電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

笑太極

2007-12-24 13:13:22 | TV放送作品
今年書きました記事を振り返りますと嘉禾作品や好きな映画ばかり並べ立てていましたが、ここで少々懐かしいところの作品を。年末の暇つぶし読み物としていただければと思います。

「笑太極」は、1985/7/1(月)に初放送され、特番が組まれていたのを覚えています。その後も、その年の大晦日に再放送されるとあって最初見たとき面白かったのでエアチェックもしていたと思います。(テープもどこかに残っているはずです)

オープニングは屋良有作さんによる太極拳についての解説のナレーションで始まっていたのですが、この映画は御存知、甄子丹(ドニー・イェン)のデビュー作品。 ドニーは古川登志夫さんの吹き替えでした。この古川氏の吹き替えが映画を盛り立てていたと思います。

甄子丹は今でこそドニーと呼ばれていますが、当時はヤン・チータンと呼ばれておりました。この作品で彼のキレの良いカンフーアクションが強烈に私の脳裏に刻まれました。

80年代に入り、監督の袁和平は新しいものを・・・ということで、この作品では太極拳という”北派スタイル”のアクションを新しく取り入れた袁家班の映画でもあると思います。

ドニーの著書、"DONNIE YEN'S ACTION BOOK"では、ドニーに言わせれば、袁家班の振り付けは動作の自然な流れに合わず、不自然な動きを要求されることが多くて相当ハードだったそうです。その結果、映画的には優れたアクションとなっていました。

この本は、香港映画におけるアクションとは何であるのかを考えさせてくれます。
“戦う”ということ。スポーツにおいては、全てが戦いでありますが、1人の人間同士がぶつかり合って勝負をするものならボクシング、空手、柔道、相撲、レスリングなど多種多様ですね。
格闘アクション映画となれば、なんらかのストーリーを持ち、アクションシーンを見せ場として描いています。
通常、カンフー映画では1対1ではないにしても”ストリートファイト”を見せている事が多いと思います。

タイマン勝負より主人公が多くの相手をする方が多いカンフー映画ですが、NGを出しながら何度も何度でもOKが出るまで(つまり最善を尽くして)アクションシーンを完成させます。
やり直しが利かない現実の対決(例えば格闘技、ボクシング中継など)は見せ方を意識していたとしても1回きりの勝負です。生の面白さはやはり真剣勝負。これにあると思います。

では、映画の場合どうなるのでしょうか?取り直しが出来るから、アクション監督によって決められたことを演者(表現者)は演じなければなりません。
役者が出来なければ代役(=ダブル)を用いることになります。
現実の真剣勝負では代役など考えられません。本人同士による対決。それをリアルタイムでその“戦い”の現場を見ることが出来れば最高ですね。その興奮を見ようと会場へと足を運ぶんですね。

映画の本編では何度やり直したとしても
その過程が本編に映し出されることはないですね。(NG集などで見ることは可能)いかにも現実の対決を見ているようなリアル感を出せていれば、それはアクションシーンとしての水準もより高くなり、より完成度もアップしてます。しかし映画も演者には見えない観客がいるのですね。

ただアクションシーンには見せカット、捨てカットがあるそうで観客は見せカット100%を期待しているのかも知れませんが、そうでなくとも全体を通して許容出来る内容であるかではないかと思います。

この本ではアクション映画の担い手として製作者以下、監督、スタントマンまで実に明確に列挙し現場で使われる用語の説明までも記述されています。
アクション映画を実際に製作しているドニーが語っていますので、読めば香港アクション映画を見る目にも変化、幅がきっと出てくると思います。

ちなみにこの本は谷垣健治さんが監修されていますが、やはりこういった本の出版には事情の分かる専門家の方が監修者となって解説、補足したりする必要があると思いました。流石だと思います(あとがき参照)。谷垣さんお疲れさまでした。

最後に「笑太極」の好きなシーンは、素晴らしいアクションを演出していたラストのドニーが盲目となった時のアクションシーンでした。(ちなみに私の一番好きな甄子丹作品はSPLです。)

ドラゴン酔太極拳
http://www.amazon.com/Drunken-Dynamo-Black-Belt-Theatre/dp/B00005UQ7K

ドニー・イェン アクション・ブック
http://www.amazon.co.jp/ドニー・イェン-アクション・ブック-ドニー-イェン/dp/4873762596



電影フリークスはこの記事が本年最後の更新とさせて頂きます。それでは皆様、良いお年を。

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テーマ武器②”剣”

2007-12-23 22:58:06 | その他・研究
テーマ武器の2回目は”剣”にしてみました。今回もこのテーマに関する作品をピックアップして書いておきます。
本日は【嘉禾】の「名劍」から。

鄭少秋…アダム・チェン。70年代後半、テレビの時代劇や主題歌でヒットを飛ばした後、この映画でも主演したパトリック・タムによる映像美を追求した剣戟片です。

タイトルからして”名劍”という名前ですので、なんらかの言われのある剣が登場し、その剣を巡り最後まで物語が続く・・というのが想像出来ると思います。イメージするといろいろ膨らんでいきます。

