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小説『縁切り上等!』

2024年01月10日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

夫のモラハラと浮気に耐えきれず、
赤ん坊を抱いて家を飛び出した聡美が
追って来る夫から鎌倉に逃れて、
偶然匿われたのが、
松岡紬(まつおか・つむぎ)の弁護士事務所だった。
紬は離婚専門の弁護士
しかも、縁切寺として有名な寺の真ん前に事務所を構えるという、
絶好の立地だ。
聡美は紬に弁護を依頼し、
めでたく離婚が成立。
同時に手の足りない紬の事務所で助手として雇ってもらうことになる。

というわけで、
離婚専門弁護士の松岡紬を巡る事件の数々を描く。
紬の父親は、縁切寺・東衛寺(実際は東慶寺)の先代住職・松岡玄太郎。
専属探偵の出雲啓介は、紬の幼なじみで、紬に好意を寄せている。
紬、玄太郎、啓介、聡美と
視点を変えての5つの話が並ぶ。

モラハラ夫との離婚。
DV夫と浮気依存症の妻との親権を巡る争い。
35年連れ添いながら、
夫の脳梗塞を予測して、早めに離婚したがる女性。
同性婚の間での離婚訴訟。
モラハラ元夫からの鬱病発症による養育費減額の交渉。

など。

実は、紬は人間の恋愛感情が理解できない
だから、啓介の恋情を知っていても、応えられない。
「私ね、結婚って意味不明だと思う。
だから結婚をやめる人の手伝いなら、
進んでやるのよ。
みんな結婚、やめちゃえーって思っているから、
縁切り上等!
人の縁を切るのは楽しいのよお。
ふふっ」
とうそぶく。
ついでに言うと、紬は極度の方向音痴。

恋情の希薄については、
啓介にこう言う。

「私、恋愛が苦手みたい。
自分に欠陥があるような気がして、
どうにかしようと思って、
出雲君をまきこんじゃった。
もうそういうことはしないから、
仕事相手として付きあってほしい」

啓介は、こう思う。

紬はたぶん、誰とも結婚しないだろう。
誰かと付きあうこともなさそうだ。
でも俺はずっとそばにいる。
それでいいじゃないか。
自分に言いきかせるように心の中でそう唱えた。

玄太郎も、実は嫁(紬の母)に逃げられた経験を持っている。
それが、紬のトラウマになっていることは確かで、
紬は、こう思う。

もとはといえば、
他の子に自分と同じような思いをさせないために
弁護士になったんじゃなかったのか。
お母さんを解放して、
でも自分とのつながりも残せるような、
そんな縁切りの手伝いをしたかった。
切りたいだけの縁を
ぴしっと切れる弁護士になれるといいんだけどなあ、と思う。
それがなかなか難しい。
縁は絡み合っている。
ひとつが切れると他のものも切れてしまう。

2021年、『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した
「元彼の遺言状」でデビューした新川帆立の作風は、軽いのだが、
今度のは軽いながら、
血の通った感じがして、
作風に変化が見られる。


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