◎2012年4月10日(火)
<川古温泉駐車場(6:25)……千曲平オゼノ尾根取り付き(7:20)……岩峰・1400m付近(9:14)……小出俣山山頂(10:20~10:55)……林道出会い(12:25~12:35)……駐車場(13:35)>
今季の小出俣山はかなわぬこととあきらめかけていたが、先日、みー猫さんが阿能川岳とかけて歩かれた記事を拝見し、その気になってしまった。何とかして行きたい。先送りすると雪質も日ごとに悪くなる。そろそろ限界の時期かとも思う。幸い、代休が数日ある。今日は天気がいいらしい。今季最後のチャンスかもしれない。行ってみよう。ただ、阿能川岳とのダブルといったようなアクロバットはできない。あくまでも、いわゆるピストン歩きで十分だ。
駐車場に着くと、所沢ナンバーの車が1台あった。もう既に出たのかと思ったが、いきなりドアが開き、中からオッサンが出て来た。やはり、小出俣山だそうだ。写真撮りが目的のようだが、10時だか11時までに着けば、阿能川岳にも行くつもりとのこと。帰りの車道を5km歩くつもりでいるらしい。今回は2回目とおっしゃっていた。心強い方がいて内心ほっとした。ネット記事を見る限り、今回のコース、尾根の途中にある岩峰(岩場?)がなかなかの曲者らしい。通過時にかなりの恐怖体験をするようだ。所沢のオッサンに、この件を確認すると、「そうでもないよ。むしろ、阿能川岳からの下りに危険な個所がいくつかある」とのご返事。オッサンに先行していただき、様子をみながら、後続の自分が通過する。これで行こうと目論んだが、いつまで経っても歩き出してくれない。致し方なく先行する。どうせ、追い越されるだろう。その間、今度は大宮ナンバーのオッサンが入ってきたが、こちらは山歩きではないようだ。
(例のせり出した岩)
(長い林道歩き)
林道の雪は融けていたが、水がかなり流れている。林道は荒れている。倒木やら土砂崩れが何か所かある。ネットで見かける張り出しの岩にすぐに出会う。こんな近くにあったのか。やがて、雪道になった。ここ数日の間に数人歩いているようだ。埋まりはしないが、歩きづらいことこの上なく、これでは、かなり時間をとられそうだ。さて、たまに後ろを振り向くが、オッサンは何をしているのだか、視界に入ってこない。岩峰で待機しているから早く来てよ。調整池を過ぎたところの木に赤テープが巻かれていた。ここから十二社ノ峰に入るようだが、その先に踏み跡は見えない。確か、新ハイキングの4月号に十二社ノ峰の記事があった。それを見て入る人もかなりいるかなと思っていたが。やはりマイナーな山なのだろう。
(千曲平橋。右にカーブすると、左の林の中に尾根の先端が見える)
(あれが小出俣山だろうか)
(オゼノ尾根の取り付き)
左に雪の道型が分岐し、ようやく千曲平らしきところに出る。小出俣山らしき白いピークが谷を越えた左手前方に見えてくる。林道は橋を渡ってカーブする。その先に尾根の先端が見えた。ここまで1時間近くかかった。長かった。帰路では、雪質が悪くなり、さらに時間がかかることになる。ここまでツボ足で来たが、この先、ワカンとピッケルを使う。だが、結局、ピッケルは用をなさなかった。ズボズボと雪に入り込み、先がとどまってくれない。折りたたみ杖も持っていたから、これに換えようかなとも思ったが、面倒なのでそのままピッケルを引っ張って行った。林道の踏み跡はそのまま尾根のある林の中に入っていき、大きく迂回して尾根に取り付いている。先端から登れない事情でもあったのか。すぐに尾根に取り付いた。いきなりの急登になっていた。このオゼノ尾根、山頂直下のピークまでずっと傾斜が急で、緩やかな部分がほとんどない。ハイトス氏から、阿能川岳といずれがハードかと問われていたが、結論を先に出せば、自分にはイコールのレベルと思う。阿能川岳は、仏岩ポケットパークから歩いたとして標高差700m少々ながら、ヤセ尾根歩きが延々と続き、雪庇等の積雪期しか歩けないゆえの危険性が伴う。方や小出俣山は標高差1,100mで急登の連続。それでいながら、距離は短く、特記するような危険スポットはない。もっとも、自分が阿能川岳を体験したのは5月。雪庇の張り出しもたいしたものではなく、むしろ、雪の下から顔出ししたヤブがやっかいになりかけている頃だった。
(数日前のトレースが残っている)
(阿能川岳方面)
(十二社ノ峰は左端か?)
