電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

荷蘭賭人頭

2019-02-25 22:42:11 | 七十年代作品【1978】

こんにちは、醒龍です。

いよいよ2019アカデミー賞が発表されましたね。いやぁ、『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックがオスカー受賞ですね!!やったぁ。4冠達成おめでとうございます。オープニングも最高!!Queen最高!!

さて、今回は『アムステルダム・コネクション』として知られる現代アクション映画です。

監督のロー・ケイは、近年のホラー作品やユン・ピョウ出演のドラマ『少年陳真』(04)などのベテラン監督(ニュー・ウェーブ派ではない)で、「ジェット・リーの軌跡」では脚本もつとめた人ですね。邵氏なら「ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻」や功夫喜劇の『無招勝有招』で知られるリュー・チャーユンが主演したカンフー映画『痳瘋怪拳』がありましたね。ロー監督はこの映画で、”ハンセン病拳”という異色のカンフー映画を作ったのです。つまりそういう映画をいっぱい作ったお方。

主演は、ほぼ4人が同格として扱われています。その4名を順を追って紹介してみます。

まず第1の男。ヤン・スエ。

御存知ボロ・ヤンです。普通に芝居をしてる、彼が実に素晴らしいです。先日の邵氏作品のような若さは全く感じられなくなっています。この映画ではボスの一人です。

つぎに第2の男。ファン・メイサン。

ちょうど邵氏を抜けた頃ですが、『燃えよデブゴン7』や『紮馬』の乞食のじいさんがハマり役でしたので、マフィアのボスと言ってもねぇ(?)。濃いと言えば濃いですね。邵氏時代の善な性格とか割と多かったので反動で(?)一気にワルになっちゃいました。

さらに続く第3の男。ウォン・ユンスン。

森田健作似のさわやか系であります。彼も邵氏出身の俳優ですが、周りの濃いキャラの前には竦んでみえてしまいます。割と好きなのですが、国内版リリースも他になくてあまりにもマイナーな人かも・・。

そして第4の男、パイ・ピョウ。

パイ・ピョウも充分濃いキャラなのですが、彼の事が最初に出てきますので真のメインが彼ですね。表情からも人間らしさがにじみ出たとても良い役者さんですよね。監督(ルイス・ファンの父、ファン・メイサンもその一人)もそれを認めた上でこの映画が成り立っているのですから、大変信頼されている人物でしょう。これから彼の作品もいっぱい紹介していきますよ。

そうそう、この映画では黒幇の"術語"が出てきます。他ではあまり見られないのでこの映画は特殊な映画であると言えます。劇中で呪文のように唱えるアレです。もしかしたら『少林五祖』あたりにつながるかも知れません。

そしてDVDについてですが、以前廉価版のDVDがリリースされましたね。DVD化は20本ものタイトルが予定されていたのに最初のがまったく売れなかったのでしょうか、この1本止まりでしたね。今後も国内でDVDが発売されることも無いでしょう。他にも同じような状況のタイトルがありました。

こちらにまとめてリストアップしておきますね。

パブリック・ドメイン(?)である作品リスト(原題)
・アムステルダム・コネクション(78) ※本作品
・カンフー・オブ・テコンドー(74) Kung Fu Tai Kwon Do 雙龍谷
・Bruce Lee We Miss you(76) 金色太陽
・ドラゴン水滸伝(75)
・インクレディブル・カンフー・ミッション(79) Incredible Kung Fu Mission
・The King Boxer(71)  小拳王
・酔殺拳スーパー・フィスト(79)
・ボロ(77) Bolo
・シャドー・ボクサー(79) Crack Shadow Boxers
・フィスト・オブ・フューリー3~截拳鷹爪功~(79)
・ブルース・リーの秘密~ストーリー・オブ・ザ・ドラゴン(76) Bruce Lee Secret 詠春與捷拳
・カントニーズ・アイアン・カンフー(79) Cantomen Iron Kung Fu
・シャドー・ボクサー(79) Crack Shadow Boxers  盲拳怪招
・ハンズ・オブ・デス~大惡寇~(74) Hands of Death
・無敵のブルース・リー(78) Bruce Lee The Invincible ※ロー監督作
・血戦(72) The Bloody Fight
・その他

