖骨〕の間の距離です。
ヘッドアップすれば、この間隔が拡がることになる。 これ
が一定以上になると、両腕が快適に動いてくれなくなります。
その限度は?
結果は、4~4.5㎝…という数字が出ました。 (現在では、
もっと顎を引いて楽器を構えていますが!)
この数字は、Violin でさえ、楽器の厚みを下回っています。
「まさか、楽器に穴を開けて弾くわけには行かないしな…。」
当時の真剣な悩みで、以後も頭から離れなくなりました。
この顎当て騒ぎ…。 最初は市販品を削って、厚みを
減らすことから始めました。 邪魔な出っ張りを削り取り
ながら。
そのうちに、【顎が「動きたい」と演奏中に言っている】
…のが、次第によく聞えるようになりました。
そして、邪魔なあちらを削り、こちらを切り落とし…と
続けるうちに、購入時は凹凸が大きかった市販品は、
やがて “まっ平ら” に近くなっていきました。
それでも、まだ厚すぎる…。
「これは、自分で作らないと駄目だな…。」
かくして、30年に亘る “顎当て作り” が始まりました。