急登が続く。いつまで続くのかと思うほどだ。今のところワカンだから、踏み抜きはない。左側に十二社ノ峰が見え、右側先には三岩山と阿能川岳の一角が見えてくる。いずれも、自分の位置はまだまだその標高下だ。地形図では、三岩山から南西に林道終点に下っている尾根が緩そうに見える。あるいは下れるかなとも思いもしたが、ここから見る限り、そんな緩い尾根は存在しない。もう汗ダクだ。20歩歩いては休みが続く。一服したいところだが、これをやったらきりがなくなるだろう。テープを散見する。一方的な尾根なのに、間違える人もいるのかね。こんな奥深い山に、テープやら目印は場違いな気がする。
(問題の岩場。右から巻く。左には踏み跡なし)
(左を無事に通過)
取り付きから1時間半以上、エンドレスな気分でだらだらと、とてつもなくしんどく登っている。しかし、十二社ノ峰は確実に左後ろに後退していき、右手の景色も、小出俣山と阿能川岳を結ぶ稜線の一角が見えてくる。幾分の気休めにはなる。正面にちょっとした林が見えてきた。ネット記事には共通して「ネズコの林を抜けると岩峰」と記されている。いよいよお出ましか。くたびれた心身を引き締める。さて、ネズコとはどんな木か知らなかった。何だ、クロベのことか。そのネズコの木の下でワカンをアイゼンに履き替える。巻きのトラバースゆえ、ワカンではさらに危ないだろう。いよいよ岩峰。というよりも岩場だ。もう、所沢のオッサンをあてにはしていない。この見通しの効く尾根上からはるか下を覗いても、動いているものは何もない。さて、この岩場、左から巻いている踏み跡はなく、右に窪みが続いている。岩下のトラバースだ。恐々と渡った。そして、何ということはなかった。慎重に渡りさえすれば、危ういことはないし、せいぜい10m程度のものだった。補助ロープも必要ないだろう。問題なのは、渡りきってからの尾根への直登部だろう。ほっとして気が緩んで、バランスを崩せば、ただちに雪にさらわれる。ただ、今日のように、踏み跡があったからよかっただけの話で、新雪があったとか、降雨の後ではどうだったのだろうか。こううまくはいかないと思う。
(吾妻耶山)
(ようやく小出俣山のピークが見えてきた)
(阿能川岳もはっきりと)
(依然として急登が続く)
(小出俣山手前の小ピーク。あれが遠くて遠くて)
(小ピークにやっとこさ到達。ここから先は、さながら別世界)
何はともあれ、本日の唯一のネックは通過したが、相変わらず急登は続く。何だか、傾斜がさらに増したみたい。まだ中間点を過ぎたばかりだ。何か特別な理由があったら、もうやめにしたい気分だ。振り返ると吾妻耶山が聳えている。あの山と上州三峰山だけはすぐに特定できる。ようやく、左手に小出俣山のピークが見えてきた。やれやれだ。直登して左か。この直登の行き着く所はこんもりと円い形になっている。吹きさらしなのだろう。雪質もようやく水気が薄れ、下も締まっていて、本来の雪山の歩きやすさになった。ピッケルも効く。しかし、この円い小ピーク、目の前にあるのに、なかなか行き着かない。小出俣山だけは姿がはっきりとしてくる。何とか、小ピークに到着した。そして、目の前の光景に唖然とした。谷川岳がさえぎるものなく正面にドーンと見えるじゃないの。ネットの記事では見慣れた光景ではあるが、自分の目で確かめると、その感慨の度合いが違うというものだ。270度の展望だ。残りの90度分は小出俣山の裏側にあるはず。
(そして、阿能川岳に通じる稜線)
(山頂間近)
(山頂は意外にも狭かった)
ここでやめてもいいが、まだ先がある。山頂の裏側に見えるはずの万太郎山を見ない限りは意味がない。もう気力で山頂に向かう。きっと、みー猫さんはこんな状態ではなかったろう。自分のように、気力で歩いているような体たらく状態だったとしたら、あの、目の前に、小出俣山から阿能川岳に延びている稜線を歩けるわけがない。たいした方だ。恐れ入る。さて、人のことはともかく、よいしょ、よいしょと山頂に到達。もう、体力は使い果たした。そして、期待の万太郎山が正面に見えた。これはいい。すげぇ眺望だ。何物にも代えがたい、こんな素晴らしい景色にめぐり会えるのも、後半は気力ででも歩いただけの甲斐があったというものだ。これが、曇っていて何も見えませんでしたでは腐ってしまう。
(十二社ノ峰に続く尾根)
(仙ノ倉山)
(左・仙ノ倉山、右・万太郎山)
(あれは大障子ノ頭か?)
