電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

黒名単

2009-10-27 23:41:40 | その他・研究

今日は私個人の密かな楽しみ方を紹介します。まずは過去に書いた記事を書き直したり加筆したりして、もう一度記事をチェックします。とりあえず2005年に封印した記事を書き直してみることにしました。
こんな感じでいっぱい書き貯めたらPDFにして永久保存とか、いろんなブログを集めてプリントアウトしていつでも読めるようにする。こんな活用法もありますね。(携帯でもPDFが読めますがさすがに画面が小さくて不便なのでこれはやめました。。)
家で紙を出すのが面倒ならコンビニでPDFをプリントなんて事も可能です。高級なゼロックスのコピー機で焼くので仕上がりも良くて超便利!カラーだとお金もかかるので白黒でA4サイズ1枚に2ページ印刷すれば安上がり。実践するとこれが結構楽しい。コンビニでPDFを印刷出来るなんて便利な世の中になりましたねぇ~。

さて、開發公司研究ですが創業間もない71年作品では『火戀』という映画があったようです。恐らくこれが最初であるとは思うのだが尻尾は掴めないまま。陳観泰も出演している模様でありこれが見つかるかどうか分かりませんがビデオ映像を探してみようと思っています。製作は第一公司(ファーストフィルム)との合作のようなのですが、第一単独の資料もあったりして製作に関しては結構あやふやな感じ。。

ここでまたまた書道の時間です。



あまり上手ではありませんが、10回以上書き直しました。黒と単は旧字にしてみたので画数は多くなっちゃいますが忠実に書いてみました。横書き右からは意外と難しく何度も失敗してました。(毛筆なんて全く書きませんのでね・・。)
毎回書けるか分かりませんがせっかくなので出来るだけチャレンジしてみたいと思います(笑。

そして今回の『黒名單』についてのメモを・・・。

秋田書店刊ドラゴン大全科には、「ブラックリスト」のタイトルで紹介されていたので陳星の出演作としては比較的知られているようだ。ところでブラックじゃなくデスノートって香港では死亡筆記と書くそうだがこれだと書いたら即死んでしまうのでちょっと違ってしまうなぁ。殺しのリストに従って一人ずつ復讐する・・・これなら「キル・ビル」を連想してしまう。(もしかしてタラ監督『黒名単』も見てたのかな?パート3は2014年製作だとか!?)

そうそう英語のNinja Heatって何だよって思っていたのですが無茶苦茶に思えるタイトルも漢字にしてみると…、『忍者大追殺』になるようだ。
これなら面白そうな名前にはなるのかな。(忍者はいないけど・・)
余談ではあるが、1993年のアメリカ映画"Surf Ninja"も中文にすれば『忍者大追殺』となる。この映画は私の好きな三節棍アクションもありなかなか楽しめる作品。(DVD題は「鉄の顔を持つ男」)これが何か関係していたりしてね。

そもそも私が知りたかったのは袁和平が『蕩寇灘』の次にどの作品に関わったのかという事でした。これは全く不明でした。(どなたかに教えていただけると有り難いのですが…)
監督とプロデューサーの方はかなり早くから動いていたようで当初はアラン・タン、オー・ジョンホン主演と完成時とはまったく異なるキャスティングだったようです。(美人女優の胡燕女尼も出演予定でしたが最終的には変更されてしまいました)

☆開發公司オープニング☆(トリミング惜しい)


本編ではコンドルは飛んで行く(サイモン&ガーファンクルのカヴァー曲なんてありましたね~。名曲っす!)のテーマに乗って物語は進行する。現代劇だ。
 陳星&于洋

刑務所から出所した趙英龍(陳星)は殺人の罪で6年間入獄していたがこれは陥れられたものだった。兄の出所を出迎えた弟英虎(于洋)は一枚の紙切れを渡す。紙に書かれた4人の名前は趙兄弟を陥れた人物で英龍のかつての仲間たちだった。

