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岩波明『他人を非難ばかりしている人たち』幻冬舎新書

2015-10-03 16:18:13 | 
精神科医である著者が、インターネットやマスコミで展開されるバッシングを論じている。
2004年にイラクで人質にとられ、その後解放された3人の日本人が猛烈なバッシングを受けた例を皮切りとして、ネット上で集中砲火・炎上したケースを取り上げている。
こうした社会的ないじめ現象は現代日本社会の特徴が反映されていると分析している。伝統社会が廃れ、かといって西欧やアメリカのキリスト教のような精神的な柱もなく、孤独だが同質的な日本社会のなかに、少し軌道を外れた人がいると猛烈な攻撃の的になるのである。
もう少し科学的な議論を期待していたのだが、ほとんど感覚的な議論に終始しているところは残念だ。バッシングを苦々しく思う著者の気持ちには同感なのだが、その問題についての書には、その気持ちを裏付ける強力な論拠や理論を期待してしまう。
最後の方でようやくデータが出てくる。日本の若者は他の先進国に比較して孤独感が強く、自信がなく、将来に対して悲観的だという調査結果を紹介している。この部分を読んでいていささか悲しくなった。私自身がまさにそういう若者だったからだ。もし、あれほど孤独感を持たず、もう少し自信を持ち、将来に対して希望を持っていたらどうなっていたか、と思ってしまう。
さらにそのあとに続く皇太子妃の雅子様に関する記述がたいへん良かった。精神科医として雅子様のご病状、回復へ向けた提言までなされている。皇太子が訴えたように、ご病気になられた原因は宮内庁とそこからのリーク情報に乗って雅子様バッシングに明け暮れているマスコミによる「人格の否定」にあったのだろう。本書を読んで雅子様が何よりも人として幸せになっていただきたいと思った。

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