(そして、茂倉岳、俎、谷川岳)
(うっすらと武尊山)
(アップで。獅子ヶ鼻山も視界の中だ)
(改めて吾妻耶山)
しばらく景色を満喫した。ようやく吸いつけた一本も上等のおいしさだ。
(下る)
名残惜しいとはこのことだ。いつまでもいられるわけがない。下山にかかる。小ピークとの鞍部の雑木で単独氏と行き会った。いかつい感じの方で、ハチマキをして、顔には汗が垂れている。かなりバテている気配で、「ピークはどこですか?」と聞かれ、指差しながら、あと30分と答えると、げんなりした顔が返ってきた。例のオッサンを抜いて来たそうだ。小ピークで、最後の景色を堪能。下りは誠にもって早い。急斜面を下るのだから、本当にあっという間だ。つましく貯めた貯金を一気に散財しつくす感じ。尻セードで下った跡があるが、この期に及んで、とんでもないところまで下ってしまっては元も子もない。間もなく岩場。下から所沢のオッサンが登ってきた。オッサンもかなりバテ気味。阿能川岳経由はとうにあきらめたそうだ。この分では、山頂まで、あと2時間はかかるだろう。下山は夕方だな。
(岩場も難なく通過)
(急斜面の下りが続く。よく登ったよ)
岩場は無事に通過。慎重渡りは怠りない。大分、雪も緩くなってきていた。急斜面の下りだから、一歩一歩の重さも余計にかかる。ぬかるし、踏み抜きも頻発するようになった。そんな状況で、左足の腿に痙攣の兆しが出てきた。今食い止めないと、両足のふくらはぎまで達する。実は「芍薬甘草湯」なる秘薬を持参していた。含めばたちまちのうちに痛みが解消という漢方薬なのだが、試してみる機会に恵まれずのままだった。ようやく試せる。一発というほどではなかったが、やがて痙攣の兆しは消えた。薬のせいかどうかは分からない。
(林道に到着)
(地面が出てきた。長かった)
ようやく、林道に出た。アイゼンを外した。下りだから、幾分早く駐車場に着けるだろうと楽観していたが、今日の高温で、雪が緩くなり、やけにズボズボとぬかる。とにかく歩きづらい。ちっとも先に進まない。何度も、叫びたい衝動にかられた。雪が融けて、路面が出ているところは何とも歩きやすいが、区間は短く、しばらくは苦痛の歩きが続いた。そして、何度も休んだ。調整池を過ぎた辺りから、林道の雪もようやくなくなり、ほっとした。
(林道ゲートと駐車場)
駐車場には、他に地元ナンバーと川越、熊谷ナンバーが増えていた。2台は山ではないだろう。しかし、何でこうも埼玉ナンバーが多いのか。今日の山歩き、充実というアバウトな表現は嫌いだが、まさにその充実だったかもしれない。苦労した分以上の収穫を得たことだけは確かだ。その代わり、顔面雪焼けと足の痛みという代償を払ったが。
<川古温泉駐車場(6:25)……千曲平オゼノ尾根取り付き(7:20)……岩峰・1400m付近(9:14)……小出俣山山頂(10:20~10:55)……林道出会い(12:25~12:35)……駐車場(13:35)>
今季の小出俣山はかなわぬこととあきらめかけていたが、先日、みー猫さんが阿能川岳とかけて歩かれた記事を拝見し、その気になってしまった。何とかして行きたい。先送りすると雪質も日ごとに悪くなる。そろそろ限界の時期かとも思う。幸い、代休が数日ある。今日は天気がいいらしい。今季最後のチャンスかもしれない。行ってみよう。ただ、阿能川岳とのダブルといったようなアクロバットはできない。あくまでも、いわゆるピストン歩きで十分だ。
