うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

優等生と、爆走女

2022年03月12日 | カズコさんの事

母の近況が続きまして、

恐縮です。

 

おはようございます。

昨日は、かずこさんの通院日だった。

退院して初の、巨大病院への通院だ。

 

家族内では、もうなんとなく済んだ事のような感覚だった。

一件落着した感があったのだ。

かずこさんは、元気だし、よくしゃべるし、

ボケてるのは相変わらずだし。

「わしは、不思議とどっこも病気したことがない」と

豪語しているくらいボケているから、相変わらずなのだ。

 

ところが、

巨大病院の駐車場から歩き出すと、

かずこさんは電池が切れたみたいに無言になり動きが止まった。

「息苦しいのか?」と聞くと、

声も出せない様子で、コクリと頷いた。

この時、私は改めて、かずこさんを襲った病を実感した。

「そっか・・・やっぱり、病気なんだな・・・」

と、少しがっかりした。

私は急いで病院へ走り、車いすを借りた。

 

かずこ、初めての車椅子!

 

「わし、こんな大げさなもんに乗るんか?」

と戸惑うかずこさんを座らせ歩き出すと、

「おぉぉぉ、こりゃええ!なんと気持ちのええ乗り心地やろか!」

と、さっきまでとは大違いで、大はしゃぎだ。

私のがっかりも、その様子に些か慰められた気がした。

 

「さてと・・・」

まずは一安心した私は、前もって手渡された院内地図を見た。

巨大病院は広大な敷地内に3つの建物がある。

同じような建物、3つ。

その一棟を選び抜き、見事正解が得られれば、

さらに棟内の循環器内科受付へたどり着くための地図を読み解かなければならない。

だから私は、この日のため、

家で何度も地図を見てはイメージトレーニングをした。

こうして満を持して、ここへ来たわけだが、

「わからん!」

今、私達がどこにいるかも、分からん。

「何が分からんのや?」とかずこに問われても、

「なんもかんも、分からん!」とだけ答えて、

今度は、私の電池が切れた。

地図が分からん過ぎて、思考が止まった。目が点だ。

 

そこから、私達は爆走に次ぐ爆走を繰り広げた。

受付にたどり着いても、そこがゴールじゃない。

そこからがスタートなわけで、数種類の検査のため、

1階へ行き、2階へ戻り、別棟へと移動し、

もうこうなると、振出し(受付窓口)は、どこ?どこなの?と

トリップだらけだ。

当のかずこさんは、足早に車椅子を押す速度に、大興奮だ。

「ほっほー、風が気持ちええぞ~」

こうなると、私もなんだか、楽しくなって来ちゃって、

心の中では、「いえーーーい!」と叫びながら

かずこを乗せた車椅子を走らせた。

実際には、時々、壁の角っこにぶつけながら、

その都度、通りすがる人々に、

「すみません、すみません」と謝っていた訳だが、

傍から見れば、

「この人たち、何が面白いのだろうか?」

と思われていただろうくらい、はしゃいでいた。

 

検査を終え、ついに主治医に会えることとなった。

「かずこさん、血液検査は悪くないですね。」

主治医も相変わらずで、恥かしいくらい、こっちを見つめながら

穏やかに話し始めた。

「ただ、心臓に水が溜まっています。結構、溜まってる。

心不全の状態は、まだ続いていますね。

本来は入院してもらいたいけれど・・・。

うん、でも、かずこさんのお顔、とても落ち着いておられるし、

このまま、通院のほうがいいでしょうね。

かずこさん、また来週、来てくださいね。」

私は、ここでまた、ちょっとがっかりしたが、

かずこさんは、どこ吹く風で、

「あの若い先生、けっこう男前やったな」

と、若い娘みたいなことを言う。

 

9時に出発して、病院を出たのは午後2時だった。

「母さん、疲れた?」

そう問うと、

「ん?全然疲れとらんぞ」

と即答した。

「そりゃ、そうだ!」

車椅子でスイスイだった訳だから

私の疲れとは反比例であるべきなのだ。

疲れていないなら、遅めの昼ご飯も食べられるだろうと思い、

「母さん、何食べたい?」

と聞くと、

「わし、なんてもいい!」

と、また若い娘みたいに弾んだ声で答えた。

 

ということで、

大きなエビフライを、2本と半分、しっかり食べた。

 

私は、エビフライに苦戦しながらもかぶり付く、

元気なように見えるかずこさんを眺めながら、

車椅子で風を切った感覚を思い出していた。

 

実に楽しかった。

けれど、時は止まらず、この人は変わりゆく。

今だ。

通過点でしかない、一瞬の今を、余すところなく感じていこう。

 

そう思った。

 

そんな、たれ蔵も見逃さない。

あや「はいどうもぉ。あやが来たわよ~。」

 

あや「おばちゃん、カキカキして~」

 

あや「あぁぁ、そこそこ」

たれ蔵は、あやをしっかり観察して、学び取ろうとしている。

 

いざ、構ってアピール実践練習だ!

たれ蔵「こ・・・こうしたらいいですか?」

かたいな~、表情がかたいわ~。