電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

神拳 ヤング・ボディガード

2012-07-30 00:00:00 | TV放送作品

「ジャッキー・チェンの飛龍神拳」または「神拳」、「ヤンボデ」として知られる拳シリーズ。残念ながら来月のBDリリースには入っていません。数年前、DVDが発売された時はオリジナル予告を見て感動を覚えましたが、あれは撮影風景が含まれていてとても良かったですね。またいつか発売されることを期待してます。

この映画は御存知の通り、『風、雨、雙流星』、『劍・花・煙雨江南』に続く羅維影業・古龍原作映画3作目の『飛渡捲雲山』のことです。
日本では「天中拳」が劇場公開された83年夏、時期は不明だったものの『『飛渡捲雲山』が今後の公開予定作(なんと3Dとしての公開!)として名前が挙がっていた作品でした。当時は、超立体映画「ジョーズ3」なども公開され、立体映画に注目が集まっていただけに是非劇場公開して欲しかったのですが、その後、劇場公開は中止となり、TV放映された経緯がありました。

 TVでは「神拳」のタイトルで放送

ここでは、『飛渡捲雲山』の原作について少しばかり迫ってみることにしましょう。

この『飛渡捲雲山』は、数多く発表されている古龍の原作小説のどれに当たるのでしょうか。

これは、75年に発表された『拳頭』という小説が該当します。
オリジナルでは”捲雲山”という名が”狼山”という名前であったり、登場人物(主人公)が小馬という幾度か古龍の小説に登場している人物だったりしてますが、病気の弟の護送を藍蘭が主人公や常無意らに依頼して、山の王と対決するという大筋は変わっていないようです。
『拳頭』での老皮という人物は、古龍の七種武器シリーズ『霸王槍』に出てくる人物でもあり、少林神拳を使う設定になっていたようで、これが『飛渡捲雲山』で神拳を使うの主人公・丁冲で劇中でも握りコブシを強調して見せているように”拳頭”を売り(すなわち神拳の使い手を黒幕が欲しているという状況)とした主人公になっていると思います。

 これが、拳頭の由来(?)

上で書きました『霸王槍』ですが、実は先に映画化されていたようで
『五虎屠狂龍』(又名:『風起雲湧鬥狂龍』)として、78年に台湾で公開されています。(ロケ地は『飛渡捲雲山』と一部同じ場所を使用しています。)
「飛龍神拳」はブルース・リャンや「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」のワン・ピン(汪萍)などキャストもかなり豪華だったんですけど、こちらも豪華な顔ぶれで、監督のポール・チャン(張冲)をはじめ、岳華、上官靈鳳、金童、胡錦、羅烈らが出演し、『拳頭』の老皮に当たる役をなんと張午郎がやっていました!(岳華VS高飛なんて対決もあります)
関連する映画を見比べてみると、面白いですね。

ココの場所「飛龍神拳」では”湧泉寺”となっていました。


 これはレアな共演(上官靈鳳とチャン・ウーロン!)

『五虎屠狂龍』海報

次回は拳シリーズ・最終回『カンニングモンキー天中拳』です。


【作品DVD】

これは貴重。日本語吹き替え収録!!

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燃えよ!ジャガー

2011-10-17 00:00:00 | TV放送作品

来月にはいよいよジャッキーのとりあえずの新作も2本劇場公開されるのでそろそろ“ジャッキー・フィーバー”にも拍車がかかってきそうな予感です。(今月とかテレビ番組での紹介やCMなんかもあったらいいのですが。)私はどちらかといえば旧作のファンですのでまたいろいろ古い映画でも見てみようかなと思っています。

そして、きっと楽しくなる来月も終わって12月になれば、またすぐに一年の締めくくり、年末に向かって意識が高まっていくと思います。
年末といえば昔は映画がいっぱい放送されたりしたものですが、深夜にテレビをつけっぱなしにしてたら、たまたま映画をやってて見ているとこれがなかなか面白い、ってな感じのパターンがよくあったんですよね。新聞にも解説とか載ってなくて実際に見てみなければどんな映画か全く分からない。ちょっとワクワクしながら見てみる…とか。

