電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

ジャッキー・チェン自伝本の研究

2012-03-24 00:00:00 | 成龍的電影

最近は海外でも、「これは!」と思うジャッキー関連のブログサイトも登場しているようですね。

そんなサイトでは、『秦香蓮』のかわいらしい子役のシーンの紹介や『大酔侠』では、なんと出演場面の画像が何枚かついています! 

他にも『合気道』の出演シーンとか、邵氏の『香港過客』についても書いてあってちょっとビックリしますが、ビルに侵入する窃盗団の一人で、パンストをかぶった人には笑ってしまいました。
余所のサイトでこんなジャッキー研究があると勉強になりますね!
(すみません。。ジャッキーネタ。もう少しだけ続きますので。)

『香港過客』より
湯錦棠、ジャッキー(?)、梁龍 

さて、先日「伊賀忍法帖」についての記事を書いたのですが、他のタイトルも実際にどこがジャッキー自伝本でしか書かれていない内容なのかと気になってしまっていました。そこで前回、個人的な研究ノートを作ってみたというわけです。

共著者の方も流石に新しいことを勝手には書けないと思いますので、2つの書籍を比較してみて本人による新たなコメント部分を浮き出してみるという試行です。(引用箇所は、明らかに同じ言い回しで怪しい記述の箇所をピックアップしています。参考になれば・・・。)

その前に引用元と思われるソースブックについて補足しておきます。

このソースブックの著者はポップカルチャーに精通したアメリカ人の男女2人で、この本が書かれたのは97年。前年「レッドブロンクス」がヒットし、ジャッキーがアメリカで注目されはじめて続々と主演映画が公開された頃の本です。

ただ"Ninja Wars"のような根拠のない情報を載せている事で全体が怪しくなっていたのは明らかで 、例えば81年に"Drunken Fist Boxing"とか84年の"Two In Blackbelt"とか、自伝に載る以前にオミットされている作品もあります(笑。
気になるのはこの本の情報源についてなのですが、その殆どは明記されておらずあまり信用できません。 (これはソースブックの中で、発刊当時出来る限りの情報を掻き集めていることや、ジャッキー映画のタイトルが何通りもあることで正確なリスト作成が困難であると打ち明けていることからも分かります。)


では、作品毎に順を追って見てみましょう。(とりあえず82年の「伊賀忍法帖」まで)
たまに私のつぶやきも入れてます(註の箇所)。これは流していただいてかまいません(笑。

・Big and Little Wong Tin Bar
ソースブックからの引用箇所: カッコ内の記述
自伝追記箇所:京劇学校時代のエピソード

・The Love Eternal
ソースブックからの引用箇所:なし
自伝追記箇所:李麗華と共演の記述

・Story of Qiu Xiang Lin
ソースブックからの引用箇所:なし
自伝追記箇所:子役の記述

・Come Drink with Me 【自伝のみ】

・A Touch of Zen 【自伝のみ】

・Fist of Fury
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、別題、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:スタントダブルの記述
(註:)チェン・ズヘン(Chen Zhen)って陳真の事??

・The Little Tiger of Canton
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、別題、キャスト/スタッフデータ
編集部分:「刀手怪招」のデータ
自伝追記箇所:なし

・The Heroine
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、別題、キャスト/スタッフデータ、ローウェイの主張の記述(ベイ・ローガンのHong Kong Action Cinemaより)
自伝追記箇所:なし

・Police Woman 【自伝のみ】

・Hapkido
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:アンジェラ・マオについての記述

・Not Scared to Die
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、別題、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:学院の思い出

・Enter the Dragon
ソースブックからの引用箇所:別題、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:ブルース・リーとの共演、サモハンについての記述

・The Young Dragon【自伝のみ】

・Golden Lotus
ソースブックからの引用箇所:なし
自伝追記箇所:チョイ役の記述

・The Himalayan
ソースブックからの引用箇所:プロット、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし

・All in the Family
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:セックス・シーンについての記述

・The Dragon Tamers【自伝のみ】
(註:)これは自伝のみに書いてあるタイトルだからもしかして・・!?

