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MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

知識も無しに作れるか!

2014-09-25 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/25 私の音楽仲間 (619) ~ 私の室内楽仲間たち (592)



           知識も無しに作れるか!




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




       関連記事 Beethoven の 四重奏曲 作品130

                  割り勘ドンブリ
                 不自由な輩め…
                 ドイツもこいつも…
                  最後の作品
                  酔いに任せて
              知識も無しに作れるか!
                お伴は忍者でござる
                  ふざけた曲さ
                深刻めいた遊び
                 感じる殺気
               逆立ちで走るのだ




 今回は “解答編” に当ります。 問題をもう一度ご覧に
なるかたは、先に酔いに任せてをご参照ください。

 曲は、Beethoven の弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品
130 です。


 「次の2つの譜例の間に、類似性を見つけてください!」
…というのが、前回のお願いでした。

 まず、第Ⅰ楽章で第二主題が Vn.Ⅰに現われる場面です。



 前回と同じ演奏例の音源〕は、下の〔譜例〕から始まり、上へ
跳びます。

 これは楽章の序奏部ですが、問題になるのは1段目だけです。



 前回の記事では、この後に “ヒントの譜例” がありました。

 でも今回は、いきなり “解答の譜例” が続きます。


 

 すぐ上の譜例にを塗り、音符には番号を付けてみました。
まであります。


 

 1~4半音下降音階4~5上昇6度そして、5~7
全音も含む下降音階です。

 次の譜例には、4 5 6 7 1 2 3 4…と、順に書かれています。
それぞれの間の音程関係は、上の譜例と同じです。 もちろん
調が違うので、同じ番号でも別の音名を指しています。



 “音列” が真ん中で切断され、順序が入れ換えられた!

 もし、「聴く者はすべて私の音楽を理解しなさい」…という
のが作曲者の注文なら、それはかなり難しいようです。

 まるで “ジグソー パズル” ですからね…。 それとも、
作曲家自身が戯れているのでしょうか?


 この曲の解説ページには、以下のように書かれていました。

 「瞑想的で荘重な序奏における第1ヴァイオリンの旋律は、
この楽章全体の中核をなし、提示部や展開部のつなぎ目で
たびたび姿を見せる。」


 これが頻繁に現われる理由は、聴く者に気付いてほしいから?

 それに、何度も出てくる < (クレシェンド)。 上昇6度の形には、
ほぼ常に書かれているのです。 弾く者は心を込めて、これを
演奏しなければならない。


 それでもやはり、パズルは難解ですよ、Beethoven先生!
まるで、「たとえ難解でも、音楽を通して自分を理解してくれ」
…と言わんばかりですが…。

 凡人の私たちは、なかなか着いていけずに済みません。

 



 さて、前回ご覧いただいた “ヒントの譜例” ですが、
今回でも触れなかった点が残りました。


 

 それは、頻繁に顔を見せる下降5度、あるいは上昇4度です。
どうやら、第二主題とは無関係なようです。

 

 さて、真面目な話題はこれで終わりですが…。

 “ジグソー パズル” で、余計なことを思い出してしまいました。

 



 “K516f” に、『音楽のさいころ遊び』という作品があります。
ただし、死の直後に出版されており、しかも Mozart 自身の
作という証拠はありません。

 あの “ト短調の五重奏曲 K516”…。 そして管楽五重奏の
編曲番、“K516b”。 これらと肩を並べる音楽でもない。


 楽譜サイト“作品” が、176のピースに分割されています。
いわく、「対位法の知識が無い貴方でも、メヌエットが作れます!」
これは恐らく初版でしょう。

 “さいころ”…ですから、「出た目に応じて各ピースを並べろ…
というわけですね。 偶然音楽の走りでもあります。 各ピース
は1小節分で、3/8拍子。 鍵盤楽器の両手です。


 で、どんな音楽が出来るの? 要するに “出鱈目” な音楽です…。

 組み合わせを計算すると、1116 = 45,949,729,863,572,161とおりも
あるんだって…! 兆の上の “” なる単位まで出てきました。


 このような遊びの例は、Mozart 以前にも見られるのだそうです。

 ただしこの作品では、“さいころ” を前提としてはいないように
思える。 先ほどの楽譜サイトでは数表が見られますが、単純
に “6の倍数” を使える形ではないから。 では、ピースを選ぶ
他の方法は?