その昔、私が尊敬している淀川長治先生がこんな事を言っておられました。”映画はタイトルから始まる”と。
また“映画の原名をさぐること。原名はその映画の狙いを示している。”とも言っていました。これは私のなかに深く残っているお言葉です。

タイトルからまずどんな映画なのか想像し、イメージを膨らませて行きます。原名に私が拘るのも最初は本当はどういった名前が付けられていたのかを知りたいためです。この原名(当初のタイトル)は作品のイメージに近いタイトルを表していることが多いですね。その後、様々な理由により全く異なった別の題名に変えられてしまうことが多いです。

この「名劍」の原名は「名劍恨」と”恨”が付いていました。名剣は名剣でも恨みが篭った剣ということなのでしょうが、やはり負のイメージのせいか”恨”は省かれてしまいました。

映画の導入で花千樹(田豊)は鍛冶匠(剣を扱う映画には剣を打つ鍛冶屋シーンがあるのが理想的ですね。)に寒星剣を作らせた。偶然手に入れた"齋物剣"の打ち直しも同時に依頼すると、これは邪悪に満ち持っていては命に関わると言われてしまう…。
この2本の剣で物語は進行していきます。


アダム・チェンの主演映画では「御猫三戲錦毛鼠」「少林與武當」辺りがとても気に入っているのですが、これらの作品よりも若くキリッとした剣士を演じております。この映画での彼のイメージは青です。青から何を想像しますか?



主人公・李驀然が出会う花千樹(田豊)の娘・花盈之には徐楓の実妹、徐杰が扮してます。この映画で初めて彼女を見たのですが、個人的には彼女の”可愛らしさ”は群を抜いていると思っています。

(この美貌でしたので当時絶頂期のジャッキーが放っておくはずは・・・ないですね。)
他にも嘉禾の女優たちが艶やかさを競うように共演しています。

また、顧嘉輝の音楽もいいですね。これは内容にピッタリと合うように作られているのだと思います。ラストにはアダム・チェン主唱の主題歌が流れます。

ところでクレジットを見ますと黄鷹が原案のストーリーを書いていて、脚本にはその黄鷹をはじめ、「モンキーフィスト猿拳」の冒頭に出演した劉天賜、この他にも数名の名前が挙がっています。これだけの脚本スタッフですのでなかなか練り込まれたシナリオである訳ですね。


蛇足ですがライバル・連環役の徐少強が出演していることが不思議に感じてしまいます。この時期は羅維のところで姜大衛らと共演していたはずなのですが、この映画から嘉禾に転向したのでしょうか。

この映画を見ると、のちの映画で見られる香港映画らしさがにじみ出ているのを感じます。ただ、よく言われるように確かに早過ぎたのですね。しかし、この段階でワイヤーワークを完成させた程小東の熱意は相当なものだったと思います。

名劍という“剣”に魅せられた美青年の物語がこの映画にはありましたね。


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【嘉禾】系列発売リストVer1.03

2007-12-05 22:56:06 | ソフト情報



現在発売中の【嘉禾】系列映像・音声・字幕等の情報を募集しています。
(Joysales盤永恆的經典VCDに限ります。)

データ協力:ぽこっち様

■ロゴ
(1)稲穂
  

(2)白字
  

(3)赤字
  


(4)英字・・・「黄面老虎」で追加しました。

■新着情報
片名        公開日   ロゴ 字幕       音声  発売日
---------------------------------------------------------
小英雄大鬧唐人街74/04/05_??_中英文/??_北京語_07/10/27
三六九_____74/05/31_??_中文_/??_北/広_07/11/17
夜怪客____73/08/03_??_中英文/??_北京語_07/12/07
花飛滿城春___75/02/08_??_中文_/??_北京語_07/12/07