・Hand of Death
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、別題、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:ジョン・ウー監督デビューについての記述

・New Fist of Fury
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:ノラ・ミャオについての記述

・Shaolin Wooden Men
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:5つのクンフーの型についての記述

・Dance of Death(1976)
ソースブックからの引用箇所:製作年度、プロット、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし

・Iron Fisted Monk
ソースブックからの引用箇所:プロット、キャスト/スタッフデータの一部
自伝追記箇所:なし
(註:)これは問題ありそう。どこからこんな話があがって来たのか全く分からない。羅維にこっそり隠れて協力するなんてことが有り得るのだろうか??

・Killer Meteor(1977)
ソースブックからの引用箇所:製作年度、別題の一部、プロット、キャスト/スタッフデータの一部
自伝追記箇所:なし

・To Kill with Intrigue
ソースブックからの引用箇所:別題、撮影のエピソード、相手の役名とスラングの記述(Oriental Cinema magazineより)
自伝追記箇所:なし
(註:)このスラングの話も違ったんだ(笑)。言われてみればいかにもアメリカ的な表現だなぁと思う。

・Half a Loaf of Kung Fu
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:オープニングの解説

・Magnificent Bodyguards
ソースブックからの引用箇所:プロット、テーマ曲、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:映画の一場面についての記述

・Spritual Kung Fu
ソースブックからの引用箇所:別題、プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし

・Dragon Fist
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし

・Snake in the Eagle's Shadow
ソースブックからの引用箇所:別題、プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:好きなセリフについての記述

・Drunken Master
ソースブックからの引用箇所:別題、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:映画の内容についての記述

・Fearless Hyena
ソースブックからの引用箇所:キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:映画の内容、成績についての記述
(註:)訳者は石天をシー・キエンと書いてしまう傾向にあるようです。

・The 36 Crazy Fists
ソースブックからの引用箇所:別題、プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:タバコについての記述

・The Odd Couple
ソースブックからの引用箇所:プロット、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし
(註:)こんな記述があったら誰だってそう思ってしまう。例えば、"彼は"となっているのが"僕は"に書き換えられているんですから困ったものです。。

・Fearless Hyena II
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:映画の内容についての記述

・The Young Master
ソースブックからの引用箇所:キャスト/スタッフデータの一部
自伝追記箇所:映画についての記述全部

・Battle Creak Brawl
ソースブックからの引用箇所:キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:映画についての記述全部

・Cannonball Run
ソースブックからの引用箇所:キャスト/スタッフデータの一部
自伝追記箇所:映画についての記述全部

・Dragon Lord
ソースブックからの引用箇所:キャスト/スタッフデータの一部
自伝追記箇所:映画についての記述全部

・Fantasy Mission Force
ソースブックからの引用箇所:プロットの一部、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:ジミー・ウォングについてと映画の内容など

・Ninja Wars
ソースブックからの引用箇所:プロット、キャスト/スタッフデータ
自伝追記箇所:なし

90年代以降は(「プロイー」のあとぐらいから?)メディアの発達などにより、不確定な情報は無くなってきていると思います。全体的な傾向としてはキャスト、スタッフのデータはソースブックからの引用。映画のプロットも要約して記載し、各映画のエピソードや印象深い内容の記述がおそらく本人のコメントであると考えられます。
映画の中のセリフや共演者のことはよく覚えているようですね。もう一つ言える事は、「ヤングマスター」以降、それまで少しだったのに猛烈に語りだしていることでしょうか(笑。やはり羅維時代までのことはあまり語りたがらないんでしょうね。

以上、2つの本の違いをざっと書いてみました。
私の書いている記事は仮説に過ぎませんが、古い作品も今後一層見直されて、より詳細のジャッキー年表が議論され、もっと広まってほしい。そんな思いで書いています。
やはり70年代(特に前半)は、ずっと闇の中でした。大して役に立たず私には何も出来ませんが、少しでも光を当てられればいいかなと思っています。

 

コメント (2)
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情報整理ノート

2012-03-23 00:00:00 | その他・研究

ジャッキー自伝の記述を自分なりに整理するために一冊ノートを作ってみたいと思います。

レシピ:

A6版百円ノート(1冊)
資料のコピー(適量)
ハサミ(1ケ)
ピットのり(1本)
マーカー(少々)
二色ボールペン(1本)


コピーを適当にハサミで切って、ピットで張り付ければ、約1時間で出来上がり!