 ある図書館で私が見かけた “楽譜” は、カルタ状の硬いカード
で、176のピースになっていました。 これなら、床かテーブルに
ばら撒けばいい。 裏返しにするなどして。


 では、美しい曲になるような “模範解答” はあるのでしょうか?
本来は “ちゃんとした曲” だったものを、バラバラにしたに違い
ないから、あるのでしょう。 音源も販売されているようです。

 音源サイトでも、実例が幾つか聞かれます。 ただし、一応
リンクはしてありますが、ほとんどは期待外れですよ! ヒマ
な私が調べた上なので、忙しい貴方は無駄な時間を費やして
駄目ですよ…?


 ああ、やっぱり見ちゃったの……?


 「知識も無しに作曲が出来るか! 一緒にするな!」 

 Beethoven 先生、だいぶ “お冠” のようです。



      [音源サイト    [音源サイト



酔いに任せて

2014-09-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/24 私の音楽仲間 (618) ~ 私の室内楽仲間たち (591)



              酔いに任せて




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                深刻めいた遊び
                 感じる殺気
               逆立ちで走るのだ




 〔譜例〕は、Beethoven の弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品
130 から。 第Ⅰ楽章の冒頭で、ViolinⅠのパート譜です。


 演奏例の音源〕も、ここから始まります。

 Violin 私、Saさん、Viola Yさん、チェロ Suさんです。



 おや? 音源の編集を間違えてしまったかな…。

 “序奏の後に Allegro”…と来れば、主部が始まるはず。
そして聞こえてくるのは第一主題…。 それが普通なのです
が、なんと、第二主題に跳んでしまいました!


 跳んだ先で聞こえてきた楽器は…。 チェロですね。 でも
十六分音符で動く形は、第一主題部分の Violin と、まったく
同じです。



 「じゃあ、第一主題も第二主題も、同じ十六分音符の形から
始まるの?」

 いえ、この点は、もう少し慎重に検討したほうがいいようです。

 


 

 さて、この曲の解説ページには、次のように書かれています。

 「瞑想的で荘重な序奏における第1ヴァイオリンの旋律は、
この楽章全体の中核をなし、提示部や展開部のつなぎ目で
たびたび姿を見せる。」


 確かにそのとおり…。 でもそれだけでしょうか? 楽譜
詳細に読めば、主部無関係な序奏を目にすることの
ほうが、むしろ少ないのです。

 弦楽四重奏というジャンルに限ってさえ、両者の関連は
緊密です。 特に、構成を重視する作曲家たちの作品では。

 いわんや、Brahms の第1交響曲においては…。 凝り
に凝った序奏部を持つ楽章が、二つもあるのですから…!


 次の記事は MOZART と BEETHOVEN の序奏の一例です。

    関連記事 Mozart の "混沌" 序奏は倉庫 など



 ではこの曲の、先ほどの序奏部は、どうなのでしょう? 主部
とは、何らかの関係があるのでしょうか?


 そこで、今回は貴方にそれを見つけていただきたいのです!


 先ほどと同じ〔譜例〕をご覧ください。 順に、【第二主題】
【序奏部】です。

 例の “十六分音符” は無視し、それ以外に、何か類似性を
発見してください!

 



 如何でしたか? 譜面が小さすぎますよね…。 画面でご覧に
なるのと、大きい楽譜を手元で見るのとは、まったく違います。
無理なお願いなのは、よく解っています。 ごめんなさい…。

 そこで、この先には “ヒントの譜例” を用意しました。 これで
すぐお解りになるかもしれません…。 でも、「どうしても自分で!」
…というかたは、もう少し頑張ってください。

 