そんな昔のことを思い出して、いま再び見直してみたりするとこれがまた新鮮で、気持ちも高揚していろいろな事にもチャレンジしてみたくなります。例えばTBSで夜中に「邪拳迫る!死守せよ少林寺秘伝」放送なんてのもそうだったのですが(これは「飛龍神拳」や「空飛ぶ十字剣」など立体映画の流行った77年製作でした)、最近は深夜にカンフー映画の放送なんて事もめっきり減ってしまいました。(つい数年前ぐらいにはテレ東でも「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」とか「怒れるドラゴン不死身の四天王」なんかも放送していたのにー)まぁ世の中の波というものがあるのでしょうか。

70年代の大昔には台湾製カンフー映画がどっと放送され(ジミーさんのも確かあったはず)いまから思えば本当に豊かな時期で、そんな時代がまたいつかカムバックして欲しい、ただただそれを熱望、熱望の一言であります。 そこで今回は当時放送された中から一本の映画を選んでみました。
昭和50年1月、テレビで放送された作品でマカオが舞台になっています。
タイトルは「燃えよ!ジャガー」(原題『嶺南之虎』)で73年に製作されました。テレビで放送はされましたが、劇場では未公開となっていた映画です。『少林門』で剣士ゾロを演じたヤン・ウェイの主演作で、監督は邵氏のベテラン監督、グリフィン・ユエフェン(岳楓)。

 渡瀬恒彦ではありません。ヤン・ウェイです

小さな屋台のラーメン屋”小広東”店主、麥青(ヤン・ウェイ)はマカオの町を牛耳るヤクザたちに猛然と立ち向かう青年。

 客が麺に虫を入れていちゃもんを付けるとか、後の『南北酔拳』(1979)で袁信義が演じた主人公にそっくり。

麥青と親しい女性・海棠紅(チン・フェイ)や、孤児の小毛(シュー・チャーリン)が一緒に暮らしている。

 (左:チン・フェイ)

次々とやってくるヤクザをやっつけて商店街の人から祝福されるヒーローである。

エディー・コー&リー・ハンチョン

ヤクザの一人、小麻皮(リー・マンチン)はボスの邱六橋(チャン・ナン)連れ、ショバ代をむしり取る。

 古いカンフー映画のボスと言えばこの人

麥青をどうにかしたいボスは、怪力の持ち主・趙閻王(トン・ティンヘイ)を用心棒として仲間に引き入れ、麥青たちを封じ込めようとする。

ヤクザたちの横暴に麥青の怒りは爆発するが、強敵・趙閻王があわられピンチ!!

周りにいた大勢の敵から背中を刺されてしまう。

傷つきながらも最後の一撃で趙閻王にとどめを刺した麥青。
致命傷を負った麥青の体にはもはや気力だけしか残っていなかった。

棠紅には不吉な予感が走る。何とか必死の思いで家まで辿りつくと、棠紅たちの目の前で息絶えるのだった・・・。

単純なストーリーですが、

ヤン・ウェイのカンフーアクションはダイナミックな動きでカメラワークも素晴らしい。(それもそのはず。撮影師は賀蘭山!)ヤン・ウェイも物凄く乗っている感じ。撮影師が一流だとアクションもこんなにも映えるものなんですね。 

それにしても西本さんがなぜ独立プロの作品の撮影師を引き受けたのか?(それは邵氏でお世話になった岳楓監督への恩義に他ならないと思うのですが。実際どうだったんでしょうね?)とにかく見れば一目瞭然。よくある泥臭いカンフー映画とカメラの使い方がまったく違います!(当時としてはかなり斬新なものだったことでしょう) 

 

出演
ヤン・ウェイ(楊威)・・・麥青
チン・フェイ(金霏)・・・海棠紅
リー・ハンチョン(李漢城)・・・亞良
シュー・チャーリン(徐家霖:子役)・・・小毛
チャン・ナン(姜南)・・・邱六橋
トン・ティンヘイ(唐天希)・・・趙閻王
リー・マンチン(李文泰)・・・小麻皮
エディー・コー(高雄)・・・小浦東
タン・ディー(唐迪)・・・唐彪 
 