あとはエッセンスを加えるだけ(笑)。

まずは目で見比べて同じ記述の部分にアンダーラインを引きます。あとは自伝にしか無い部分に黄色いマーカーを塗るといい感じになります。
←クリックで拡大(左:ソースブック、右:自伝)

Let's Enjoy!

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死闘!香港のゴッドファーザー

2012-03-22 00:00:00 | 成龍的電影

今回は、金振八主演「死闘!香港のゴッドファーザー」(原題:『満洲人』。以下、『満洲人』と記します)の魅力について少々書いてみたいと思います。 

この映画は73年に製作され、同年に「カラテ愚連隊」を監督することになるジョン・ウーが副監督の一人として参加していて(出演も兼任)、「カラテ愚連隊」より少し前に関わった作品になっていたと思います。

8ミリフィルム発売時の邦題がついてます(これは英語タイトルを直訳したものですね)コッポラの洋画「ゴッドファーザー」(1972)の影響により製作されたのかどうか分かりませんが、オリジナルのゴッドファーザーは香港でも『教父』として73年秋に公開され大ヒットしてますから当時、流行っていたのかも知れません。

この映画が香港映画として、どういう位置付けであったのかを分析するには、まずは会社がどこでとかプロデューサー、監督は誰?というのも把握しておく必要があります。
この映画の監督は「カンフーエンペラー」(1983)を監督したパオ・ホッライの奥様で、チン・シューメイという女性でした。(プロデューサーはカイファ・フィルムの陸正行と兼任。)邵氏で夫の監督作品のシナリオを担当していましたから映画を夫婦で作っていることになりますね。
この夫婦は会社をいくつも転々としていたのですが(威靈公司もその一つ。詳細は後述)、数年後には先日書きましたチェン・カンタイの『LAYOUT』 や少し後になってからティ・ロンの「カンフーエンペラー」を製作していたという事です。(未公開作品なら『風流殘劍血無痕』という武侠片もあるのですがこれはなかなか面白いのでおすすめです!)

『満洲人』を作った製作プロ、世界影業はパオ監督が邵氏から独立、起業し陸正行と折半で出資して作った会社だったと思いますので、『満洲人』はおそらくこの夫婦によって作り出された映画ということになるでしょう。通常なら監督になるはずなのに何らかの事情で(夫の方が多忙とかで?)妻を監督という立場にさせて、実質はジョン・ウーら副監督たちに仕切ってもらったとかそんな話かもしれないですね。

最近の記事の流れからいくと、73年前後の作品に集中して来てますが、この時期というのは詳しいことがあまり知られていない事が多いので、実際の映画がどんなものだったのか想像してみたり、製作者が誰を使って何を描きたかったのか等々、考えてみると次から次へと興味が湧いてきてキリがありません。実際ネタの宝庫ですので、自分で調べてみるといろいろ分かるので本当に面白いと思いますし、時間はかかりますが順を追って確認していこうと思います。

そしてまたこの映画『満洲人』も、ジャッキー・チェンが関与した映画と思っています(笑)。

この話はジョン・ウー自らがインタビュー本で語っていますし、ジャッキーの自伝に書かれていたエピソード、つまりハーベストのスタジオの撮影現場に現れたパオ監督から仕事の依頼を受けたのがおそらくこの『満洲人』ではないかと思うのです。

威靈公司という会社を古い書籍などで目にしたことがあるかと思いますが、この実在する会社の名前がどうして出てくるんでしょうね??

推測ではありますが、この時期(72~73年頃)にパオ監督と関連のある映画にジャッキーが関わったということになると想像できます。実際に威靈公司作品に関与した事実は見つかっていませんが、この『満洲人』だけがジャッキーとパオ監督を結ぶ唯一の作品と思われ、上記のような推論になりました。

(参考)インタビュー本での記述(byグーグル先生) 

http://books.google.co.jp/books?id=_krI0_M3hCUC&pg=PA21&lpg=PA21&dq=john+woo+manturian&source=bl&ots=a3-NiCa3W2&sig=soVTR6qEYy7Sp4hEgPc6jexVqps&hl=ja&sa=X&ei=lKFkT9OyCMTkmAXPoYCtCA&ved=0CFYQ6AEwBg#v=onepage&
q&f=false

