電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

冷血十三鷹

2019-05-27 18:07:05 | 七十年代作品【1979】

こんにちは、醒龍です。 

70年代功夫片武侠片カテゴリー、令和一発目の記事となります。

先日、新作観賞のため映画館へ行ってきました。地元の映画館は上映予定なしだったため、ちょっとだけ遠征してきました。昭島というところの映画館です。
 
昔は、仕事で遠くへ出張することが多かったのですが、その日の仕事が片付いたら帰りがてら地方の映画館へ寄ることもありました。良く知っている場所よりも、そういったいつもと違う場所の方が結構記憶に残ったりするんですよね。自宅でDVDを見るのもいいですが、外へ出かけて映画館まで行って、その時にあった様々な出来事、たまにハプニングもあったりしますので、そういった体験を大切にしたいですね。
 
昭島は今回おそらく十数年振りぐらいに訪ねた駅ですが、以前に比べ随分と変わっていました。駅を降りて周辺一帯が整備されていて近くにはアウトドアヴィレッジなんかもあっておしゃれで静かな感じのところでしたので、とっても良い場所だなぁと感じました。アウトドア好きな人はきっと気にいる場所でしょうね。また次の機会を楽しみにしていきたいと思います。
 
さて、今回の記事ですが、邵氏の監督の中でも残酷な描写、チャンチェのように流血が印象に残るような映画はあまり撮らないANZEN漫才じゃなかった監督(笑)として知られる(?)スン・チョンの78年度作品、御存知『冷血十三鷹』です。最近お笑い芸人のみやぞんさんを生で見る機会がありましたが、やはりパワーがありますね。ずっとジャッキーファンを公言しているみやぞんさんですが、天才的なのはやはりあのポーズ。芸人さんって印象的なポーズがあるのと無いのとでは随分と違うと思うんですよね。三銃士のスパルタンXももっと子供たちに浸透していって欲しいと思います。
 
えーと何の話だっけ?あ、それではスン・チョンの映画です。彼はあちらでは緊張大師として知られています。緊張とは、ハラハラ、ドキドキの場面の描写のことです。
 
邵氏の幻のバイオレンス映画阿Sir毒后老虎槍(77)とか初期の『風雷魔鏡』(72)もハラハラして観ました。スン・チョン監督の原点とも言える『風雷~』はやっぱり外せませんね。パニック映画の『人蛇鼠』(77)なんかもずうーっと見ている間、ハラハラしてました。『人皮燈籠』なんてその最たるものです。あと、超カルト的作品『七煞』(79)も忘れられませんが、これについては後ほど・・。
 
冷血というタイトルからはやはり冷たいものを感じさせますが、ピッタリ令和に相応しい感じですね。今年というか令和になっても邵氏の映画を沢山観る予定ではいます。
 
この映画、主演がティロンと、傳聲ことフーシェンなんですよね。この映画が作られる前の75年頃、それまで盛況だったカンフー映画が下火になり、翌76年に台湾の小説家古龍が書いた小説を邵氏・楚原が映画化した『流星·蝴蝶·劍』が大ヒット。これを皮切りに古龍作品の武侠片ブームが起こります。このフィーバーが"第二浪"と言われるもので新派武侠片第2の波が到来します。(第1の波はそれより10年ほど前の『大酔侠』の頃)ティ・ロンの「マジック・ブレード」(76)なんかもその波の1つですね。
 
そして、古龍と同じ台湾の作家、秦紅が発表したのがこの『冷血十三鷹』でした。秦紅の小説は邵氏で3度映画化されましたが、冷血~はその2度目の映画です。続く3回目が同じスン監督で作られた『請帖』(80)です。スン・チョンは古龍の映画を撮ることは無かったのですが、秦紅の映画を2本も撮ることになったのです。同じ武俠片でも古龍作品が多かった楚原とは明らかに違う路線の映画を作っていたと思います。個人的にはこの路線がいいですね。
 
この冷血~は昔からタイトルは書籍に代表作として載っていたので知っていたのですが、実際の映画の方はいつだったか知人からDVDを借りたりとかまぁいろいろあってその後、いつかは観る機会があるかなと思い国内盤を入手しました。
が、しばらく何もできないまま長い時間が経過し、そのまま忘れて眠っていて。。。
 
見れなかったワケ、それは実はある事が影響していたのです。
子供の頃、先に名前を覚えたのはもちろんフーシェンです。嵐を呼ぶドラゴンで方世玉を演じた彼でしたので、ここが私の原点ですね。
どうして先だったのか。なぜなら書籍にはティ・ロンに関する記述のあったものがほぼ皆無だったからなのです。その頃からフーシェンという人物には特別な想いがあったのだと思います。
 
現在、そのフーシェンとティ・ロンが共演した映画は13本であったことが分かっています。
初期の作品は正確には共演とは言い難い映画もありますが、取りあえず同じ映画に出ているという意味のカウントと思ってください。
さらに絞り込むと、ティロンとフーシェンの二人が比較的大きな役で出演し、(ティ・ロンは端役なんてものはなく殆どが大きな役です^^)ているものは以下のタイトルです。
・少林五祖 (74)
・八道樓子 (76)
・風流斷劍小小刀(79)
・魔劍俠情
例えば、楚原の『楚留香』や『絕代雙驕』をみることがあっても『魔劍俠情』はやはり見れなかったのです。これらはほぼ未見と言ってもよいレベルのものです。
 
そう、このビッグな2人(正確には3人)がぶつかった映画は観たい気持ちにもなれず正直、見れなかったのです。分かりますでしょうか?
今でこそ観ることが出来る邵氏の映画はいっぱいありますが、タイトルを知っているものって当時はそんなに多くはなかったんですね。それから谷峰御大も子供の頃はまったく知らない俳優さんでした・・。
 
それから、学生時代は香港映画のビデオを借りにレンタルビデオ屋に通っていましたが、丁度その頃にビリー・チョンの「カンフー風林火山」など何本か見ました。大映ビデオの例のアレですね。このバリバリのクンフーを見て以来、監督のファン・・じゃなかったビリー・チョンのファンになりましたね。そうそのビデオの中の1本が今思えばスン・チョン作品だった訳なんですね。
 
監督の名を覚えたのは16~17年前ぐらいでしょうか。ちょうど未知の世界へ入りたくなる時期でしたので邵氏に入門して(笑)、ラウ・カーリョン作品を見始めていた時期です。
スン・チョンは割とハズレの無い監督なんだなという認識でいたのですが、10数年前に初めて見たのですね。冷血~はいくらキャストが豪華だと言えども上記理由によりすぐには見れなかったのです。
 
そうそう前回の記事、"地獄から来た女ドラゴン"=『仇』は英語題名が"The Avenger"でしたね。兄・馬永貞や仲間の仇を討つ女ドラゴンの物語でしたのでそうなったのですね。今回の冷血十三鷹は"Avenging Eagle"となっています。何も知らないうちは、"鷹"っていったい何を指すのか、そして13人もいるの?という印象をどうしても受けましたね。"Avenging Eagle"とは復讐の鷹、すなわち主人公ティロンのことを指しているのでしょうね。13人のメンバー、義兄弟たちで構成されたグループで、実際には一人の幫主(親玉)に仕えた人間たちが登場するということですね。「十三人の刺客」なんて邦画もありましたけど題名に13人と付けられた映画は意外と多いのです。きっと他にもあるでしょう。
 
シナリオでは以下の通り、十三人の名前が決められています。
 
 1.黑鷹(戚明星)・・・ティロン
 
 2.青鷹(尤冠雄)・・・元兵(ユン・ブン)
 3.獨眼鷹(呂緒)・・・徐發(シュー・ファ)
 4.沖天鷹(彭道生)・・・陳龍(チャン・ルン)
 
 5.白鷹(辛松)・・・唐炎燦(トン・インチャン)
 6.人面鷹(方輝)・・・黃培基(ウォン・パウガイ) 
 
 7.紅鷹(翟自強)・・・屠龍(ディック・ウェイ) 
 8.無尾鷹(鄧興)・・・林輝煌(ラム・ファイウォン)
 
 9.黃鷹(連金銘)・・・陸劍明(ジェイミー・ロク)
10.灰鷹(范倫)・・・張國華(チャン・コクワー)
 
