電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

綽頭状元(5)

2007-08-27 23:58:22 | 嘉禾電影
結局、社長の王は5万ドルの小切手を寶玲に渡した。寶玲は今夜会いに行くからと王を帰らせた。小切手を手に入れて喜ぶ寶玲と伍。怪しまれず何とか成功したのだ。カモを見つけた者の勝利である。面白くない顔の辛(李昆)がボーっとしている。
「何してるのよ」と妻の寶玲が言うと急に辛は泣き出してしまった。
「私達成功したのよ。なぜ泣く必要があるの?」
「女房を失って金が何だっていうんだ」
「ここにいるじゃない、バカね。社長に多く出させるための芝居に決まってるでしょ。私はあなたにゾッコンよ!」
寶玲は頬にキスしてあげた。辛は大喜びして外に走り出そうとした。今日の祝いの酒と料理の調達をするつもりだが伍に死人だからと制止される。金をもらった伍は代わりに出て行った。

すると部屋の奥でどこかへ電話する寶玲。「チャンスよ。今から言う通りにして」どうやら男に電話していたようだ。辛が部屋に入ってきた。顔が緩んでしまう。
「うれしそうな顔してどうしたの?小切手を渡しましょうか?」
「俺はいいダンナだ。女房に任せるよ」
小切手をタンスの宝石箱に仕舞った。そこで不敵な笑みを浮かべる辛。
「今日はうれしいな」「だから何よ」「つまり…、その…、いいでしょ」「昼間から?」いやがる寶玲をベッドに押し倒す辛。そこへ劉(劉永)が訪ねてきた。
どうしてここへ来たんだと辛が聞くと、「兄貴、俺は死にたいよ」いきなり話を切り出した劉。「死ぬ?なぜだ?」と聞き返す辛。さっきまで自分が同じ事を言っていたのにである。劉の父がアメリカからやって来るが結婚すると言ったから金を持ってくるらしい。来たら嘘がバレてしまうというのだ。嘘と分かれば金はもらえない。商売の夢も終わりだと絶望的になる劉。何かいい手はないものかと辛に持ちかける。せっかちだが頼まれると弱い辛は小さな商売なら元手は貸すと言ってしまう。しかしこれには横から寶玲が怒りだした。今の生活はその日の食事も困っているからだ。仕方なく諦めてくれと頼み込む辛。劉も今日を乗り切れば父は帰ると言った。

「それは本当か?」その一言が辛に響いて何かを思わせ心を動かした。「女房を貸そう!」とキッパリ。「バカ。どこに女房を貸すダンナがいるのよ」そうは言っても頼むからお願いと黙って見過ごせない辛。断固お断りと寶玲も引かない。「父と食事だけしてくれればすぐお送りしますので」劉が念を押した。じゃあ食事だけと寶玲はついに承諾する(これも芝居)。支度を済ませて嘘の食事に行く2人を見た辛は、お互いどう呼び合うか気になり、夫婦らしい会話をするようにと指南した。そして部屋に戻る辛。

やっと辛を振り切って2人っきりになれた寶玲と劉は道でイチャつく。そこに酒を買ってきた伍が帰って来た。「お出かけですか?」と寶玲に声を掛けると軽く会釈だけしてすれ違った後、すぐ走り出した。

伍が戻ってみると家には辛が居るだけである。
「奥さんは?」
「貸し出した。。」
「借りられるの?!」と漫才のような会話をする2人。
兄弟分だからいいんだと辛は説明する。「今日は嬉しい日だ。2人で飲もう!」「よし!」と飲み始めた。じきに酔ってきて歌を歌い出す伍。またまた面白くない様子の辛。時計を気にして帰りが遅い寶玲を待っているようだ。これはおかしいと思う伍。
「ところで誰が貸すと決めたんだ?」
「俺が無理に行かせたんだよ」
それを聞いた伍はまずい話だと確信する。頭の回転が早い伍は全てお見通しである。
「あの2人アツアツだったぞ」
「そんなことないさ」
「小切手はどこだ?もう無いかもね」
「まさか…。」
慌てて宝石箱を見に行く辛。やっぱりカラッポだ。おまけに宝石までなくなっている。
伍の言った通りである。全部嘘だったと分かってガッカリ。
そして居場所はわかってるからと寶玲達のあとを追う辛だった。

