報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

【アブグレイブ収容所虐待写真はニセモノだ】

2004年12月11日 23時04分44秒 | ■イラク関連
アブグレイブ収容所の衝撃的な虐待は、はやくも過去の事件となってしまった。
しかし、若干なりとも写真を撮っている者として、一言、あの一連の写真について触れておきたい。

あれは、ニセモノだ。

正確に言うと、虐待はホンモノだが、「記念写真」はニセモノだ。

【ブッシュの罠】で少し触れたように、あれは、政治的な目的で意図的に撮影されたものだ。そして、「意図的に流出」させたものだ。
虐待写真の「暴露」は、ブッシュ政権から米国選挙民に対するメッセージ(罠)だ。
「わが軍隊はこんな非道な虐待もしています。いやならケリーに投票してください。私を再選させたら、今後も起こります。そしてその責任は、私を選んだアメリカ国民にあります」と。
もちろん、ブッシュは大統領選挙に勝つための、あらゆる対策ができあがっていたから、こういう離れ業ができた。(評論【ブッシュの罠】参照)
また、アラブやイスラム教徒の憎悪を煽るのにも、たいへん効果的だ。怒りを増幅させ、どんどんテロを広げて欲しい。そういうブッシュ政権の計略もこもっている。

あの「記念写真」のどこがニセモノなのかを、はっきり証拠を示すことは無理だ。あくまで僕個人の直感だ。

ただ、あのような「記念写真」には、ベトナム戦争で数多く接してきた。
アブグレイブの写真は、衝撃的だが「臨場感」がない。虐待をしている人間の、荒んだ腐臭が写っていない。抽象的だが、そう言うしかない。
いわば素人モデルを使った、にわか写真だ。非道な虐待があったことは、まぎれもない事実だが、一連の写真は虐待の現場写真ではない。全体があまりにもちぐはぐな印象を受ける。虐待を受けるイラク市民の極度の緊張感にくらべ、虐待する兵士に余裕がありすぎる。確かに、虐待する側は余裕だろう。しかし、人間が他者に虐待や拷問を加える時は、少なからず異常心理状態になっているはずだ。あの虐待兵士二人は、どう見ても「平常心」だ。
事実、あの一連の写真に写っている二人の兵士は、『命令されて、そこに立った』と証言している。
訳も分からず、ただ単に命令に従っただけだから、あのような表情になるのだ。

徹底的な「報道管制」を敷いてきた米軍内部から、虐待写真が流出するなど、絶対にありえないことだ。
暴露したつもりが、実は暴露させられていたに過ぎず、「ブッシュの罠」のお手伝いをしただけの結果になってしまったのだ。
ブッシュの足をすくったつもりが、実はこちらがころころ手玉に取られていたにすぎない。一事が万事そんな調子だ。ブッシュ政権のメディアコントロールは実にきめ細かい。

セイモア・ハーシュにCD-ROMを渡した兵士は一体誰なのか。
軍内部で問題にされたのかどうかも、伝わってこない。
ジョージ・W・ブッシュと彼の政権を侮ってはいけない。

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