青色色素「デルフィニジン」
サントリーが開発した青いバラ、よく見ると青と言うより藤色に近い。これは青い色素の中にわずかに赤い色素が含まれているから。白いバラに青い色素を水に混ぜ、水を吸収させた方が真っ青になる。この方法はスイトピーなどでもおこなわれている。
遺伝子組換えにより青くなったバラの成功後、キクやユリでも青色遺伝子を組み込んで青くすることが試みられている。キクでは青色色素「デルフィニジン」が75%発色させることに成功している。だが色は紫色で、やはりツユクサや、アジサイのような真っ青にはならない。
カーネーションやバラでは、ほぼ100%「デルフィニジン」が発現しているのになぜ100%の青にならないのだろうか?
青色色素だけでは青くならない
実は花の色は色素だけで決まらない。青い色が発色するためには鉄などの金属イオンの存在、酸性かアルカリ性か、アントシアニンとはたらき合う助色素の有無など様々な条件が関係するという。例えばヒマラヤの青いケシは、デルフィニジンがなくても空のように青くなる。
チューリップで有名な富山県と名古屋大の研究グループが、チューリップを青くするには、鉄が多く含まれることが重要であることを発見した。チューリップには赤や白、黄色の花はあっても青い花はない。だが、花の奥の部分だけは青い品種があり、青くなるには細胞内に鉄が多く含まれることがわかった。さまざまな花を青くする品種改良につながる可能性を秘めた成果だ。
富山県で生まれたチューリップ「紫水晶」は、花びらの上部は紫色だが、底の部分は青色。両方の細胞を比べたら、赤や青の色を出すアントシアニン色素の種類や量、酸性度(pH)には、ほとんど差がなかった。ただ、青色の細胞では、細胞内に含まれている鉄イオンの量が、紫色の細胞より25倍も多かった。
鉄を運ぶタンパク質「Vit1」発見!
グループは青色細胞で働いている遺伝子から、鉄を運ぶたんぱく質「Vit1」を見つけた。Vit1の働きは、細胞が青くなる前に最も高くなっていた。運び込まれた鉄は色素と結合して、青を発色したとみられた。Vit1の遺伝子を紫色細胞に入れると、その細胞だけ青くすることにも成功した。
「チューリップでは、花を青くするのに鉄が関係していると考えられる」と富山県農林水産総合技術センター園芸研究所の桃井千巳・主任研究員。吉田久美・名古屋大准教授は「花で鉄がどのように運ばれているかを初めて明らかにできた。この仕組みをうまく活用すれば、他の植物でもきれいな青い花を咲かせられる可能性がある」と話す。(asahi.com 2009年12月30日)
花の4つの色素とは?
植物は花粉を運んでくれる虫や鳥を呼び寄せるためにさまざまな工夫をしている。花の色もその工夫のひとつで、虫や鳥にアピールするようにさまざまな色の花がある。
それでは、色が見える花には、どのような色素が存在しているか?花の色素は大きく分けて4種類あり、フラボノイド、ベタレイン、カロテノイド、クロロフィルがある。
なかでもフラボノイドにはさまざまな化学構造を持った色素があり、花の色に重要な役割を担っている。フラボノイドの一種である淡黄色のカルコンはコスモスの、オーロンはキンギョソウの黄色をになう色素である。
緑色の花もある
また、ほとんどの橙赤色~紫色~青色の花に蓄積しているアントシアニンもフラボノイドの一種。アントシアニンを生合成しないサボテンやオシロイバナにも赤色や紫色の花がありますが、これらの花にはベタレインが蓄積している。
ユリなどの鮮明な黄色や橙色をになうのはカロテノイド。クロロフィルは、シュンランやクリスマスローズなどの緑色をになっている。
これらの色素の量が多いと花の色は濃くなり、クロユリのように黒っぽく見える場合がある。また、複数の色素が重なって存在することで、パンジーのように部分的に褐色や黒色に見えたりもする。
さらに色素のほかに、表皮細胞の形や液胞中に含まれる金属イオンやpHの違いも花の色に影響する。
花の色は千差万別で、植物種や品種によってさまざま。皆さんもいろいろな花の色を見比べてみてはいかがでしょうか。(花き研究所 新形質花き開発研究チーム 野田 尚信)
参考HP 花き研究所「決めるのは色素」・朝日新聞「青色遺伝子バラ 2009.12.22」
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