ーつづくー

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龍之忍者

2007-08-25 23:57:05 | 呉思遠と思遠影業
「ラッシュアワー3」を近所の映画館で観て来ました。当然ながら事前に情報を耳に入れないようにして鑑賞しました。(もちろんビッグな2人の共演は聞いていましたが。)個人的にはハリウッドの娯楽映画として満足のいくものだったと思います。

その昔、これはもちろん共演とはいかなかったのですが、同時上映という形式を取り「龍の忍者」の真田広之と「蛇鶴八拳」のジャッキーを同じスクリーンで時間をずらして見た事がありました。その時の興奮を味わうとかそんな大袈裟なものではありませんが、それから20数年経過して待ち焦がれた夢の共演でもあったのです。

今度こそ正真正銘2人が同じ映画で対決する場面を直視し、しっかりと目に焼き付けて来ました。この「ラッシュ3」のパンフレットには興味があったのですが、やはり真田の関連記事でその「龍の忍者」に言及しているテキストは無論ありませんでした。(出演作としてのみ紹介)

しかし「龍の忍者」を再度クローズアップして忘れ去られてしまった真田の勇姿を思い出す良い機会ではないでしょうか?当の私は観たい衝動に駆られてしまいました。これは皆さんがいつも御覧になっているものでいいと思います。

てっとり早く観るには東映から出ていたビデオがいいですね。レンタルビデオでもしかしたら借りることが出来ると思います。(こちらは劇場公開版)都内の大手ショップにもありました。

今更ですが「龍の忍者」には忍者映画に香港のテイストが加味されオープニングから気合いが入っていたと思います。(ショーコスギ「燃えよニンジャ」のオープニングをも凌駕していたと思います。)ここまで斬新でスタイリッシュなオープニングがあったのかと。私が香港映画の素晴らしさを教えてもらったのは、まずこの「龍の忍者」のオープニングだったと言っても過言ではありませんでした。(若い世代を魅了する麻薬的要素を秘めていたという意味です。)

また韓国の黄正利が素晴らしい足技も披露していたと思います。彼が出演していたこともあり、この映画は韓国でも公開されましたが、ロビーカード(画像参照)を見ると、この韓国バージョンにしかないシーンが含まれている可能性が高そうですね。残念な事に未だ全貌が明かされていないのですが、もしかしたらその映像はもう現存していないのでは?と思ってしまいます。

黄が登場するあたりからコミカルな要素が強くなりますが、ここから展開が急変することになります。娯楽を追求する為、呉思遠は神打王のシーンを入れたそうです。この部分、賛否両論で意見が分かれるところですが私はどちらでもいいのではないかと思い始めています。気になるのはそうした議論よりもこの映画を現在、日本人が馴染みのある日本語バージョンでは鑑賞できないという状況が残念に思えて仕方ありません。

最近は旧作香港映画のDVDにも過去の音声や新規録音により日本語が収録されるようになってきています。この状況はメーカーサイドの理解により間違いなく変わってきています。こうした背景にはやはり視聴する側の要望が強かった為であると思うのですが、本当に良い方向性だと思います。


コメント (4)
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綽頭状元(4)

2007-08-25 16:18:22 | 嘉禾電影
場面は変わって香港。街で手相を見てもらう辛極貴(李昆)。占い師から眼鏡をはずすように言われる。しかし辛の顔を見てもなかなか言おうとしない。よっぽど酷いのだろうか。正直に言いますとやはりこれから悪い事を言おうとしている占い師。そして額に危険の相が出ていると占った。せっかちな人ですねと性格まで当てられる辛。更にもっとせっかちな人に会ったら命が危険になると辛を驚かせた。占い師はこの道30年なのだから信じなさい、性格を変えれば災いは去ると助言するのだった。