などなど、ホー・チョンドーの出演作が多いのが気になりますが(笑)、これらの映画を字幕付きで観られるチャンスがあります。(しかも無料!)今から数年前の当時はAmazon Prime Videoの例の件より、こんなのもあったのか!という意味で大変ショックを受けました。

例えば、黄正利先生が黒のグローブはめてて超かっこいい"Bruce Lee Secret"とかPCやスマホがあれば現在も日本語字幕付きで観ることが出来てしまいます。

 

それでは、ちょっとだけ本作の内容に触れて終わりにしたいと思います。香港のマフィアのお話なのですが、香港、オランダ、そしてパリと海外ロケを敢行し、舞台は移っていきます。

私の好きなシーンは、中盤のレストランでのお茶を酌み交わす1シーン。ヘアースタイルをバッチリきめたゲスト的出演者の陳星が何をするのかと思ったら、スッとタバコを取り出してファンに勧めるシーンなのです。超カッコいいシーンで、箱から出てきた1本のタバコを相手に差し出すのです。(キマッてる!!)とてもブロンソンチックですね。ここは必見ではないでしょうか。

ちなみにこの映画は、ロング、ショートの2種類があります。ロング・バージョンには国内盤DVDには見られないシーンがあったりしますが、これは見る価値はありません。それより例えばタイガー・マウンテンでの決闘ではユン・ピョウも見られますが、廉価版だとヨコが切れてしまって殆んど顔は判別不能です。このロング・バージョンは、ワイドな画面で映像もクリアーですので端役の俳優さんたちも誰なのかよくわかると思います。ご参考まで。

あと、この映画のプロデューサー兼ヒロインの女優さん。実はジャッキーが『花飛滿城春』(75)で初のベッド・シーンを演じた相手の女優さんですね。そういう意味では見たいような見たくないような気にさせられます・・。(これはジャッキーの黒歴史。。)
 
この映画で特筆すべきなのは、ウォン・ハーが武術指導に加わっている点ですね。そのお陰か、なかなかのクオリティのカンフー・アクションを構築しています。例えばラストの3人のバトル・シーンですね。私はGメンを思い出してしまいました。これは見てて爽快でした。

上記の用途以外などでも、まだご覧になっていないのであれば是非。ご興味がありましたら販売サイトのリンクを画面下に貼っておきますのでそちらをご参照してくださればと思います。

という事で、本日は香港マフィア映画でした。(終)

"Amsterdam Connection" (1978)

Chan Sing

Wong Yuen San

Jason Pai Piao 

Fan Mei Sheng

Yang Sze


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埋伏

2019-02-22 07:50:26 | 七十年代作品【1971】

 

 

こんにちは、醒龍です。

レコード・コレクターズ誌2月号はYMO特集ですよ~。昨年40周年を迎えたYMOですが、続々と復刻盤がリリースされるのはうれしいですね。今月も残りの復刻盤が発売されますね。これで寝ても覚めてもテクノですよ!

さて、今回はあの怪作『液体人間オイルマン』(コレ好き)や76年版キングコングに肖った香港&日本コラボの特撮スペクタクル『北京原人の逆襲』、デイビット先生が至善禅師に扮した『少林寺英雄伝』、そしてカンタイの『空とぶギロチン』などで知られる何夢華(ホー・メンファ)監督が71年に撮った『埋伏』です。これはもちろんSBマークでおなじみの邵氏作品です。

ホー・メンファと言えば、あの『Black Magic』シリーズなんかもありますが、そのホー監督がいわゆる降頭系列電影に開眼してしまう前、当時誰もが通ってきた道でありました武侠片を撮っていました。その中の1つがこの『埋伏』なんですね。そうだ忘れてました。カンフー全盛期の『マッドカンフー地獄拳』なんかもそうでした。これは監督らしさ(?)があまり感じられないのでここでは触れませんが、後年はカンフー映画も当然のように撮ってましたね。

同じホー監督の『金毛獅王』(71)にはジェームス・ナムがいましたが『埋伏』とほぼ同じスタッフ、キャストでしたので立て続けに監督は2本の映画を撮っていたんですね。『埋伏』のパッケージ解説によれば"イースタン・ミステリー・ムービー"だそうですので、ただの武侠片とはひと味違う様ですね。