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鬼神ヶ谷の決闘

2011-01-16 00:00:01 | TV放送作品
昭和49年9月、「鬼神ヶ谷の決闘」という映画が突如放送されました。
これは71年の台湾・陳一新監督作品『鐵扇神劍』という映画のことであり
台湾武侠片の国内での初放送になります。この9月に再放送を含めて2度放送されました。



この年はブームの真っ最中で映画館では数十本のカンフー映画が上映され、テレビでもこの映画をはじめとして「燃えよジャガー」や「怒れドラゴン」など何本か放送されていたのです。


製作会社は老舗の香港新華影業という会社ですが、台湾映画になります。
監督の陳一新は役者としても郭南宏の『童子功』(71)などに出演している人物で、63年には子役のジャッキー・チェンが出演した『秦香蓮』も監督しています(厳俊と共同監督)。

『秦香蓮』(63)
(右)9歳のジャッキー(役名は冬哥)

展開はある剣を巡ってさまざまな登場人物たちが争奪戦を繰り広げるという内容となっている様です。

ここは鬼神ヶ谷。
父の仇を討つため主人公・方詠秋(江青)は、鬼侠と呼ばれた師匠(羅斌)に鍛えられ特殊な技を身に付け、剣士として成長した。
江青

ある日、深手を負った師匠が外から戻って来ると、
詠秋に3人の仇の名が書かれた木札を渡して行方を暗ますのだった。


その後、鬼侠は死んでしまったのだろうか。誰にも分からぬまま、
いつしか鬼侠の墓が作られその墓を荒らす者が絶えなかった。

詠秋も墓を掘り起こそうとして毒煙をかぶり失神してしまう。


そこに鉄の扇子を持った謎の青年・衛平(江南)が現れ詠秋は助けられる。


やがて墓には荒らす者を成敗する鬼神が棲みつくようになっていた。


父から授かった神剣を背に仇を探す詠秋。
敵に囲まれることもしばしばだが、持ち前の腕で軽く切り抜ける。


仇とは寒占非(黄俊)と寒占英(ロン・フェイ)、寒占武(田明)の3人の
事であり、気の強い妹の寒繍琴(リー・チーリン)も
兄弟たちの行動が気になり詠秋にも手を出す。
リー・チーリン。「カンニングモンキー天中拳」で五毒党のボス・春花を演じた。

ついに詠秋は仇を見つけ3人と対決する時がやって来た。
左から龍飛、黄俊、田明。

そこに鬼神が現れるが、あとをつけていた衛平は鬼神の仮面を斬り正体を見破るのだった・・。



強くなった剣士が腕前を人々に見せながら、人を探してゆく。
どこかで聞いたことのあるような展開ですが、古い映画ということもあり
今見ると物足りなさなども感じてしまいますが、当時はこんな映画も放送されていたということで、なにかの参考にしていただければ幸いです。


(Special thanks to 芥蘭)



次回のTV放送作品は「燃えよジャガー」の予定です。
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真説モンキーカンフー

2011-01-03 00:00:40 | TV放送作品
明けましておめでとうございます。
本日は久々に書きますが、昔テレビで見たカンフー映画についてです。



原題:『酔歩迷猴』The Drunken Monkey


主演の陳木川はチェン・カンタイの弟であるとか言われていたのですが
実際はチェン・カンタイのいとこ。つまり従弟と書くのが正しいですね。
そして大聖劈掛門の師弟でもあると思います。

映画ではその陳木川が五猴拳、即ち石猴、木猴、金猴、迷猴、酔猴
の5つの型を取り入れています。



映画は「怒りの荒野」(67)のテーマ曲に乗って
オープニングがスタートします(TVでは差し替え)。
このテーマ曲もカンフー映画ではよく耳にします。


文字通り酔猿拳vs風蛇拳宿命の対決っすね。
ヒゲのチャン・イー(張翼)が出てくると一気に台湾色に染まります。

ちなみに私が所有しているロビーカードがこちら(数種類あります)。
以前はTV局が保有していたものらしい


大聖劈掛門のサイトに掲載されている系図には、
高弟・陳秀中の弟子として50~60名ぐらいの人がいるようですが
(中には名前を変えている者もいると思います)
香港映画に関係がありそうな人名としては
まずはチェン・カンタイ。
ほかに高雄やポムソン・シー、アンソニー・ウォン、パイ・ピョウ、銭小豪と銭嘉楽などの名が連ねられています。


スタッフ、キャストの詳細データは香港電影資料館にあるので
そちらを参照していただくとして
この映画が79年作品なのかどうかを
判断するにはどうしたら・・!?