 Black List

英虎から次々と衝撃の事実を知らされる。母親が殺され、婚約者・莊憶美(李司祺)も既に關冬(方野)の家に嫁いでおり幼い子供(向展偉)もいた。2人は母親の墓前で復讐を誓いブラック・リスト4人の捜索を開始するのだった。
まずはバーへ向かいそのオーナーが1人目の蕭天(山怪)と分かるとこれを始末した。蕭天はフィアンセとの結婚前日だった。
ホテルで情婦と密会していた2人目の馬雲(解元)もすぐに見つけ出しこれを殺害した。憶美は子供を連れて英龍の家に訪ねて来た。彼女が連れて来た子は英龍の実の息子だったのだ。憶美は復讐をやめるよう説得するが聞き入れてはくれない。
ナイトクラブを経営する3人目の韓大魁(陳恵敏)は英龍をワナにかけ捕らえるが止めを刺すことは出来ず、逃げられてしまう。ふたたび顔を合わせた二人は対決するが激闘の末、英龍は敵の息の根を止めた。

最後に残った關冬(方野)が4人目。母親殺しの張本人で罪を着せられ長期に渡り入獄させられた恨みを晴らす為、自宅に向かった。英龍は復讐することが出来るのか…。


いままで陳星の人気については今一つ分からなかったのですが資料を読んで何となく分かりました。
大成功を収めた『蕩寇灘』公開後から急上昇して各映画会社から出演依頼のオファーがかかるのです。嘉禾からも5本契約なんて話もあったのにこれを蹴り(これはある意味正解だったかも知れない)、「危うしタイガー」に出た後、タイへ3カ月行って撮った2本(『唐人客』『大地雙英』)に出演する。それから今回記事の『黒名単』と倉田初対決を見せた富國影業の残り『餓虎狂龍』に出て、その後慌ただしく台湾へ行きファーストフィルムと2年契約を結ぶのだ。こんなにも忙しいスケジュールになっていたのは人気者だった証拠だ。当時は呉思遠とのツーショットの写真も新聞に掲載されたりしてこれはかなり異例の事だ!
台湾時代以降も数多くの作品に出演し、嘉禾では黄楓とも出会い「密宗聖手」に始まり、「ダブルクロッサー(鬼計雙雄)」、「必殺!少林寺武芸帳」「少林寺怒りの鉄拳」など立て続けに一流の功夫片に出演。これも大成功。年を経る毎に味のある俳優へと年々成長していったのである。もちろん陳星をスターに押し上げたのは呉思遠であり、これは彼の功績の一つと思う。

開發の専属監督でもあった羅馬はこの映画で敵を一人一人順番にやっつけ、次の敵の番になればガラっと場面を変える手法を用いた。敵をじっくり料理しようというのである。仲間だった人間はそう簡単には殺させないという訳だ。合間合間に監獄にいた陳星の様子を見せながらその心理を描写したりしている。なかなかやるじゃないか、羅馬。女優さんのヌードの見せ方なんかもとてもきれいに見せていて、これならばあまり不必要さ嫌悪さを感じずにもいられるものだ。多少のタイミングの悪さはあったとしてもそれは許せる範囲。呉思遠より女優さんの表現は巧いようだ。些細ではあるが違いを感じてしまう。つまりこの映画には余裕というものがあるのだ。これだけでも全体のバランス感は良くなる。機関銃のような富國作品との違いに少々驚かされてしまったというのが正直な感想である。現代劇の多い開發だが、この会社や羅馬の持つ性質、風味なのかも知れない。

長くなってしまうが出演者についても少々。
英虎の恋人役泰莉には施明。開發との契約で何本かに出演した。ナイトクラブで陳星を騙そうと企む何司理役には伊雷。この時期は初期の協利作品などに出演することが多かった。
大物スターでは陳恵敏が出演。(ゲスト出演の彼については宿題事項とする)
今回はよかった!孫嵐がいなかったね(笑。また、ブルース・リャンも出演している。まだここではスタントマンの一人に過ぎないが珍しく開發公司作品にも参加していたのだ。(叔父の梁少松やリャンロンの人脈と思われる)
陳星の背後にいるリャン

ところで確かに陳星はマンダムがお似合いか。いや似合っている。整髪料の匂いがプンプンしてきそうだが、香港のチャールズ・ブロンソンと言われただけのことはある(これは日本での異名。)当時の香港では『餓虎狂龍』が公開された頃から“東方査理士布朗臣”(つまり東洋のチャールズ・ブロンソン)と呼ばれていたが、彼はなぜそう呼ばれるようになったのだろう。主演第一作『蕩寇灘』から『餓虎狂龍』までにその象徴的な作品があったのではないだろうか。
陳星はブロンソンのように筋肉隆々の鋼鉄のような体を持つ“タフガイ”だ。『蕩寇灘』公開後、香港でブレイクした陳星を観客は一刻も早く見たかったことだろう。正に彼のイメージをそのまま映画にした作品があった。もちろんこれは「危うしタイガー」(原題:硬漢)のことである。陳星は鍛え上げられた肉体と怪力を十分に観客に見せつけたのだ。