11.貓頭鷹(仇高成)・・・小四(ウェイ・ティンチー)
12.藍鷹(萬達)・・・高雄(エディー・コー)
13.禿鷹(閻霖)・・・王龍威(ワン・ロンウェイ)
 
ついに封印を解く日が来ました。
以前から受け入れることのできなかった映画。これが一気に変わる瞬間でした。
 
最後までピッタリ息の合った二人に酔いしれてしまいました。
強いて難点を挙げるとすれば二人が強すぎて他12人の鷹が弱く見えてしまう部分でしょうか。ティロンが悪の属性(Evil)から善の属性(Good)へチェンジした瞬間が印象的でした。
表情も明らかに変わってるのですが、黒鷹というどこか暗いキャラの心の葛藤をスン監督はティロンからうまく引き出していたと思います。
 
13人はやはり多いので主要な最初の3名だけでも。ワン・ロンウェイを筆頭に、エディコー、黒鷹のティロンがナンバー3です。
あとは名前を知らなくても問題ないレベルでさらっといけちゃいます。
まぁ本当はこのぐらいがバランスも取れて丁度いいですね。
これに全く違う次元の卓一帆というキャラクターをうまく絡ませたシナリオは大変優れていますね。善とは何か、悪とは何かをテーマに苦悩する黒鷹、チーの役はティロン以外には無理だったでしょうね。ティロンはこの映画の演技力が評価され、79年にアジア太平洋映画祭で演技部門での賞を受賞しています。
 
一方、続いて製作された『七煞』は、登場人物が減って、冷血~より大幅に少ないですが、以前書いた通り話が複雑過ぎてしまってバランスも悪くなってしまっていたんです。さらにキャスティングの乏しさもあってスン監督の試験的な面もあったのではないでしょうか。何度も見たくなる要素は多少持ち合わせてはいるものの、主要なメンツとストーリーの分かり易さに欠けてしまっては消化不良でちょっともったいなかったですね。
 
閑話休題。007映画なら毎回ボンドカーを期待してしまうように、功夫・武俠片では武術指導家トンガイの風変わりな兵器が毎回楽しみですね。今回も十三鷹や登場人物がそれぞれ違った特長のあるウェポンを扱って見せてくれます。さらにご本人がちらっとバトルシーンに登場してみせるというおまけ付き。
ティロン扮する黒鷹は三節棍を終始手放さない人物として登場してました。
三節棍アクションは、とても好きです。(マイ三節棍を持ってるぐらいですのでw)
このアクションが出てくる映画って実はそんなに多くないんですよね。少林寺2のジェット・リーのようなシルバーの三節棍で、それを少し軽量化したような物です。この棍さばきが非常にスピーディーでコマを落としてそうなぐらい速いのです。このスピードが命でこれが見映えをアップしているんだと思います。これらの多彩な武器で目を楽しませてくれた後、想像を絶するラストを迎えるのです。
 
一応おおまかなストーリーは以下の通りとなっています。
 
鐵船幫の首領ユエ(谷峰)は10年もの間、人身売買でかき集めた幼少の子供を、感情を持たない非情な人間として育成、ユエ自身が認める者だけを残して凶悪な組織を形成していった。やがて13人の殺人マシーン、"冷血十三鷹"が誕生する。ユエにはこの集団を巨大な組織にする野望があった。それには莫大な資金が必要であり、強奪や殺戮を繰り返した。
 
ある日、ユエは政府の金品強奪計画を十三鷹に命令する。計画は成功するが、黒鷹のチー(ティロン)は負傷して一人離脱する。さまよい歩くチーは、身分を隠しつつ林の中で倒れてしまう。
 
瀕死のチーは運良く発見され、チャン一家に助けられる。一家には美しい娘、フォン(施思)がいた。3日間意識のなかったチーは奇跡的に息を吹き返す。
 
そこで数カ月静養していたチー。すっかり回復した彼はフォンに言う。
「俺はどんな男が知っているか。殺人者だぞ。」
「ええ。知っているわ。でも改心したわ。」
悪の道に堕ちた人間が生還することで人間が変わっていった。一家の温かい心が人を変えたのだ。
 
出発の日が来た。林の中に隠した鷹の証、金牌(エンブレム)を胸に付けるチー。しかし、フォンの顔が浮かび、もう金牌を付けることは出来なかった。
 
そのまま本拠地へ戻ったチーだったが、ユエは過去の恨みを晴らすべくワンアン一家の皆殺しをチーら、十三鷹に命じる。しかし、向かった先は何とチーの恩人チャン一家の住む家だった。
 
家主チャンは私がワンアンだと名乗り、正体をチーに明かすが、今回ばかりはチーも計画を全う出来るはずがない。しかし、チーの仲間たちは命令通り一家を皆殺しにしてしまう。この件をきっかけにチーは逃亡、追われる身となった。
 
その後、ひょんな事から一人で旅をしていた宿無しと名乗る男(傅聲)と知り合ったチーだったが、意気投合し行動を共にするようになる。
 
満月の夜、チーは誓いを立て、宿無しにユエを裏切ってツオという男に償うことを告げる。
宿無しは、一人では無理と助太刀をチーに申し出た。宿無しもある事件の犯人を探していた。
 
次々に現れる十三鷹の刺客たち。チーは宿無しと協力して追っ手を倒してゆく。
そして、側近の二人と首領ユエの待つ屋敷へ向かう。
コンビネーションで側近二人を退けると、ユエは最終兵器”散魂鐵爪”を使い応戦する。
 
宿無しは隠し持っていた武器を取り出し、秘技”袖裡雙刀”でユエの手下たちを瞬殺する。
「お前はツオ・イーファンだな。」
ユエは即座に宿無しがツオであると見抜いた。
それを聞いて驚くチーであったが、宿無しがツオであることは予想していたのだった。
ツオの正体とは!?そして事件の真相を追うツオは次の行動に出る・・・。
 
 
それぞれ違う立場ではありましたが、ティロン、フーシェンのコンビは本当に良かったですね。
もしフーシェンが刑事だったとしたら、この物語は成り立つでしょうか?いえ、途中で十三鷹を倒してしまうんですから、おそらく刑事であることはあり得ませんが、それに近い人物であったのかも知れません。二人の主人公がそれぞれの目的、これが共通の目的に変わっていきますが、そこに向かって突き進むのです。この辺り、パッケージ裏に宇田川先生がハードボイルドと書いていたのも頷けますよね。
 
ゲストにはこの二人。シーズーは登場場面こそ少ないですがストーリーに大きく関わる重要な人物としてチーの命の恩人の妹、フォンを演じてます。
もう一人のゲスト、傅聲の奥様ジェニーさんはそのままツオの妻ですが、残念ながらこのゲストのお二人はどちらも途中で死んでしまいます。
 
恵天賜(ベティ・ウェイの兄)もチラっと顔を見せてはいますが、セリフもほとんど無く、出演者が多いと都合上どうしてもこうなってしまうんですよね。
今回じっくりと見てみましたが、ラストはデイビッド先生の『新獨臂刀』(71)で、ややこしいですがこっちの役どころがティロンじゃなくて谷峰が武林大侠でしたけど、この谷峰が使っていた三節棍で命を落としたティロンが、今度は立場が入れ替わりティロンが育ての親、谷峰御大にとどめを刺すのです。このあたりも邵氏ファンを唸らせる展開となっているんですよね。
 
それから前にも書きましたけど、私はいろんな映画に出てくる夜の焚き火のシーンが好きなのですが、『冷血十三鷹』では中盤などに出てきます。このシーンでフーシェンが李白の詩を詠むのです。唐突にです。ここは、そのまま原作で全く同じ李白の詩がありました。しかしながらこれは絵になりますね。素晴らしい場面です!
後半ではフーシェンが暇そうな客さん店主になりすますシーンが出てきますが、あれも非常にうまい!!全編を通してフーシェンは明るいキャラ"宿無し"を演じ、自信に満ちている姿には余裕を感じます。
 