とりあえず銀色世界79年1月号に新作紹介ありますね。
このときはまだ洸明影業という会社だったようなのですが
最終的には天聲影業に変わっています。
(1月ということで1978年中に完成していた可能性もあるが・・。)
まぁしかし79年作品でもいいような気がしますので(笑、
79年に含める予定ではいます。

そもそもの話ですが、陳木川が猿拳の映画を製作するということで
当初、兄弟弟子・洗林旭との共演の話もありましたが、
結局、洗林旭は協利で「酔猿拳VS蛇拳」、陳木川は「真説モンキーカンフー」に出演することになりました。。
これだと『酔歩迷猴』は香港では公開されなかったようなので残念ながら陳木川は映画の勝負で負けたような形になってしまいますよね。(洗林旭の不戦勝か(笑。)
そういえば同時期には劉家良による『瘋猴』なんかも作られましたね!
(劉家良も流行のネタを察知する能力にも長けていたのかな??)
この時期、79年という年は本当に”猿拳映画”が熱かった時期でもあります。
どの映画が早かったのか?とかまだ考えていませんが『瘋猴』「酔猿拳VS蛇拳」「真説モンキーカンフー」「モンキーフィスト猿拳」『出籠馬留』・・・。(えっ、まだ他にもあるの??)
どの人が本当の実力者であったのかまではもちろん分かりませんけど
ライバル同士の競争があってそれぞれの会社で”猿拳”という同じテーマで映画化して結果はヒットしたのか否かにありますが、いくつもの映画が作られたんですね。
この映画も本物の型を取り入れたりして工夫していたはずなんですが・・・。




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広東好漢

2009-11-29 01:02:55 | TV放送作品
今回は郭南宏が監督した「広東好漢」(73)を取り上げてみます。
日本ではその昔「怒れドラゴン」というタイトルが付けられていたがブームの真っ只中とはいえたまたまというかきっかけとか何か明確な理由がある訳ではないような形でオンエアされた。それがそのまま忘れ去られた状態になっていたように思う。

ところで郭南宏は好きな監督の一人であるが、何と言っても私の好きな郭南宏作品はコレです。

カラフルなので載せちゃいましょうかね(笑。

経歴等は公式HP”郭南宏的電影世界”(台湾のサイト。最新インタビューでは「少林寺十八銅人」の映像を交えながら元気な姿を見せています。)を御覧頂くとして同監督は傑出した多くの作品を世に示した。
私が興味を持っていることは郭南宏をはじめ台湾の映画監督が作品の中に潜ませている伝統的な精神についてである。
それを知ることは日本人にとっても心の中のどこかにきっとあるなつかしい故郷に近づけるような気がするのだ。日本人が香港や台湾映画を愛するのはそのためなのではないだろうか。
郭南宏作品を好む日本人ファンも私を含め相当多い。その郭南宏(お名前の通り台湾の人です)が「少林寺十八銅人」以前に撮った作品に「広東好漢」がありました(郭氏影業作品)。
きれいに整理された某リストより

旧作はなかなか見る事は出来ないのだが、その中でも武侠片なんてかなり興味のある部分である。(例えばまだその詳細が明らかになっていない『剣女幽魂』など。)私はこれらの鑑賞が出来る日を楽しみにしています。

さて、「怒れドラゴン」はどんな映画だったのでしょうか。主人公が道を歩く場面からスタート。(音楽から醸し出す雰囲気は例えば「少林寺木人拳」を思い浮かべて下さい。そんなイメージです。)


