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私がみた日本、「難しい話」避けないで

2013-01-22 | Weblog

  

先日、私は小松空港で東京への便を待ちながら、日本やフランスの新聞を読んでいました。フランスの政治に幻滅を感じながら、日本のニュースに目を移すと……こちらもかなりの混迷状態。溜息をついていると、ある知人女性に声をかけられました。

 東京の女性実業家です。美しくエレガントで世界を駆け回る知的なキャリアウーマン。そんな彼女だから、読んでいた記事に触発されて、フランスの大統領選挙のこと、日本で始まる選挙のこと、さらには経済や環境問題などについての話題を持ち出したのです。ところが、彼女の笑顔のリアクションは……。

 「わたし、政治や社会のこととか、難しい話は頭が痛くなるんですぅ。出来るだけ、考えないようにしているのですよ~」

 私は慌てて、お天気や金沢のカニの話をして、彼女はマニキュアなど美容の話。

 なんて残念なこと……私は心の中でつぶやいていました。立派な大人で、世界を駆け巡り、ビジネスの才もある、そんな立場だからこそ私たちの社会や日本の未来を考えてほしいのに。

 私にとって、そうした関心は避けて通れないものです。特に、経済危機、子どもや女性が犠牲になる中東紛争、失業や自殺の増加……そんな「今」だからこそ。

 でも、世界中の選挙の結果を見ていると、デモクラシーというシステム自体にも困惑を覚えます。アメリカではオバマ、フランスではオランドが大統領に選ばれましたが、接戦の結果、完全に二分されてしまった国をどのようにして運営していけるのでしょうか?

 敵対陣営は新大統領の決断にはノーばかりで、次期の選挙に期待することでしょう。国内での権力の奪い合いによって、民主国家が今やマヒ状態です。

 言いにくいことですが、フランスの230年、アメリカの150年、日本の60年……民主主義の歴史はネガティブな到達点にたどりついてしまったのでは?

 さらにポリティカル・コレクトネス(政治的に正しいこと)の波及で、誰もはっきりした言葉を話せなくなり、フランスでも日本でも、わかりやすい話の極右的政治家に人気が集まります。

 話は戻りますが、「難しい話はイヤ」という空港で出会った女性の肌つやはよくて、シワもなし。美しさの秘訣はそれなのでしょうか?

 

(文)フランソワーズ・モレシャンFrançoise Moréchand

1936年3月29日生。外国人タレントの走りとされる。現在、エッセイスト。ユネスコ日本協会スペシャルアドバイザー。父は、亡命ポーランド人技師、母は、フランス人。ナチスのパリ占領からトゥールーズに疎開。パリ解放直前にパリに戻る。 中国語かロシア語の通訳を目指したが、敗戦国・日本の将来性に賭けソルボンヌ大学日本語学科卒業後の1958年に来日。自宅でフランス語教室を開きながら、JALや外務省でフランス語を教える。 その後、NHKフランス語会話で講師を務め人気を集め、テレビ朝日の「フォックス名画座」など、多数の番組に出演。1964年に一旦フランスに帰国。クリスチャン・ディオール、レブロンを経て1974年にシャネル美容部長として再来日。2004年、母国フランスの最高勲章である、レジオンドヌール勲章を授与された。2009年には、国家功労勲章を授与された。今から37年ほど前、ギイ・モレシャン(社会学者)と仏で離婚。娘と共に再来日し、現在の10歳年下の夫、永瀧達治フランス映画評論家、音楽評論家)と再婚。娘のアガタ・モレシャンもフランス語会話の講師を務めた。


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