青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

凜、散歩コースの花

2015-04-30 07:07:43 | 日記

散歩コースの躑躅。
散歩の楽しい季節ですね。凜もご機嫌です。

白い花水木。

ピンクの花水木。
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さみしくなったら名前を呼んで

2015-04-29 07:04:37 | 日記
山内マリコ著『さみしくなったら名前を呼んで』は、ブス、年上の彼氏にすがる女子高生、田舎生まれの都会の女、踊る14歳、孤高のギャル、謎めいた夫妻、マイルドヤンキーになれなかった女など、滑稽なまでに律儀に生きる人々のさみしさに寄り添う11篇からなる短編集。
『ここは退屈迎えに来て』や『アズミ・ハルコは行方不明』と同様、中途半端な地方都市で閉塞感に喘ぐ若い女性の視点から描かれている。成長過程にある人を描いているので、作中にはまだこれといった救いは提示されていないのだけど、人間のみっともなさを突き放さず肯定的に捉えているので、読後感はほのかに温かい。

もしまた誰かと恋をすることがあっても、彼とはじめて出会ったあの夜みたいに、誰かと完全に心を通わせて、人目も憚らず抱き合って泣き、キスするなんてことは、二度と起こらないんだと。ああいう瞬間は、人生に一度きりなんだと。……『さよちゃんはブスなんかじゃないよ。』より

年を取るって、なんて悲しいことだろう。懐かしいことがたくさんあるって、なんて胸が痛いことだろう。あたしはこの先、どんどん鈍感になって、図太くなって、何を見ても心がぴくりとも動かない、石のような老人になりたいと思った。……『昔の話を聴かせてよ』

「大丈夫だよ。マユコ。いまに嫌いだなって思ってる人たちが、そのうちみんな、一人残らず周りから消えて、むしろ恋しくなる日が来るんだがら。ほんとだよ」……『走っても走ってもあたしまだ十四歳』より

とにかくもうちょっと、時間が必要なのだ。自分にはなにが出来て、なにが向いていて、なにをするために生まれてきたのかを、ひと通り試してみる時間が。そういう試みは、もう若くないと思えるようになるまで、つづけなくちゃいけない。へとへとに疲れて、飽き飽きして、自分の中の無尽蔵に思えたエネルギーが、実はただ若かっただけだってことに気がつくまで、やってみなくちゃいけない。身の丈を知り、何度も何度も不安な夜をくぐり抜け、もうなにもしたくないと、心の底から思えるようになるまで。……『遊びの時間はすぐ終わる』より

実際のところ人間は、特に女性は、あっという間に若さを失ってしまうのだけど、孤独や閉塞感からは、そうそう解放されるものではない。半径2キロの世界で生きている主婦にも、それなりの不如意はある。さみしさや侘しさを感じる心のひだが全部なくなるなんて日は、多分一生来ない。サブカルを齧ったり、アホみたいに洋服を買い漁ったりして“特別な私”を模索していた頃を笑って振り返ることが出来るようになっても、やはりそこにはチクリとした痛みが伴う。生きるって、そんな日々の連続なのだ。
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鬼平犯科帳 劇場版

2015-04-28 06:06:25 | 日記
監督は鬼平犯科帳のテレビシリーズの監督も務めている小野田嘉幹。1995年の松竹創業100周年記念作品。
監督が同じなせいか、テレビ版とあまり出来栄えの差が無くて、正直「わざわざ劇場版にしなくても良かったのでは?」と思った。決して面白くなかった訳ではないのだけど…。テレビ版の出来が良いので、期待しすぎたようです。

原作の何話かを組み合わせた脚本で、使用されたのは、『鬼平犯科帳二』の「蛇の目」、『鬼平犯科帳六』の「狐火」、『鬼平犯科帳八』の「流星」、『鬼平犯科帳二十二』の「迷路」あたりと思われる。ただし、話の流れを整えるために上記の短編以外からもエピソードを持ってきているようである。
白子の菊右衛門の名が出るのは、第一巻の「暗剣白梅香」。また、荒神のお豊は劇場版オリジナルの人物。ただし『鬼平犯科帳三』の「艶婦の毒」に登場するお豊がモデルであるようだ。

