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映画『ブロンド』とドキュメンタリー『知られざるマリリン・モンロー』

2022年10月19日 23時00分00秒 | 映画関係

 [映画紹介]


                                       
マリリン・モンローの生涯をつづる伝記映画、
ではない
あくまでフィクション
原作は大御所の作家ジョイス・キャロル・オーツ
2000年に出版したもので、
「マリリン・モンロー」というキャラクターを引用して作り上げた
二次創作みたいなフィクション。
その上、映画化とはいうものの、
小説にないシーンが満載で、
ほとんど監督で脚本も手がけたアンドリュー・ドミニクの独自の創作物。

で、マリリン・モンローを悲劇のヒロインにしたてまくっている。
私生児として生まれ、母は精神病院に。
里親と孤児院を行き来し、
女優をめざしてハリウッドに行けば、
映画界のお偉方の性的餌食になって役をもらい、
有名人の息子たちと3Pのあげく妊娠し、中絶し、
ジョー・ディマジオには暴力をふるわれ、
アーサー・ミラーとの間の子供は流産し、


3度の結婚離婚の果て、
ケネディ兄弟の性の相手として翻弄され、
精神的に行き詰まって、睡眠薬の過剰摂取で死を迎える・・・

画面の大きさがワイドになったり、スタンダードになったり、
モノクロになったりカラーになったり、
しかし、系統立っているわけではないので、
観客の混乱を誘うだけ。

児童虐待、性暴力、セクハラ、DVなどの直接的な描写が延々と続き、
幼少期のトラウマと性的被害に精神が崩壊する様を描く、
不愉快な映画
胎児の映像がしつこいほど流れ、
母の精神病が遺伝するかも、という恐怖と、
父を欲する願望が繰り返し描かれる。
それが2時間47分も続くのだから、悲しくなる。
マリリンを演ずるアナ・デ・アルマスは、
ヌードをさらす体当たり演技だが、
彼女が気の毒にさえ思える。

「紳士は金髪がお好き」の再現シーンや
「お熱いのがお好き」の撮影場面など、興味深い。
トニー・カーチスとの共演シーンが再現されるが、
このトニーはCGか?

マリリンの精神的崩壊は、事実ではあるが、
その一面だけを強調した、
バランスを欠く作品

Netflix で今年9月28日から配信。
                                                                                

前日に観た「ブロンド」の関連で鑑賞。
レビューを見ると、同様な人が多いようだ。

こちらはNetflixのオリジナル・ドキュメンタリー

「マリリン・モンローの真実」を書いた
アイルランドの作家アンソニー・サマーズ
1982年、ロサンゼルスの地方検事長による再調査に当たり、
本を書くためにロサンゼルスを訪れ、
関係者にインタビューをして回った。
2~3週間で済むと思っていたら、3年に及び、
インタビューの対象は1000人
録音テープは650本に及んだ。
本作は、その音声を公開し、再構成したもの。
40年も前の音声だ。

「全ての音声録音は本人の声です。
再現映像は役者が(口パクで)演じています」
と字幕で断っている。

マリリンがハリウッドに行き、
映画出演し、人気が出る過程を
インタビューで構成する。
当時の映像が流れるが、
素材が少ないせいか、
ロサンゼルスの町の風景や夜景が繰り返し出て来る。
また、録音テープのハブが回転する様もくどいほど出て来る。

ジョン・ヒューストンやビリー・ワイルダーの監督たちや
女優ジェーン・ラッセルのインタビュー(声)も出て来る。
主治医の精神科医やその家族、家政婦や
ヘア担当者、盗聴器をしかけた探偵、
ロバート・ケネディの個人秘書なども出て来る。

特に新しい発見はなく、
肝腎の部分になると、
「それについては言えない」
「知っているが、話せない」などとなり、
もどかしい。

ただ、終盤になって興味深い事実が明らかになる。
マリリンはその頃、左派と接触しており、
ロバート・ケネディとの会話で核兵器について触れ、
当時のキューバ危機で、
そのことが明るみに出ることを恐れたケネディ兄弟は、
マリリンとの関係を一方的に断つ。
マリリンは精神的に追い詰められていく。

そして、ラスト25分は驚くような展開。
マリリンの部屋に電灯がついていて、
鍵がかかっており、異変を感じた家政婦が
医師に連絡。
夜中の3時のことだ。
主治医がかけつけて、窓ガラスを割って中に入ったのが
3時半。
この時、既にマリリンはこと切れていた、
というのが公式発表だが、
インタビューでは、
コンサート会場にいたマリリンの広報担当者が連絡を受けたのが
午後10時。
マリリン邸に到着したのが午後11時。
夜中ではなかった
また、救急車派遣会社の証言で、
マリリンを乗せて救急車が病院に向かっている最中に死亡が確認され、
救急車はマリリン邸に引き返した。
しかし、その点は隠蔽された。
さらに、ロスにいたロバート・ケネディが
急遽サンフランシスコにヘリで飛んだのが午前2時か3時。
航空日誌で裏付けられている。
そして、3時に家政婦が異変を感じた、という話になる。
つまり、3時にはロバートはロスにいなかったことになる。

マリリンとロバートが会って喧嘩していた、という証言もある。
そこで、陰謀説や殺人説が出て来る。
しかし、真実は闇の中。

公式発表は、
睡眠薬の過剰摂取による事故死または自殺。
20年後の1982年にロサンゼルス地方検事長が再調査した結果、
変化はなく、「自殺か事故」と当時と同じ判断をした。

Netflix で今年4月27日から配信。
監督はエマ・クーパー。

マリリン・モンローが亡くなって、今年でちょうど60年