ミステリー要素のある武侠片って珍しいですよね。確か『金毛』は小説でこの『埋伏』の方が引き込まれやすく単純に面白そうですよね。(詳細はのちほど)この映画は71年5月には『埋伏』の新作紹介記事が出てましたので撮影はこの頃ですね。但し、劇場公開は出遅れてしまっているという良くあるパターンです。

この映画の胆、実は悪役のイメージが強烈な趙雄(チャオ・ホン)さんの何と準主演映画なのです。(あくまで表記上の話。。)例えばジミーさんの『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のあとなんかに見ると悪役映画の方がしっくり来るチャオさんのちょっといいトコが見れます。非常に味のある俳優さんなんですよね。彼については『金毛獅王』の回でまた詳しく触れてみたいと思います。

主演の李菁はお人形さんみたいにかわいらしい女優さんでしたね。その通り"娃娃影后"と呼ばれた彼女は昨年惜しくも亡くなってしまいましたが、羅烈の初期のマスターピース『鐵手無情』、あれに若い頃出演してたんですよね。ちょっと古い映画だとあれがダントツに好きでした。ジミーさんとの共演なんかもあったと思いますが、この『埋伏』とかホー監督の映画に出演することも多く、気に入られていたかも知れませんね。

オープニングには前年に公開されたイタリア映画『夕陽のギャングたち』より、そのサントラの中からテーマが選曲されていますね。(曲名は"Rivoluzione Contro")この曲は功夫片のオープニング曲としてよく使われてました(流用)。こっちの西部劇も最高なのですが、コバーンの映画はやっぱり渋くていいですよね。

とにかくモリコーネの楽曲は癒されますよね。心地よい曲が揃ってて疲れた時なんかにゆっくり聴いているとジワーっときて、ついでに映画のシーンなんかも浮かんできて、とってもリラックス出来て最高な気分になりますよね!現代劇になるとまた格調高くなり、必ずと言っていいほどヘビロテしちゃいます。

音楽の話であれば、この映画の題名は当初『十面埋伏』であったのですが、同名で十面埋伏という曲がありますね。有名な中国の古い楽曲の1つですが功夫片でもたまに聴く機会があるかと思います。映画の中でこの曲が使われると非常にドラマティックなシーンとなります。西楚の覇王・項羽と、漢の劉邦の両者の戦いをテーマにしたのが十面埋伏ですね。戦争の最中、漢軍が待ち伏せするのです。しかも怒涛の攻撃で。("十面埋伏"より"四面楚歌"の方が有名ですね。)激戦の末、項羽軍は漢軍に包囲されてしまいます。この琵琶曲は本当に素晴らしい完成度でダイナミクスをしっかり感じさせてくれます。しかし、残念ながら本編では使われることはありません。タイトルが変わってしまったからでしょうか。

では、映画の筋を追ってみましょう。 

ここは鏢頭・樊芝龍(楊志卿)が取仕切る鎮北鏢局である。
威遠鏢局の萬恭武(李鵬飛)と手下の2人(元華、徐忠信)が遠方からやって来た。
萬鏢頭は従弟の樊鏢頭に鏢師を数名貸して欲しいと依頼しに来たのだ。
理由を説明し、樊は承諾した。
そして杜槐(李廣)、雷強(小麒麟)、郭勤の3名が選ばれ鏢頭に同行する事に。

荷車に宝石箱を積んでおり、一行は厳重な体制で宝物を運んでいる。
千絶谷にさしかかると、物陰に隠れて待ち伏せしていた驚くべき者たちがいたのだ。

次の瞬間、その中の一人が矢を放つ。
矢は命中した!敵の奇襲である。
隠れていた者たちは一気に表に出て襲撃を開始した。
この襲撃で萬鏢頭は赤い羽の暗器によって刺され、あえなく倒れてしまう。