 では、ヒントの譜例です。 共にスコアですが、順に【第二主題】、
【序奏部】です。 “塗り絵” の音符を見比べながら、何かを発見
してください。


 色が薄い上に、紛らわしくて申しわけありません。 以下
の要領で色塗りをしてあります。

 上昇6度。 下降音階。 半音が連続する下降音階
下降5度、あるいは上昇4 



 これでも見にくいですよね? ごめんなさい。

 本来なら “差し” で、楽譜をご覧いただき、
ご一緒に語り合いたいところなのですが…。


 おっと、私は今 “一人酒” を嗜みながら、この記事
書いています。

 今回はこれで失礼。 さて、もう少し行くとするか…。

 




     [音源サイト    [音源サイト



後の祭り

2014-09-22 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/22 私の音楽仲間 (617) ~ 私の室内楽仲間たち (590)



                後の祭り




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』

              室内楽で Viola



 私は今、反省しきりです。 違う楽器とはいえ、この曲を前回
弾いたときの記憶が無いのですから…。

 

 曲はメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲 変ホ長調 (第1番
Op.12) です。 今回は Viola ですが、Vn.Ⅰのパートを確かに
受け持ったことがある。 もちろん楽譜には自分の書き込み
も残っているし、そのときの記事まで書いています。

 記録を見ると、まだ二年も経っていない。 一体どういう心理
状態で、この曲を弾いたのでしょうか…?


 それに比べて、今回の印象は鮮烈でした。 Vn.Ⅰを担当した
Oさんが、みごとなリードぶりを発揮してくれたからです。 そして
何よりも、曲に対する愛情が満ち溢れた演奏でした。

 「そんなときに居合わせることが出来て、本当によかった…。」
自分の偽らざる感想です。


 それに引き換え、同じパートを弾いたはずなのに、自分には
記憶さえ無い。 もっとも中核を成す、重要なパートだというのに。
少なくとも達成感や満足感などは、おそらく無かったからでしょう。

 要するに、作品に対する思い入れが足りなかったということ。
これでは、一緒に付き合ってくれた仲間に喜んでもらえたはず
がない…。 そのときのメンバー表を見ながら、今申しわけない
思いで一杯です。

 


 

 演奏例の音源〕は、いきなり ff で始まります。 音量が大きい
のでご注意ください。 全曲の終わりの “3分間” です。

 〔譜例〕は【50秒】以後の部分ですが、やはり “寂しい歌” が
聞こえてきます。 まず断片的に Vn.Ⅰから。


 そして今回も、これを Vn.Ⅱが歌い始めます。 しかし前回
感じられたような、悲劇的な切迫感はありません。

           関連記事 ロマン派のタネ証し

 

 

 

 それ以後は、第Ⅰ楽章の終わりの部分の音楽が、ほぼ
そのままの形で聞えてきます。 やがて Vn.Ⅰ静かに
変ホ長調の主題を歌い出す。 違うのは、クライマクスの
部分が2小節ほど長いだけで、あとは同じです。


 しかしこの第Ⅳ楽章では、闘争や葛藤を思わせるト短調や
ハ短調が荒れ狂っていました。 同じ変ホ長調でも、ここでは
聴く者に深い平安を感じさせながら、全曲は終わります。

 あの絶えず絡みついてくる、ヘ短調の “寂しい歌” からも、
は解放されたのです。



 蛇足ですが、同じ〔譜例〕の二段目をご覧ください。 “sfp” が
2回ありますが、二つ目の “p” は、私が赤で消してありますね。
これ、手持ちのスコアには書いてないのです。

 ただしそれに気付いたのは、この記事を書いている最中の
こと。 つまり、〔音源〕の演奏は sfp” のままなのです。

 もしスコアのほうが正しいとすれば、どう変わってくるのか?