タフガイ陳星の70年代を振り返るなんてテーマは案外面白いかも知れない。『蕩寇灘』から少し延ばして80年代の『悪漢探偵』ぐらいまでがいいだろうか。今後も陳星作品を是非取りあげて行きたいと思います。終


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盡殺絶

2009-10-14 00:08:14 | 七十年代作品【1973】
遅い遅い夏休みを取って会社を休んだのは良かったのですが連休終盤で風邪をひいて体調を崩してしまいました。雨の日に一日中外にいたのが良くなかったと思います。みなさんも体調にはお気をつけくださいませ。

さて、今回は七十年代總覽、看倉田のコーナーその三、73年の『盡殺絶』(カンジンサツゼツと呼んでます。ケータイだと1文字目が出ません。あしからず)を取り上げてみます。

倉田さんが陳星、上官霊鳳と共演した作品になりますが上官霊鳳とはこのブログであまり出てこなかったお名前。彼女との共演はこれが最初で倉田さん自身、共演を楽しみにしていたとか。

オープニングはネガ反転した絵をバックにしたありがちなもの。
コメディー作品ならアニメーションにもなるが、功夫片武侠片ではあまり動かない静止画が多用される。



普通に本編が始まってその映像にクレジットが入るものとか、大抵はその時ストップモーションになるがたまに停まらず見にくいヤツがあったりする。
なので現代劇など実写よりは絵をバックにしたものや変わったデザインのものが好きですね。書体はもちろん赤字で。

例えば壮大な音楽とともにはじまる「風、雨、雙流星」なんてかなり好きなオープニングでしたね。(まぁこれはオープニングが強烈過ぎましたかねぇ)
だから本編とマッチするのかどうか重要になってくるケースもあるかも知れないがこの映画の場合は結構地味である。全体に悪い影響を与えそうな地味さである。

片頭を本編にくっ付けて映画は完成となる。この部分を作る作業を片頭設計といい、これを仕事にする人もいた。台湾作品や邵氏旧作なんかを注意深く見ていると稀に記載されていることがある。いろんな映画からこれだけを集めたら立派な片頭集が出来上がりそうなものである。この映画の場合は個人だが専門の会社に委託して出来上がっているものなんかもあるようだ。

絵を見ているとちょっと映画はやっぱり芸術的なものだなと感じ、まるで学校の美術の授業のときのような気にさえなっていた。

今ならPCがあれば簡単に絵を描いたり、毛筆で書道まで出来てしまう。
私は絵がニガテで成績も悪かったが自画像を描かされたとき、周りはみんな上手に描いていたのに私のは最悪だった。絵より字体の方が上手いのか下手なのか分からないようなところがあるので(かと言って字がうまい訳でもないが(爆))字をさらっと書いてみようかな。それでひとつ書いてみたのがコレです。



過客。つまり旅人。広くは放浪人とか流れ者の意味もあるかな(?)。江湖放浪人でもOKか。単に旅人だとちょっと物足りない感じ。今風にはバガボンドでも通じるのだろうか。

何でもいいのですが、映画のタイトルを習字で書いてみる。うーん、きっと誰もやらないね。。。

さてさて(笑)、こんな感じで書道の練習をすると頭の中がクリアーされスッキリした気分になる。(おまけに失敗して何枚書いても紙クズは出ない)
”漢字”が好きでたまらない事も再認識させられる。題字は人気俳優が描いて話題になることもあるけど自分で書くのもいいもんですね。

そして本題へ。

この映画は南京が舞台ではなかろうか。タイトルからそんな気にさせられるのだが、邵氏から抜けたベテラン岳楓監督と作家のコンビで作った映画では倉田さんはどんな様子だったんでしょう。(岳楓はジミーさんの「英雄本色」にも関与していた模様だが…。)

その前に、何と台湾では『盡殺絶』というタイトルは使用出来なかったので全く意味不明の『強人』に変更されていたことが台湾の書籍などを調べていて分かった。(公開は香港より2ヶ月程遅い。)また視聴したのは残念ながらタイトルカットが無い物で北京語オンリー字幕なしという敷居の高いものだったのです。。