浮かない表情の辛は気分を変えようとレストランへ入ってみた。早速、排骨麺を注文すると、待ちきれずに早く早くと店員を急かしまくった。まったく落ち着かない辛。やっと店員が運んで来るとブツブツ文句を言う店員。早く食べろとこちらもせっかち。しかし熱くて食べられない。店員はブチ切れて器をひっくり返し、さっさと器を洗うからと持っていってしまった。自分よりせっかちな店員である。辛は気付いた。これで死んでしまうのかと怖くなった辛は店を飛び出した。

急いで家に帰ると妻の寶玲(恬女尼)を怒鳴って呼んでいる。
「どうしたの?」
「俺は死ぬ。自分よりせっかちな人に会ったからもうおしまいだ」と泣き出してしまう。もうこの先絶望的で困りはてる辛。するといきなり寶玲が鞄に荷物を詰め出した。「あなた死ぬんでしょ?私再婚するから」と言って辛にすっかり嫌気がさしている。
「まだ死んでないよ」
「それはないでしょ」
「どういうこと?」
「いいわ、聞かせてあげる。若くてきれいなのに貧乏な暮らし。やっと死ぬまで待ってたのになにがいけないの!」と逆ギレされる。慌てるなと言っても、もう待てないと呆れた表情。今すぐ死んでも遅いぐらいと相当な剣幕である。「何かしたか?」「女房も養えないで私ならとっくに死んでる」と言う妻。そこまで言うなら死んでやると辛は家を飛び出した。

辛は死んでやると港で大きな石を縄で縛りそれを体に括り付けてそのまま海へ飛び込もうとしていた。しかしドジな辛はなかなか死ぬことができない。近くのベンチにいた伍は止めに入る。
「自殺は犯罪だぜ」
「ほっといてくれ。俺は泳げるんだ。石がないと死ねないじやないか」
「何が悩みなんだ?」
「手相で死ぬと言われ、女房からも言われるし生きていられるか」
「占いを信じるな。奥さん美人かい?」
「美人だ」
「なら死んじゃいけないよ」
辛を助けた伍。家まで送ってあげようと辛と友人になった伍は港から連れて帰った。

家に帰って辛は、早速妻の寶玲に伍を紹介した。部屋にかざってある絵の話をする伍。辛は売れない絵書きだったのだ。いい絵じゃないかとほめる伍。いや一銭にもならない、売りにいっても売れなかったと妻。本人が死んで初めて価値が出て売れると言うと「誰が言ったんだい?」と伍が聞いた。どうもどこかの社長が辛が死んだら全部買い取ってくれるらしい。鼻をこすり少し考える伍。すると簡単なことだ、死ねばいいと話す。妻は「ほらね、みんな死んで欲しいのよ」言った。しかし、それは誤解だった。死んだふりをするだけと言ったら辛と妻は驚いて絶叫した。

そして、王社長(梁醒波)が訪ねてきた。泣いて芝居をする妻と死んだフリをする辛。しかし役立たずと言われ辛が怒って起きあがろうとする。動いてはいけないところだが性格上それは無理というもの。伍がうまく誤魔化している。王は辛の妻にまだ若いから心配ない、誰かが面倒みてくれるよと言った。すると絵を買う約束だからと妻が言うと「もちろんだよキミィ。」と王社長。「全部で何枚だねぇチミ?」7、80枚ある絵は全部買ってもらう約束だ。「兄はいい画家でした…。」ってまた誰かの弟になる伍。「分かっとるよ。そうでなきゃ買わん」あとは値段の交渉である。1万、2万とつり上げる妻。もう少しとウインクする。じぁあ3万だ。小切手をきろう。「でも3万って安すすぎないかしら…。」更にふんだくる。「絵だけじゃないわ。ほかにも…。」とはっきり言わない。

「何かね?」
「私には価値がないかしら?」
「じゃあいくらかね?」
「5万でどう?」
「2万は手付けだね」
「わかってるわ。言わないで」
葬式が終わったら自分の家に来させるつもりの王社長。
「あなたのものよ。」
「君は利口だよ。あの男よりわしの方がいいにきまっとる。」
それを聞いて黙っていられない辛は、後ろを向いているすきに起きあがって王の頭をポカンと叩く。またすぐ死んだふり。
「なぜ頭をぶつの?」と聞く王。
「愛情表現よ。好きなの。早く書いてよ」と何とかして小切手を書かせようとする寶玲だったのだが…。