主人公・陸浩然(聞江龍)は旅の途中、敵に襲われた。陸は襲われる理由が全く分からない。敵を倒すと、また次の敵(蘇真平)が襲って来た。何とか打ち倒すが強敵ばかりで負傷して体力も限界に近い。誰の仕業なのか?敵の死に際、口を割らせると萬大哥と呼ばれる男が送り込んで来たらしい。一体、萬とは何者なのか?
身体をボロボロにしながら歩く陸。意識が遠のくが直前に起きた惨事が脳裏に浮かんできた。
外出していた陸が家に帰ってみると妹(揚珊珊)がさらわれ母親が何者かに殺されており、近隣の者たちが陸の家に集まっていた。弟の阿忠(若き日の何宗道)は未明に襲ってきた黒マスクの集団から一人では家族を守りきることは出来なかった…。
母親の死を思い出すと陸は意識を失って道に倒れた。すると、村の子供・小明が倒れている陸を見つける。父親に頼んで陸を助けることに。小明の父・曹海(魯平。奇峰名義)は陸を助け、しばらく面倒をみることにした。曹海の家には妻の雲娘と娘の秀琴(谷音)、そして小明がいた。

その頃、村に趙(劉立祖)と名乗る男が現れ、土地を売れと無理な注文を村人に押しつけていた。逆らうものなら酷い仕打ちをする有様だった。
曹海の家で療養して歩けるまでに回復した陸浩然は小明に川で魚を取ったり、木に綯っている蜜柑を取り小明を喜ばせるのだった。
萬という人物は陸の妹を誘拐した張本人、萬大哥こと萬金虎(苗天)の事だった。萬は牢屋で妹を拷問に掛けていた。

体の傷も完治して陸が旅立とうとした日、再び趙が現れた。村長(胡秋萍)家に行き土地を奪うのではない、萬が大金を払っていると言う。村長は断固として譲らない。言葉では解決しないと暴力を振るう趙。様子をうかがっていた曹海は黙っていられず大勢の敵の前に出て大暴れし趙たちは退散する。陸は見守るだけだった。

趙は腕の立つ男(黄飛龍)を連れ、曹海の家に大勢でやって来た。曹海は留守だったがすぐに駆けつける。話し合いなどでは到底解決するはずなどない。ケンカとなり男は腕を振り上げ曹海を殴り続けた。しかし、その腕を横からつかむ男がいた。陸だ。趙達の横暴に陸の怒りがついに爆発したのだ。

「お前は誰だ。」
「お前がマン・カムフーか?」
「俺は山東のヤウ・チーファイだ。」陸は名を名乗らずに男を叩きのめした。

萬は大金を積んで関東大侠と恐れられた強敵チョウを呼ぶ作戦を立てる。
一方、黒マスクの集団に小明もさらわれてしまっていた。小明の誘拐に村人たちは一致団結して萬に立ち向かう姿勢を見せるが曹海は村人を宥め、陸は一人小明救出に向かった。萬は陸の探していた人物だった。
陸が敵を薙倒し牢屋まで辿り着くとチョウが現れた。チョウの必殺ワザ鉄沙掌と陸の鷹爪功の力と力がぶつかり合う。
激闘の末、陸は強敵チョウを倒し牢屋に囚われていた小明と妹を救出。ここに英雄・陸浩然すなわち”広東好漢”が誕生した。村人達は勝利を称え行進するのだった。



うーん、自然体ですね。功夫片というか、ごく普通の毎日畑仕事しているような親父が、土地買収を企む悪者を退治しようと大活躍するというお話で、大勢を相手にケガはするしそこに魯平に助けられたなかなか怒らないドラゴン(苦笑)が満を持して登場!ってな展開であった。身をボロボロにして泥だらけになって闘う主人公。主人公が強すぎないのも良かったかも知れない。

こんな単純なストーリーだが郭南宏は何かを付け加えるべくなかば強引に奇想天外なアイデアつまり郭南宏テイストを盛り込むのだからたまらない。そして後半の展開はガラリと変わるのだ。少々の不満は弱すぎる苗天だが突然現れる強敵易原の存在がその独特なテイストだ。どこかで見たような石の壁に囲まれた廊下、部屋がラストの舞台となるがここで易原と聞江龍が対決。(このセットがのちの映画のヒントに繋がったとしたら面白いですね。)易原は言うまでもなく郭南宏の映画には無くてはならない存在である。絶招なる(つまり奥の手)人物を登場させて観客を圧倒させたという事だ。

