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小説『時空犯』

2024年03月10日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

私立探偵、姫崎智弘の元に、
報酬一千万円という破格の依頼が舞い込んだ。
依頼主は情報工学の権威、北神伊織博士。
高額報酬の餌で集まった人間が姫崎を含め8人。
タレントの麻緒、警視、元官僚、ハッカー、
観光団体役員、セキュリーティー関係者、芸能プロの社員。
その場での北神博士の説明内容は、
何と時間遡行だという。
同じ日が繰り返されることが度々起こっているというのだ。
時間が巻き戻されると、
人間の記憶も消滅してしまうので、
繰り返されていることは誰も気付いていない。
ただ、北神博士だけが記憶を維持しているために、
時間の巻き戻しに気付き、
既に114回起こり、
今は、2018年6月1日が
979回も繰り返されているという。
集まった8人への依頼内容は、
巻き戻しを認識できる薬剤を飲んで、
記憶を維持して、
博士の体験が妄想にすぎないのか、
それとも真実なのかを証明してもらいたいというのだ。

集まったメンバーは半信半疑のうちに
依頼を承諾し、薬剤を飲む。
すると、夜中の1時20分を期して巻き戻しが起こり、
前日の朝5時35分に戻ってしまう。
つまり、980回目の6月1日。
驚いていると、更に驚くべき連絡が入る。
北神博士が何者かに殺されたというのだ。

というわけで、タイムループと殺人の犯人当てという
新機軸のSF小説となる。

次のタイムループが起こって、
981回目の6月1日が来ると、
北神博士は生き返り(正確には死ぬ前に戻る)、
今度は麻緒が殺される。
更に、一堂に会した場で更なる殺人が起こり、
8人全員が死んでしまう。

次の巻き戻しが起これば、全員蘇るのだが、
果たしてそれは起こるのか。
そして、殺人事件の犯人は誰か・・・

「タイムループという現象の正体は?」
「なぜタイムループが発生するのか?」
「なぜ薬剤を飲んだ者だけの記憶が持続するのか?」
という説明も一応しているが、
ほとんどの読者が納得出来ないだろう。
というより、理解不能
まあ、タイムループそのものが理解を越えているが。
姫崎が「知性体」と交信するというのも、
都合がよすぎないか。

作者の潮谷験メフィスト賞受賞者で、その第2作。
メフィスト賞というのは、
特殊な基準での選考で、ユニークな作品が受賞することが多い。
その受賞者の作品だから、
とにかく設定が卓抜
まあ、千回近くも繰り返すことはないので、
北神博士はそんなに巻き戻しを体験しなくても、
10回目くらいで協力者の招集をすればいいと思うが、
なぜ、そんな回数が必要だったのかは、謎。
被害者の傷跡を数値化する機器なども都合よく登場する。

「時空犯」とは、時間遡行犯罪者のこと。

私の好物、タイムループものの新種
ということで、紹介。

 



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