安倍新政権はデフレ脱却を最優先課題に(英フィナンシャル・タイムズ社説 12/18)
衆院選で自民党が圧勝し、同党の安倍晋三総裁が首相に就任する。5年前、在任1年で首相を突然辞任した同氏にリーダーシップを発揮するチャンスが再び与えられる。前回は政権が短命だったこともあり、世界第3位の経済大国のトップに返り咲くだけの実績を残せなかった。安倍氏はこの点に関して、今回の自民圧勝は同党の政策が支持されたというより民主党が拒絶された点が大きいと素直に認めている。
■ある程度のインフレなしに成長望めず
前政権では、安倍氏は「美しい国」という自らのビジョンにとらわれ、保守色の強い歴史認識で政策の行き詰まりを招いた。防衛庁の省への格上げや平和憲法の改正にも着手し、支持率は急低下した。
安倍氏が今回勝利を収めた背景には、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る領土問題で中国との緊張が高まっていることがある。だが、同氏が直面している最も大きな課題は経済問題だ。この分野では、日銀による2~3%の物価目標など優れた政策を提案している。安倍氏はこの政策を推し進め、成長回復とデフレ脱却を強力に促進できる人材を日銀総裁に選ぶべきだ。
言うまでもなく、インフレは万能な解決策ではない。ただ、ある程度のインフレなしに成長は望めない。現在の歳出規模を維持するには、いずれ増税する必要がある。既に成立した法案では、消費税率の10%への引き上げは経済成長を前提としており、その条件が整いつつある。通常、歳出拡大を渋る財務省も、増税が実現できるなら前向きにとらえるだろう。13年には経済は上向き、デフレ脱却の兆しが見える可能性もある。
■「美しい国づくり」は後回しに
ただ、デフレの悪循環を断ち切るにはこれでも十分とはいえない。エネルギーコストを引き下げ、新分野での投資や雇用を開拓するためには一段の規制緩和が欠かせない。インフレ目標の達成はいばらの道だ。物価が上がり始めれば、預金資産はむしばまれ、国債金利は上昇する。インフレ期待に伴い賃金が上がらなければ、生活水準は低下する。それでもほかに有効な選択肢はない。安倍氏は「美しい国づくり」は後回しにして、このチャンスをつかむために全力を尽くすべきだ。
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