チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

石井桃子の随筆

2014年07月12日 05時46分32秒 | 

曇、29度、92%

 日本に帰る前になると、一応、新刊のチェックをします。ところがここ数年、あまり興味のある本に出会えません。日本から帰る時にほとんど本を持ち帰らなくなりました。日本人の作家で、新刊を待ちわびるような人がいなくなったのです。先月の帰国前のメモに書いた本の数は、4冊。その中の一冊が、「ノンちゃん雲にに乗る」を書いた石井桃子の随筆「みがけば光る」でした。

 石井桃子の名は、「ノンちゃん雲に乗る」より私には「くまのプーさん」の翻訳者としての方が馴染み深く思います。 いったいお幾つで、どんな方なのか、一向に興味がなかった私は知りません。今回初めて、すでに亡くなった方だと知りました。

 本屋の本棚には、「みがけば光る」以外に3冊、全部で4冊の石井桃子の随筆が並んでいました。中をパラパラとめくって、内容の気に入った3冊を求めました。「新しいおとな」「家と庭と犬とねこ」

 ピンクにブルーに黄緑、買わなかったもう一冊は確か黄色でした。遠くからもこの表紙の色がきれいに見えますが、この本たち、なかなか憎い装幀です。それぞれ違った模様が表紙には描かれています。中を開けると、印字の色がそれぞれ違います。「家と庭と犬とねこ」では、 深いブルーの印字です、そして、しおりも同じブルー。紙の本の楽しさを存分に味わうことが出来る本です。

 どの本も、1950年代から1960年代にかけての短編をまとめたものです。昨今の作家の小説や随筆とは趣が違います。石井桃子の性格もあるのでしょうが、のんびりと流れる随筆です。コンピューターも携帯電話もない時代、テレビがやっと普及しはじめた頃、石井桃子ならずとも、ゆったりと豊かな空気が流れていた頃の文章です。

 流石に子供の作家だけあって、難しい表現を極力避けています。しかも、かな文字の多いこと。分かり易い言葉で書くことがいかに難しいか、そして、かなばかりの文章はややもすると読み辛いものですが、口ずさむようにに読み始めると、文章が流れはじめます。久しぶりにいい日本語に出会えました。

 「たのしいかわべ」や「くまのぷーさん」は私の本です。ともに岩波の愛蔵版で初版本、私が6、7歳の時の本です。この本を一人で読んだのは、小学の5年のとき、何分にも文字が読めるようになったのが遅かった私です。「ノンちゃん雲に乗る」も実家の整理の時に出て来たのですが、この本、小さい時から好きではありませんでした。始末したと思います。きれいなきれいな空色の表紙と箱の色が記憶にあります。

 「くまのプーさん」の本を見ながら思います。最近の子供の本は、みんな軽装版になってしまいました。息子が小さい頃はそれでもまだ、きちんと厚い本が出ていたのに、と一番大事な時期の子供たちの本がないがしろにされているような寂しさがあります。

 日本の印刷、製本技術は世界でも屈指だそうです。内容と装幀がひとつになったような本は、本好きに取って最高の楽しみです。


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