私が注目したいのは実はフーシェンの武器なのです。宿無しという人間は滅法強いキャラですが、ここぞというタイミングで足底に隠し持った刃物を取り出し、斬りつけるんですね。これをやられた相手は一溜まりもありません。この必殺ワザがあったからこそ、キャラに余裕が生まれスカっとする部分があったと思う訳なのです。
 
そうそう、レイ・チーホン、シンシア・カーン主演で『新冷血十三鷹』という90年代にリメイクされた映画があったのですが、これがなかなかよく出来ていました。古装片ブームの90年代、みんな大好き「ドラゴンイン」(原題『新龍門客棧』)とか、このブームの頃に製作された1本です。
この映画、そもそもオリジナル『冷血~』が知られてませんでしたので、残念ながら日本では紹介されることは無かったですね。監督は『龍拳』でウェイ家の次兄を演じたシュー・ファ。 (彼は冷血十三鷹の一人、片目の男を演じてましたね。)龍拳のラスト。ジャッキー映画史上、最も苛酷な戦いとも言える、血だらけになって戦う凄絶なシューファとの死闘は記憶に強烈に残りましたね。
 
そして首領・越西鴻の役は、拳シリーズでおなじみの任世官なんです。古装片ブームの時も大活躍してましたね。彼は白髪になるとパワーを増大してムチャクチャ強いですよね。ワンチャイ系列をはじめ、東方不敗系列など猛将ぶりを発揮していました。私は笑拳の鉄の爪の記憶が植え付けられていますけどw。
黒鷹役に当たるのが、あのレイ・チーホン。これは両者を比べてみるのもいいですね。
 
最後は『新冷血十三鷹』。今回こちらも面白い映画ですのでご紹介いたしました。ご参考まで。
 
See you next time !
 
 
Avenging Eagle (1979)
Director: Sun Chung
 
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酔猴女

2019-04-21 23:32:11 | 七十年代作品【1979】

こんにちは、醒龍です。

今年の春は、ゾクゾクと肌寒い日が多かったですね。風も少し強い感じで冷えましたし、コートを脱いだりまた着たりとなかなか温かい陽気になりませんでした。体調は何とか健康をキープしていましたが、先日風邪をひいてしまいました。少しずつ気温も上がっているとは思いますが、体調を維持するのが大変だと思います。皆さんもお気をつけてくださいね。

さて、今回の記事ですが、79年に台湾で制作された映画『醉猴女』についてです。得利影業作品です。一風変わった映画で、なかなか記事にはしづらい面も若干あるのですが、今回見直してみましたのでいろいろ書いてみたいと思います。
 
以前、猿拳映画の系譜という記事を書きました。(リンクはこちらからどうぞ)
もうあれから8年も経過しているんですねー。他に真説モンキーカンフー、モンキーフィスト猿拳などが過去の記事でした。
 
まだまだ同じテーマについては書き切れないくらいあるのですが、その中の一つに今回加えてみようと思います。
 
この映画は猿拳と言っても他のものとは少々趣が異なっています。それは、本当にサルの格好をしているのです(笑)。人間がカンフーを使う映画ではないんですね。なのでこれはファンタジーと呼べるのかも。よって、正確には猿拳映画とは呼べないかもしれません(苦笑)。
 
でも、演じている俳優さんが、実際に猿拳を使っているということで内容を追ってみたいと思いました。
 
この映画の監督が「蛇鶴八拳」や「カンニングモンキー天中拳」でおなじみの陳誌華なんです。
とはいってもこの映画はあまりおすすめできません(笑)。得利影業公司ラインにチェン監督がコラボした珍しい形となっていました。
 
では、その内容ですが、データを見てみると面白いことに気がつきます。それは、林昭雄って日本人みたいな人がクレジットされてたんです。
実はコレ下の点がないだけの林照雄の事のようでした(笑)。
彼はチェン監督の映画にはレギュラー出演してますので、きっと監督のお気に入り俳優さんですよね。あと、喬楓名義で出演したダニー周潤堅(故人)がいました。彼は邵氏出身ながら富国影業のカンフー映画にも出演していたり、そして成家班の一員としての顔もあった幅広い経歴をお持ちの貴重な存在だったのです。
 
主演の俳優さんはレアな顔で、確認してみると、チン・フォンリン(金鳳玲)という名前の女優さん。あまり映画に出演されていないのですが、他に1本だけ『硬功鐵橋三』(79)があるようです。こちらは真っ当なカンフー映画のようですが、機会があればまた別途記事を書いてみたいと思います。ただこの2本はHKFAにはデータが登録されているものの公文書からはもれてしまった様ですね。
 
79年ということで、酔拳というネタは時期的には超が付くほど流行りの題材だったと思うのですが、いってみれば"酔拳"と"猿拳"のコラボです。どんなヤツが面白いかアイデアをいろいろ絞って考えたりしたんでしょうね。
それで監督が「蛇鶴八拳」や「カンニングモンキー天中拳」でおなじみの陳誌華なんです。
とはいってもこの映画はあまりおすすめできません(笑)。
 
ローウェイ時代のジャッキー映画についてはダントツの完成度を誇っていた「蛇鶴八拳」など問題なかったのですが、それ以外の映画の場合、いろんな意味であまり恵まれてはいなかったように思います。いい機会ですので、今回は彼について思う事をいろいろ書いてみようと思います。
 
ジャッキーとはしばらくの間、おそらく上手くいっていたと思います。長年付き添ったジャッキーからの信頼がそれを物語っています。カメラマン一家ですので、ファミリー全体で映画を作ってたんですね。実際に撮影する方の功労者です。ローウェイ時代が終焉する80年以降は状況をあまり把握できませんが、「少林寺木人拳」で脚光を浴びたあと、ここまでが限界と思われます。ちょっと残念な気がします。
80年代前半に日本でブームが起きた頃、その頃に日本で公開できるような台湾製の映画がいくつも撮られていたらまた状況が変わっていたことでしょう。日本でのブームは何年も遅かったので過去の映画を順次公開していたに過ぎなかったんですね。
 
そこはまぁ置いといて、同時期のジャッキー映画以外の部分。変わったことにチャレンジする、または意欲がなくともやむを得ず映画を撮らなきゃいけないような状況だった(と思われる)ものがいくつかあったと思います。
 
では、この映画に話題を戻すとします。
可愛らしい野生のお猿さんとして登場した主人公は、やがて2人の老夫婦にカンフーを教わり、その後、人間へ転生するのですが、怪しい薬品(?)により全身の体毛がなくなって顔も人間っぽく変わって美しい人間の姿に変わります。
ここだけでも仰天してしまいますが、その転生は不完全で、ある体の部位がこの映画のポイントになります。これを逆に奥の手として使っています。
 
本編のおさらいをすると、いくつかパートに分かれます。
1.モンキーガールの登場
2.ドタバタ・カンフー入門
3.四皇子との出会い
4.転生
5.決戦
概要はこんな感じです。とにかく発想はブッ飛ぶ内容の映画である事は間違いないですね。
 
問題は流行とはいえそのコラボ、酔拳の描き方にあると思うのです。
いくら酔拳が爆発的なヒット、酔拳ならイケるという目論見でそれを入れてみたからといって、安易な作りでは観客は離れてしまうでしょう。
 
それ以外にも、最もこの映画でマズい点。これを書いておきたいと思います。
 
1つ言えることは、ロー・リエの扱いがあまりにも雑過ぎていて、途中の賊襲撃シーンとラストにほんのちょっとだけ参加させているのですが、台詞もなにも無いまま、あっさりと終わってしまいます。これはヒドいですね。下手をすると、誰だか分からないまま終わってしまう可能性もあったかと・・。
 
そして、オチに当たる部分。チェン・シンにトドメを刺さない蛇鶴のラストとそっくりなシーンで、ここでトドメを刺すことができないのは分かるのですが、その隙に林照雄が投げたナイフが刺ったままチェン・シンはワープして逃亡、そのままどこかへ消えてしまい、横で格闘中のロー・リエのバトルに乱入し、同じ戦法で今度はトドメを刺すというかなり無茶な展開でした。
なんでこうなってしまったのでしょうか?
 
