韓国初の女性大統領誕生へ、朴槿恵氏が勝利宣言(CNN)
ソウル(CNN) 19日に投票が行われた韓国の大統領選は、与党セヌリ党の朴槿恵(パククネ)候補(60)が同日勝利を宣言した。韓国初の女性大統領が誕生する。
朴氏はソウル中心部の光化門広場に集まった支持者らを前に、「私は約束を守る大統領になる」「危機を乗り越え経済を復興させたいと願う国民の勝利だ。私を信じてくれた国民の意思は決して忘れない」「この国の幸福の時代をスタートさせる」と宣言した。李明博(イミョンバク)大統領も朴氏の勝利に祝意を表した。
一方、YTNテレビによると、野党・民主統合党の文在寅(ムンジェイン)候補(59)は敗北を認めた。
選挙管理委員会はまだ最終結果を発表していないが、開票率約94%の時点で朴氏の得票率は51.66%、文氏は47.91%となっている。韓国の大手放送局3社もすべて朴氏が当選確実と伝えた。
オバマ米大統領は19日、朴氏に祝辞を送り、「2国間および地域と世界の幅広い問題に関する協力関係のさらなる強化に向け、朴政権と緊密に連携していきたい」と表明。「米韓同盟はアジア太平洋の平和と安全の要であり、両国は経済、安全保障、人と人との深いつながりにおけるグローバルパートナーシップを共有する」と指摘した。
朴氏は1979年に暗殺された朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の娘。2013年に大統領に就任し、所得格差是正、若者の雇用、北朝鮮への対応といった課題に取り組む。
【社説】女性大統領朴槿恵…華麗な記録、重い荷物(中央日報 )
与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補が第18代大統領に選出された。女性大統領は、韓国はもちろん世界的にも華麗な記録だ。これまで女性大統領は主にブラジル、アルゼンチン、チリなどの南米諸国だった。米国では一度もない。欧州では英国のサッチャー元首相、ドイツのメルケル首相など首相はいるが大統領当選は首相より大変だ。北東アジアは男性優越主義が残っている儒教文化圏だ。この地域で女性大統領が登場したことはさらに歴史的な意味がある。朴槿恵は地域の政治・社会の雰囲気に影響を及ぼすだろう。
朴槿恵は父娘大統領という記録も達成した。インドのガンジー元首相やパキスタンのブット元首相は父娘首相だった。アルゼンチンには夫婦大統領、米国には父子大統領がいる。
個人的に朴槿恵当選は人間ドラマだ。彼女は母と父をともに銃弾で失った後、1979年に青瓦台(チョンワデ、大統領府)の外の広野に出てきた。18年間の隠遁を破り1997年に政界入りし、さまざまな曲折を体験した。2006年にはとても危険なテロに遭い、2007年には大統領候補を選ぶ党内選挙戦で惜敗した。政界入門から15年、父親の殺害から33年であらゆる逆境を乗り越え彼女は大統領になった。
朴槿恵当選で韓国政治は女性という最後の壁を越えた。過去の金泳三(キム・ヨンサム)は文民交替、金大中(キム・デジュン)は与野党と地域間の権力交替を達成した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)は3金時代を終わらせ世代交代を成し遂げた。朴槿恵は性別という最後の交替をやり遂げた。
だが、記録は未来を保障しはしない。記録は過去にすぎず、未来にはまた別の成果を出さなければならない。朴槿恵は内外で新たな環境と挑戦を迎えている。変化は経たが準備は微弱だ。この波の中で船長朴槿恵は試験に入っている。
分断67年で北朝鮮は最も危険な状況だ。金正恩(キム・ジョンウン)3代世襲政権は1年に2度も長距離ミサイルを発射し西側を威嚇している。核とミサイルというヌンチャクを振り回し瀬戸際戦術を強化するものだ。北朝鮮で急変事態でも起きればこれは韓国の国民に最も大きな影響を及ぼす危機になるだろう。朴槿恵は理念に割れた共同体を率いて共存と統一に向けた道を切り開かなければならない。
韓国に初の女性大統領 課題は?