江戸の盗賊たちに鬼と恐れられる火付盗賊改方長官・長谷川平蔵。
その平蔵の前に狐火を名乗る盗賊が現れる。しかしそれは本物の狐火の勇五郎ではなく、異母弟の文吉であった。狐火の掟に反して、文吉は凄惨な急ぎ働きを繰り返した。そのため、勇五郎は文吉の殺害を図る。
密偵のおまさは、勇五郎と恋仲にあった。おまさは、そのことを平蔵に告白し、勇五郎の救出を願ったが、平蔵に一喝されてしまう。実は、平蔵には考えがあったのだ。
勇五郎とおまさは、文吉一味に追い詰められていた。それを救ったのが平蔵だった。平蔵は、盗賊稼業から足を洗うことを誓った勇五郎の右腕を落とすことで見逃した。そして、おまさを密偵から解き放った。二人は、共に江戸を去った。

時を前後して、白子の菊右衛門一味が江戸に乗り込んできた。菊右衛門は、荒神のお豊に接近した。刺客を送り込んで平蔵を消す計画である。しかし、平蔵を甘く見ていないお豊は、そう簡単に計画が成功するとは思っていなかった。そこで、お豊は菊右衛門との共闘を保留にし、平蔵の息子・辰蔵を誘惑することにした。しかし、親子喧嘩の末に辰蔵が失踪したことで失敗に終わる。
菊右衛門の次の手は、火付盗賊改方同心の妻女の殺害だった。平蔵は激怒する。だが、敵の正体が掴めない。そんな折、おまさが江戸に戻ってきた。勇五郎が流行り病で死んだのである。そして、おまさは再び密偵として働くことになる。おまさは重大な情報を持ってきた。なんと、お豊は若い頃に平蔵と恋仲にあった女だったのだ。裏が分かってきた平蔵は動き出す…。

冒頭で書いたように作品としてのスケールはテレビ版とあまり変わりがない。ただ、長くテレビ版に携わってきた監督なので、別々の短編のエピソードを上手く纏めていると思う。
何より配役が豪華なのだ。故人の名がいくつか見受けられるのが寂しい。もうこんな贅沢な組み合わせは叶わないだろう。

主役・長谷川平蔵の二代目中村吉右衛門をはじめ、妻・久栄が多岐川裕美。密偵のおまさを梶芽衣子。小房の粂八を蟹江敬三。大滝の五郎蔵を綿引勝彦。五鉄の三次郎を藤巻潤。相模の彦十を江戸家猫八。
そして、敵役として、荒神のお豊を岩下志麻。白子の菊右衛門を藤田まこと。沖源蔵を石橋蓮司。狐火の勇五郎を世良公則。吉五郎を本田博太郎。百蔵を平泉成。文吉を遠藤憲一。蛇の平十を峰岸徹。等々…。

個人的には本田博太郎氏を見ると時代劇だなぁと安心する。まだ若かった遠藤憲一氏が、冷酷無比な文吉を好演していた。お豊の前での傍若無人な振る舞いと、刑場への馬上での死んだ魚のような眼のギャップが印象的だった。
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夏服と夏園芸

2015-04-27 06:19:10 | 日記

ゴールデンウィークに向けて暑くなって来ましたね。
娘の夏服を買いに行きました。今回は、とりあえずワンピース3着、チュニック、カボチャパンツを購入。もうじき学校でお習字の授業が始まるので、黒地で可愛いデザインのTシャツがあればと思ったのですが、残念ながら気に入る物がありませんでした。
うちの娘は八歳なのですが、このくらいの年齢だと、まだ毎シーズンごとに洋服を買いかえなくてはなりません。娘の成長を実感出来て、自分の服を買うより楽しいです。娘は幼稚園の頃までは、背の順で前から3番目くらいだったのですが、去年あたりから急に大きくなって、後ろの方になりました。私が164センチなのですが、それより大きくなるかもしれません。
帰りに園芸店に寄って、夏の植物を買いました。
タイツリソウ、深山ホタルカズラ、ボロニア、フィエスタ、ぺラルゴニウム、ミニトマト、山椒、それから、大葉とミツバとモロヘイヤの種です。新しい植物を買って庭の印象を変えるのは、毎回楽しい作業です。特に初夏は土に触れるのが、気持ち良いですね。
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ホテル・ニューハンプシャー