台湾で活躍していた監督、ホウ・チェンが一応脚本を書いている様ですが、全盛期の倉田先生とも離れてしまってからはかなり質が落ち込んでしまいましたね。
 
低予算が見え見えとなっていまっている、俗にいうロー・バジェット・ムービー(LBM)なんでしょうが(もちろん台湾製)、とにかく見るからに出演者が乏しいですよねぇ。ストーリーもまともであるとは言い難く、なんとかゲスト出演者に空手スター、チェン・シンを引っ張ってこれた感じ。70年代後期はチェン・シンやロー・リエという強者がカンフー映画のボスを演じたりするケースが多くなっています。この映画も御多分にもれずそんな傾向、性質を持っています。
 
私がいいなぁと思ったのは2点。ロー・リエのトンファーを使ったバトルと人間への転生後の特訓シーン。トンファーはシーンとしては短いですが、先が尖ったタイプのトンファーを使用しており、ロー・リエの武器さばきは流石で本当に巧いのです。惚れ惚れしてしまいました。ここに関しての難点は短いところ。もうちょっとチェン・シンVSロー・リエを見たかったですね。
 
特訓シーンは、仕上げの段階でロウソクを並べた八卦陣でカンフーを披露します。台湾らしい表現で80年代によく見られたキョンシーの映画に通じるものがあると思います。ここで流れるのはアンジェラ・マオの『鬼怒川』にも使われていたミキス・テオドラキスの「Z」の音楽ですが、ここから別の曲がかかったりしてますので、ここはまぁまぁの場面ですね。
あと興味深い部分は、康煕帝の遺詔を書き換えるシーンで、例の十四皇子の"十"を"于"の文字に変えるところがありました。これは必ずやっておかないといけないんですね(笑)。
 
最後にアクション面ですが、あの女優さん、まともにアクションはできない様子で、高度なアクションはすべて吹き替えというアクションに終始してました。台湾で79年に公開され、香港での公開は未調査ではありますが、もしかしたら未公開の可能性もありますね。内容的にはちょっとお粗末な映画でした。ここで今回の記事を終わります。
 
追伸:参考までにオンライン・ショップ情報を乗せておきますね。こちらで英語版ソフトが購入できます。
 
次回、平成最後の記事になってしまうかも(!?)ですが、あの女ドラゴンが登場の予定です。
 

The Ape Girl (1979)
Chan Chih Hwa (D)
 
Chin Feng Ling
Chan Sing
Miao Tien 
Danny Chow
Lo Lieh

【作品DVD】
どうしてもDVDの情報を参照したい人向け。(注)リージョン1です。英語音声。
 
Lady Iron Monkey (Dubbed In English)
Kung Fu Theater
Kung Fu Theater

【サントラ】
こちらは、デジタル・ミュージックです。(アルバム全曲試聴できます)
 
Z
ミキス・テオドラキス
FM Records
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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邵氏『七煞』

2014-10-25 11:40:11 | 七十年代作品【1979】

今日の記事。邵氏の監督、スン・チョン登場です。
スン・チョンの作品だと、純粋に『風林火山』がいいですね!
邵氏ならやっぱり一番好きなのは『教頭』かな。ティ・ロンの見せる演技は本当に良かったです。
まぁ割とクオリティの高い作品を続出させてたと思われるスン・チョン監督ですが、その守備範囲は意外に広く文芸、コメディ、現代アクション、カンフー、キョンシーホラー、そして武侠片と本当に幅広い。(緊張感のある場面を撮ることに厳しい目を持っていることから、”緊張大師”と呼ばれているほど。)
本作『七殺』は元華(ユン・ワー)、王龍威以外はなじみがあまり無いメンツではありますが、ユン・ワーはいかにもワルというメーキャップをして彼らしさを醸し出しているんです。
私が好きなユン・ピョウ主演の「急凍奇侠」(リメイクのドニー版「アイスマン(●封)」も観ましたが最高っすね!!これは是非みてね!)でのユン・ワーのワルっぷりも凄まじかったですが、この「七殺」ではとにかくワル元華が炸裂してて面白いんです。また、この映画のボス役の王龍威も最初から最後までずっと出ずっぱりですので龍威先生のファンにはたまらない魅力があるでしょうね。

★ワンポイント・レッスン
七殺の読み「チーシャ」(日本語的発音・・・”地井さん”でOK)

繁体字のサツという字は、本編を見ると、散々のぼりや壁などに”殺”の字を使っているのに日本語には無い文字である”サツ”を当てています。
繁体字の「サツ」は映画のタイトルにはたまに使われますよね。しかし、『大殺手』のように”殺”の方が使われるケースもあるのです。使い分けがハッキリしない「サツ」ですが、なにか微妙なニュアンスの違いでもあるのかな?

”七殺”の意味ですが、日本語にすると、七つの凶悪な神・・という意味になります。
そしてその裏には、監督の映画に対する思いが込められているんです。というのも、この映画では7人の新人を起用して彼らの活躍を期待するという意味が込められていたんですね。映画に新しい人材を出演させて将来を期待するというスン・チョンの計らいはとても素晴らしいことではありませんか。

今回の記事のタイトルにはあえて伝統的な繁体字の方を使ってみましたが
文字化け率が高いようならタイトルを変更する予定です。

なお、『七殺』については、以前メモを書いていますので(こちら)も参照してください。 

 

◇『七殺』が影響を受けたと思われる作品

『五毒』

◇『七殺』が影響を与えたと思われる作品

『叉手』

・シーン別ストーリー解説

シーン1:本部
七殺會には教祖が制定した七つの規律があり、それを破るような行為には死が待っているという恐ろしい組織である。教祖は細い洞窟のような管を経由して、命令書を本部に送るという特殊な方法で指令を下すが、その教祖の素性は分からず全てが神秘のベールに包まれている。第一の将、ペン(王龍威)が七殺會の首領をつとめ、続く将たちの活動をコントロールする。ある日、各地より代表として選ばれた将軍、ファンタオ([登β]偉豪)、ルー(羅勝)、リャンチェ(羅軍)の三名が結集し、若手三武将としてメンバーに加わった。リャンチェが第六の将、ルーが第七の将、ファンタオが第八の将に任命される。洞窟の奥に隠された七殺會の本部には、首領を含め5人の将たちが待機、その三人を首領のペンが出迎える。

まずは腕だめしとばかりに、隠されていた捕虜を解放し、首領が捕虜に向かって将を1人でも倒せたら釈放すると言い放ったが、ルーの帽裏飛輪が炸裂、強靭な将たちのパワーの前では全く歯が立たなかった。

シーン2:女将
七殺會で働く女将・イン(劉慧玲)は侍女たちを教育し、将軍たちの世話をする立場。新しいメンバーの加入と、そして教祖のために祝杯をあげるメンバーたち。豚の頭はNo2のシーチャオ(元華)の大の好物だった。


シーン3:儀式
天からの命を受けた七殺會壊滅組織を率いるヤン将軍は、信者とともに儀式を行っていた。信者は、肉親を殺害された家族たちである。憎き悪人たちの像を並べ、復讐の機会をうかがっている。そんなある時、剣士ファン(ディック・ウェイ)より手紙が届けられた。討伐のための準備も整い、いよいよ立ち上がる反対組織。戦闘開始となる!