この記述のようにジョン・ウーが昔の出来事を覚えていて、しっかりタイトルも具体的に挙げていたのも以前から目を付けていたジャッキーと初めてコラボするようになったりとか、まだ駆け出しの頃のジャッキーが同じ映画で協力していたのをあとで思い出し、印象強く残っていた・・という可能性もあるかも知れませんね。 

あと面白いのが、次の「カラテ愚連隊」につながる部分を感じることができるからですね。(ストーリー設定も少し似ている部分があります)

実際の映画の方はどんなものなのでしょうか。 

まず「ザ・カラテ2」などで知られる韓国の金振八が主演しています。 
画像
彼はカイファ・グループの羅馬監督によってグループの看板として起用され、最初の映画『大除害』に主演して得意の合気道を見せていました。
当時、同じグループで武術指導をしていたジャッキーとは当然つながりがあったはずで、この頃からの知り合いだったのでしょうね。
辮髪で満州人を意識?

その彼が主人公で物語は進行します。
清朝末、麻薬密売組織と対決する一人の男。売春婦との恋。その周囲の人間たちの数奇な運命を描いています。

この映画の最大の魅力はもちろん彼ですね!。『大除害』に続く香港映画への出演ですが、彼の繰り出す蹴りはとてもなめらかでいつみても素晴らしく感動してしまいますね。

『満洲人』でも当然ながら得意技の豪快なキックを披露して、表情も豊かで一番冴えていたように思います。 

ジャッキーと金振八との交流も興味のあるところですが、劉家榮ら他の龍虎武師たちとの交流はどうだったのでしょうか。気になるところです。

途中、こんなシーンが出てきます。
金振八は布にパンチして穴を開けます(笑)。

このシーンあまり見た事がないですが、ジャッキーが「蛇鶴八拳」でも見せていましたね。

「蛇鶴八拳」

マフィアのボスを演じるのはチャン・ナンです。 
 
同じ様なボス役が多いのであまり区別できませんが(汗、この時期は引っ張りダコですね(笑。

その手下に扮したジョン・ウーは、あまり目立ちませんが、ちょこちょこ顔を出します。

 (右)ジョン・ウー

副監督のクレジットにはジョン・ウー含め3人の名が連なっています。 
その一人にワン・カイイーがいます。 
  呉字森、黄祥勤、王凱怡

彼はこの『満洲人』のあと、「カラテ愚連隊」でジョン・ウーと共同で監督することになります。  ジョン・ウーもこの映画に出演しながら、友人のワンと次の映画「カラテ愚連隊」を夢見ていたのでしょう。


売春婦役にはシャーリー・ファン(黄莎莉)。


「カラテ愚連隊へ続くこの二人、
チェン・レイ
敵とも味方とも分からない不思議なキャラクターが彼。

フォン・ハクオン。よく出てます(笑  
 
ここでは馮源という珍しい名前を使っています。 殺し屋役の馮源は赤い蝶ネクタイで登場。ピストルを乱射します。。

赤いネクタイと言えば・・・
こんな作品も。

 ちょっと、おまけ。『元甲』より

主要なキャストはこんなところでしょうか。

ジャッキーは残念ながらクレジットも何もありませんでしたが、僅かながらの参加。
そして、次の仕事(ジョン・ウーに本格的に仕事をもらった「カラテ愚連隊」)につながっていったことは想像に難くないところだと思います。

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『死党』についての考察(最終回)

2012-03-07 00:00:00 | 成龍的電影

ついに、というかやっとですが何とかこの謎を解明して記事にすることが出来るまでになりました。長い間悩み続けた疑問とその答え、私なりの考えがどのような話であるのか早速、書いておきたいと思います。

『死党』についての私の結論は、映画のタイトルではないということです。

(参考)中国語で死党とは?(こちらをクリック)

 

要するにジャッキー・チェンが”死党”と思う人物(=チャールズ・チン)を指しているということになります。

そもそも『死党』というのは80年代初頭、日本の書籍に72年の大地公司作品として載っていた情報でした。 どんな映画なんだろうと思うようになってからというもの、この不確定な情報を掲載した“一冊の本”に悩まされることになって、長い間、この記述は一体何を書いているのだろうという不安と混乱が避けられなかった・・・という話なんです。

