MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

感じる殺気

2014-10-12 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/12 私の音楽仲間 (623) ~ 私の室内楽仲間たち (596)



               感じる殺気




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                  割り勘ドンブリ
                 不自由な輩め…
                 ドイツもこいつも…
                  最後の作品
                  酔いに任せて
              知識も無しに作れるか!
                お伴は忍者でござる
                  ふざけた曲さ
                 深刻めいた遊び
                   感じる殺気
                 逆立ちで走るのだ



 Beethoven の弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品130
その第Ⅴ楽章は、“Cavatina” と記されています。

 演奏例の音源]は、その始まりの部分です。


 カヴァティーナ。 手元の辞書で “cavatina” を引くと、
【オペラの主役を性格づける抒情的なアリア。 器楽曲
では、抒情的な旋律の緩やかな曲。】…とある。

 解説書によっては、【アリアとレチタティーヴォ (語り)
の中間の性格の曲。】…と記すものもあります。


 いずれにせよ、歌であることに変わりはない。 [音源]
1分半足らずのものですが、器楽作曲家 Beethoven
の抒情性が窺えます。

 でも、“たまに” 美しいメロディーを作ると、「歌の苦手
な彼には珍しく…」などと書かれてしまいます。 決して
苦手” なのではなく、求める “美” の種類が違うから
だと思うのですが…。


 そこで、以下の楽譜を見てみました。

 “歌うプリマ ドンナ” だけ主役ではない
ようです。 気になる点を挙げてみると…。


 (1) チェロには半音の進行が目立ちます。
  1小節目と3小節目に。

 (2) 次の、“音階で動く音符” については、
  のちほど触れます。

 (3) 幅広い6度の動き。 まず Vn.Ⅰに。
  そして二度目はチェロにも。

                              


 上の (1) と (3) は、クレシェンドなど (<>) を伴っています。
作曲者が強調したい動きなのでしょう。

 この二つは、第Ⅰ楽章の冒頭で現われた、大事な音程でした。
半音の連続” と “6度の跳躍” です。

         


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 この第Ⅰ楽章では、序奏が終わって主部に入ると、
Vn.Ⅰが忙しく動き始めます。 十六分音符です。


                

 これは、主題そのものではありませんが、まるで
影のように、主題に付添っていました。

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 この音符に、4つずつ色を塗れば…。

 先ほどの “音階で動く音符” と同じものが
出来ます。


 抒情的なカヴァティーナにまで、構成美を持ちこんだ
Beethoven。 もちろん、最初からそのつもりだった
に違いありません。


 これ、一生懸命に歌おうとするんですが、どうも乗り
きれないんです。 背後に、作曲者の視線を感じて…。

 作曲者の “意志の力” は、演奏の場にまで!
 


 そして、演奏する側にも強固な意志が
必要なのが、彼の曲でしょう。

 それは、この楽章でも同じでした。

 

 


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