参院選を振り返る 森氏 新潟日報
共闘戦略奏功 組織力破る
改選議席が2から1に減った参院選新潟選挙区は、野党統一候補で無所属元職の森裕子氏(60)=民進党、共産党、社民党、生活の党推薦=が56万429票を獲得し、自民党現職の中原八一氏(57)=公明党推薦=をわずか2279票差で振り切って幕を閉じた。中原氏の55万8150票は、落選した全国の選挙区候補で最も多い得票で、激戦ぶりを物語る。市民団体を交えた共闘態勢を組んだ野党が、組織力の与党を上回った選挙戦。明暗を分けた戦いを振り返る。
参院選新潟選挙区の改選数1への削減は、当選ラインの大幅な上昇に直結した。野党各党の候補が前回選で個別に得たのは最高でも約20万票。今回森裕子氏が獲得した56万票は広範な野党共闘に、投票率向上で急増した無党派層の票をうまく取り込んだ結果だった。
共闘のポイントとなったのが、長年独自候補の擁立を続けてきた共産党との連携だ。今回の比例代表でも県内で8万9千票を獲得しており、底固い組織票がある。民進党などに基本政策の違いから強いアレルギーがあったが、安保法の国会審議時に張った共同戦線を底流に、「安保法廃止」を旗印にした初めての枠組みを実現させた。
共産党はポスター張りや電話作戦などで党組織をフル稼働。早い時期から安保法反対による連携を提唱していた中央委員会の指示もあり、堅固な固定票はほぼ100%、森氏にまとめた。陣営幹部の1人は「組織票という意味では、中原氏を推薦した公明党・創価学会票とほぼ相殺させることができた」と効果を認める。
旧民主党を離党した森氏に対し野党第1党の民進党内には根強い反発があったが、事実上の一騎打ちの構図の中で徐々に浸透。地区によって濃淡はあったものの、新潟日報の出口調査では支持層の実に95・6%を固めた。
最終盤は組織力に勝る自民党の猛攻に対し、街頭演説をそれまでの1日10回程度から30~40回に増やしてゲリラ的に開き、有権者と直接触れあう機会を増やした。自民支持層の1割、公明支持層の2割を取り込んだ。
これらに加えて機能したのが、市民グループの草の根的な活動だ。県内のグループがまとまった「市民連合@新潟」は、安保法をはじめ安倍政権への反発は無党派層にも広がっているとみて、インターネットなどを駆使して「まずは投票に行ってほしい」との呼び掛けを続けた。
投票率は3・95ポイント上昇し、59・77%。出口調査では無党派層の7割近くを取り込んだ。もくろみ通りの結果となった。県内37市区町村別では、上越市で8千票差を付けたほか、長岡、新発田といった主要市を制し、都市部で強さを見せつけた。
森氏、野合でない証明を
越智敏夫新潟国際情報大教授に聞く
10日投開票された参院選新潟選挙区で野党統一候補の無所属元職森裕子氏(60)が自民党現職の中原八一氏(57)らを破った結果が持つ意味を新潟国際情報大の越智敏夫教授に聞いた。
自民党の選挙とは思えない負け方が印象的だった。これまでの国政選挙では自民党と公明党が組織力で後半に追い上げて勝ってきた。今回は他の政党支持層への食い込みが弱く、逃げ切られた。安倍晋三首相が何度も応援に入り、党県連も動いたと思うが、勝てなかった。地方組織の変質が起きているのではないか。
またアベノミクスへの支持でもっと票を取りたかったと思うが、やはり効果が実感として伝わっていないのだろう。
今回の結果で新潟県民は日本に野党が必要だという選択をしたことになる。過去4年は与野党の議席差があまりにも大きく、実質的に野党が存在しなかった。戦後の日本で初めてのことだ。そんな政治でいいのかが問われていた。
野党共闘は有権者に有効な選択肢を示すために絶対的に必要だ。しかし共闘が単なる野合でないことはまだ示されていない。それはなぜ森氏が統一候補なのかが有権者に示されていないことに象徴されている。そこに至る議論を公開すればよかった。
また森氏が共闘を理由に柏崎刈羽原発をどうするのかを公にしていないのは、今後6年間権力を維持する人間としてあまりにも無責任だ。
森氏は野合ではなかったことを今後、少数野党としての行動で示さなければならない。共産党と民進党の意見が割れたときは、両方から推薦されたことを踏まえた行動を取らなくてはいけない。少なくとも説明が要る。その責任はすごく大きい。
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