日本の右傾化は衰退の兆候だ:
以前、このコラムで、安倍晋三と石原慎太郎の名前をあげて、外国メディアが日本の右傾化を懸念していることを紹介した。
ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、CNN、ブルームバーグ、英エコノミスト誌、ルモンド……とキリがないが、海外の主要メディアは一斉に日本の右傾化を批判している。
つい最近は「ソフトパワー」で有名なハーバード大のジョセフ・ナイ教授が、「日本のナショナリズムは衰退の兆候だ」という一文を、英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿している。ナイ教授は、世論調査によると安倍首相が誕生することになるが、日本の右傾化は衰退を意味するという。日本が衰退し内向きになることで、アジアが不安定化するのを懸念しているのだ。
アメリガでが、日本の右傾化に不安を強めていることに注目した方がいい。
ところが、日本のメディアはどうだろうか。正面からの右傾化批判は、ほとんど見られない。かつてなら朝日、毎日は、強く批判したはずだ。日本のメディアも衰退の兆候が表れているのではないか。
それは、政治部の記者が政策をきちんと勉強せず、御用達の言うがままで政局報道に明け暮れているからだろう。記者たちはどんな政策を選択したらいいのか、国民に問いかけることが出来なくなっており、結局、日本の右傾化を招いているのだ。
大手メディアは、原発報道ですでに国民から見放されつつある。そのうえ、小泉劇場政治に乗った反省もなく、暴走老人の石原慎太郎やテレビ瞬間芸の橋下徹を無批判に取り上げ、政策がコロコロ変わってもきちんと批判しないで追いかける。
安倍晋三は「国防軍だ」「改憲だ」「日銀法の改正だ」と、戦時中のような政策を次々に打ち上げているが、大手メディアは、まさか、こうした政策によって日本が良くなると信じているわけじゃないだろう。なぜ正面から批判しないのか。
その一方で、「未来の党」については政策の中身ではなく、小沢色が強いウンヌンと、自民党とまったく同じトーンで批判しているのだから支離滅裂だ。「卒原発」は朝日、毎日の主張と変わらないはずなのに。これでは日本の衰退は止まらない。
(文)慶大教授 金子勝、日刊ゲンダイ12/4
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