シーン4:客棧
本部にいる将たちに七殺會の教祖から指令が下る。その夜、七殺會も行動が開始された。途中、大興隆客棧にいた乞食たちと騒動を起こすルーたち若手三武将。ホー(元彬)とリャンイン(石崗)が客棧に泊まり込み、その夜、敵の信者を倒そうとするが、あと一歩のところで逃げられてしまった。

 
シーン5:黄石崗
教祖から指令のあった場所、黄石崗へ向かう将たち。そこには待ち伏せする信者が先にいるとも知らずに任務遂行に走る。ヤンが乗っていると思われた籠にはファンが代わりに潜伏しており、意表をつかれたファンタオは負傷してしまう。
これはヤン将軍が仕掛けたワナであり、将たちに不信感を持たせるのが目的であったこの作戦は見事成功する。これが原因で七殺會の内部には亀裂が生じはじめていた。
本部では雙腰刀使いのファンタオに疑い目が向けられていた。負傷したファンタオは土地の藩主チョウ(谷峰)に出会う。その後、本部では新たな指令が下った。隠されたスパイを探すミッションだ。その時、ファンタオが本部に帰ってきた。無敗の七殺會が負けることなどあり得ないと、首領は激怒する。
しかし、客棧での怪しげな行動からルーが疑われる羽目に。NO3のホー(元彬)がルーを処罰する形となり、ここで最初の1人、ルーが倒れた。


シーン6:次の指令
次の指令が下った。宝石を輸送する一行を襲撃せよ、との指令だったが、3つの班に分かれて決行することとなった。
大雨の中、将たちは大勢の客がいる店に来ていた。そこにスパイが現れ、乱闘、その場は大騒ぎに。雨が上がり、古い家屋に集まって密書を持っていた捕虜の男(黄志明)に詰め寄る首領たち。密書にはスパイの出身地を表す暗号「魯」が記されていた。魯とは山東の旧名だった。その結果、No5リャンインの弟、山東出身のリャンチェが次の標的となり、持ち味であった雙手鋼環を駆使するもリャンインの得意技である飛び道具・背箭を受けてその場に倒れてしまう。

 


シーン7:8年前の出来事
今から8年前、七殺會には10人の将がいたが、ヤン将軍ら敵の部隊に9人が倒され、教祖が1人だけ生き残った。その後、七殺會は復活し現在の状況まで回復していたのだった。事実を知り、愕然とする将たち。その後、首領たちはファンタオの紹介で藩主チョウの家へ行き、話をつける。目的は資金の調達で、それはファンタオの進言であったが七殺會の危機を感じた首領が取った行動でもあった。
夜、本部にいた女将インはファンタオの部屋を訪れ、シーチャオが怪しいと吹き込む。一方で、首領とシーチャオはリャンインがスパイではないかと疑いはじめていた。その2人が話している横から侍女たちに盗み聞きさせていたインは、シーチャオに見つかってその訳を問われるが、全く怯む様子がなかった。2人は完全に敵対する格好となり、もはや七殺會は崩壊寸前の状態となった。


シーン8:マスクの男
密かにインは馬に乗って本部から離れた場所へ移動する。そこは山に住む謎の親子と連絡を取るため場所であり、横たわった大きな木の幹が秘密のメモが入った小箱の隠し場所だった。
しかし、ヤン将軍の信者が現れ、隠し場所も見つかってしまった。その時、マスクを付けた男がインを助けた。この謎の男はインの味方だったのだ。途中から剣士ファンも出てきたがマスク男の槍に倒された。



シーン9:客棧ふたたび
次の指令を受けた首領たち6人の将は大興隆客棧へ向かう。今回の内容はヤン将軍の首だ。客棧に到着した一行は様子がおかしいことに気付き、敵の罠と思い込む。
しかし、そこに現れたのは教祖から派遣された3人のマスクの男たちだった。
そこでマスクの男からシーチャオの裏切り行為が暴露されるが、シーチャオをそれを認めずシーチャオ以外の5人の将VSシーチャオの戦いに突入する。高度なワザ・鷹爪手の持ち主シーチャオはそう簡単にはやられない。ホーが倒され、屋外へ逃れたシーチャオは追っ手の首領たちと応戦。勝負はつかず首領は教祖の判断に任せることに。本部に戻り、教祖からの命令書を読むイン。その内容を知ったシーチャオはインの喉を瞬く間に刺し、No.4のチュアン(マン・ディンゴー。当初、この役には麥徳羅が予定されていた)まで片付けるも、最後には反撃をくらい消滅してしまった。

 

 

シーン10:最終決戦
残った七殺會の将は首領ペン、リャンイン、ファンタオの3名となった。最も重要な教祖はいったい誰なのか!そして、ヤン将軍の行方や藩主チョウ、マスクを被った男たちの正体は・・・、謎はいくつも残る。このあと、最終局面をどう迎えるのか・・・!?

 

とにかく最後まで、ややこし過ぎるストーリー展開が続くので何度見ても何がどうなっているのかちょっと理解に苦しみますよ。この難解なストーリーでは下手すれば構築したせっかくの世界観すら失われてしまうではないでしょうか。結局、回りがすべてワルばかりとはいかず、真のワルはただ一人なのだけど(笑)。

タカの鋭い爪を使う元華には最後まで頑張ってもらいたかったが、身軽なアクロバティックなカンフーを見せ(装着してる武器が本当に良かったね!)かなりしぶとい、相当なワルっぷりだったので、まぁまぁその点は満足できました。

珍しいエピローグで余韻に浸ってみてはいかが。

 

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手扣

2011-07-09 09:00:49 | 七十年代作品【1979】

     ショウ カオ
原題   『手扣』 The Handcuff

又名:『手[金考]』(日本未公開)

公開日 1979/9/6(木) 

雄鷹電影公司 作品

1,390,799HK$ 1979年度第31位

スタッフ&キャスト

監督 午馬(ウー・マ)

出演 陳惠敏 (チャーリー・チャン)
   苗可秀(ノラ・ミャオ)
   嘉倫 (ガー・ルン)


解説

日本ではチャーリー・チャンの名で知られる陳恵敏(「怒れ!タイガー 必殺空手拳」)主演の現代アクション。かつて仲間だった2人の男の対照的な姿を描く。共演は「ドラゴンへの道」のノラ・ミャオ。チャーリー・チャンとは「クンフー・キッド」(77)以来の共演となる。ノラ・ミャオはチャーリー・チャンにケガを負わされ記憶喪失になった女性を演じる。刑事役をつとめた嘉倫は、83年に日本劇場公開した新藤恵美主演「チャイナスキャンダル艶舞」(原題:『狂情』)やIFDの『連環炮』(86)等、チャーリー・チャンとの共演作がいくつか存在する。監督は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」のウー・マ。

ストーリー
主人公・阿龍(陳惠敏)はヤクザ。阿龍はマフィアのボス、青龍こと趙坤(唐菁)に親子同然のように可愛がられていた。世間は物騒であり、巷では殺人事件が起きている。阿龍は人殺しなど平気でやってのける凶悪犯なのだ。蕭其昌(嘉倫)は阿龍とは対照的に事件を難なく解決する敏腕刑事だ。ある日、阿龍は家宅侵入し住人を殺害、同居の莫秋霞(苗可秀)も殴打して気絶、記憶喪失に。夜、秋霞の病院へ押し入り、殺害を謀るがこれは待ち伏せのワナで阿龍は警察に取り押さえられた。蕭警部が取調べの部屋へ来ると、容疑者の阿龍がイスに座り沈黙して待っていた。ところが、顔を見合わせた瞬間、警部の表情に笑みがこぼれた。警部「阿強じゃないか!」阿龍「おまえ、阿昌だよな」 
そう、阿龍は偽名で本名を周偉強と言ったが、この2人は昔、不法入国した仲間だったのだ。秋霞は取調べで並んだ容疑者の中に犯人がをいるか尋問される。しかし、阿龍の顔を見つめたまま犯人はいないと証言してしまうのだった。そんな頃、警部の結婚5周年のパーティが盛大に開かれた。著名人を紹介される阿龍だったが気分が乗らず黙って帰ってしまう。その昔、船に乗って逃げてきたとき足を負傷したいた自分を助けてくれた事を思い出す警部…。その後、阿龍はボスに相談してクラブ歌手であった美鳳(王玉環)との結婚を許してもらう。美鳳は金持ちの太子超(鄭康業)と知り合い、いつも追い駆けられているが阿龍の忙しさのあまり美鳳は浮気の日々。マフィアの一員、阿勝(江濤)はボスからカジノの運営を任されている。ある時、仕事に失敗し大金が必要になるがボスからは金の支払いを断られる。ある日、阿龍が浮気していた美鳳を見つけ太子超に重傷を負わせ、美鳳を無惨な姿にしてしまう。ショックを受けていた阿龍はボスに励まされ気を取り直したかに見えた。秋霞の家を訪ねてみるが秋霞とは何も話さずに去る阿龍。すると、阿勝が車を止め、道で待っていた。バンコクから電話がありボスからある命令が下る。香港に運ばれてきた車と共にやってきたのは日本人レーサー(鹿村)だった。阿龍は車から麻薬を見つけるが日本人と対決して激闘の末彼を倒しヘロインを焼いてしまう。阿龍は次々と犯行を重ねてゆき警察から追われる毎日であった。逃走中に負傷した阿龍は秋霞の家に逃げ込み、傷口を自分で針で縫って処置をした。
その頃、麻薬所持の容疑でマフィアの一員、馮満生が逮捕された。すると阿勝は殺し屋にボスの殺害を依頼し、ボスは重傷を負う。いなくなったボスの代わりにボスの座に居座る阿勝。阿龍がボスを尋ねるとボスの姿がない。阿勝は馮満生がボスを殺して入院中だと騙す。それを聞いた阿龍はすぐに病院へ行くが、寝ている男がボスとは知らずに刺してしまう。逃げようとする阿龍はその声がボスであることに気づきボスと言葉を交わすがボスはすぐに息を引き取った。その後、阿龍が秋霞と一緒にいるところに警部が現れた。阿龍は警部に言う。「あと24時間、時間をくれ。秋霞は自分が怪我をさせてしまった。彼女に金を渡して病院で療養させたい」と。
阿龍は行動を開始する。阿勝を叩きのめし金を持ってフェリーに乗った。しかし、警部たちが後をつけフェーリーに乗り込むのだった。もう逃げられない。警部は数々の罪を犯した阿龍の手に警察官として手錠をかけた。隙を突いて銃を奪い、銃口を警部に向ける阿龍。すると、手錠を切ろうと発砲、そのまま海へ飛び込むのだった。阿龍は秋霞の家に金を持っていこうとするが、見張りがいて近寄れない。警部は通報され民家に立て籠もった阿龍を説得し警部に拳銃を渡す阿龍。しかし、外で上司と警察隊が銃を構えて待っていた・・・。 