12月20日 21時25分 NHK
19日に投票が行われた韓国の大統領選挙は、与党セヌリ党のパク・クネ氏が接戦を制して当選を果たしました。
来年2月25日に就任し次の5年間を担う新しい大統領、パク・クネ氏の当選はどんな意味を持つのか。
また、新大統領が直面する課題、そして日本との関係はどうなるのか。
取材に当たったソウル支局の矢野尚平記者が解説します。
初めてづくしの大統領誕生へ
パク・クネ氏の当選は、韓国の政治史での“初めて”が3つ重なりました。
1つ目の初めては「女性」です。
韓国建国以来11人目の大統領となるパク・クネ氏は、初めての女性大統領です。
日本やアメリカでまだ誕生していない女性リーダーが、儒教文化が残るとされる韓国で誕生するのは、韓国社会の変化を象徴していると言えます。
2つ目は「親子2代」です。
パク氏の父親は、1960年代から70年代にかけての経済成長「ハンガンの奇跡」を実現させたパク・チョンヒ元大統領です。
パク・クネ氏は「青瓦台」と呼ばれる大統領府で幼いころから父親が暗殺されるまでを過ごしており、来年、34年ぶりに青瓦台に戻ることになります。
そして、3つ目が「過半数」です。
韓国の大統領選挙は1987年から直接投票が行われていますが、過半数の票を獲得して当選した候補はいませんでした。
前回5年前、得票率で20ポイント以上の差をつけて対立候補をやぶった今のイ・ミョンバク大統領でも得票率は48.7%でした。
これに対して、今回のパク氏の得票率は51.6%で、初めて過半数の票を得て選ばれた大統領になります。
勝因は
今回の選挙の投票率は75.8%と、過去2回を大きく上回りました。
当初、投票率が上がれば若者層や無党派層の支持が多い野党のムン・ジェイン氏に有利になるとされていました。
しかし、この予想は外れました。
では、パク氏がこれだけ多くの支持を得た理由は何だったのでしょうか。
一番の勝因は、豊富な政治経験を前面に打ち出し、安定を望む保守層や50代以上の有権者から圧倒的な支持を集めたことが挙げられます。
パク氏は1998年から国会議員を15年務め、党の代表だったときには当時の小泉総理大臣と会談した経験もあります。
実績を強調し、国際的な経済危機を乗り切り、北朝鮮と向き合うためには「指導者として準備が整った大統領が必要だ」と訴え、安定を望む保守層の支持を固めました。
また、少子高齢化という韓国社会の変化もパク氏勝利の一因になったとみられています。
韓国では日本以上のスピードで少子高齢化が進んでいます。
前回5年前と今回の有権者を比較してみますと、20代と30代が42.3%から36.4%に減ったのに対し、50代以上は33.5%から40%に増加し、比率が逆転しました。
韓国のテレビ局3社が行った出口調査によりますと、50代の62.5%、60代以上の72.3%がパク氏に投票したということで、人口が増えた中高年から圧倒的な支持を得たことが分かります。
また、格差拡大を招いたとして批判が高まっている今のイ・ミョンバク政権に対し、同じ与党にもかかわらず一定の距離を置いたことも功を奏したほか、格差の是正や富の分配といった比較的中道的な政策により、一部の革新層にも支持を広げました。
経済の公約は実現できるのか
多くの国民の期待を背負って当選を決めたパク・クネ氏。
来年2月25日に就任しますが、その前途は明るいものばかりとは言えなさそうです。
国内の問題では、最大の争点となった格差の是正や雇用対策、少子高齢化の問題でまず実績を出せるかが問われます。
パク氏は選挙期間中の演説で、これらの課題に対する公約を繰り返し強調してきました。
「5歳児までの保育の無償化」「大学授業料の50%削減」「非正規労働者に対する雇用保険支援」「所得に応じた医療費の上限制度の導入」「年金支給額の倍増」などなど。
ただ、こうした数多くの政策の実現には当然のことながら巨額の財源が必要になってきます。
パク氏側は予算の無駄を削減することなどで財源は確保できるとしていますが、好調を維持してきた韓国の輸出もこのところ低迷気味。
来年には新規雇用の件数が減少するという見方も出ているなかで、高まっている国民の期待に応えるにはかなりの困難が予想されます。
対立続く北朝鮮との関係は
対外面でも課題は山積しています。
その1つが北朝鮮との関係です。
パク氏は南北関係の改善を目指すとしながらも、まずは北朝鮮の行動を検証し、信頼できるという判断ができて、初めて国民や国際社会の理解を得ながら次の段階に進むべきだと考えています。
こうしたパク氏に対して北朝鮮は強い非難を繰り返してきました。
自国に融和的な革新政権の誕生を期待していただけに「保守政権の継続」という結果に警戒感はぬぐえないことでしょう。
事実上のミサイル発射で自信を深め、3度目となる核実験の可能性まで取り沙汰される北朝鮮とどう向き合うのか、難しい対応を迫られると思います。
日本との関係改善は
一方、日本との関係はどうなるのでしょうか。
パク氏は日本を「重要な友好国」と位置づけ、日本とのEPA=経済連携協定の締結に意欲を見せています。
イ・ミョンバク大統領の竹島上陸などにより、日本との関係がぎくしゃくしたことについては、よくなかったという認識を持っており、関係改善を目指すものとみられます。
ただ、竹島やいわゆる従軍慰安婦の問題などでは、厳しい姿勢を示しています。
パク氏は20日の会見でも「正しい歴史認識を土台に和解と協力が広がるよう努力する」と述べています。
この問題に関しては、韓国では保守・革新を問わず譲る部分はなく、日本側が態度を改め前向きな対応をとるべきだと考えています。
今月26日にも新政権を発足させる自民党の安倍総裁の外交姿勢について、韓国は強い警戒感を持っています。
パク氏としては、日本の新政権の動きと韓国国内の世論を見極めながら日本との関係改善を模索するものとみられます。
パク氏は来週以降、引き継ぎ委員会を発足させ、さまざまな課題について、みずからのブレーンなどと協議を始めることになります。
韓国のメディアは「パク氏が置かれている内外の環境は決して平たんではない」と伝えています。
世界で指導者の交代が相次いだ2012年、その締めくくりとなった韓国の大統領選挙。
激動が予想される次の5年間をパク・クネ氏がどう導くのか、深く取材していこうと思います。
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