革命軍の楊傑(陳星)は軍閥が10万枚の金貨を護送することを知りその列車に飛び乗って奪おうとする。軍人に見つかって数人を倒した後、ある客室に入るとそこは目に小さな刀を刺された軍人の死体が隠された部屋だった。しかし不思議な事に金貨は見つからず楊傑は列車から飛び降りた。その後楊傑は仲間(高雄。林森名義)と再会する。

盗賊の施天風(馬驥)とその娘・丹鳳(上官霊鳳)は牛車を引いてある物を運んでいた。途中、軍の検問があったが弟子の張六(岑潜波)を病気に見せかけて牛車に寝かせ何とか通過した。日が暮れて寝る場所を見つけた一行はそこに木箱を隠した。彼等が運んでいたのは金貨が詰まった木箱だった。

翌日、張六は1枚だけこっそり金貨を盗んでポケットに入れるがポケットの底に穴が・・。町で将校(山茅)に見つかって叩きのめされるが楊傑が現れて助けられる。張六を助けた楊傑は張六に小刀を見せ問い詰めた。

盗賊から足を洗おうと天風らは金貨を普通に使える貨幣に両替する為、町の両替商と会う。
ここの主人・鄭勇(倉田保昭)は何と破門された男だったのだ。偶然の出来事だったが鄭勇は天風を怒らせ乱闘に。不運にも天風は殺されてしまい、丹鳳は一人逃げ延びる・・。

丹鳳は軍閥のスパイ(劉大偉。顔を見ると分かるがこれは劉大川の別名義だと思う。)と合流。金貨を差し出し楊傑に革命の資金に使って欲しいと言う。軍人に扮装した楊傑らは再度鄭勇の居場所へ向かい復讐を果たす。(このシーンで陳星に猛烈な蹴りをするのは画像では分かりづらいがB・リャンではないかと思う。)



一方、楊傑は捕まってしまい拷問に掛けられる。その後、丹鳳は金貨を渡す代わりに楊傑釈放を迫るが、裏切る人物がいた・・。



倉田さんは両替商役で金持ちの様相で登場。凄腕の両替商!ウォー、カッコイイ!!!


もちろんVS陳星もあります。陳星が帽子をブン投げ、クッソーと怒り爆発、本気で向かって来るところとかグッっと来てしまいます。いつもの様に倉田さんの蹴りにはシビれました。ここが勿論見せ場です。(陳星VS倉田では最初に『餓虎狂龍』があるが、これはいつ見れるのかなぁ。)


上官霊鳳とのアクション場面は楽しみにしていた割には残念なことに気合いが感じられなくなってしまいますが、気のせいかな。どこにその要因が隠されていたのかなと考えてみると上官という女優を前にした結果だったからに他ならない気がする。(倉田さん、そんなに怖い存在だったんですか?)

彼女についてこんな話がありました。この映画でのクレジットの記名順序が陳星より下だった事に腹を立て、もう陳星とは共演しないと癇癪を起こしたというエピソードがありました。(実際『黒豹』では燕南希と交代したそうです)やっぱり彼女は気が強かったんですね。(おー怖い怖い)
確かに陳星は当時ファーストフィルムと2年契約してましたがその後共演はなかった模様でした。これでは多少やりづらかった面もあったのではないかと思いました。

「もう何するのよ~」ってカンジ。


また、この映画では”入城”という言葉が使われています。入城ってあまり使わないのですが、何のことでしょうね?テーマが重苦しいのですが、第一影業の作品として純粋に楽しむことを重点に置いていますのでこれ以上の解説は省いておきます。

ちなみに陳星が演じた楊傑は実在の人物(日本に留学したこともあるらしい。)で、ブラックリスト(=黒名単)に載ったことがあるとかないとか・・・。終
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大除害

2009-10-05 23:54:04 | 七十年代作品【1973】


過激な暴力シーンにより香港で上映禁止となったという問題作『満州人』(73年度作品では他に『死對頭』『小霸王』『必殺ドラゴン鉄の爪』などがある。数年後に公開されたケースもある。)を見て以来、キム・ジンパルさんが私の中ではお気に入り俳優になっていました。これはそのジンパルさんが最初に出た作品です。

