雨、15度、91%
15年前の5月の初旬のことです。香港島の北側を車で走っていました。信号停車でペットショップの横で停まりました。その店のウィンドーにはパグらしい子犬の後ろ姿が見えます。翌日、我が家からダラダラと坂をおりてその店に行きました。やはりパグでした。4ヶ月の元気なパグでした。その晩、主人に可愛いパグを見つけたから欲しいと告げます。答えはいつも変わりません。両方の両親の老後を考えると、日本との往復が多くなるからダメだというのです。
その年の9月、久しぶりにその店の前を通りました。ウィンドーに見えるのは少し大きなパグの後ろ姿です。「同じパグかしら?それならそろそろ9ヶ月になろうとしているはず。」翌日の日曜日、主人を香港大学へ散歩に誘いました。帰り道、坂を下ってペットショップに連れて行きました。パグを見ても主人は首を縦に振りません。当時日本ではペットショップの生体は12ヶ月を越すと殺処分にされると聞いたことがありました。香港での条例は知りません。その晩一人で悶々と考えました。
翌朝、主人を出張に送り出し、家の中を犬を迎い入れることができるように片付けました。夕方、仕事帰りにいつもはセントラルで電車を降りますが、一つ先の駅まで乗りました。「もし、まだあの店にいたら今日こそは連れて帰ろう。」駅から小走りでペットショップへと向かいました。家に連れて帰り、ドアを開けて言いました。「今日からこの家は全部モモさんのものよ。」走っていくモモさんの後ろ姿が今も目に焼き付いています。その日から12年と7ヶ月、モモさんは私たち夫婦にたくさんの喜びを持って来てくれました。
モモさんがいたのは、 ガラスのドアの右側です。今は生体が売られていないのでポスターが貼ってあります。香港でもペット条例が進み、こうしたペットショップは次々に店を閉めています。この3月に撮った写真です。
モモさん、13歳で飛行機に乗りました。初めて日本の地に足を下ろして85日目にこの世を去りました。今日はモモさんの2回目の命の日です。
写真はモモさんが我が家に来た日のものです。