香港でスマッシュヒットを飛ばした現代劇。チャーリーがやりたい事をやってる様子も随所に見られるが監督がウー・マということで全く彼の思い通りの映画という訳ではない気がする。仕上がりの良さはやはり監督ウー・マの力によるものだと思う。
監督としてはウー・マは『聾唖剣』など早くからその才能を発揮してた。
70年に初監督した『怒劍狂刀』は是非近いうちに解説してみようと思う。

鄭康業も、現代劇だと非常に新鮮に映るのだが、
 
ウー・マにかかれば
こんな表情さえ引き出してくるのだ。
  ここまでオーバーな顔は見たことない。
邵氏を抜けた後、「ドラゴン・ロード」に出るまでの彼が面白いのではないかと思う。

それにしても
ウー・マと実生活で付き合っていた女、ウォン・ヨォクワン。
 
あのオーボーの女優である。
霊幻道士シリーズ以外ではほとんど見た事はなかったので
70年代の少し若い頃にもウー・マの映画に出ていたなんて驚いた。
80年代や90年代に有名になった俳優が実はもっと昔にはこんな役をしていた・・的な見方ですが、これもなかなか面白いですね。ウー・マとはいつ知り合ったのか時期は不明ながら、もしやこの頃ではないでしょうか。

嘉倫は気のよい刑事でハマリ役。他にも刑事ドラマがあればもっと見てみたい。
もしかしたらチャーリーとは仲が良くて「チャイナスキャンダル」で友情出演したのかも。(どういう訳か警部といえばこの人、フィリップ・チャンも無理矢理出演したように一瞬だけ顔を見せるので可笑しいったらありゃしない。)麻薬の取引がこの映画では描かれるがオランダが関係しているようだ。オランダは何か麻薬と関係があるのだろうか?

嘉倫が86年に出た『連環炮』では出演者も似通っているがご覧の通り、ヒゲ面で登場する。(この映画の英語名は"The Man from Holland"つまりオランダから来た男だ)

こちらは『連環炮』より

『連環炮』で、銃を撃ち合う高飛とチャーリー

時裝片は昔の香港の様子をそのまま映し出しているので、当時はこんなだったのかと思わず見入ってしまう。
例えばチャーリーがいくつもの外車を乗り回してる。
懐かしのフェラーリ308GTBだ。
「チャイナ…」でも外車に乗ってたからもしかして外車マニアだったりして。
他にもBMWー3.5CSLなんかも出てくる。(運転してるのは鹿村だけどね^^)
 鹿村VSチャーリー

そして、この演出が仰天させられる。邵氏のある大物俳優がノンクレジットで出演しているではないか。名前を名乗らずボスを狙う殺し屋という役で。
チャーリーと戦ったと思えばサラっと消えるという展開で、
こんな人がいきなり出てきてビックリ箱みたいな映画を作ってしまうのだから
ウー・マには参ってしまいます。
最後にチャーリー・チャンについて。チャーリーの演技力は素晴らしく凶悪な犯人を演じきっている。その演技はまるで「空手ヘラクレス」のときの主人公を彷彿させる。凶悪な事ばかりする犯人だが、ボスの事を慕い、どこか真面目で秋霞を心配する阿龍。そんな主人公を刑事ではあるが彼の持つ性格を知りつくし最後の最後まで信じようとする姿に涙するとても良い70年代の刑事ドラマでした。終

 

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洪拳大師(79)

2011-06-21 00:09:24 | 七十年代作品【1979】

劉家勇主演の79年版『洪拳大師』 The Fearless Duo です。 
 
 
この映画は当初、郭南宏による『洪拳鐵橋三』として台湾で製作され、実質的な監督に方偉翔(方翔)を起用するなどして、香港での公開時はその題名も『洪拳大師』に変更されている様です(香港版と台湾版でスタッフの表記が異なる)。郭南宏と言うと同時期には『五爪十八翻』も同じく劉家勇と黄正利主演で作られてますね。

※参考『五爪十八翻』は当初『[虫禽][虫渠]散手』という題名でありました。ちょっと読めませんが(汗)。 
 

これがなぜ『五爪十八翻』に変化したのか非常に興味深いところなのですが、他にも『龍形蛇?』(?=「蛇拳」の刀に似た文字)なんてのもありタイトルに関しては本当に謎が多いところであります。

『洪拳大師』の製作時期は79年6月の映画雑誌に新作紹介記事があるため、この作品の製作年度は79年が有力と思われます。(推測に過ぎませんが『五爪十八翻』→『洪拳大師』の流れではなかったかと。)
また、香港および台湾の公開日は判明しておらず、台湾ではもしかすると79年公開の可能性もあるのですが確固たる証拠はありません。一応、iMDbには1979/7/1がリリース日として記載されていました。但し、信憑性がなくどこの地区なのかも不明のようです。

この映画を製作したプロダクションは香港の嘉氏影業というところでここは他にも『迷蹤霍元甲』(80)などを製作していました。

デザインはそっくり

こちらも黄正利主演であり、ネームバリューの高い韓国人・権永文も参加していますね。『迷蹤霍元甲』にはこの大物二人が実際に対決しています。この黄正利VS権永文戦は他の映画でも十分ありそうですが、それが何であるかパッとすぐに思い浮かばず、これを何とか機械的に調べられないものかと日頃から悩んでいます。(各作品において対戦歴が簡単に調べられるような仕組みを考案中です。是非実用化させたいと思っております。)

今回の『洪拳大師』。この手のアクション物は狭い画面ではダメなのでワイドスクリーンなら、この通り見易くなるのでうれしいものです。 
 空が澄んでてきれい。特訓日和だな。

本編は唖然としてしまうほど突っ込みどころ満載の超おバカ映画になってしまっているケド・・。

 ほんとアホだね~

この映画のDVDを購入される方はおそらくマニアと思いますので、特に黄正利ファンでしたら既に入手済のことだと思います。入手方法はオンラインショップなど製品版を販売しているところがないため今のところブートを扱う業者に頼るしかなさそうです。


それにしても今回黄正利が鬼脚七だったというのには驚きました。
 
 
見よ!これが黄正利の鬼脚だ。
 鬼・鬼・鬼

ストーリーより彼の足技にだけ酔いしれたい作品でした。

ところで、鬼脚七を演じたスターといえば、やはりこの人、ワンチャイのくまきんが筆頭にあげられますね。(これを見ちゃったら他が見れない・・)ドニーの『蘇乞兒』(93)も見たくなっっちゃいますね! 