やがて、捕頭の萬超凡(趙雄)たちが事件の現場であるへ検証にやって来ていた。
無残な光景だった。無数の死体が横たわり、片足だけ残っていたりもした。

すると超凡は見事な刀を発見する。それは超凡の父が持っていた"金臂刀"であった。
しかし父・萬恭武の死体は無く、行方もわからない。

戸惑う超凡に李都頭(李笑叢)は疑いをかける。
それは萬父子の犯行であるとのダイイング・メッセージが残っていたからだ。

・・・なかなかの展開ですね。

現場検証でチャオさんが真剣に芝居しているうしろで何かしゃべってるのが誰あろう若い頃のサモハンです(笑)。なんかサモハンらしくていいですね。この官服らしい群衆の中には、サモハンや錢月笙、唐偉成(!)、そしてジャッキーの顔が確認できるのはDVDならではですね。古いVHSしかないようなケースだったら顔は絶対にわからんでしょう。

はっきりジャッキーと判るのは冒頭のシーン、王俠や西門三虎と一緒に弓持って待ち構えているのがジャッキーでしたね。珍しくかなりのアップで映るのですぐ判ります。他にも中盤のシーンで超凡を包囲して李都頭の一員として斬りかかる場面、最前列で火鉢が当たる位置にいた人物がそうです(他のアクション場面にも登場します)。これらを見ていると危険なシーンなどを買って出るという感じですよね。

要するにサモハンたち七小福メンバーも参加していた映画ってことですね。当時、徐二牛のグループに属していたのですが、その徐二牛のアクションで忘れてならないのが、ロープ・アクションです。ジャッキーもおそらく影響を受けたらしく以降の映画でも何度か見ることが出来ます。この頃の経験を活かしてその技術を応用したという話になりますね。映画の中でどんなアクションを構築するか。当時からメンバーで考えてそれを実践していたんです。

ロープアクションのシーンは、おそらく設定が日没に近い時間のシーンとなりますが、フィルターがかかっているので見た目は暗くなっています。しかし、よく見れば顔を確認することができます。一人を取り囲んでロープで縛りあげてその周りを回るのですが、下っ端の十数名が囲ってサモハンはロープを持たずに立って様子を監視しているような立場であった事が確認できますね。

では、再開。 

李都頭は超凡を捕らえようとするが無実の超凡は抵抗し、その場を切り抜けることに成功する。物陰からその様子を冷面劍客・康烈(石天)が見ていた。

ここで登場する男前の石天がまたいいですね!!そしてコミカルな役ではなくシリアスな役なのです。この映画での彼のアクションは非常にいいものを出しています。誰のおかげかなと考えると、武師たちの協力があってこそですね。

超凡はとある客棧へ逃げ込んだ。給仕が注文を取り、料理と酒が運ばれてくるが、どうも様子がおかしい。

ワナだ!酒には毒が盛られていたのだ。
回りにいた客たちも超凡を襲う。

序盤の客棧でのバトル・シーン。やっぱり客棧アクションは面白いですよね。『大酔侠』をはじめとしてキンフーの作品群など、要するにハン・インチェの影響があるかと思います。

番頭に扮装していた賊のリーダー・韓沖を演じた詹森(チャン・シェン)はすぐに正体をばらしますが、坊主頭の彼がまた楽しいですね。彼もなくてはならない存在ですよね。ここでまた七小福メンバーが登場します。派手な青い服を着た人物は1階のみで途中から元奎にバトンタッチし、舞台は2階へ移りますが以降その人物は登場しません。元奎は、チャオさんが蹴っ飛ばした刀が刺さって倒れるという大役を果たします。

多数の敵を相手にして苦戦するが何とかその場を脱した超凡だった。 

その後、超凡は敵に囚われてしまうが、康烈に助け出された。息も絶え絶えのまま何とか超凡が鏢局に帰ると、父親の幻影が現われた。怪奇!!


ここでようやく李菁が登場する。
 
実は赤い羽の暗器を使っていたのが父・樊芝龍であった。
樊芝龍は何者かに殺されてしまう・・。
 
洞窟に不気味な姿が!
超凡は従妹の秀秀(李菁)と不気味な地下室に入って行く。
棺を開けて死体を確かめる。

その時、入り口で人影が見えた!すぐ超凡が追いかける。
残された秀秀は、しばらく様子を見ていたがやはり怖くなって逃げようとする。
しかし、中に閉じ込められてしまった。そして、死体が動き出す・・・。

超凡に救出される秀秀。たまたま通りかかった片足が義足の男を目撃する。
超凡の脳裏には即座に千谷で斬られて残された片足が浮かんだ。何と、秀秀はこの男の顔を知っていたのだった。
 