ーつづくー

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綽頭状元(3)

2007-08-21 23:58:08 | 嘉禾電影
マカオで一番大きなカジノ。しかし伍はあっという間に大金を使い果たしてしまった。ついてない。また一文無しに逆戻りである。

一方、すっかりホテルのオーナー気分になっている鄭は業者に改装の指示を出していた。
企画書まで用意して、ホテル業というものは時代の流れに追いつかなければいけないと熱心なご様子。入り口は豪華にして、むき出しのパイプを隠したり見栄えを良くするためにここの壁はイタリアの大理石にしようとか窓も安っぽいから交換するようにといった具合だ。何も知らない魏は不思議そうな顔をしていたが黙って様子を見ている。鄭はさらに客室は全室冷房完備にして絨毯も高級なものに交換しよう、金はいくらでも出すからと言い出した。

「何の話かね?」魏がついに口を開いた。「改装するんですよ。じゃないと客が来ないですよ。」「あなたには無関係でしょう。」と返す魏。「私のホテルだ。私の勝手じゃないか」まだ伍に騙された事に気付いていない。「このホテルを私に売ったね?」まさかの表情の魏。「先祖代々続いたホテルを手放すものか。頭がおかしいのか。」それなら証拠もあると言う鄭に「あぁ、出してもらおうか」と魏。「昨日2万渡して数えたじゃないか。」確かにそうだった。「ほら見なさい!」と鄭は勝ち誇った顔をした。しかし「あれは伍に返した金だろう?」と反論する魏だが、ホテルの印鑑を押した証書を突きつけられ唖然とする。鄭は紙に触らせないように見せると「これを誰にもらった?」
「伍だよ。あんたの弟だろ。」と鄭が言うと「やめてくれ!私の苗字は魏だ。そんな弟はいない。もう帰ってくれ!」
ホテルから鄭を無理矢理追い出そうとするが、ソファーの代金ももらっていないしそう簡単に引き下がらない。外で口喧嘩がはじまった。

そこに伍がちょうど戻ってきた。どうもホテルの様子がおかしい。この騒ぎに警官も駆けつけたのが見えた。見つからないようにさっと陰に隠れた。すると彼女の苗が伍は悪い人じゃないと鄭に謝っている。お金は返すから今度だけは許してと言ったところで許してもらえるはずがない。それより弁償しないと告訴すると魏に突っかかる鄭。「私を知らないのか。」「出るとこ出るぞ!」「こっちのセリフだ!」「おととい来やがれ。」と凄い押し問答だ。さらにエスカレートする2人は、つかみ合いの喧嘩に。暴力はダメと警官が制止してようやく治まった。

ここで伍はマカオを脱出するしかないと考えた。だが問題はその手段である。伍はすでに香港行きフェリー乗り場の入口に立っていた。何かいいアイデアはないかとひとり悩む伍。そこへ有名人の黄楓(本人)がタクシーから降りてきた。ちょっと頭をひねると何か閃いたようだ。「黄楓監督!」と声を掛けると慣れ慣れしく、お久し振りと言いながら握手する伍。「どちらへ?」「これからロケなんだよ」と黄楓。伍はまたいつもの手で自分が払うからと黄楓に切符を2枚買わせてしまう。どうしても払おうしている様子が滲み出てとてもいい演技だ。無事フェリーに乗った2人。「映画っていい商売ですよね」「いや大変ですよ」と黄楓。「遊ぶだけで金が転がり込むでしょ」「ご冗談を」とジョークで笑わす伍。
しかし、顔に見覚えがなく名前も思い出せない黄楓が「誰でしたか?」と尋ねると「忘れたの?伍徳全です。」と名乗った。「どこで会いました?」「ひどいなぁ。3、4年前に会いましたよ。」と言ったところで腹痛におそわれたフリをしてその場を退散する伍。変だな。向こうは知ってるのにとパイプを銜えながら不思議がっている黄楓は「あなたの顔は有名だから騙されたのさ!」と乗客に教えられるのだった。

