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働かない遺伝子「リボゾームRNA遺伝子」の存在理由とは?

2010年02月24日 | ライフサイエンス
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 リボゾームの構造解明
 すべての生物の細胞の中にある、タンパク質をつくる小器官といえば何だろう?

 そう、正解はリボソームである。私たちの体はこのリボソームのはたらきでできている。今回の化学賞の受賞理由は「リボソームの構造と機能の解明」。受賞者は、英MRC分子生物学研究所のベンカトラマン・ラマクリシュナン博士(57)と米エール大のトーマス・スタイツ教授(69)、イスラエルのワイツマン科学研究所のアダ・ヨナット博士(70)の3氏である。

 3氏はX線結晶解析法を用いて、それまで不可能とされてきたリボソームの原子レベルでの構造解明に成功した。これにより、タンパク質合成に関する研究を進めることが可能となった。

 リボゾームは2つの大小のユニットから成り、それぞれが翻訳機の役割とタンパク質合成機の役割を持つ。

 小サブユニットには暗号解読センター(decoding center)があり、mRNAのコドンを1つ1つ解読してtRNA と結合させる翻訳機の役割がある。

 大サブユニットにはペプチジル転移酵素中心(peptidyl transferanse center)がありペプチド結合を形成しタンパク質合成の役割をする。

 ペプチド結合形成の触媒作用の中心的な働きは、タンパク質ではなく厳密に折りたたまれたrRNAが担っている。rRNAはリボソーム内部でコアを形成し、リボソームタンパク質は通常リボソーム表面に存在して折りたたまれたrRNAの隙間を埋めている。

 リボソームタンパク質の主な役割はRNAコアの安定化である。この他、翻訳の開始・終結地点の決定、翻訳の制御・維持などもタンパク質が行っている。(出典:Wikipedia)



 増幅遺伝子
 ほとんどの遺伝子は1細胞あたり1コピーのみ存在するが、中にはコピーを増やし転写産物量を増大させている遺伝子もある。それらは増幅遺伝子と呼ばれ、同一遺伝子が染色体上あるいは染色体外に多数並んで存在する。増幅遺伝子の代表格は、リボソームRNA遺伝子というリボソーム中に存在するRNAをコードする遺伝子で、真核細胞では数百~数千コピーが巨大な反復遺伝子群を染色体上に形成している。

 リボソームは細胞の全タンパク質の約80%を占めており、その骨格を作るリボソームRNAの遺伝子も1つでは足らず多数必要となる。しかし不思議なことに、その膨大なコピーの半数以上は転写されておらず、なぜこのような「働かない」余分なコピーが存在するのか長年の謎であった。

 今回、国立遺伝学研究所の研究グループが、全く働いていないように見えるリボゾームRNA遺伝子に、ゲノム全体の安定性を維持するという重要な役目があることを突き止めた。

 リボゾームRNA遺伝子
 リボゾームRNA遺伝子は、リボゾームをつくるリボゾームRNAをコード(遺伝暗号を指定)する遺伝子。リボゾームRNAは細胞の中にある全RNAのうちの約7割を占めている。動植物の体をつくる真核細胞ではリボゾームRNA遺伝子の数百から数千ものコピーが存在し、これは進化の過程で細胞が徐々に大きくなるにつれてリボゾームもまた多く必要になったためと考えられている。

 国立遺伝学研究所の井手聖・研究員、小林武彦教授らは、真核細胞のモデル細胞である出芽酵母を用いて、リボゾームRNA遺伝子のコピー数を減らした場合の変化を調べた。コピーを人工的に減らされた酵母は、紫外線や発がん物質などDNAに傷を付ける薬剤に弱くなることが分かった。さらにその理由を調べたところ、DNAの傷の修復に必要な接着機能が働くなってリボゾームRNA遺伝子が壊れ、その結果、ゲノム全体の安定性に影響を与え、細胞の生育を阻害することが明らかになった。

 ゲノム安定性の低下は、がんとの関係があるとみられている。長い進化の過程でがん化に対抗する手段として、リボゾームRNA遺伝子を多数存在させ、その内の大半がDNAを守るために有効なことが分かった。

 今後は、リボゾームRNA遺伝子のコピー数を減らした出芽酵母を用いた研究を進めることで、より副作用の少ない抗がん剤開発なども期待できると研究グループは言っている。 

 

参考:Wikipedia「リボゾーム」「リボゾームRNA」・国立遺伝学研究所「リボゾームRNA遺伝子はなぜ多数存在するか 

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