この男の家へ尾行し、事件の真相を追及する超凡。
しかし、白状する前にまたしても赤い暗器によって阻止された。
康烈が現れ、超凡に協力しコンビを組む。暗器それはある高名な3人が使う武器・追魂鏢だった。西門三虎の本拠地へ乗り込んで行く超凡。
 
西門三虎の一人が火星(マース)です。彼はいつもの通りセリフもあるような目立った役をこなしています。また、3人衆のトップが実は程寶山(チン・ポーサン)です。70年代後半のカンフー映画全盛期では、その彼は脇役として顔を出す人ですので、覚えておいて損はないです。
 
ラストは、チャオさんとベテラン俳優・楊志卿(ヤン・チーチン)との風車小屋での8分間の大詰めバトルです。このどこかで見たような機械仕掛けの小屋。ちょっと思い出せませんが、大きな歯車を使ったダイナミックなラストに相応しいセットですね。その後、ミステリーらしく意外な人物が登場し、映画は想いもよらぬ結末を語っていきます。
 
やっとの思いで、宝物箱を取り戻した超凡だった。

が、瀕死の彼の前に秀秀を従えたある人物が現れる。
彼が黒幕だったのか!

 

という訳で今回はミステリー武侠片でした。そして、若きジャッキーカメオ出演のおまけ付き。もう言うことありませんね。(終)



「埋伏」(71) Ambush 

邵氏出品
監督:何夢華
脚本:江揚(江洪)

音楽:周福良 

武術指導: 徐二牛

 

出演者:
李菁 趙雄 楊志卿 王俠 佟林 
江玲 石天 李鵬飛 詹森 陳濠 李廣 彭鵬 

※以前の記事を一部加筆訂正しています。(環境によっては繁体字が文字化けしますのでご注意を。)

 

【サントラ】

Giu' la testa (Edizione speciale 35 anniversario)
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夕陽のギャングたち [Blu-ray]
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蕩寇誌

2019-02-03 17:00:00 | 七十年代作品【1975】

こんにちは。醒龍です。

今日は『蕩寇誌』(75)です。

女流作家パール・バックが1933年に書いた小説。その名は、"All men are brothers."。『蕩寇誌』の英文題名としてこのタイトルが付けられています。ということで御存知、チャンチェ監督の歴史モノですよ。監督は数名いて他にもウー・マがやってます。主演はデイビッド・チャン、ティ・ロン、チェン・カンタイ、ワン・チュン、ダニー・リーなどなど多数。お話はもちろん水滸伝であります。

ここでちょっと史実を確認しておきますと北宋末期、宣和2年(1120年)に農民の反乱が起きたそうですが、これが方臘の乱ですね。そして宋江という名の将軍が実際にいたことになっています。正史に対して民間伝承の話を野史または稗史とも言いますが、創作物である水滸伝ではこの反乱がモチーフになって形成されていると思われます。映画では自ら王と名乗る首謀者・方臘(飾チュー・ムー)がラスボスとなって進行します。

オールキャストで相当の予算をつぎ込んで作られているようですが、絶大な人気を誇っていた邵氏のスター姜大衛と狄龍。映画の持つ価値をここまで引き上げたのは当時の稼ぎ頭、このお二人のおかげ。しかし、当時の興収ランキングでは公開がちょっと遅れて75年度のデータとなっていますが、25位まで落ち込んでしまったようです。公開が遅れた原因は不明ですが、ブームも下火になってしまった時期で日本人・丹波哲郎が出演する大スペクタクル映画でも数字が取れない、稼げない、リー・ハンシャンの『傾國傾城』にも大敗(こちらは第3位)してしまいます。チャンチェ監督の大ピンチだったのです。それにしても監督が描きたかったものは果たして何だったのか。これも見て行きましょう。

そうそうオープニングには有名な妓女・李師師が登場してますね。ここのシーンに登場するのはあのベティ・チュンですよ!『燃えドラ』よりもちろん前に出演してるはずですが、監督がどうやって引っ張って来たんでしょうね。デイビッド先生とのきわどいシーンもあるんですが、シリーズを通して先生は"チカチカチャー"という効果音で登場するんです(笑)。海外なんかでもネタになっていたこの登場音ですが、こんな演出がまたいいんですよね!!(別格なのかな??)