ーつづくー
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綽頭状元(2)

2007-08-20 23:52:42 | 嘉禾電影
ホテルから何とか逃げ出して外へ出た伍は、今日も一日何とかして金を稼ごうと街を歩き始めた。近くの家具屋で何やら楽しそうな会話が聞こえてきた。「これだ!」パチンと指をならす伍。店主の弟、鄭(鄭君綿)が20年ぶりにマカオに戻ってきたところだった。東南アジアでかなり成功したらしく豪快に葉巻をスパスパと吸っている。伍は店主(房勉)に家具を買いたいと話す。何が買いたいのか店主が尋ねるとソファーが欲しいという。しかも100セット!。いきなり信じられない数量の注文で店主も驚きを隠せない。伍はホテルの内装を変えたいからと言って店主を納得させた。すっかりオーナー気取りである。
この話を聞いていた鄭は興味深々、透かさず割って入る。「ホテルをお持ちなんですって!」伍は名前を聞かれ「マカオじゃちょいと知られた伍だ。」と答える。これから何か商売をはじめるつもりの鄭は、この儲け話を逃す手はないとかなり乗り気だ。「是非話を聞かせてくれ」とせがむ鄭。伍は食事をおごるからと気軽に誘ってみた。

レストランで乾杯する2人。商売が成功したら御礼は必ずするからと鄭は約束するが「明日11時、ホテルの下見が先だ。」と伍は話を自分の方向へ引っ張る。作戦はこのまま伍のリードでテンポ良く進行していく。豪勢な食事に満足すると、伍は「お勘定!」と店員を呼んだ。金など払うつもりもないのにである。鄭は「ここは私が…。」と喜んで金を払うのだった。

伍がホテルに帰ってみると上機嫌の魏が待っていた。ロビーには新品のソファーのセットが早速届いていたのだ。大喜びの魏に「贈り物だよ。」と伍。このホテルには勿体ないくらいの何千ドルもするソファーである。「3000ドルだ。」「凄いな。どうしてこのソファーを?」と魏は聞き返した。伍は「人間、大切なのは友達さ。」と話し、部屋代溜めても良くしてくれた恩返しであることを魏にアピールした。ソファーに腰を下ろして話を続ける伍。「父が助けた男が成功して金を返してくれるんだ。」今時珍しい善人である。しかし伍は好意を無に出来ないと訴える。そこで頼みがあると伍は切り出す。「何でも言ってくれ。」魏はすっかり信用して気分を良くしたようだ。「金の勘定がヘタだから明日代わりに2万ドル受け取ってくれ。」さらにクリーニングの伝票をなくしたと魏を騙し、事務所のハンコを白紙に押した。あとで契約書を偽造するためである。

翌朝、約束通り鄭がホテルへやって来た。すぐさま魏に紹介し、彼女(苗可秀)も一緒に下見をさせる。伍は気に入ってもらえる様にと口八丁手八丁でホテル内を案内した。そして伍が自分で借りている部屋をあたかもショールームのように説明した。伍は彼女をいつものところで待つようにと言って退席させてから、一気に話し始めた。いつか一緒に香港へ進出しようと将来の夢を語り始めて鄭をその気にさせてしまう。契約も難なく承諾させると鄭に手付金として2万ドルを払わせた。ホテルの事務所で予定通り2万を伍の代わりに勘定する魏。全て上手くいった伍はまたまた食事をおごると言い出した。鄭は折角なので魏も誘ってみるが行きたくてもホテルを離れられない魏は渋々断った。

彼女は待ち合わせ場所の喫茶店へやってきた。すると大金を手にした伍も現れた。「人をカモに出来た奴が成功するんだ!」と誇らしげに話す伍。実はホテルを売ったと打ち明ける。彼女は捕まったら大変と目くじらを立てるがギャンブルが得意な友達に教えてもらえば必ず勝てるからそれで金を返せばいいと切り返す。彼女は「博打で儲ける人はいないわ。」と納得しない表情。「ツキが来た予感がする。」と言い切る伍。そして伍はカジノへ向かうのだが・・。