他にはユンピョウが『黄飛鴻之鬼脚七』(93)で演じてみたり、古くは元祖・黄飛鴻俳優クワン・タクヒンが出演した『黄飛鴻與鬼脚七』(80)とか。(これは白彪)
おっと、忘れてはいけない。梁小龍サマの『黄飛鴻四大弟子』もそうでした。
誰だったのか改めてみると、熊欣欣・ブルース・リャン・白彪・元彪、そして黄正利と鬼脚七を演じてきた歴代のカンフースターはなかなかのメンツだったんですねー。

今回はONI-ASHI”鬼脚七”について少し考えてみました。

ワンチャイより

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「少林寺英雄伝」と遙かなる少林寺

2011-06-17 00:50:21 | 七十年代作品【1979】

     シャオ リン イン ション バン
原題   『少 林 英 雄 榜』     Abbot of Shaolin

公開日 1979/7/11(水)   邵氏兄弟有限公司 作品
               116,880HK$ 1979年度第99位

スタッフ&キャスト

監督 何夢華(ホー・メンファ)

出演 姜大衛(デビッド・チャン)
   羅烈   (ロー・リエ)
   李麗麗(リリー・リー)
   徐少強(ツイ・シウキョン)


解説

少林寺を舞台に少林寺の英雄と呼ばれた主人公・至善禅師が混乱の時代を生き抜き、強敵・パイメイ(=白眉道人)との戦いを描くドラマ。監督は「北京原人の逆襲」のホー・メンファ。至善禅師を演じるのは『惡客』『新獨臂刀』「ドラゴンVS7人の吸血鬼」のデビッド・チャン。「キル・ビル2」にも登場したタランティーノ監督お気に入りのキャラクター"パイ・メイ"を演じるのは「キングボクサー大逆転」「少林寺三十六房」のロー・リエ。パイ・メイはこの作品のほか『洪煕官』『洪文定三破白蓮教』でも登場。これら3本の作品すべてにおいてパイ・メイを演じきったロー・リエは、見事なまでの人気キャラクターを確立した。このパイ・メイと至善禅師に馮道徳、五枚尼姑、苗顯を合わせた五人は”少林五老”と呼ばれている。

ストーリー
清朝打倒と明の復興をめざす少林寺の僧侶たち。しかし、武器を持つことを禁じられていた。至善(姜大衛)は、地下にいる管長から峨眉山の文殊道観へ行くように命じられる。重要な任務を任された至善は早速、明の将軍・無塵道人(楊志卿)を訪ねる。そして数ヶ月の間、銃の設計図、製鋼法を集めると同時に武術の鍛錬も行うこととなった。しかし、弟子の馮道徳(顧冠忠)や白眉道人(羅烈)は少林寺の僧は朝廷の逆賊であり、滞在すべきではないと言い放ち、縁を切って出て行ってしまう。
一方、至善は鍛錬に励む。中でも”一指禅功”は1本指で鐘を突くという凄まじい威力を持つ技であった。半年後、無塵道人の元で修行をし数々の秘技を身に付けた至善は少林寺へ戻る。
その頃、清朝皇帝から少林寺を全滅せよとの命令が下され、チベットのラマ僧・広元(江島)らは少林寺を襲撃。これが正に焼き討ちであった。至善は管長を連れて井戸から逃げ出すが、瀕死の管長は南方の広東に行って仲間を見つけるように言い、そのまま息を引き取る・・・。至善は燃え上がる少林寺を後にして少林寺再建を誓うのだった。
逃げた白眉道人は朝廷から道教の最高師範に任命されると、弟子を連れて文殊道観へ行き、無塵道人を殺してしまう。広東の町で騒いでいる李巴山(強漢)を懲らしめた至善は弟子たちを探していた。無塵道人の弟子・五枚(李麗麗)も至善を追って、静塵道観に身を潜めていた。やがて、後に少林十虎と呼ばれた李錦倫(徐少強)、洪熙官(唐炎燦)、鬼脚七(郭恩治)、童千斤(呉杭生)らが至善の弟子となって決戦の準備は整った。至善たちは力を合わせ金鐘罩の白眉道人に立ち向かうのだった…。


「潜入!少林寺・知られざる教練洞窟」ご覧になりましたか?
つい先日放送されたばかりですが、日本人俳優・北村一輝(「龍が如く劇場版」)が実際に少林寺の高僧から少林拳を習うというドキュメンタリーでした。
http://www.bs-j.co.jp/shorinji/
 
こちらの少林寺は河南省に実在する北の少林寺(嵩山少林寺)のことですが、この少林寺に日本の取材班が潜入出来たのはホントに凄いなぁと思います。嵩山少林寺も少しずつオープン化されつつあるのかも知れませんね。この番組の良さは少林寺の修行僧はなぜ闘うのか?という疑問を持つ北村一輝がその答えを探すところにあります。

さて、こちらも少林寺。その名を「少林寺英雄伝」(原題『少林英雄榜』)という少林寺映画の登場です。
今回は、映画と少林寺や中国の寺院について書いてみたいと思います。

まず、邵氏であの恐怖片『油鬼子』を撮ったホー・メンファ監督はどういう訳か少林寺物を撮ることになり、しかも御存知パイメイを使って映画を一本作っちゃいましたね。この映画はパイメイが売りなのかも知れないですけど白髪のパイメイが、こっちも頭が真っ白の無塵道士の弟子なんて設定はちょっと無理があるんじゃない?(笑)まぁドラマなんでいいですけど。
この映画に出てくる北少林寺の焼討ちとか南少林寺の建設の経緯とか混乱に継ぐ混乱の時代で、史実にしても結局のところ今一つはっきりしませんね。
なので、パイメイの年齢設定など細かいことは監督にでもお任せするとして、よく分かっていない、そういった動乱の時代を映画化したのは当時としてもやはり難しいところだったと思います。
それにしても本当にあるのかどうかもよく分からない福建少林寺の跡地はどこにあるのでしょうか?先の番組のように日本の取材陣が福建少林寺を探るドキュメンタリーなんて制作してくれると面白いかなと思うんですけどね。

映画そのものについては私の書いた解説、物語などを参照して戴くとして、映画「少林寺英雄伝」の展開はびっくりする程、駆け足で進行します。(時間も短め。ちょっと物足りないかも??)
少林寺の映画やドラマは本当に沢山ありますが、この「少林寺英雄伝」は洪家拳のルーツ、至善禅師に焦点を当てた珍しい映画になっていると思います。(江島扮するラマ僧なんてのも途中に登場したりしますがそんな奇抜な演出にはちょっと吹いてしまいますけど。)ちなみに有名な蔡李仏拳の”李”の部分の李家拳は、蛾嵋山の白眉道人より拳法を学んだ李巴山が創始したと伝えられています。李巴山は本編にもしっかり登場していますし、他にも”少林五老”や”少林十虎”などの人物たちを交えて、ニ・クアンによる脚本でうまく配置されています。
映画の作りはいかにも邵氏らしい作りであり、例えば崖のある山道のセットを作ってしまうあたりも邵氏らしかったですね。お寺はセットになりますが、今回は地下に隠し部屋を作ったりして、工夫が見られました。

役者については主演のデビッド・チャンは妙な落ちつき感さえ見えましたが、彼なりの落ち着いたアクションで対処して、設定はスーパーマンですが、立派な少林僧をこなしているなぁと感じました。(まぁベテランですもんね。)デビッド・チャンだって少林寺のお坊さんを演じられるんですなぁ。リュー・チャーフィと比べるといつもニコニコのお師匠様で可愛いらしさもありました。厳しい目を持って見れば一つ一つのアクションはゆっくりとしていて迫力に欠けるかも知れない。ティロンのように達人クラスの腕前なのか、それともジミーさんタイプなのか。
ラストはパイ・メイとの一騎打ちになり、一指禅功で突きまくる様子には何かを覚えました。どうしてそこまでするのか。なぜヒーロー(英雄)なのかと。