駐車場に着くと、所沢ナンバーの車が1台あった。もう既に出たのかと思ったが、いきなりドアが開き、中からオッサンが出て来た。やはり、小出俣山だそうだ。写真撮りが目的のようだが、10時だか11時までに着けば、阿能川岳にも行くつもりとのこと。帰りの車道を5km歩くつもりでいるらしい。今回は2回目とおっしゃっていた。心強い方がいて内心ほっとした。ネット記事を見る限り、今回のコース、尾根の途中にある岩峰(岩場?)がなかなかの曲者らしい。通過時にかなりの恐怖体験をするようだ。所沢のオッサンに、この件を確認すると、「そうでもないよ。むしろ、阿能川岳からの下りに危険な個所がいくつかある」とのご返事。オッサンに先行していただき、様子をみながら、後続の自分が通過する。これで行こうと目論んだが、いつまで経っても歩き出してくれない。致し方なく先行する。どうせ、追い越されるだろう。その間、今度は大宮ナンバーのオッサンが入ってきたが、こちらは山歩きではないようだ。
(例のせり出した岩)
(長い林道歩き)
林道の雪は融けていたが、水がかなり流れている。林道は荒れている。倒木やら土砂崩れが何か所かある。ネットで見かける張り出しの岩にすぐに出会う。こんな近くにあったのか。やがて、雪道になった。ここ数日の間に数人歩いているようだ。埋まりはしないが、歩きづらいことこの上なく、これでは、かなり時間をとられそうだ。さて、たまに後ろを振り向くが、オッサンは何をしているのだか、視界に入ってこない。岩峰で待機しているから早く来てよ。調整池を過ぎたところの木に赤テープが巻かれていた。ここから十二社ノ峰に入るようだが、その先に踏み跡は見えない。確か、新ハイキングの4月号に十二社ノ峰の記事があった。それを見て入る人もかなりいるかなと思っていたが。やはりマイナーな山なのだろう。
(千曲平橋。右にカーブすると、左の林の中に尾根の先端が見える)
(あれが小出俣山だろうか)
(オゼノ尾根の取り付き)
左に雪の道型が分岐し、ようやく千曲平らしきところに出る。小出俣山らしき白いピークが谷を越えた左手前方に見えてくる。林道は橋を渡ってカーブする。その先に尾根の先端が見えた。ここまで1時間近くかかった。長かった。帰路では、雪質が悪くなり、さらに時間がかかることになる。ここまでツボ足で来たが、この先、ワカンとピッケルを使う。だが、結局、ピッケルは用をなさなかった。ズボズボと雪に入り込み、先がとどまってくれない。折りたたみ杖も持っていたから、これに換えようかなとも思ったが、面倒なのでそのままピッケルを引っ張って行った。林道の踏み跡はそのまま尾根のある林の中に入っていき、大きく迂回して尾根に取り付いている。先端から登れない事情でもあったのか。すぐに尾根に取り付いた。いきなりの急登になっていた。このオゼノ尾根、山頂直下のピークまでずっと傾斜が急で、緩やかな部分がほとんどない。ハイトス氏から、阿能川岳といずれがハードかと問われていたが、結論を先に出せば、自分にはイコールのレベルと思う。阿能川岳は、仏岩ポケットパークから歩いたとして標高差700m少々ながら、ヤセ尾根歩きが延々と続き、雪庇等の積雪期しか歩けないゆえの危険性が伴う。方や小出俣山は標高差1,100mで急登の連続。それでいながら、距離は短く、特記するような危険スポットはない。もっとも、自分が阿能川岳を体験したのは5月。雪庇の張り出しもたいしたものではなく、むしろ、雪の下から顔出ししたヤブがやっかいになりかけている頃だった。
(数日前のトレースが残っている)
(阿能川岳方面)
(十二社ノ峰は左端か?)