74年初頭完成した本作品が日本に輸入され劇場公開まではされなかったものの同年秋にはテレビでオンエアされた。この時期に郭南宏の旧作が放送されたのは驚異である。オンエアについては当時の映画雑誌にも掲載されていたが(74年のキネ旬など)内容については不明だったのでどんな映画なのだろうかと気になっていました。

下から巨大な存在をアピール

主演の聞江龍は子供に人気のあるスターだったと思う。そう言えばこの映画では魯平の事を“小明の父”と頻りに呼んでいた。要は子供の視点で描かれていたりする訳である。郭南宏作品の中でこの映画が当時のテレビ映画劇場で最も適していたということか。聞江龍は劇中で小明を喜ばせたように当時「怒れドラゴン」を見たお茶の間の子供たちを喜ばせたことでしょう。終


次回は陳星VS倉田保昭『餓虎狂龍』を予定しています。
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笑太極

2007-12-24 13:13:22 | TV放送作品
今年書きました記事を振り返りますと嘉禾作品や好きな映画ばかり並べ立てていましたが、ここで少々懐かしいところの作品を。年末の暇つぶし読み物としていただければと思います。

「笑太極」は、1985/7/1(月)に初放送され、特番が組まれていたのを覚えています。その後も、その年の大晦日に再放送されるとあって最初見たとき面白かったのでエアチェックもしていたと思います。(テープもどこかに残っているはずです)

オープニングは屋良有作さんによる太極拳についての解説のナレーションで始まっていたのですが、この映画は御存知、甄子丹(ドニー・イェン)のデビュー作品。 ドニーは古川登志夫さんの吹き替えでした。この古川氏の吹き替えが映画を盛り立てていたと思います。

甄子丹は今でこそドニーと呼ばれていますが、当時はヤン・チータンと呼ばれておりました。この作品で彼のキレの良いカンフーアクションが強烈に私の脳裏に刻まれました。

80年代に入り、監督の袁和平は新しいものを・・・ということで、この作品では太極拳という”北派スタイル”のアクションを新しく取り入れた袁家班の映画でもあると思います。

ドニーの著書、"DONNIE YEN'S ACTION BOOK"では、ドニーに言わせれば、袁家班の振り付けは動作の自然な流れに合わず、不自然な動きを要求されることが多くて相当ハードだったそうです。その結果、映画的には優れたアクションとなっていました。

この本は、香港映画におけるアクションとは何であるのかを考えさせてくれます。
“戦う”ということ。スポーツにおいては、全てが戦いでありますが、1人の人間同士がぶつかり合って勝負をするものならボクシング、空手、柔道、相撲、レスリングなど多種多様ですね。
格闘アクション映画となれば、なんらかのストーリーを持ち、アクションシーンを見せ場として描いています。
通常、カンフー映画では1対1ではないにしても”ストリートファイト”を見せている事が多いと思います。

タイマン勝負より主人公が多くの相手をする方が多いカンフー映画ですが、NGを出しながら何度も何度でもOKが出るまで(つまり最善を尽くして)アクションシーンを完成させます。
やり直しが利かない現実の対決(例えば格闘技、ボクシング中継など)は見せ方を意識していたとしても1回きりの勝負です。生の面白さはやはり真剣勝負。これにあると思います。

では、映画の場合どうなるのでしょうか?取り直しが出来るから、アクション監督によって決められたことを演者(表現者)は演じなければなりません。
役者が出来なければ代役(=ダブル)を用いることになります。
現実の真剣勝負では代役など考えられません。本人同士による対決。それをリアルタイムでその“戦い”の現場を見ることが出来れば最高ですね。その興奮を見ようと会場へと足を運ぶんですね。

映画の本編では何度やり直したとしても
その過程が本編に映し出されることはないですね。(NG集などで見ることは可能)いかにも現実の対決を見ているようなリアル感を出せていれば、それはアクションシーンとしての水準もより高くなり、より完成度もアップしてます。しかし映画も演者には見えない観客がいるのですね。

ただアクションシーンには見せカット、捨てカットがあるそうで観客は見せカット100%を期待しているのかも知れませんが、そうでなくとも全体を通して許容出来る内容であるかではないかと思います。

