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[教育] 学べることは幸せなこと、日米の比較(日本の場合)

2013-01-22 | Weblog

 桃山学院大学(大阪府和泉市まなび野)で、98歳になっても学び続けている学生がいる。

 社会人聴講生として、5年前から国際政治史などを受講する村川信勝さん(大阪市東成区)だ。関東大震災や太平洋戦争をくぐり抜け、戦後は工場などで働きづめだったという村川さんは、「若い頃に学べなかった分、思い切り勉強したい」と、教室で背筋をピンと伸ばし、若者を圧倒する熱心さで授業に耳を傾けている。

 24日午後、国際政治史の授業。教壇の真正面でノートを広げ、持参した座布団をいすに敷いて腰掛ける村川さんがいた。授業が終わるまでの90分間、姿勢を崩さず担当教員を見つめ続ける。この日は朝鮮半島を巡る国際情勢に聞き入った。

 東京・浅草出身。小学4年の時に関東大震災に遭い、自宅が焼けた。家は裕福ではなく、高校や大学に通う余裕はなかったという。太平洋戦争では、衛生兵として旧ビルマ戦線に投入され、多くの仲間が砲撃を受けて命を落とす瞬間を目撃した。

 戦後は大阪で縫製工場を営むなど精力的に仕事をこなし、85歳まで働いた。妻はすでに亡くなり、現在は自宅に一人で暮らす。

 仕事をやり遂げた充実感の一方で、自身の戦争体験を振り返り、「なぜあの戦争は起きたのか。今からでも学問をやりたい」との思いが募った。そんな時、桃山学院大が聴講生を募集していると知り、2007年秋から受講を開始。現在は国際政治史と国際法の授業を選び、週2回、自宅から電車とバスを乗り継いで2時間かけてキャンパスに足を運ぶ。

 若者に交じって、真摯に授業を受ける村川さんの姿は、大学内でも有名だ。大正、昭和、平成の時代を知る生き証人として、戦争体験などを他の学生の前で話すこともある。「イギリス人の捕虜と話したら、残してきた家族を思う同じ人間だった。鬼畜米英って教えられていたのに、違うじゃないかってね」。知らないことは恐ろしいという思いを、率直に明かした。

 村川さん自身は、講義を通じて各国の利害がぶつかる戦争の実態や旧日本軍の無謀さが改めて分かってきたという。「でもね、どんな理由でも戦争はいけない。時間をかけても話し合いで解決するべきだ」と語る。

 そんな村川さんが今、気になるのは、机を並べる若い学生が授業で質問せず、おとなしいこと。「卒業したら嫌でも働かなければならない。学べることは幸せ。私もまだまだ視野を広げたいし、死ぬまで大学に通うつもりです」。若い世代への励ましを込めて、こう言い切った。

(YOMIURI)

授業に聞き入る村川さん


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