ちなみに水滸伝の登場人物は108人。かなり多いですが、覚えておくのは7人ぐらいが丁度いいかも知れません。宋江、盧俊義、武松、呉用、林冲、戴宗、魯智深の7人あたりでしょうか。まぁ好きな7人を選んでみてください。キャストは当時の人気俳優さんが揃ってましたし、それぞれ大きい役(頭領)を担当してます。覚え方は五虎将や八虎将という分け方もありますので、この括りで覚えるか、主要なメンバーで覚えるかになるかと思います。まずは前述の7人あたりでしょうか。"方臘の乱"制圧を描く本編では燕青、李逵、石秀、張順、張青、孫二娘、そして史進の7人が討伐軍のメインとなります。

注目したいのは、五虎将の一人・董平を演じたチャン・ワイマンこと陳恵敏なんですよね。チャーリー親分は、刺青姿で登場しますが、もしかしたら映画に呼ばれたのはこの線だったりして・・。水滸伝には刺青キャラが何人か登場します。その親分が邵氏のこの時期の出演はかなり珍しく、まぁたまに出たりすることだってモチあるのですが、例えば『五トン忍術』なんて良かったじゃないですか。役柄上、槍で必死に戦いますが、あっという間に消えてしまいます。残念、もうちょっと見たかったですね。 

人気という面で言うならば日本では"三国志"の方が圧倒的に人気があるかと思います。しかし、70年代の香港映画では三国志が描かれることは殆どありませんでした。前作『水滸傳』や続く本作『蕩寇誌』のように水滸伝のキャラたちが次々と映画の世界に飛び込んで行っていたのはどうしてでしょうか。我らが兄貴の為に。我らが山寨の為に。我らが天子の為に。無頼漢たちが山寨・"梁山泊"に集まって繰り広げる物語。水滸伝も実に面白いではありませんか。

物語は百回本の終盤、第81回よりスタートします。燕青は東京に向かい李師師の力を借りて道君(徽宗皇帝)に江南で勢力を拡大している方臘の討伐のため梁山泊メンバーの招安を訴えた・・。

途中、湧金門の湖のシーンでは当時セリフのない小さな役などで下積みをしていたジャッキー・チェンが出演していたようですね。71年~72年ぐらいだと思いますがジャッキーもまだ駆け出しの頃でしたので、こういった小さな役をいっぱいやっていた時代ですね。邵氏作品では何本もこういった形で出演しているケースがありましたね。

10個ある難攻不落の杭州城の門。こういった城攻めにはやはり軍師も必要となるでしょう。まず両斧をブン回す李逵が先陣を切って門へ突入します。その隙に燕青が裏から門の中へ。続いて好漢・石秀が割って入ってくるのですが・・・。(本編の石秀役のワン・チュンが大変素晴らしかった!)

そして、相撲大将軍(ヤン・スエ)と燕青の対決だあ。面白くなってきましたね~!!ここのヤン・スエの動きが実に良くて楽しいんですよね。アクション場面は本作の武術指導、劉家良&唐佳の本領発揮です。中盤の九紋竜・史進(陳観泰)のバトル・シーンや前述のヤン・スエのシーン、ワン・チュンの格闘シーンなどは当時の一級のバトルですよね。そんじょそこらの殺陣とは違いますね。

その後、城の攻略は燕青、武松が作戦を立て、突破口の湧金門へ向かうのは張順(ダニー・リー)。水門を開け、燕青率いる歩軍は砦の占領に成功するも、張順は戦死してしまう。敵の突破に方臘は動揺し梁山泊軍の想定通り、北関へ逃げるしかなかった・・。

梁山泊最後の戦い。ついに方臘を討伐するところまで来た燕青。どんなラストをみせてくれるのでしょうか。国王を追い詰める燕青が死に、そしての腕を斬られた武松が崩れるように倒れる姿・・・。チャン・チェ監督が描いたのは、梁山泊のメンバーだちが次々に倒れていく中で燕青と武松の最後の最後の美しい見せ場、それはつまり滅びの美学だったのです。