ーつづくー
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綽頭状元(1)

2007-08-19 23:06:05 | 嘉禾電影
74年の羅維監督、許冠傑主演映画の「綽頭状元」(Naughty! Naughty!)です。
コメディ作品ということでストーリーを詳しく追ってみたいと思います。
(ネタバレします。)


詐欺師の伍(許冠傑)はマカオのホテルに滞在している。今日も外出して朝になってしまった。
ホテルへ戻ってみるとオーナーの魏(魏平澳)が従業員に何か言っている。伍の部屋代が何ヶ月も未払いであることに文句をつけているようだ。魏は「金を払うまで部屋にいれるな!」とカンカンでその従業員を怒鳴りつけていた。

そんなところに伍は顔を出せるはずもなくさっと外へ出て裏へ回った。部屋へ忍び込むため、壁をよじ登りはじめる。ちょうど隣が改装中で足場が組んであったので登り易くなっていた。

女(苗可秀)のいる部屋にたどり着くと彼女は起きていて部屋の片付けをしていた。「おはよう」と挨拶してみたが、小言を言ってきた。「窓からご帰還!?」朝から一悶着である。

真面目に働くなんて無駄な事と不平を洩らす伍。でも真面目に生きなきゃダメと彼女。しかし、部屋代を払わないと追い出されてしまう。伍は「部屋代ぐらい軽いから」と言ってのけるが、眠いから今は寝させてくれと頼んだ。策は一眠りしてから考えるつもりだ。

彼女が外へ出ていこうとすると、部屋の外では魏がお待ちかね。手を出して部屋代を請求してきた。それを見た伍は「9時までに払うと言ったじゃないか。」と怒る。彼女に格好がつかない伍は知り合いに金をすぐに届けさせるからついて来いと魏を連れ出した。

滞っていた半年分の部屋代も、その倍額を払うと豪語する伍。金額を計算してみてくれと頼む。電話で知人を呼び出すフリをした伍は、魏が事務室で計算している隙に見えないように隠れてホテルを逃げ出した。

逃げた伍に感づいた魏は「バッカ野郎。文無しで戻ってくるなよ!」と言った。彼女は笑って伍を送り出したのだった。

-つづく-
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霍元甲

2007-08-15 22:00:31 | 未整理
袁和平監督の「霍元甲」です。

今まで数多くの映画、ドラマで取り上げられて来ました武術家”霍元甲”。
この”霍元甲”の呼び方ですが、皆さん何と呼んでいるのでしょうか?
ブルース・リー「ドラゴン怒りの鉄拳」では”ホ・ユアンチア”、国内版ビデオの「激突!キング・オブ・カンフー」では”フォ・ユイカン”、先頃の「SPIRIT」では”フォ・ユァンジャ”(HUO YUAN JIA表記をそのままカナ変換、発音を無視した例)
・・・と、様々で今ひとつ日本での呼び方がFIXしていないのが残念です。
音読みで”カク・ゲンコウ”でもいいですし、今後もまだまだ話題になったり新作が出て来ると思いますので早く統一、定着する方向にむかって欲しいものですね。

この有名な武術家の少年期~青年時代を描いた物語が80年代はじめ、呉思遠の会社(思遠影業)で袁和平が監督、映画化しました。
原題もズバリ「霍元甲」で81年の黄元申のTVシリーズ「大侠霍元甲」よりも早く製作開始されました。
当初はこちらも「大侠霍元甲」として80年秋頃からスタートし、途中、袁和平側の事情(袁小田の逝去、「ツーフィンガー鷹」撮影等)や思遠影業の資金繰り悪化の噂など様々なトラブル、スケジュールの関係で撮影期間は長期化してしまったようです。
結局約1年かかって82年の早い時期に香港で公開されています。

この映画の助監督3人の中のひとりには趙鷺江の名も挙がっています。
同じ袁和平監督の「奇門遁甲」でも助監督を務めているようですが、彼は、邵氏⇒富國ほか独立系⇒羅維影業⇒袁和平作品という経路を辿っていてとても興味深い人物です。

