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3日前、急に右上の一番奥の歯がぐらっと動いたように思いました。舌先でちょっと突いてやると、やはり動きます。自分の口を大きく開けて、口の中なんて見る勇気もありません。怪我をしても、傷口は見ないで、バンドエイドで隠してしまいます。何ともない時はちっとも気付かない歯です。痛みもありません。まだ30代の初めに、虫歯の治療をしてもらった親知らずだと思います。そのとき先生が「抜きましょう。」と仰るのを残してもらいました。神経も取ってもらったはずです。痛みがないので、普通にご飯を食べていると、グニュッと大きく動きます。次の日も、気が付けば舌先で、奥歯をチョコチョコ突いています。いよいよ、予約を取って歯医者に行こうと決めました。
近くの歯医者さんです。香港人の私より少し若い女医さんです。もう永いお付き合いですから、気心も知れています。なのに歯医者に行く時は、よいしょっと掛け声をかけないと、重い腰が上がりません。お昼ご飯を済ませて、午後一番に診てもらえれば夕飯も食べれるしなどと勝手に考えます。九時になったら予約の電話をしようと、モモさんと朝の散歩に出ました。
気が付くと舌先で上の奥歯を触っています。なんと落ち着きのないことか、その時、急に2年前モモさんの歯が2本抜けたことを思い出しました。モモさん8歳の時です。台所の床にグレーの小さな塊が落ちていました。成犬の歯ですから、深い根っこの付いた歯でした。パグさんたちはあの口の形なので、歯が抜けることが多いとは聞いていましたが、やはりショックです。しかも、モモさんは私と同じものを毎日食べています。痛かったねえと、抱きしめて、「全部歯がなくなっても、柔らかくしたご飯を作るからね。」と約束しました。
モモさんも、あの2本の歯が取れる前は、今の私のように口の中が変な感じだったはずです。しかも、モモさんの歯は神経が付いていたのですから。歯医者に行って、麻酔をかけてもらって歯を抜く自分が、みすぼらしく思えます。モモさん偉いね、と前を歩くモモさんに声をかけます。動物は歯がグラグラし始めたら、きっと硬いものを噛んで、歯を取るのかもしれません。昔の人はどうだったのかな?と考えます。みんな50過ぎまで生きてなかったから、歯がぐらつくこともなかったのかもしれません。じゃあ、今山奥に住んでる人はどうするのかな?糸かなんかで引っ張って抜くのかな?いろんなことを考えながら、やはり絶えず口の中では舌先が動いています。
散歩の帰り道、信号を半分まで渡った時でした、舌の上にポロッと奥歯が落ちました。そっと手で取ると、小さな歯でした。親知らずですからね。舌先であたっている時は大きな歯だと思っていたのに。3日間も舌先で動かしていたからか、血も出ていません。痛みもなくポロッと落ちました。
家に帰って、取ってあるモモさんの歯と比べると同じくらいの大きさです。こうやって、ねじがひとつひとつ取れて、いつかはクシャッとこの世から消えてなくなるのね、とモモさんの顔を見つめます。
見出し写真は、モモさんの乳歯の抜けたものと、2年前抜けた2本の歯が入っている容れ物です。
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