『大除害』('73香港)は、知る人ぞ知るKAI FA FILM(カイファ・フィルム)の製作。つまりは開發電影の事。

ここで脱線させてもらうと、やはりどこの会社が作ったのかは重要と思うのです。
どこが作ったのか分からない…。なんて本編の展開、進行には無関係なんですけどね。例えば関連作品を流して見たいとか同じ会社だからこっちにも同じ人が出ているかも知れない等々、製作会社や各関連会社のような参考程度で終わってしまう情報も割と重要視しちゃってます。
たまに監督すら分からない映画なんてのもありますが、最近は未発売だった各作品のリリースが影響して、また海外データベースも充実して来ているのであまりそういったものは無くなりつつありますね。私も以前はデータベースサイトの構築に躍起になっていた時期がありましたがそんな傾向もあり現在は活動を休止しています。(またすぐに再開するかも知れませんけど。今度不明作品をピックアップしてみようかな?)
ところで製片公司には非常に似た名前が多く、英字にすると区別出来なかったり、發行と出品の違いなど正確な情報を割り出すのは至難の業。ロゴに関してはSBのオープニングロゴは飽きるほど見てますが(しかもリマスターされて(笑))独立プロのロゴはまるまるカットされることが多くてなかなかお目にかかれない。見つけた時は狂喜します。こういった発掘作業が好きです。



あれ?何だろう。映画なのに発掘なんて…。

そうだ、そうだ。思い出した!
私は小さい頃、畑で土器の破片を見つけては喜んでまた掘っては探す発掘みたいなことをやってましたっけ。本物の発掘作業に参加したことは当然ながらありませんけど考古学が好きな子供でした。なので今私が没頭しているのは“電影考古学”とでもなりますか。

さて話を戻すと、ジンパルさんが香港映画に出るまでの経緯については興味のある部分でありますが、どうも専属俳優になっていたようですね。(一説には八本ぐらいに出演したとか。)
独立といっても開發公司は大きな会社になりつつあったり、関連する会社もあったりして結構複雑であり整理するのは困難です。現在、開發公司の研究も進めているところですが、香港、台湾、そしてアメリカにも会社があったようです。この辺りもう少し調べてみようと思います。

ところでジンパル氏の魅力は何とも表現しづらいのですが、気の優しそうな表情とは裏腹にそこから繰り出される華麗な足技が魅力です。ダブル・フロント・キックまたはフライング・シザース・キックと呼ばれる豪快なキックが売りですが、このキックの写真が当時の新聞に載るぐらいインパクトのあるもので既存の香港作品には無いものでした。(こちらがそのカット)



ただ実際には最初ということで不慣れな感じがして役どころも結構地味目でまだ光る部分は残念ながら見えませんでした。。(とにかくケリが派手でしたけど)それに比べ『満州人』が100%ではありませんが、自信も付いてなかなか貫禄のあるものでこれは良かったです。

監督は羅馬。開発と羅馬といえば『黒名単』(72)があります。開發公司設立は71年になるので創業作品はちょっと分からず?ですが、香港では『黒名単』が最初に公開されていたように思います。
羅馬はあっちこっちで監督業やってて安定してない監督サンでしたけど(『黒名単』以前の監督作品は見てないんでアレですが)キャスティングや出演交渉なんかは巧くて、それで陳星も1作だけですが『蕩寇灘』後に引っ張って来れたんでしょうか。

眠くなってきたので今日はこの辺で。(続きはまたいつか・・・。)


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蕩寇灘 その二

2009-10-04 12:00:00 | 呉思遠と思遠影業

『蕩寇灘』の香港公開期間は72年5月17日~31日の約2週間で興行収入6位(12月30日公開の「ドラゴンへの道」を除いた場合)にランクされる大ヒットを達成した。この映画の魅力はどこにあったのか?「馬永貞」公開後であるから陳観泰人気に肖っていたのは明らかだ。内容が良ければ何の問題もないが。

この映画の宣伝文句はタイ、シンガポール、香港など各国の武闘家を結集させたというもので(劉大川はボクサーでフライ級のチャンプだったらしい。何守信の方はTVBから転向した俳優だとか。)これを謳っていた。さらに陳観泰と空手家の陳星が顔を揃えればかなり質の高い作品が出来上がるのを期待してしまう。

又、日本人が悪者だから反日映画にはなるが、呉思遠は後の作品にも見られるようなテーマに拘っていた様に思う。つまりは日本人VS中国人の対決である。それがこの『蕩寇灘』でも見られる。単に日中対決だけではない。細かい部分では天津で日本人に2度勝利した中国人のエピソードまで盛り込んでいるのである。これが拘りの証拠と言える部分だ。そもそも呉思遠が脚本を書いているという時点でシナリオは練り込まれていないのでは?と感じたり薄っぺらな印象を受けたが意外にも設定はしっかりしているようだ。