急登が続く。いつまで続くのかと思うほどだ。今のところワカンだから、踏み抜きはない。左側に十二社ノ峰が見え、右側先には三岩山と阿能川岳の一角が見えてくる。いずれも、自分の位置はまだまだその標高下だ。地形図では、三岩山から南西に林道終点に下っている尾根が緩そうに見える。あるいは下れるかなとも思いもしたが、ここから見る限り、そんな緩い尾根は存在しない。もう汗ダクだ。20歩歩いては休みが続く。一服したいところだが、これをやったらきりがなくなるだろう。テープを散見する。一方的な尾根なのに、間違える人もいるのかね。こんな奥深い山に、テープやら目印は場違いな気がする。
(問題の岩場。右から巻く。左には踏み跡なし)
(左を無事に通過)
取り付きから1時間半以上、エンドレスな気分でだらだらと、とてつもなくしんどく登っている。しかし、十二社ノ峰は確実に左後ろに後退していき、右手の景色も、小出俣山と阿能川岳を結ぶ稜線の一角が見えてくる。幾分の気休めにはなる。正面にちょっとした林が見えてきた。ネット記事には共通して「ネズコの林を抜けると岩峰」と記されている。いよいよお出ましか。くたびれた心身を引き締める。さて、ネズコとはどんな木か知らなかった。何だ、クロベのことか。そのネズコの木の下でワカンをアイゼンに履き替える。巻きのトラバースゆえ、ワカンではさらに危ないだろう。いよいよ岩峰。というよりも岩場だ。もう、所沢のオッサンをあてにはしていない。この見通しの効く尾根上からはるか下を覗いても、動いているものは何もない。さて、この岩場、左から巻いている踏み跡はなく、右に窪みが続いている。岩下のトラバースだ。恐々と渡った。そして、何ということはなかった。慎重に渡りさえすれば、危ういことはないし、せいぜい10m程度のものだった。補助ロープも必要ないだろう。問題なのは、渡りきってからの尾根への直登部だろう。ほっとして気が緩んで、バランスを崩せば、ただちに雪にさらわれる。ただ、今日のように、踏み跡があったからよかっただけの話で、新雪があったとか、降雨の後ではどうだったのだろうか。こううまくはいかないと思う。
(吾妻耶山)
(ようやく小出俣山のピークが見えてきた)
(阿能川岳もはっきりと)
(依然として急登が続く)
(小出俣山手前の小ピーク。あれが遠くて遠くて)
(小ピークにやっとこさ到達。ここから先は、さながら別世界)
何はともあれ、本日の唯一のネックは通過したが、相変わらず急登は続く。何だか、傾斜がさらに増したみたい。まだ中間点を過ぎたばかりだ。何か特別な理由があったら、もうやめにしたい気分だ。振り返ると吾妻耶山が聳えている。あの山と上州三峰山だけはすぐに特定できる。ようやく、左手に小出俣山のピークが見えてきた。やれやれだ。直登して左か。この直登の行き着く所はこんもりと円い形になっている。吹きさらしなのだろう。雪質もようやく水気が薄れ、下も締まっていて、本来の雪山の歩きやすさになった。ピッケルも効く。しかし、この円い小ピーク、目の前にあるのに、なかなか行き着かない。小出俣山だけは姿がはっきりとしてくる。何とか、小ピークに到着した。そして、目の前の光景に唖然とした。谷川岳がさえぎるものなく正面にドーンと見えるじゃないの。ネットの記事では見慣れた光景ではあるが、自分の目で確かめると、その感慨の度合いが違うというものだ。270度の展望だ。残りの90度分は小出俣山の裏側にあるはず。
(そして、阿能川岳に通じる稜線)
(山頂間近)
(山頂は意外にも狭かった)
ここでやめてもいいが、まだ先がある。山頂の裏側に見えるはずの万太郎山を見ない限りは意味がない。もう気力で山頂に向かう。きっと、みー猫さんはこんな状態ではなかったろう。自分のように、気力で歩いているような体たらく状態だったとしたら、あの、目の前に、小出俣山から阿能川岳に延びている稜線を歩けるわけがない。たいした方だ。恐れ入る。さて、人のことはともかく、よいしょ、よいしょと山頂に到達。もう、体力は使い果たした。そして、期待の万太郎山が正面に見えた。これはいい。すげぇ眺望だ。何物にも代えがたい、こんな素晴らしい景色にめぐり会えるのも、後半は気力ででも歩いただけの甲斐があったというものだ。これが、曇っていて何も見えませんでしたでは腐ってしまう。
(十二社ノ峰に続く尾根)
(仙ノ倉山)
(左・仙ノ倉山、右・万太郎山)
(あれは大障子ノ頭か?)
