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映画『ジョニー』

2023年10月27日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

薬漬けで、犯罪を繰り返して来た青年パトリクが
裁判所命令の社会奉仕プログラムで、
あるホスピスに派遣される。
そこで待っていたのは、
ヤン・カラコフスキという、
30代の風変りな神父だった。

そのホスピスは、
死が迫っている患者専門の療養施設で、
ヤン神父が司教の反対を押して自ら建設し運営しているものだった。
奉仕期間だけ無難に過ごすつもりで、
雑用に従事していたパトリクだったが、
臨終の場で、死にゆく者と真摯に交わる神父の姿に、
何かが変わっていく。
世話していた老女が亡くなったことでも、
彼の心は少しずつ動いていく。


やがて、料理担当になったパトリクは、
ホスピスにはなくてはならない人間になっていくが・・・

執行猶予が取り消され、
再び収監されたパトリクの解放のために
尽力する神父の姿も描かれる。

また、ホスピス建設に反対す司教に対して、
あなたの不正蓄財を知っている、
アルコール中毒のことも知っている、
と脅かして司教に黙認させる
ヤン神父の胆力も描かれる。

実は、神父自身、脳腫瘍の悪化で、
余命が宣告されていた人間。
目と足が不自由、
それでも、地上にいる間、
自分の使命を果たそうとする姿に、
周囲の人間が感化されていく。
父親や姉の苦悩も描かれる。

という宗教がらみの話だが、
あまり説教臭くなく展開するのは、
ヤン神父の造形が優れているので、
観客を納得させてしまうのだ。
ヤン神父を演ずるダヴィド・オグロドニクがうまい。


↓の写真とは別人。

また、パトリクを演ずるピョートル・トロヤンも、
心の成長と共に表情を変えていく姿を見事に演ずる。


監督はダニエル・ヤロシェック

この話は実話で、
ヤン神父は、テレビにも出るほど
ポーランドでは有名な人だったらしい。

エンドロールでご本人の姿が出て来ると同時に、
レストランのシェフとして成功したパトリクの姿も紹介される。
ヤン神父の姉の役を実のお姉さんが演じている。

↓の右が本人。よく似ている。

病気で死にゆく人にどんな言葉をかけたらいいのか、
という質問に対して、
ヤン神父は、こう答える。

「末期患者が求めるのは、
 慰めでもなければ、
 励ましでもない。
 違うメーセッジです。
“怖がらないで。
 何があってもそばにいる”
“愛している”
でもこれを言うためには、
一生をかけた取り組みが必要です。
愛する人との関係性を育むという責任は
決して免除されないのです」
そして、こうも言う。
「時間は
 お互いに与え合える最も大切なものです。
 時間を捧げるのです」

題名の「ジョニー」とは、
心を通わせるようになってパトリクに、
ヤン神父が私をこう呼んでくれ、
と求める名前。
由来は説明されない。

ポーランド発の映画。
小品だが、心に残る作品だった。

2022年作品。
ポーランド国内では興行2位のヒット作で、
世界的にはNetflixの配信でお披露目。

 



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