こちらは前回書きました記事です。

その後、『山東老大』を見てみたのですが、率直なところどうも腑に落ちなかったんですね。簡単に言いますと、ここに来て直感的に『死党』=『山東老大』説が崩れ出し、私の中では有り得ないという実感が急に高まったのです。

そして「もう一度、他のを見てみよう」と思い、昆仲公司の『大密探』(1973)をチェックすることに・・・。

再度『大密探』を見てみると、ふと気付いたのです。この『大密探』はオープニングにもあるように銀色鼠隊の映画だったのです。

 

ここで流れるのはウィークエンダーでおなじみのアレ。「鬼警部アイアンサイド」より


銀色鼠隊メンバー
前列左がチャールズ・チン

以前、検証した『小偸鬥大賊』(こちら)ではこの銀色鼠隊の関係から出演できたとの結論だったのですが、この映画には肝心のチャールズ・チンがいなかったのです。

では、その『小偸鬥大賊』の前にもう1本あったとしたらどうでしょう。
つまり『女警察』の後、チャールズ主演の『大密探』に出演し、その流れでアラン・タンの『小偸鬥大賊』出演につながった・・・。いかがでしょうか。これならすんなり話が通って一気に真実味を帯びてくるではありませんか。

このつながりには説得力があり、ジャッキーの言う通りになるので、やはり『山東老大』ではなくこっちではないかとその時思ったのです。

前回書きましたように主役とはいえ、俳優のチャールズとしてはプロデューサー(陳浩)に紹介してスタントを少々のお手伝い程度だったと思われます。

実際の『大密探』では武術指導こそ劉家榮と陳全という当時ジャッキーとはライバルグループに相当しますが、多人数でのバトルは非常に少ない展開で進行します。
ここにジャッキーが入り込む隙があったのでしょうか!?

えっへん!(笑)。では、実際の本編では、どんな場面になっていたのでしょうか。

チャールズがバーで酒を飲み、酔って帰るところに車に乗ってやってきた四人組に駐車場でからまれるというシーンがあります。
車の前の座席には高遠と任世官、うしろに赤い服の男とGジャンに白いシャツのジャッキーらしき人物が乗っています。

左:Gジャンの男 右:チャールズ 
横顔の一部が一瞬見えますが、誰であるかハッキリ確認はできません。
しかし、可能性は十分あると思います。

そのGジャンの人物はチャールズに膝蹴りを入れた後、パンチで殴り倒します。(このパンチは別のカットに編集されており、白いシャツの袖ではない人物(たぶん高遠)に変わっています。)

このGジャンに白いシャツというのが『女警察』のときの服装と似通っているんですね。(偶然にしては出来すぎではないかと思うのですが。)
『女警察』より

ジャッキーがチャールズに呼ばれたことを公言しているのは、『女警察』の出演後、少々のお手伝い程度で、そのタイトルも、どこの会社かも覚えてなくても、チャールズ・チン御大に呼ばれた事がうれしかったからだと思うのです。
だから、ジャッキーは嘘など言っていないですし、(呼ばれたことは真実なのですから。)実際にもう1本あったのです。
但し、あくまでジャッキー1人が呼ばれた形であり(いつものユン・ケイらは不在)、結果はどうであれ共に同じ映画に出演したことになるのだと思います。それが『大密探』という探偵映画なのですから『死党』なんてタイトルの映画、いくら探したってある訳はなかったという事になるのです。


余談ですが、そのほか気になった点を挙げておきます。

その1:共演者に『女警察』との共通点が多い。

チャールズ・チンをはじめ、チャン・ナン、ウォン・サムなどのベテラン勢(これが結構あやしい・・・)。

武術指導はクレジットによれば劉家榮と陳全であることが確定(陳全はバイクに乗ってチラっと登場してます) ですが、気になるのはしっかり出演していた黄培基の方。彼は72~74年頃の作品(例えば『満洲人』や『黒人物』、『逃獄犯』『五大漢』など)で武術指導と、邵氏出身ですがジャッキーとも限りなく近いポジションにいた様なので何らかのつながりがあった可能性も少なからずあったのかも知れません。