日本から中国に戻ってきた江湖客の金少偉(陳星)は北方で現金強奪の犯行に及ぶが、これは長年逃げ回ってきた金を捕まえるためのワナだった。だが持ち前の武力で包囲網を難なく突破、警官を殺害して逃亡。指名手配のビラが各地に配られた。

舞台は海岸に近い小さな村。この村で大きな事件が起きようとは…。

2年前、悪事を働いた沈三(孫嵐)は村から追放されたが、危険かつ邪悪な武道”合山道”入門の為、日本へ渡来していた。その頃、河北では悪い伝染病が流行しはじめていたのだが、これにより一斉に人間が行動を始めることになる。

忠義武館の于兄弟は村のリーダー格。末弟の于洋(于洋)は婚約者の小蘭(林玉美)を連れ浜辺で稽古中。突然二人のところに唖巴(韓國材)が何かを知らせに来た。沈三が帰国して大騒ぎになっていたところだった。盛んに合山道をアピールする沈三は村人(汪禹ほか)の反感を買うが、そこに于洋が割って入りその場は落ち着いた。

この小さな村だけに生息する龍胆草(生薬の一種。竜胆の事。)は伝染病に効く薬として知られていた。何も知らずにこの村にやって来た金は唖巴と偶然出会い、家で一晩だけ休ませてもらうことに。
于洋が道場に戻ると外出中の兄弟子・孫平(劉大川)が一年ぶりに帰って来ていた。孫は伝染病流行が早まったので急遽村に戻って来たのだが例年は10月になると龍胆草を調達、運搬(つまり商売して村の収入源に)する重要な役目を負っていた。于洋の兄・于昌(何守信)が孫に気がついて奥から出てきた。孫たちは日本人が村に来るとの噂を聞き尋常ではいられない。最近日本の海賊が近海を荒らし回ってもいる。孫はある時首領が捕まったので日本人は何とかして取り戻すはずだと言う。日本人が来ることを不審に思う三人は日本人が急性伝染病発生を知って龍胆草を奪いに来ると悟り気を引き締めた。案の定、一足先に着いた沈三の先導で東洋人たちが急ぎ足で村に入り込んできた。この村の龍胆草を買収する為日本幕府から派遣されたのだった。

村には武館がもう一つあった。威遠武館の館主・劉(黄梅)はあっと言う間に日本人・岡村(陳觀泰)率いる合山道の武芸者たちに叩き潰され道場を乗っ取られた。黒いマスクで異様な姿の岡村が連れてきたのは教頭・池田(山怪)、飛鐵腿の異名を持つ尚野(方野)、長谷川(白沙力)の精鋭達だった。続けて忠義武館に乗り込むと于昌らが待ち構えていた。于昌は外国人には龍胆草を売らないと言って口論に。しかし、岡村はこの道場も買収することになるぞと言って去った。岡村は龍胆草買収と合山道舘開設の宣言文を掲示し、これに不服の者は翌日リングで試合させるとした。村の外部の情報に詳しい孫は様子を于昌と于洋に話す。金少偉という常習犯がこの村付近に逃げ込んだらしいと言う。金少偉は盗賊の家系で有名な人物だった。
一方、唖巴の家で休んでいた金は老人(カク・リーヤン)に明日の試合を見て出発を一日延ばすと告げる。
翌日の合山道場。不服に思い日本人に挑戦する者がいた。沈三の弟だった。観衆が騒ぐ中、試合が開始された。しかし教頭の池田に歯が立たず弟はリングの外へ放り投げられると、続いて于洋が入って逆襲。すると尚野が加わったのち孫平もリングへ入り乱戦に。長谷川が入ろうとしたところで、手裏剣の如く場外から銀貨を投げつけられ足に命中、尚野にも突き刺さり試合は中断した。その夜、岡村は銀貨使いを誰とも分からない者の仕業と断定、その男の打倒を誓いマスクを外した。まずは部下に毎年龍胆草を運んでいる孫の所に行けと指示した。