 
 最初は sfp” なので、すぐに音量を落とします。 でも
二度目は、【ある程度音量を保つ】…必要がある。

 三段目の “dim.” に入るまでは。 そのほうが緊張感
持続できることになります。 それが作曲者の望んだ
音楽なのかもしれません。


 もっと早く気付いていれば、Viola を持ちながら、ちょっと
した演出ぐらいは出来たはずです。 そうなれば、少しは
仲間に喜んでもらえたかもしれないのに…。

 またいつか、この曲に触れるチャンスがあるとは限りま
せん。 Vn. にせよ、Viola にせよ。
 

 


               音源ページ




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ロマン派のタネ証し

2014-09-21 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/21 私の音楽仲間 (616) ~ 私の室内楽仲間たち (589)



             ロマン派のタネ証し




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』

              室内楽で Viola



 

 このメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲 変ホ長調 (第1番
Op.12) の準備に取り掛かっていたときのことです。

 今回私が担当するのは Viola ですが、個人練習に先立ち、
パート譜を点検していると、あるページが私の目を惹きました。


 下の〔譜例〕をご覧ください。 「おや? 前回の記事の〔譜例〕
に似ているな…。」 そうお感じになるかもしれません。

 30分を超える曲ですから、似たような譜面ヅラがあちこちに
現われても不思議ではありませんが。

 

 同じような形が第Ⅰ楽章で2回、第Ⅳ楽章でも2回あります。
そのうちの第一回目は、すでにご覧いただきました。 

           関連記事 聴覚より嗅覚?

 

 〔譜例〕は第Ⅳ楽章の一部ですが、問題は強弱記号です。



 sf が多いですね。 さらに、せっかく cresc. しながら、「すぐ
pp に落とせ!」…と解釈できる箇所が、少なくとも2つあります。

 最後は sf の連続で、今度は ff まで! これ、尋常ではない。


 さて、いざ4人で音を出してみたら、こんな音楽でした。

 演奏例の音源]がスタートするのは、下の同じ〔譜例〕
の4小節前から。 時間にして8秒あります。

 以後しばらくは、Vn.Ⅱの寂しい歌が pp で続く。 この
音楽は、先ほどの関連記事でも聞かれました。



 ところが、それまで沈黙していた Vn.Ⅰが 12/8拍子で
加わる (37秒のところ) と、場面は急展開します。 他の3人
より目立つ、“p 1つ” で弾き始めています。

 Viola パートは、Vn.Ⅰを支えつつ、劇的緊張を盛り上げる
黒幕でした。


 下の〔譜例〕は、その部分のスコア。 一段目までが
寂しい歌” で、二段目から Vn.Ⅰが入ります。



 さて、ここでは同じ音程モティーフが使われていますね。

 Vn.Ⅰは “寂しい歌” と同じ高さで入ってきて、次の小節
では5度高くなる。 しかし〔譜例〕の最後では、リズムまで
同じになります。


 これ、楽章の第一主題が再現した瞬間なのです。 そんな
大事な箇所で明らかになった、テーマ同士の関連…。

 この主題と “寂しい歌” は、本質的に同じものだったのかも
しれません。


 Haydn、Mozart、Beethoven…。 先輩作曲家たちの
“タネ証し” は、後輩の Mendelssohn にも見られます。

 劇的に、激しく訴えかけながら。



 さて、同じ演奏例の音源]には、後半で次のような箇所が
聞かれます。 1分36秒】以後です。)

 やはり同じ形が、3回も連続して見られますね。 音程も同じ。
この Vn.Ⅱは、あの “寂しく歌っていた” 楽器です。

                ↓     ↓     ↓


 この〔譜例〕から、ある別の弦楽四重奏曲を連想しませんか?

 そう、あの『死と乙女』です。

 

             (調号は "♭が一つ" です。)

           関連記事 三連符の見え隠れ など

 

 Mendelssohn が、先輩 Schubert の名作を知らぬわけが
ない。 してみると、この “寂しい歌” には死のイメージが?



 さて、このモティーフ、第Ⅰ、第Ⅳ楽章以外にも使われて
いるようです。

 それについては、また別の機会に…。

 

 


               音源ページ




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皆伝か、返納か

2014-09-19 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/19 私の音楽仲間 (615) ~ 私の室内楽仲間たち (588)



              皆伝か、返納か




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』

              室内楽で Viola



 演奏例の音源]でいきなり聞こえてくるのは、忙しく
走り回る Viola とチェロです。 いや、むしろ “跳ね
回っている” と言うべきでしょう。

 [音源]が始まるのは、[譜例]二段目の最後です。
例によって、Viola 用のアルト譜表ですよ?