ちなみに『女警察』こと「ヤングタイガー」ですが、米を除いたヨーロッパなど海外のプリントならジャッキーブレイク後のリバイバル版ではないオリジナル73年版のクレジットを見ることが出来ます。

 林秀と陳元龍。国内版だとそうはいきません(苦笑。


『女警察』いま見るとジャッキーが若い頃の飛んだり跳ねたりするアクションも見れるし、割と新鮮かも知れませんね。(ファンには忘れられない1本です。)
ほーら、「ヤングタイガー」見たくなって来たでしょう(笑)。

その2:ロゴのデザインが似すぎてます。(爆)
 ただそれだけー。

内容もそうですが、『大密探』という映画は明らかに『女警察』からの流れでしょうね。


ということで、『死党』の最終考察、昆仲公司の創業作『大密探』について書いてみました。(配給はあの協利だったようです。)そういえば大地公司は『頂天立地』『女警察』の2本だけしか作られなかったのですから、単純に大地の3本目なんてあり得なかった・・で良かったんですね。
『女警察』の後、意気投合してチャールズに呼ばれ、チャールズ主演『大密探』に出演。そもそも陳浩の会社、昆仲公司も小さな会社でしょうからほぼ大地公司とほとんど扱いは変わらない物だったのではないでしょうか。

 

最後に、ここまで導き出すのには長い時間がかかりました。今回、解明できたのもずっと協力していただいたAceさんのおかげと思っています。(とても感謝しております。この場を借りてお礼を申し上げます。)

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「伊賀忍法帖」の疑惑

2012-03-01 00:00:00 | その他・研究

今回は、ジャッキー・チェンがカメオ出演しているとの噂のあった"Ninja Wars"(1982)についてです。

 

この件に関して、ネット上ではいろいろな説があるようですね。

ここでは、どこに出ているか?を検証するのではなくて、この情報がどこから出て、なぜ生まれたのか?を今一度、考えてみてみる・・・。そんな意味を込めて書いてみたいと思います。

とは言っても、当時絶大な人気を誇っていたジャッキー・チェンがNinja Wars、つまり東映の「伊賀忍法帖」に出演していたなんて話はものすごくスケールの大きな話で夢があると思います。(何も疑いの余地が無ければ・・ですけどね(笑。)

例えばどんな説があるのかまずは確認してみようと思います。

その1。馬に乗る群衆の中の一人説。

すると、これかな?
 


続いてその2。笠を被っている人物説。

これが、そうかな!?
強そう!

 

例によって顔を隠していることが条件です(笑。誰が演じているのか、もちろん分かりません。

ただ、これら諸説があるのは分かりましたが、具体的にここのシーンのこの人物がそうだと言えるのか、不思議ですよね。

正直な話、これを証明するのは難しいです。(情報をほとんど聞かないですし、とにかく顔が見えないんですから。)
この映画を隅から隅まで、いくら時間をかけてじっくりみようと、この方法ではきっと答えは出て来ないでしょう。(そういえば、この件に関してわざわざ千葉ちゃん本人に公開質問した人がいたのですが過去にはそんなこともありましたっけ。)

ということで、検証は終わり・・・いやいや、そうじゃなくて(苦笑。


これだと出演が前提となってしまうので、ちょっと視点を変えてみます。

そもそも何をきっかけにこの情報が世に出てきたのか?

私が思うに日本ではなくて実はアメリカからではないかと。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、最初に「伊賀忍法帖」ではなくて"Ninja Wars"と書いていたのはそういう意味でした。(私が以前まとめた仮説を以下に披露しておきます。)

その前に、この噂をどのくらい信じていましたか?どちらとも言えず半信半疑でだいたい50%くらいでしょうか?私は当然ながらゼロ…と言いたいところなのですが5%としておきましょう。

そもそも「伊賀忍法帖」についての疑念を払拭できないのは、ジャッキーの自伝本にはっきりと”カメオで出ている”と書いてあるのに、どこにいるかそれをまったく確認できない・・というのが実情ではないでしょうか。

