電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

蕩寇灘 その一

2009-09-22 22:05:16 | 呉思遠と思遠影業
陳星の登場ですよ(笑。

この映画を製作した富國影業は設立が72年だそうである。最初の作品が72年に公開されたということで公には72年で通っている。実際には71年から活動していたのではないかと思う。(後述)

創業から1本で終わってしまう会社が多い中、富國影業は『蕩寇灘』がヒットして立て続けに「危うし!タイガー」『餓虎狂龍』などを製作する。ここで呉思遠は最初の数本こそ関与しているものの残念な事にある時期から外れてしまっている。また活動は74,5年ぐらいまでのように見える。(関連会社の帝國影業も同様)その後はブーム下火になった頃そのまま会社が潰れてしまったのかもしれない。

しかし、この富國影業の作品群は数はあまり多くはないものの功夫ファンにとっては魅力あるものばかり。その第1作目の創業作品が『蕩寇灘』だったという事で今回取り上げてみます。

この映画について色々と周辺を見ていると徐々に巨大な影が見えて来ますが、不思議と付きまとうんですよね。何だろうこの影は。(読むと分かると思います)

既にコレを見ている方は多いのではないでしょうか。実は私、今日がはじめての鑑賞。(ワイドスクリーン仕様で割と綺麗な米国製DVD。英語音声)これまで他の人のブログ記事などを拝見してどんなものかと想像などして楽しませてもらっていました。もしかしたら北京語版ビデオが存在するかもしれないですが、現在視聴できるのが英語のDVDしか出回ってないのはどうしてなのだろう?

倉田さんの本なんかを読むと香港で大ヒットしたそうなんだけど、その割には今まであまり目にする事はなかった作品ではあった。別の本によれば香港の72年度ランキングで「馬永貞」に次いで第6位とあった。(聖書のひとつ、香港電影百科より。)その魅力については後編その二で探ってみたい。

どのように作られたのか?私の場合は必ずといっていい程ここから入る。
(と言っても映画のプログラムを見る感覚でしょうか。未公開なら最初は自分で調べるしかないですからね。)

まず製作72年とあるが、71年中から製作が開始されていたものと想定できる。(時期は資料を調べても不明であるが。)
主役の陳星は邵氏で「龍虎闘」等何本かに出演した後、71年に張徹の「拳撃」「悪客」に出演する。この時は陳星のほか、于洋も加わっていたという事から同時期に富國作品へのシフトが濃厚ではないか?時期的には陳星の髪型などから「悪客」の少し後ぐらいではないかと思う。

また邵氏絡みでは(ホント多いなぁ。何かといえばすぐに邵氏である!)数年後に邵氏で活躍することになる汪禹も参加、本編の随処で顔を見せていた(冒頭のシャム・ウェイら警官隊に混じってその一員としても出演)。彼もワン・ユーまたはワン・ユエとして現在名が知れていますから劉家良の『神打』での主役をゲットする三年前の姿が見られる貴重な作品になるだろうと思います。

さて、主演の陳さん。
誰がどこから引っ張ってきたの?って素朴な疑問がありましたが・・。






陳さんって、もちろんチェン・カンタイの事ですよ。

ほらこの通り。主役の映画みたいですね。




ねっ、言ったでしょ。


とまぁ冗談はさておいて、もう一人の邵氏経験者の詳細を調べてみると当時の状況はこういうものだった。

陳観泰は何と『蕩寇灘』撮影中、邵氏と「馬永貞」の出演契約、そして専属契約を結んでしまうのだ。(この契約には期間内は他会社作品へ出演してはならないという項目が含まれており途中だった『蕩寇灘』も該当した。)この契約に勿論呉思遠は黙ってはいられず、邵氏へ乗り込んだという。

ちょっと考えられない話だが、呉思遠は『蕩寇灘』公開までこの話を明かさなかった。(実は当時の香港では馬永貞に関する別の騒動が勃発していたのだ)

陳観泰に取ってみれば邵氏での主役獲得の絶好のチャンスであり、無理にでも契約に漕ぎ着けたかったのでしょう。途中降板してしまったのにはそんな事情があった。のちの香港映画でも覆面をかぶった別人が代役を・・等々の話も良く耳にしたが、『蕩寇灘』の一部シーンも既知の通り代役で出来ていますね。そんな話もあって追加撮影や編集作業に時間を要した為、公開が遅れてしまったようです。(結果的に「馬永貞」公開より数ヵ月後に。。よって、『蕩寇灘』の撮影開始は「馬永貞」より前になる)

でも大ヒット!!ヒットして良かったね。上記の広告(何時のものかは不明)は領銜主演になってはいますが単独で扱われているので「馬永貞」でブレイクしたチェン・カンタイの人気ぶりが窺える新聞広告だと思います。

ちなみに呉思遠は話を大きくしたくない為に許したそうです。やはり相手が悪くまだ強大であったということか…。

さて、この時呉思遠に借りが出来てしまった陳さんだが、その借りはいつか返せたのだろうか?

(つづく)

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2 コメント

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Unknown (ニャー)
2009-09-23 08:56:36
蕩寇灘、おもしろそうですね。
タイトルは以前から知っていました。
いつもながら、醒龍さんの考察は
とてもおもしろくて勉強になります。
返信する
チェンカンタイ (醒龍)
2009-09-23 20:34:11
ニャーさん、こんばんは。

ブレイク前のチェンカンタイに注目してみるのもいいかも知れませんね。これが最後になる様なんですけど他にもGH作品などに顔出してますのでいろいろ見てみると面白いと思いますよ。まだ続きますのでお楽しみに。
返信する

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