(そして、茂倉岳、俎、谷川岳)
(うっすらと武尊山)
(アップで。獅子ヶ鼻山も視界の中だ)
(改めて吾妻耶山)
しばらく景色を満喫した。ようやく吸いつけた一本も上等のおいしさだ。
(下る)
名残惜しいとはこのことだ。いつまでもいられるわけがない。下山にかかる。小ピークとの鞍部の雑木で単独氏と行き会った。いかつい感じの方で、ハチマキをして、顔には汗が垂れている。かなりバテている気配で、「ピークはどこですか?」と聞かれ、指差しながら、あと30分と答えると、げんなりした顔が返ってきた。例のオッサンを抜いて来たそうだ。小ピークで、最後の景色を堪能。下りは誠にもって早い。急斜面を下るのだから、本当にあっという間だ。つましく貯めた貯金を一気に散財しつくす感じ。尻セードで下った跡があるが、この期に及んで、とんでもないところまで下ってしまっては元も子もない。間もなく岩場。下から所沢のオッサンが登ってきた。オッサンもかなりバテ気味。阿能川岳経由はとうにあきらめたそうだ。この分では、山頂まで、あと2時間はかかるだろう。下山は夕方だな。
(岩場も難なく通過)
(急斜面の下りが続く。よく登ったよ)
岩場は無事に通過。慎重渡りは怠りない。大分、雪も緩くなってきていた。急斜面の下りだから、一歩一歩の重さも余計にかかる。ぬかるし、踏み抜きも頻発するようになった。そんな状況で、左足の腿に痙攣の兆しが出てきた。今食い止めないと、両足のふくらはぎまで達する。実は「芍薬甘草湯」なる秘薬を持参していた。含めばたちまちのうちに痛みが解消という漢方薬なのだが、試してみる機会に恵まれずのままだった。ようやく試せる。一発というほどではなかったが、やがて痙攣の兆しは消えた。薬のせいかどうかは分からない。
(林道に到着)
(地面が出てきた。長かった)
ようやく、林道に出た。アイゼンを外した。下りだから、幾分早く駐車場に着けるだろうと楽観していたが、今日の高温で、雪が緩くなり、やけにズボズボとぬかる。とにかく歩きづらい。ちっとも先に進まない。何度も、叫びたい衝動にかられた。雪が融けて、路面が出ているところは何とも歩きやすいが、区間は短く、しばらくは苦痛の歩きが続いた。そして、何度も休んだ。調整池を過ぎた辺りから、林道の雪もようやくなくなり、ほっとした。
(林道ゲートと駐車場)
駐車場には、他に地元ナンバーと川越、熊谷ナンバーが増えていた。2台は山ではないだろう。しかし、何でこうも埼玉ナンバーが多いのか。今日の山歩き、充実というアバウトな表現は嫌いだが、まさにその充実だったかもしれない。苦労した分以上の収穫を得たことだけは確かだ。その代わり、顔面雪焼けと足の痛みという代償を払ったが。
レポを見ていただき、その気になっていただけたとは・・・・嬉しい反面、岩峰が期待外れでしたようでお恥ずかしい限りです。大汗で4時間の登りでしたら、自分もどうなってたかわかりませんが、頂上付近のあの感じは、自分では久々味わったなあいう思いがありました。表現が乏しくてすみませんが天候に恵まれて本当によかったですね!