監督が当時力説していたのは、東洋人の死が西洋では考えられない、受け入れがたいものがあるが、それを数々の映画で繰り返し描くことによりいつしか理解してもらえる日も来るのではないかという事でしたね。そういった意味ではこの『蕩寇誌』も梁山泊最後の闘いであり、絶好のシナリオであったのではないでしょうか。方臘との戦いが終わった時、生き残った仲間はわずか27人だった。にも拘わらず、デイビッド&ティ・ロンの2人に印象深い映画のクライマックスを演じさせたんですね。

現在、漫画でも小説でも何でも読める時代になりました。例えば、中国の宮廷ドラマとか現在も人気のあるジャンルではありますが、なかなか観る機会がありません。三国志であれば日本の会社がコンテンツを共同で制作したりとかメディア展開されることも多いのですが、忙しい中でそういった情報も積極的に吸収しなければ何年も気が付かなかったりして取り残されることになりますね(苦笑)。

私は本作のように邵氏が作った歴史ある作品が好きです。大監督であれば、文献も多く世界中にそのメッセージが伝わることでしょう。様々な要因によりなかなかメッセージが伝わってこない映画も多いのですが、私には充分伝わりました。この『蕩寇誌』や前作『水滸傳』などは当時、出演者の丹波さんや黒沢さん、日本人スタッフも多数かかわっていたと聞きます。ここは興味のあるところです。本作も国内では『水滸伝 杭州城決戦』として無事DVDもリリースされましたね。(快挙です!)杭州城って言っても実際は西湖の畔の広大な土地に城壁で囲まれている所だったようですが、現在の杭州や西湖はとても美しく観光地として世界遺産にもなっていますので旅行に行きたいぐらいです。

古い時代の長編、三国志("三国志演義")も壮大なスケールではありますが、この水滸伝も個性的なキャラクターが数多く登場したり、一部のプロットが別の小説として枝分かれしたりと決して単純ではない読み応えのある内容ですよね。私は水滸伝が時代小説の中では好きな方なのですが、水滸伝のような中国古典を扱っている未だ観ていない映画もあると思いますので私自身これからがとっても楽しみです!

 

以下、余談を少々・・。

時間さえあれば、史実と比較したり時代時代の戦術を研究するのもいいかもですね。水滸伝のゲームソフトもいくつかありましたが、私が当時プレイしたことがあったのはPC用『三國志』というソフトでした。現在も新作ソフトがリリースされたりしてる人気シリーズですが、こういった歴史シミュレーションも根強いですね。今出ているソフトは昔に比べたら地形がかなりリアルになったり、セリフも中国語になったりとかかなり進歩してますよね。

水滸伝関連では当時購入したのが『水滸伝天導108星』というWindows95用のPCソフトでしたね。プレイ画面に出てくる武松の顔グラフィックがティ・ロンにそっくりなんです!(これはもしや!?)先日、久々に起動してみるとなんとWindows10でも仮想環境上でという制限付きではありますがしっかり動作しました。これはビックリ。仮想の力は偉大ですね。正常に動作するのでタイムスリップしたような気にもなります。仮想環境さえ構築してしまえば最新のOSでも動作するのです。うれしいですね。水滸伝の方は新作はいまのところないようなので作り直した新しいシステムで是非遊んでみたいですね。

電脳遊戯といえば水滸伝の本場、あちらでも当然あるんですよね。誰が作者かまったく分かりませんが、例えば"歓楽水滸傳"なんてヤツもそう。何匹もの虎が道を塞いだ迷路を駆け抜けるステージ"武松打虎"とか超笑えるんだけどwww。
とにかくキャラが乙女チックで今風のとても可愛らしいアクション・ゲームです。
豹子頭林冲なんて最高ですよ。私は水滸伝の中ではやはり林冲がお気に入りですね。
そうそう、動画を見てて思ったのですが、あちらでもゲームの実況なんて当たり前の時代ですので、皆さん普通にゲーム実況しています。もちろん男性が中国語で実況してたりするんですよね。時代は変わったものですよ。

もし映画の展開で物足りなさを感じたら、たまには無頼漢キャラになったつもりでゲームをプレイするとか、さすがに小説を書いたりまでは少々行き過ぎと思いますけど、そういった楽しみ方も面白いと思いますよ。最後はちょっとしたPCゲームのお話でした。

ふー。さて、お茶を一杯淹れて飲むとしますか。(終) 

All men are brothers (75)

David Chiang

Ti Lung

 

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