この本ではアクション映画の担い手として製作者以下、監督、スタントマンまで実に明確に列挙し現場で使われる用語の説明までも記述されています。
アクション映画を実際に製作しているドニーが語っていますので、読めば香港アクション映画を見る目にも変化、幅がきっと出てくると思います。

ちなみにこの本は谷垣健治さんが監修されていますが、やはりこういった本の出版には事情の分かる専門家の方が監修者となって解説、補足したりする必要があると思いました。流石だと思います(あとがき参照)。谷垣さんお疲れさまでした。

最後に「笑太極」の好きなシーンは、素晴らしいアクションを演出していたラストのドニーが盲目となった時のアクションシーンでした。(ちなみに私の一番好きな甄子丹作品はSPLです。)

ドラゴン酔太極拳
http://www.amazon.com/Drunken-Dynamo-Black-Belt-Theatre/dp/B00005UQ7K

ドニー・イェン アクション・ブック
http://www.amazon.co.jp/ドニー・イェン-アクション・ブック-ドニー-イェン/dp/4873762596



電影フリークスはこの記事が本年最後の更新とさせて頂きます。それでは皆様、良いお年を。

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癲馬靈猴

2007-08-07 00:05:35 | TV放送作品
20年ほど前、私がテレビで夢中になって観ていましたのが戚冠軍と韓國材のコンビで送る「癲馬靈猴」(邦題:酔馬拳クレージーホース。以下、「酔馬拳」)でした。

この頃テレビで何本か放送していた戚冠軍の映画の中では他と比べて一番面白かったのですが、今思えば結構な御馳走だったのです。(武術指導も徐忠信と錢月笙だ!)
メインディッシュは特異なスタイルのカンフー(馬拳)と韓國材が見せた猿拳とのコンビネーション。
そして食卓を飾る一輪花、文雪兒の可憐な姿。もちろん味付けのエッセンスも必須で、“コミカン”には欠かせない牌九(パイガオ)と何柏光的禿頭オヤジの存在等々、全てにおいてバランスは好かったと思います。
ストーリーは多少薄い感じはあったものベテランの關海山や朱鐵和、そして葉天行、王光裕ら【邵氏】出身のキャスト(彼らは韓國材を含め戚冠軍と仲が良かったのです)でカバーし、そして音楽(BGM)も注目でした。
そのオープニングでガンガンにかかってとてもインパクトのある曲、これが71年の映画「KILL!」のメインテーマでした。

「KILL!」は72年に劇場公開されたロマン・ギャリー監督「殺し」(71)の原題で(アメリカでは遅れて74年になってから公開されタランティーノ監督も強く影響を受けた作品です)当時は仏映画として公開されていたようです。(実際は伊など多国籍映画です。)
メインテーマ(曲名は"キル・ゼム・オール")を初めとする映画のサントラは一度聞けば印象に残る曲ばかりですが、モリコーネと並び賞されたピサーノ(兄弟)とジャック・ショーモンがこの映画音楽を手がけました。

映画のサントラもCDショップに行けばコーナーがあるぐらいにジャンルとして成立していますが、ちょっとスペースは小さいですね。
私がよく読む本で「200CD 映画音楽 スコア・サントラを聴く」(立風書房刊)という本があります。映画音楽のサントラ盤が紹介されている本です。この本を読むとやはり「スターウォーズ」の存在が大きいようで、その登場前と後では映画音楽の存在価値は大きく異なっているそうです。
香港映画でもオリジナルかどうかは分かりませんが効果的に使われているケースが当然のことながらあるのだなぁと思います。

「KILL!」のサントラ盤は昨年、国内復刻盤がリリースされています。(メインテーマの別バージョンなどボーナストラック3曲付き)「酔馬拳」の文雪兒との練武シーンや、酒ガメを取り合うシーン、劉鶴年とのバトルなどで流れる挿入曲”インシエスタ”も収録されています(下記リンク先の曲目参照)。

尚、「酔馬拳」の他にも「除霸」(Fist to Fist)「南拳北腿活閻王」(The Hot, the Cool and the Vicious)でもこのメインテーマがかかりました。
他にも使用している等の情報がありましたら是非、教えて頂ければと思います。


画像:サントラ盤 URLはこちら

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