翌朝、金は出発するがその途中で岡村らに出会した。岡村は金が一体誰であるのか様子を窺い金を先に行かせた。一方、長谷川に呼びつけられた孫は龍胆草を運搬する役目だけあり腕は滅法強い。しかし孫は邪道極まる合山道武芸の前に無残にも倒れてしまう。
日本人に勝つ自信を持てない于洋は悩み、小蘭も龍胆草が全ての元凶と諦めムードになるばかり。しかし龍胆草を無くしては多くの生命が失われてしまうと思い直していた。
その頃、金は疫病に罹り道端で倒れ込んだが、通りがかった唖巴に助けられる。唖巴は徹夜で看病し金の命は救われた。まだ完治はせず老人の計らいでしばらく休むことに。
次に岡村は沈三を使って小蘭誘拐を企む。誘拐を知った于洋は取り乱すが于昌に沈三を探すのが先決と止められその場では思い止まる。たが小蘭を放っておけない于洋は合山道場に侵入。まんまと敵の術中に嵌り捕まってしまう。沈三を探す于昌も尚野らに出会し倒されてしまう。
早朝、目を覚ました金は完全に回復。唖巴が不在であったので老人に感謝する金。たが一刻も早く村を出なければ危険と旅立ちを決意した。金が去ったあと、老人は張り付けられた手配書を剥がすのだった。金を悪人と分かっていたのに…。金が外を歩いていると目の前に信じられない光景が広がる。唖巴が何者かに殺されていたのだ。

龍胆草の在り処がどこなのか全く口を割らない于洋ら道場の数人は浜辺へ連行され処刑されようとしていた。しかし金が現れて自分が江湖客であることを明かし、人質を解放する代わりに龍胆草の場所を教えて一緒に船に乗って日本に戻ると岡村に言い寄る。人質は全員解放されるが、金に罵声を浴びせて行く。何と報われない男なのか。
金は龍胆草の在り処を教えるが岡村は龍胆草の有用性を認めない金という人間が腑に落ちない。しかし中国人の事など分かるものかと反発、唖巴の復讐を誓った金は日本人との決着をつけるため最後の決戦に挑む。

全てを背負った金の前に池田、尚野は倒れ、ついに岡村が参戦。ここからが一番の見せ所だ。激しくぶつかり合う二人だったが、激闘の末、金は日本人・岡村をついに破った!金は龍胆草を守り抜き河北数十万の命を救ったのだ。だが絶命寸前で于洋に介抱され自分の本当の名を告げる。彼は悲壮美溢れる最期を迎えようとしていた・・・。


呉思遠の演出は素晴らしかった。
竜胆を必死に守ろうとする村人達、竜胆買収を企て日本からやってきた悪徳道場と地元カンフー武芸者たちの攻防、強盗殺人までする陳星と口の利けない韓国材とのストーリー、江湖客が村のヒーローになるまでの葛藤など次から次ぎへと休む暇もなく進行する。進むに連れて日本人の悪さも上昇。
なぜ小さな村に日本人が攻めてくるのかもちろんこれも劇中で示してくれている。この村だけで栽培、採取可能で伝染病の発生で特効薬の需要が高まりそれを奪い去ろうとする。奪えば中国人を好きなようにコントロール出来るからである。その黒幕は彼らを派遣した日本幕府ではないか(笑。でも槍玉に挙げられた日本人も要所要所では東洋人と若干オブラートに包まれていたけど。
まぁそれだけではない。指名手配され逮捕を恐れる陳星の心理的描写など実に見事な演出ではなかったかと思う。しかし呉思遠が何をやりたかったのか?それはまだ分からない。。

登場する武器も日本刀、サイ、ヌンチャク、鎖鎌のような物と多彩であった。サイも老人から贈呈された形で使用された。陳星とサイと言うと得意な武器であるのかいくつかの他作品で使ってますね。(前回記事の画像にあったサイとヌンチャクのカットは同じカットが『餓虎狂龍』にも登場)又、小物を使ったアイデアもある。陳星が銭形平次と化し、コインを武器として使用するなんてまぁ、ここは正直笑って楽しませていただいた部分である。屋外にリングを設置して対決させるというアイデアも良かった。

まぁしかし、やはり呉思遠の映画であるなぁと思いました。それはいつもの周福良による音楽と感動的場面の描写からも十分と分かる。(これは最初からあったのですね。)そういえば「蛇拳」でも薬を飲ませる同じようなシーンがありましたっけ。場所はどこか分かりませんがこのロケ現場も「蛇拳」などで使われてます。