■【嘉禾】系列発売リストVer1.03
片名        公開日   ロゴ 字幕       音声  発売日
---------------------------------------------------------
天龍八将____71/01/22_稲穂_中文_____北京語_07/02/01
刀不留人____71/04/30_赤字_中文_____北京語_07/06/08
鬼怒川_____71/05/12_稲穂_中英文/焼付_北京語_07/01/26
奪命金劍____71/07/28_赤字_中文_____北京語_07/06/28
鬼流星_____71/08/11_赤字_中文_____北京語_07/05/11
追撃______71/10/07_稲穂_中英文/焼付_北京語_07/08/30
一夫當關____71/10/14_稲穂_中英文/焼付_北京語_07/03/09
金旋風_____71/02/12_稲穂_中英文/後付_北京語_07/05/23
山東響馬____72/03/03_稲穂_中文_____北京語_07/05/18
鐵掌旋風腿___72/06/01_稲穂_中文_____北京語_07/09/06
冷面虎_____73/02/02_赤字_中英文/焼付_北京語_07/03/09
馬路小英雄___73/02/17_赤字_中英文/焼付_北京語_07/01/26
海員七號____73/04/20_白字_中英文/焼付_北京語_07/08/17
鐵娃______73/05/10_白字_中英文/焼付_北京語_07/04/19
戰神灘_____73/07/13_赤字_中英文/後付_北京語_06/09/06
?拳震九州___73/09/12_なし_中英文/後付_北京語_06/09/06
五雷轟頂____73/10/11_赤字_中文_____北京語_07/06/08
龍虎金剛____73/12/21_赤字_中英文/焼付_北京語_07/04/13
黄飛鴻少林拳__74/01/22_赤字_中英文/焼付_北/広_07/03/22
七省拳王____74/02/06_なし_中文_____北京語_07/07/12
福建少林拳___74/06/14_赤字_中英文/焼付_北京語_07/08/29
虎辮子_____74/07/05_白字_中英文/焼付_北京語_07/08/23
綽頭状元____74/07/18_白字_中英文/焼付_北京語_07/08/23
鐵金剛大破紫陽觀74/08/02_赤字_中英文/焼付_北京語_07/05/23
黄面老虎____74/08/16_英字_中英文/焼付_北京語_07/10/18
中泰拳壇生死戦_74/09/28_白字_中英文/焼付_北京語_07/05/23
女子?拳群英會_75/03/15_赤字_中文_____北京語_07/05/11
艶窟神探____75/06/12_白字_中文_____北京語_07/06/08
鐵漢柔情____75/09/12_赤字_中英文/焼付_北京語_07/06/28
密宗聖手____76/02/20_赤字_中文_____北京語_07/01/25
鰐潭群英會___76/09/16_白字_中英文/焼付_北京語_07/05/23
破戒______77/12/03_赤字_中文_____北京語_06/07/12
貂女______78/03/16_白字_中英文/焼付_北京語_07/08/29
壞小子_____80/04/17_赤字_中英文/後付_北/広_07/09/29
粉髑髏_____82/04/02_赤字_中英文/後付_北/広_07/09/29
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アンジェラ茅瑛

2007-12-02 15:37:41 | その他・研究
茅瑛の初期作品を並べてみますと、まだライトが当たっていないものがあると思います。
(例えば「黒路」やゲスト出演ですが「馬路小英雄」など。これらもいずれ注目されることもきっとあることでしょう。)

70代初頭の作品群は一部劇場公開もされ、そのタイトルは知られていると思います。
(皆さんお待ちかねの作品ばかり!来年も良い年になりますね。)
ここでは後半に当たります「怒馬飛砂」や「舞拳」その他についてざっと書いておきます。

ここでちょっと脱線しますが、昔は日本の映画会社に映画を売却して劇場での公開が当たり前だったのですが当時は熱心な香港の商売人も売りに出さなかった映画も山ほどありますね。当時は大きな製作会社(邵氏や嘉禾など)なら分かりますが小さな会社は日本市場に売り込み不可、未公開に終わっているものが殆どです。こういったものが見れる機会は来るのでしょうか?ビデオが全盛だった頃もまだそんなに昔の話でもないですが家庭用のビデオデッキが登場した時、映画会社は訴訟を起こしたそうです。現在では考えられない話ですが、今は映画をDVDとして売る時代。ビデオ⇒DVDにあっという間に変わりましたね。DVDの次はどんな時代に突入するのでしょう??


さて「怒馬飛砂」は79年製作(77年説もあるようです)で、茅瑛と白鷹が主演扱いで王道も共演しています。(ちなみに凌雲が王子に扮しています)

凌雲VS王道

馬術競技の行われる地で起こった騒動と宿屋に集まる旅客たちの人間模様を描くドラマで香港で未公開とされる作品です。馬を駆る場面がとても印象的で「密宗聖手」の影響も受けているとも思える作風となっておりますが、ただ比較的無名のスタッフ、出演者で構成されているようです。
ラストは衝撃的ですが、茅瑛はここで蛇拳を披露してます。


そして次の「舞拳」は陳誌華監督のもと、ジャッキー武術指導で製作され
同監督作品の雰囲気そのままに完成した貴重な映画です。
この作品のポスターがジャッキーが指導している場面が散りばめられた物だったのは重要なポイントでした。
本編を見れば陳誌華の映画だと分かると思います。(特にオープニングの赤バック演舞には安心感をも感じてしまいますね。)

ジャッキーが羅維から離れ「師弟出馬」の直前に撮ったものでしたが、茅瑛がジャッキーの“拳”スタイルに挑戦した作品となっていたのはやはり流行りだったのでしょうか。
おそらくこれが唯一の作品となっていると思われます。

しかし、原点に戻って【嘉禾】の第1作目「鬼怒川」で黄楓監督と出会った事が彼女にとっては一番大きいはずです。(「鬼怒川」より)

黄楓への信頼、尊敬心から入れ込み具合は他の監督とは確かに違っていたと思います。
ご本人の言葉でどんな人だったのか聞いてみたいですね。

その黄楓作品ラストの「浪子一招」(78)も押さえておきたい一本です。(シリアスドラマですが香港映画ファンならかなり楽しめる時代劇。火星VS金剛は必見で、あのカサノバウォンも出演!)展開は天中拳を彷彿とさせます。


最後に、私の一番好きな茅瑛作品ですが、胡金銓作品も忘れてならないところですが、実は「破戒」でした。
アンジェラ茅瑛。彼女も70年代に輝いたスターで私の心に残っています。
(「怒馬飛砂」より)
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