2015-04-25 07:05:34 | 日記
ジョン・アーヴィング著『ホテル・ニューハンプシャー』は、父さんのホテル熱に翻弄されるベリー一家を襲う大小の事件を丹念に綴った物語。突拍子もない人物が次々に登場しては去っていくが、静謐な空気が流れていてドタバタ感が無い。辛い事件に見舞われる度に、一家は固い絆を築いていく。

1939年夏、父さんと母さんはリゾートホテルのアルバイトで知り合った。ユダヤ人フロイトの祝福を受け結婚を決意し、熊のステイト・オ・メインを譲り受ける。
2人は5人の子供に恵まれた。長男のフランクは同性愛者。長女のフラニーと次男のジョンは愛し合っている。次女のリリーは小人症。そして三男で難聴のエッグ。父さんの父さんでフットボール・コーチのアイオワ・ボブ。犬のソロー。熊のステイト・オ・メイン改めアール。これがベリー一家の構成員だ。

田舎町デーリーで、父さんは廃校になった女子高を改装し、第一次ホテル・ニューハンプシャーの経営に乗り出す。一家が何か事を起こそうとするたび、大抵事件が起きる。父さんと母さんが出会ったリゾートホテルを訪ねたらアールが射殺され、ジョンとフラニーが電燈でふざけたら老警官が心臓発作を起こし、医者を呼びに行ったフラニーがレイプされる。フランクがソローの遺体で剥製を作ったらアイオワ・ボブがショック死する。エッグがソローの剥製を客室の浴槽に隠したらボイン・タックが死にかける。
この時代に起きた一番大きな事件は、フラニーがチッパー・ダヴたち3人にレイプされた事件だ。現場に居合わせながらフラニーを助けられなかったジョンは、その後、筋力を鍛える。

ホロコーストを生き延びたフロイトの誘いを受けて、一家はウィーンへ渡る。あとから来る予定だった母さんとエッグが飛行機事故で死ぬ。第二次ホテル・ニューハンプシャー開業。フロイトは強制収容所で受けた人体実験のために失明していた。彼を介助し、ホテルを守っていたのが、熊の着ぐるみを被ったスージーだった。ホテルには、過激派のメンバーと娼婦たちがいた。リリーは過激派の女性から文学を教わる。過激派の女性は拳銃で自殺する。過激派の爆破事件に巻き込まれ、フロイトは命を落とし、父さんは失明する。その頃リリーが書いていた自伝的小説が大ヒットし、一家は大きな収入を手にする。

一家はニューヨークに渡る。そこでフラニーをレイプしたチッパー・ダウに再会し、一家は復讐を決意する。チッパーをホテルに呼び出し、熊の着ぐるみを被ったスージーが彼をレイプするというリリーの台本は成功する。やがてリリーは自殺する。フラニーはレイプ事件の時に助けてくれたジュニア・ジョーンズと結婚する。ジョンはスージーと結婚し、かつて両親が出会ったリゾートホテルでレイプ相談をして暮らす。最終ホテル・ニューハンプシャーだ。父さんの存在は、レイプで心に傷を負った女性たちを癒した。ジョンとスージーは、フラニーとジュニア・ジョーンズの子供を引き取ることになる…。

「開いている窓の前で立ち止まらないように。」

全編に悲しみ=ソローが漂っている。人間の存在は悲しい。運命に弄ばれる人間の切なさや気持ちが届かない悲しみを描きながらも、悲しみの先にある柔らかな光が闇を照り返して、人生とは色々あるからこそ良いものなのだと思わせてくれる。リリーの小説の中で、ベリー一家はみんなヒーローだった。彼らだけではない。人間はみんなヒーローだ。おとぎ話のような優しい語り口の裏から、色んな人がいて良いのだ、色んな人がいる世界がノーマルなのだ、という強いメッセージを受け取ることが出来る。
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