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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

心臓の音

2018年02月02日 | 日々のこと

曇、4度、77%

 気温が低い日が続きました。洗面所の置き時計が急に音を大きく立てるようになりました。1秒1秒の音がやけに大きく聞こえます。正確に刻んでいるのですが、寒い部屋に大きく響いて聞こえます。その音を聞いていると父の心臓の音を思い出しました。

 父は癌を患い、放射線治療、ストレプトマイシンなどの治療を続けました。半世紀近く前の話です。自宅での療養、痛みがひどくなり始めると近くのかかりつけのお医者様が、朝晩モルヒネをうちに来てくださいます。寝室には父のベット、その横に母のベット、最後に私のベットまで入れました。

 あの日の早朝、父が「真奈さん。」とか細く呼んでいる声が聞こえます。隣のベットには母が疲れてぐっすり休んでいました。父のそばに行くと、寝飲みを指さします。寝飲みのお茶は冷たくなっていたので台所に行き温かいものを入れました。寝室に戻ると、父は目を閉じていました。そして父の胸のあたりは今まで見たこともないくらい大きく上下しています。父のそばによると、大きな心臓の音が聞こえました。「どくん、どくん、どくん。」寒い部屋の中にその音は大きく響きました。心臓の音が止まった時、胸の大きな動きも止まりました。父の最期でした。

 心臓の音があんなにも大きく聞こえたのは未だ嘗てありません。洗面所の時計の音に父の心臓の音が重なり、数日が過ぎます。寒い朝でした。48年前の今日のことです。今日は父の命日です。