また、前述の国内版ビデオですが調べてみますと80年代後半に発売となっていました。
東北新社が作って東映から出たこのビデオはブームからやや遅れての発売となりましたが、その後、東北新社から日本語吹替版が製作されオンエアされました。(これは日本においては埋もれてはならない事実ですのでここに記しておきます。)

この時のタイトルが「拳王伝説・燃えよファイター」で霍元甲が”拳王”として登場したこともあったのです(おそらく漫画「北斗の拳」の影響と思われます)。
”燃えよファイター”というサブタイトルもなかなかだと思いますし、主人公も確かに燃えてましたので納得のタイトルでした。この吹替版では霍元甲を”ホン・ヤンチャ”とまた違った呼称となっていました。

この映画では霍家の四男であった主人公・霍元甲の少年時代を袁日初が演じ、そして青年時代は”癲螳螂”梁家仁が熱演しています。
また、倉田保昭が主人公の家庭教師(コウハオサン=江厚山。字は十郎)を演じています。倉田は「中華丈夫」に続いて中国功夫と日本武道との対決をテーマにした映画に出演しました。日本と中国を繋ぐ壮大なこのテーマには最も相応しい俳優であったと思います。
倉田が家庭教師になりすましてこっそり秘伝の霍家拳法を修得する側ら霍元甲にも拳法を教える倉田先生。得意の空手のような鍛錬を披露するシーンはかなりの見せ場ですね。
また、自分の正体を明かす場面で名刺をサッとナイフのように投げ、高飛の帽子に突き刺すシーンもユーモアに富んだ素晴らしい場面と思います。(この名刺の山口江十郎の名前に"ふりがな"が振ってあるのもご愛敬!)

時が経ちドラマは結末を迎えます。霍元甲はひょんなことから師匠の倉田と対決することになってしまいます。
このラストの梁家仁と倉田の顔の表情を見ていると別人のように変貌しており映画と言えども真剣勝負ということが伝わってきます。
二人を除いて誰もいない道場で、ついに生か死かの選択を強いられた師弟対決が始まりました。

長い激闘の末、道場から出てきたのは・・・、これはもう明白ですね。

ここでスローモーションとなり、以下のナレーションが入ります。
「つらい恩師との勝負は終わった。元甲にとって人生の転機となる戦いだった。人が無闇に無用な闘いをして血を流すのは武道の真の精神を理解していないからである。せめて中国に心身を鍛える善なる拳法を広めよう。元甲はこう決心し、流派を超えた拳法を提唱、精武道場を設立した。そして全国各地に道場を建立し、精武拳法を広く普及させたのである。英雄霍元甲は永遠に多くの人に愛されるだろう。」

伝説のファイター誕生の瞬間。それは悲しい結末でもあったのです。

(8/15修正)
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癲馬靈猴

2007-08-07 00:05:35 | TV放送作品
20年ほど前、私がテレビで夢中になって観ていましたのが戚冠軍と韓國材のコンビで送る「癲馬靈猴」(邦題:酔馬拳クレージーホース。以下、「酔馬拳」)でした。

この頃テレビで何本か放送していた戚冠軍の映画の中では他と比べて一番面白かったのですが、今思えば結構な御馳走だったのです。(武術指導も徐忠信と錢月笙だ!)
メインディッシュは特異なスタイルのカンフー(馬拳)と韓國材が見せた猿拳とのコンビネーション。
そして食卓を飾る一輪花、文雪兒の可憐な姿。もちろん味付けのエッセンスも必須で、“コミカン”には欠かせない牌九(パイガオ)と何柏光的禿頭オヤジの存在等々、全てにおいてバランスは好かったと思います。
ストーリーは多少薄い感じはあったものベテランの關海山や朱鐵和、そして葉天行、王光裕ら【邵氏】出身のキャスト(彼らは韓國材を含め戚冠軍と仲が良かったのです)でカバーし、そして音楽(BGM)も注目でした。
そのオープニングでガンガンにかかってとてもインパクトのある曲、これが71年の映画「KILL!」のメインテーマでした。