今回北京語ビデオを入手して(これはラッキーでした)新たに分かった事はいろいろありました。ただ製作に関しては一つの謎が残ったまま。一部資料には袁和平がプロデュースとなっていてこれはなぜだろうかと。
この映画の製作費は少なかったと言い、呉思遠の友人たちが出資して映画を製作したとの話があるので、袁和平もその一人の可能性があるかも知れないがちょっと信じられない袁和平の監製だった。

人物構成に焦点を当ててみると、この映画が売り出しとなった人物が多いのも特徴になる。まず流石陳星かなという所から。中盤の対決場面など見てもキレがあった。腰を落として敵を丁寧に対処するように見えて、余裕があるところを見せるのがいい。
クシをしきりに使うヘアースタイリングマニアな陳星も。(何だこりゃぁ。リングでいよいよ出番なのかと思ったら、飛び込んだのは于洋だった(苦笑。

でも面白い演出です!人気についてはまだわかりませんけども。。

ブルースそっくりの于洋。彼もこれが売り出し映画だ。


日本人のNo2、No3が方野と山怪。このコンビ、これが最初じゃないかと思いますが信じられないことに一連の作品でそこそこ重要な位置に就いている。常連ってヤツ。(方野もいつも悪役ばかりですが、主演映画もあり。)



武術指導は袁和平(クレジットでは袁祥仁と共同になっているものもある)であるが、えげつない元村長の沈三に逆らう弟・沈四役でも出演。

珍しくセリフ有りのヤラレ役を演じている。中盤の劉大川VS白沙力などでは柔道の投げ技まで取り入れていた。これは確かに合山道の設定に入っていたので呉思遠のアイデアなのかも。

他にも常連はいる。70年代ばかり見ている人にとっては飽きるほど顔を見ることになる孫嵐。いつもニヤけていて今回は重要人物(といっても出番が多いだけ)になっててもアクションシーンは吹替。。


韓國材。彼も常連になるが呉思遠に気に入られていた様子である。


そうなると冒頭にだけ出演しているのが李天鷹や沈威(「プロテクター」に出演。それぐらいしか知らないのだが、こんなに初期で驚いた)になりますね。
そしてこの冒頭には何と成龍も出演していたのだ!!(下記画像参照)富國作品では同年の『石破天驚』出演が確認されているが、創業作から富國影業作品に出演していたことになります。このスタントシーンではハイキックなど高度なアクションを見せています。

実はこの映画で一番気になっていたのが陳星の役名でした。何だろうなと思っていたら江湖客とは最初に名乗っていたんですね。DVDパッケージ裏には"Chan Wu Deh"と書いてあったが、これが江湖客の北京語読みに近いものだったとは。役名が”江湖客”ってちょっとオイオイって感じですが于洋がラストで「江湖客!江湖客!」と叫んでいたので劇中はそれで通っていたようです。あとで本名も明かされていますが、世間を騒がせている人物=江湖客ということなっていた。(指名手配されてはいるが手配書には本名が載らず)この江湖客という中国独特の言い回しや名前の使われ方は絶妙で呉思遠の作家性も感じています。
また、役名について興味深いのが于洋である。彼は当時本名の龔子超を名乗っていたので、この『蕩寇灘』から正式に于洋と付けられたんでしょうか。役名は于昌館主の弟、于洋という設定であるので、ホントのところは不明ですがもしかしたら呉思遠が役名をそのまま芸名として命名したのかもしれませんね。

そういえば昨今の日本で騒がせているインフルエンザですが、設定では収穫時期の10月に村から調達するというものだったので時期的には今頃に当たり丁度合っていて理解もし易い状況でした。神経質な岡村はウィルス感染を恐れマスクを付けていたのではないかと(笑)。でもまぁフィルムの編集は例えば劉大川や于昌の最後のシーンでは岡村の後ろ姿だけを映し、あとから陳観泰の正面のカットを挿入など編集も手が込んでいるようでした。

とにかく壮絶なラストの対決を見せてくれた二人の陳さん。マニアを唸らせる出来であったのは間違いないでしょう。陳観泰は邵氏で、陳星は邵氏を飛び出して独立系と別々の道を歩みました。二人は後の79年に私の大好きな映画『上海灘大亨』(←をクリック)でも共演してますね。久しぶりに見てみようかなと思います。




成龍出演シーン

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続報

2009-10-02 11:02:44 | 未整理
復旧しました。(18時頃までサーバー障害が発生していた模様です)
※一部情報が欠落している可能性があります。ご了承下さいませ。
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