標高差1,100mで直線距離がそれほど無いとなるとずっときつい雪斜面の登りが続くと言うことですものね。
阿能川との比較の件、承知いたしました。
参考にさせていただきます。
ところでどうですか、十二社ノ峰へトライしてみる気は失せてませんか?
先達の記録を読むとたぶん今回と同様の歩きとなるような雰囲気がありますが。
おかげさまで、実のところ、岩場の通過が大変不安でしたが、その恐さも、幾分半減したような状態で臨むことができました。
しかし、いいところですね。あんな別天地。何時間でもいたい気分でしたよ。トロトロと登ったつもりでしたが、割と早い時間で到達できたようです。そのためか、身体にかなりの負荷がかかってしまったようです。
クタクタ状態でなかったら、阿能川岳に行く気もおきたでしょうが、そうでなかったのが残念です。あの、阿能川岳に続く回廊を歩けば、さぞ気持ちが良かったでしょうね。非常に残念ですよ。
十二社ノ峰の調査も、ある程度はしてきました。難点がいくつかありました。まず、取り付きです。ただっ広くなっていて、尾根なり沢から歩いたとして、しばらくは、これでいいのだろうかといった不安がつきまとう感じですね。
それから、小出俣山から十二社ノ峰への尾根を覗いた限り、やせ尾根に雪庇が延々とせり出し、亀裂さえ走っていました。あれじゃやばいなと思いましたが、十二社ノ峰だけなら、何とか歩けるかもしれません。
十二社ノ峰、ハイトスさんも虎視眈々ですか。複雑な気分ですね。これからだと雪の状況ではかなりきついかもしれませんね。お一人で行かれるのでしたら、お声かけくださいよ。
ハチマキをした 優しい中年男です?
山上から下りてくる いい美男子を見て
力がでまして、頂上に登ること(トレース)が有り助かりました
素晴らし景色 いい天気最高でしたが
帰りはバテマシタ
ホーム㌻いつも拝見しています
美男子ですか、そんな方、私は見ませんでしたが。もうお一方、登っていらした方がいたんですか?気づきませんでしたよ。
私のつけたトレースなんてのはたかがしれていますよ。私も、数日前のトレースを追って行きましたから、私自身も助かったところがあります。特に、踏み抜きなんてのは、先人が大穴を開けていれば要注意ですからね。
しかし、同じ日に同じ条件で小出俣山を歩き、同じ感動を得るのもまたいいものですね。
普段、沈着冷静なたそがれオヤジさんをして、「これはいい。『ずげぇ眺望だ』」だと言わしめたのですから、確かに『すげぇ~眺望』だったんだと確信できます。
おいらも、いつか行ってみたいなぁ~。
さて、ヘロヘロ状態で登りつめたら、そこには意外な光景が広がっていた。同じ光景であっても、楽勝ペースで登っていたら、すげぇとは思わなかったでしょうね。そんな状態でしたから、余計に感動ものだったわけですよ。
それでいて、ぶなじろうさんの観音山からの光景には後ずさりしてしまう。おかしなものですね。
景色の点では、小出俣の方が阿能川よりも格段にいいと思いますよ。機会がありましたらぜひ。
たそがれオヤジさんをして「かなりしんどい」と言わしめた小出俣山はやはり大変だったのだのだなと思いました。
私は二度トライして二度敗退して、「おいで、又」山になってしまいました。一度は無雪期にヤブに阻まれ岩場に辿り着けず、二度目は積雪期に岩場の上に辿り着いた所で復路の岩場の雪質(気温が高かった)に危険を感じて戻ってしまいました。
記事を読んでうらやましくなりました。阿能川より景色が格段にいいとなればまた欲が出て来ます。機会があれば再々度トライしてみようかなぁ~。
そうですか、好漢さんも小出俣山に挑戦されていらっしゃいましたか。
私がすんなりと、といっても、かなりの消耗ぶりでしたが、行けたのは、タイミングだったのかもしれませんよ。無雪期に行こうと考えたこともありませんしね。
やはり、あの岩場がネックになるのですね。結局は、トレースと雪質でしょうね。
正直のところ、眺望は阿能川岳以上です。ぜひ、「まいで、又」に行ってらしてください。
ただ、今季はもう、どうでしょうかね。