「KILL!」は72年に劇場公開されたロマン・ギャリー監督「殺し」(71)の原題で(アメリカでは遅れて74年になってから公開されタランティーノ監督も強く影響を受けた作品です)当時は仏映画として公開されていたようです。(実際は伊など多国籍映画です。)
メインテーマ(曲名は"キル・ゼム・オール")を初めとする映画のサントラは一度聞けば印象に残る曲ばかりですが、モリコーネと並び賞されたピサーノ(兄弟)とジャック・ショーモンがこの映画音楽を手がけました。

映画のサントラもCDショップに行けばコーナーがあるぐらいにジャンルとして成立していますが、ちょっとスペースは小さいですね。
私がよく読む本で「200CD 映画音楽 スコア・サントラを聴く」(立風書房刊)という本があります。映画音楽のサントラ盤が紹介されている本です。この本を読むとやはり「スターウォーズ」の存在が大きいようで、その登場前と後では映画音楽の存在価値は大きく異なっているそうです。
香港映画でもオリジナルかどうかは分かりませんが効果的に使われているケースが当然のことながらあるのだなぁと思います。

「KILL!」のサントラ盤は昨年、国内復刻盤がリリースされています。(メインテーマの別バージョンなどボーナストラック3曲付き)「酔馬拳」の文雪兒との練武シーンや、酒ガメを取り合うシーン、劉鶴年とのバトルなどで流れる挿入曲”インシエスタ”も収録されています(下記リンク先の曲目参照)。

尚、「酔馬拳」の他にも「除霸」(Fist to Fist)「南拳北腿活閻王」(The Hot, the Cool and the Vicious)でもこのメインテーマがかかりました。
他にも使用している等の情報がありましたら是非、教えて頂ければと思います。


画像:サントラ盤 URLはこちら

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「提防小手」

2007-08-04 17:58:21 | その他・研究
ジェームス・コバーンの米映画"Harry in your Pocket!"(邦題:「黄金の指」)は73年9月にニューヨークで公開されました。(洪金寶主演の「提防小手」(邦題:ピックポケット!)の元ネタ作品です)
音楽はラロ・シフリンが担当。香港では勿論「提防小手」のタイトルで日本より早い1973/11に公開されました。(監督は「キラービー」のブルース・ゲラー。ストーリーはこちら。)
ジェームス・コバーンはスリの名手ハリーを演じ、ベテラン俳優ウォルター・ピジョンがケーシー役。このケーシーがまず狙いを付けます。彼のハンカチが合図となり、どこに財布を入れているのかをハリーに伝えます。そして、紅一点のサンディが”オトリ”となって、すかさずハリーが素早いスリの手口を見せます。若手のレイはハリーから財布を受け取り、最終的にケーシーに渡す流れになっています。この流れが観ている人をアッと驚かせています。

洪金寶の「提防小手」(※)では、もっと映画的に進歩したスリの手口を見せていましたが、役割はまず目付役のケーシーが劉克宣、ハリーが洪金寶、レイが陳勲奇(但しハリー役を洪金寶と交互に演じる)、サンディは彭秀霞が相当します。
「提防小手」を見ていると、実際のスリの場面をそのまま「黄金の指」から流用しているのが分かります。
例えば、エスカレーターを使った犯行やバラまいたテニスボールを拾う瞬間に狙う(スローモーションになるところまでソックリ!)ところなどは顕著に表れています。
「提防小手」におけるハンカチの合図でスタートし、サイフをスッた後に新聞紙を使ってリレーするプロットも「黄金の指」と全く同じです。

「ピックポケット!」をフジテレビの深夜に観た当時、すぐにこの「黄金の指」を思い出したのですが、香港映画にはこういった文化が以前からあって、私の好きな70年代の人物の多くもその文化を大いに取り入れているのだと思います。やはり面白さという点では、この点が大きいということを今また思い出してひとり感激しているところです。


結局、ハリーはスリに関してプロフェッショナルでしたが、やや冷酷な面が強調されていました。
しかし最後に見せる人間の持つ”優しさ”。これが賞賛に値すると思います。


※58年にも同じ「提防小手」があり、こちらはジャネット林翠が主演。


Special thanks to S.Iさん
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