  十六分音符は、10小節も続いていますね。 一方、前後の
“長い音符” の箇所で跳ね回っているのは、Violin たちです。



 やがて音楽は、ト長調からト短調へ。 テンポも、最初の
Allegretto に戻ります。


 メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲 変ホ長調 (第1番
Op.12) から、第Ⅱ楽章 CANZONETTA の後半でした。

 これを訳すと “小歌”、いや “小唄”。 日本語の小唄
とはだいぶ印象が異なりますが、“構えた歌” ではなく、
気楽な “唄” のことです。



 …とはいうものの、いざ演奏するとなると “落し穴” だらけ。
[譜例]には何種類もの色が、防止策として塗られています。


 まず、。 これだけは、間違えると様になりません。
「初歩的だ!」…と叱られそうですが…。

 次は、繰り返し記号が書かれた場所。 中でも、咄嗟に
見つけにくいのは、どこへ戻るか」…です。



 そしてテンポ。 見にくいのですが、一段目には più mosso”、
終わりのほうには “poco rit.” があります。 

 最後に “pizz.” と “arco”。 「指でハジけ」と、「で弾け」…
という指示で、頻繁に顔を出すと紛らわしいものです。


 その他、色はありませんが、弓の返しのための “ダウン” と
“アップ” 記号。 それに、左手の指番号です。


 「なにも、一々そこまで書かなくたって!」

 弦楽器をお弾きのかたには、そう言われそうですね。
私も、時間の無いときには書きませんが。


 

 確かに、それほど技術的に難しい楽章ではない。 この
程度なら、初見でも完璧に弾けなければいけないかも…。
技術的選択肢なら、幾らでも頭に浮かんできますし。

 しかし中には、そうでない選択肢もあります。 いわば、
音楽的選択肢のことです。


 [譜例]の一番最後の “pp” の部分をご覧ください。 ” と
書いてありますね。 これは指番号で、ゼロ、つまり開放弦
使うことを意味します。

 選択肢は “0” と “2” しかありません。 “0” だと音が
大きくなりやすいので、普通は “2” の指を使うでしょう。


 しかし今回は、音程も音質クリアーな pp が欲しかった
ので、敢えて “0” を用いました。

 もちろん、pp を実現した上での目標です。

 


 こういう選択は、いざ楽器を持って迷っていると、もっと重要
が、おろそかなりやすい。

 演奏の場では、仲間の音や仕草に神経を集中する必要が
あります。 そのための、“事前のデスク ワーク” です。


 

 このような “音楽的な内容” だけではない。 上に書いたこと
すべて、【演奏の場で余計な神経を遣わずに済ませたい】…
がためのものです。

 たとえて言えば、自動車の運転に似ている。 周囲で突発的に
何が起こっても対処できるように、神経を集中していたい。 その
ためには、判断に迷う問題を自身が抱えていては危険なのです。


 いわば、「体力や反射神経に自信が無くなってきた…。」

 家族に “無謀運転” を指摘されてきた私も、もうトシ。 車
も楽器も、そろそろ自己吟味をしなくてはいけないようです。



 さて、“クリアーpp” というと、一見矛盾しているようです
ね…? でも、この表現、弦楽器に限らず、レッスンの場では
頻繁に聞かれる言葉ではないでしょうか。


 “クリアーな pp” が困難なのは、十六分音符が連続する、
あの10小節間も同じです。 “音色” は pp でありながら、
しっかり叩く必要がある

 この “叩き”。 私が Viola で付き合い始めてから半世紀
近くなりますが、簡単ではない。 “クリアー” か、“pp” か、
どちらかだけになりやすいのです。 低弦は特に難しい…。


 では、どうすればいいのか?

 やっと気が付いたのは、“発音の効率性” を、日頃から
常に意識していなければ駄目だということ。 “pp の叩き”
…に限ったことではありませんでした。


 ここまで半世紀かかった。 「では、あと50年。」
…それは、幾らなんでも無理です。

 せめて一日が一年分に値するように、“からだに
優しい弾き方” を模索し続ける以外にありません。


 “免許皆伝” と “免許返納” では、エラい違いがあります。

 

 

 

               音源ページ




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