そのジャッキーの自伝と呼ばれている"I AM JACKIE CHAN"(1998刊)ですが、分厚くてとても詳しく書いてあるのでファンの間では重宝している本だと思います。
私はこの自伝本に関して、ある予測をし(特に巻末の部分)、現在も変わらない認識でいます。

この本にはジャッキー以外の著者としてもう1人の名があります。自伝であるのにです(笑。(Jeff Yang と共著となっている。)

ジェフ・ヤンって誰なのか?
そうです。彼が何を担当したか。それは公になっていないのでわかりませんが、彼が巻末のフィルモグラフィーの編集をしているのは後述しますが、明白であるのです。彼は経歴をみるとわかりますがアジアのポップカルチャーに精通したエリートのようですね。また、どうしてジャッキーがもう1人の著者を付けているのかファンであればたぶん分かると思います。
たまたまアメリカのハーバードを出た優れた編集者に縁があり彼の協力もあって自伝を出版できたのではないでしょうか。

ここでもう1冊。
自伝の刊行される1年前の97年に出版された"The Essential Jackie Chan Sourcebook"(以下、ソースブック)という洋書があります。
実は、この本には自伝の「伊賀忍法帖」に関してある事実が隠されていたのです。

参考までにもう1冊、ソースブックと同じ年に出た"Dying for action"という書籍は、自伝、ソースブックと同じように jackie chan film checklist という各作品のフィルモ解説がありますが、初期の解説部分は自伝とは大きく異なり、"Ninja Wars"も載っておらず独自の内容となっています。(ちなみにここに挙げた自伝本以外の2冊の出版にはジャッキーは何ら関係していません。)

前置きが長くなりました。では、いよいよここから本題に迫ります。
まずは2冊の記述を引用しますので見てください。

自伝 :
「僕はカメオで出ているだけだが、そういう形でも出たのは、1970年代人気のあった「殺人拳」シリーズの日本のマーシャル・アーティスト、ソニー・チバと一緒に仕事したかったからだ。」
キャスト:真田広之、渡辺典子、千葉真一、ジャッキー・チェン
監督:斉藤光正
プロデューサー:佐藤雅夫
ライター:小川英

ソースブック(原語):
「Jackie chose to make a cameo in this film in order to work with Sonny Chiba,a well-known martial artist from Japan and the star of the popular Street Fighter films of the 1970s.」
CAST:Henry Sanada, Noriko Watanabe, Sonny Chiba, Jacie Chan(cameo)
DIRECTOR:Mitsumasa Saito
PRODUCER:Masao Sato
WRITER:Ed Ogawa

和文、英文の違いはありますが、"Street Fighter"(=殺人拳)とか"Martial artist"とか、酷似していることに気付きます。というかそっくりそのままですね。(キャスト、監督、プロデューサー、ライターもまったく同じ!!)これは、参考にするものが他になくて書くべき内容が無かった結果、そのまま引用するしかなかったと思うのです。

つまりこれは、ジャッキーが書いた自伝の出版以前に「伊賀忍法帖」に関して既に書かれていた書物があったということになります。要するに自伝の巻末は、この本を参考に書かれているのが一目瞭然なのです。

もしジャッキーがカメオ出演したと書いている部分を本人が書いたのであればソースブックを参考にすることなく自伝にしかない内容を書くはずです。逆に言えば自伝にしか載っていない内容(自伝とソースブックの差分)こそがジャッキーが語った真実だと言えるのではないでしょうか。
なので、Ninja Warsを含め、ソースブックとまったく同じ文章になっている部分はジェフ・ヤンによって編集されたものだと思います。
結局のところ私の考えは、自伝にある「伊賀忍法帖」のカメオ出演は本人の弁ではなく編集者によって作られた虚構だということです。

ではいつから出たか?
自伝が出る以前(98年以前)にはこんな噂(または"Ninja Wars"がフィルモに載っている状態)があったでしょうか?自伝が出元であるので私はおそらく無かったと思っています。

・・・以上ですが、真相はこんなところではないでしょうか。これで疑問がスッキリとなれば幸いです。

最後に、今回の記事はカメオ出演、非出演のどちらかを証明するものではなく、自伝より前に「伊賀忍法帖」に関して自伝と同じ記述のある書籍が存在していたという事実があった・・・というだけの内容であるということをおことわりしておきます。

 

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