考えてみればヒーローは、中国では少林寺を逆賊だと言って官についた白眉道人ではなく、至善禅師や少林寺の僧がヒーローなのです。

しかし、少林寺とはもうオサラバ。デビッド・チャンはどうやらこの作品を最後に邵氏を後にしたようですね。本編を見る限りこれが最後だなんて微塵も感じませんでしたが、そこに役者の根性を感じます。この後、共演した徐少強(ツイ・シャオキン)と揃って"The Challenger"や"The Root"に出演します。この邵氏を去ったときの心境はどんなものだったのでしょうか?専属俳優がフリーになって生き生きと・・という風になったのかどうかはよく覚えていませんがまた新たな道を歩むことになります。ちなみに監督ホー・メンファも邵氏をそろそろ去ろうかという時期で「マッドカンフー地獄拳」やらなんやらと邵氏以外で映画を作っていくことにもなります。(この辺りを研究するのも面白いかも・・・。)

ところで、嵩山少林寺は今では観光客が大勢押し寄せる人気スポットになっているみたいですが、やはり一度は行ってみたい場所ですね。冒頭のドキュメンタリー番組を見てまた余計にそんな気持ちにさせられました。でも、日本にも素晴らしいお寺があります。明の混乱の時代、中国から日本へ渡来した隠元禅師が開いたお寺が京都宇治にある萬福寺です。少林寺とは直接関係無いものの、私はこのお寺へ参拝した時のことをふと思い出しました。人の気配も少なく静かなお寺でしたが、どこか雰囲気が違う…。そうなんです。ここは中国のお寺そっくりに作られている中国風の寺院なのです。中を歩いていると中国にあるお寺に行ったような錯覚に見舞われます。拳法の修行僧こそいませんが寺の随所に不思議な部分があったりするのです。もう何年も前の話ですが、とても良い所でしたね。もやもやとしたものが無くなり、頭の中がスッキリするような、これもこのお寺が持っている魅力なのかとその時感じました。また、十八羅漢がいるということでとても興奮したのを覚えています。日本にはこういったお寺は少ないと思いますが、宇治方面に行ったらまた訪問してみようと思います。そして、遥か彼方の少林寺は遠く離れていますが、中国にある寺院も同じ様な気持ちにさせてくれるきっと素晴らしいところだと思います。

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スリーピングモンキー睡拳

2011-05-08 00:00:01 | 七十年代作品【1979】

     シュイ チュエン グアイ ジャオ
原題   睡 拳 怪 招        Sleeping Fist

公開日 1979/5/24(木)      香港東亞影業公司 作品
                11,204,494HK$ 1979年度第40位

スタッフ&キャスト

監督 葉榮祖 (イップ・ウィンチョ)

武術指導 黄哈 、水怪

出演 梁家仁(レオン・カーヤン)
   袁小田(ユアン・シャオティエン)
   黄一龍(ウォン・イーロン)
   高雄(エディ・コー)


解説

「酔拳」の大ヒット後に作られたレオン・カーヤン主演のカンフー映画。悪人を捕らえようとする青年、そして協力する少年と偶然知り合った老人の3人が仲間となって奮闘する姿を描く。「蛇拳」「酔拳」のユアン・シャオティエンがスッポンという名の師匠を演じている。この作品が創業作となる香港東亞影業が製作し、当時香港の午夜場では「笑拳」を抜く動員数を記録した。主演のレオン・カーヤンはこの作品で一躍有名になり、人気が急上昇。80年代には「スリーピングモンキー睡拳」のタイトルでTV放映され日本でもその存在を知らしめた。少年役のウォン・イーロンはこの『睡拳怪招』を皮切りに同じプロダクションで『癲螳螂』『臭小子』『三毛流浪記』と立て続けに主演している。監督のイップ・ウィンチョはショウブラ時代からロー・ウェイ監督の右腕として歩んできたが、この時期は東亞影業で数本を撮っているようである。

ストーリー
孤児の小鬼頭(黄一龍)は、町で肉饅頭を盗んだり、一輪車に乗って逃げ回ったりとやりたい放題。食堂の主人・大豚子(孫嵐)はならず者の魏奇(水怪)と相棒(小虎)が店に現れて困った様子。病気に罹って宿に隠れていた隠密役人・金大八(梁家仁)を探しにやってきていたのだ。大八は悪徳商人・曹霸天(高雄)の悪事の証拠を既に掴んでいた。小鬼頭は大八を助け、小鬼頭の隠れ家に案内する。その後、追っ手に見つかるが、隙をついて倒して逃げた。大八たちは借金で男に追いかけられていた小翠(歐陽玲瓏)という娘を助け隣の町まで送る。その後、曹霸天の手下、王剛(荊國忠)が二人を追っかけてきた。これ以上は危険と感じた大八は小鬼頭に去るように言って追い払おうとした瞬間、小鬼頭の頭突きが傷口に当たり、大八はそのまま気絶してしまう。古寺で大八が目を覚ますと曹霸天が現れ二人を襲って来た。が、陰で寝ていた老人・スッポン(袁小田)に助けられる。助けてもらった二人は礼を言うとこれも何かの縁と老人に同行することに。老人は秘法・睡拳の達人だった。大八は傷を療養しながら老人から指導を受けることにしたが、小鬼頭は弟子になるつもりはなく一向に応じない。その頃、曹霸天は大物・石清(翁小虎)と結託。小鬼頭が店に酒を買いに出かけると小翠がいた。小翠は敵に見つかり未熟な腕前の小鬼頭はスッポンに助けられる。観念した小鬼頭は弟子入りし、老人の厳しい特訓がはじまった。修行で免許皆伝となって、睡拳・螳螂拳・猿拳・オカマ拳を会得した大八はついに曹霸天たちを倒すのだった。


久し振りに見てみました「スリーピングモンキー睡拳」。(今回は日本語、英語、北京語、ドイツ語と4種類のバージョンを見てちょっぴり研究してみました。)私はなぜかレオン・カーヤンがとても気に入っていました。

彼を研究してみた結果ですが、この作品で主演することになり、のちの『癲螳螂』や『廣東鐵橋三』などにつながる彼の新しいスタイルがこの作品で完成したのではないかと思いました。
彼の主演作は少ないですが、国内で出たビデオと言えば「秘法・睡拳」と「激突!キングオブカンフー」の2本くらいですね。(『贊先生與找錢華』の国内未発売が惜しい。あとウォン・チェンリーも出てた「奇門遁甲・吸血拳」なんてのもあったか・・。)私は前者の2本がとても好きなんですよね。
ご存知の通り”睡拳”というユニークな拳法をこの映画では採用しています。この睡拳と同じアイデアのカンフー・アクションには例えば『豪侠』(79)においてヤラレ役のチン・ユーサンが演じたアクションに少し見られましたが、梁家仁(レオン・カーヤン)の”睡拳”が本格的な映画的拳法になるんでしょうね。この睡拳のアイデアはやはり酔拳を真似て作り出されたものでしょう。(酔八仙のように秘伝書をめくるシーンなんかも出てきますね)
”睡拳怪招”って原題は笑拳の”笑拳怪招”にそっくりなんですが、睡拳というアイデアを軸にいろいろな拳法をミックスして出来上がっています。とは言っても所詮はただの睡魔の拳法です(笑)。カーヤンの出番以外は付加されたものであまりシナリオも練りこまれているとは言えませんが、(うーん。ただし子役・黄一龍の良さはとても良く出ていました。『三毛流浪記』などでも頑張っていましたね。その後どうしちゃったのか??あと、エディ・コーも出ずっぱりでした。)確かにこの彼の新しいタイプはジャッキーの真似かも知れません。しかし、笑拳にも負けないくらいのカッコ良さを持っていたのではないかと思いますね。「ドランクモンキー酔拳」でモンキーパンチの描いたイラストのイメージは、カーヤンが演じた睡拳の姿にも通じるものがあって、イメージもかなり近いところに迫っているのではないかと。多少ダーティーっぽさのあるワイルド感があのイメージに似ているんですよね。(なんとも表現しづらいのですが、この感じお分かりでしょうか?)スリーピングモンキーということでジャッキーにはなかったヒゲとかの毛深さがより猿(=モンキー)っぽかったんですね(笑)。他の役者が演じていたら・・・、ちょっと考えられないですね。とにかくカーヤンの見せた睡拳が巧くて素晴らしかったと思います。
このあとは映像などの覚書。オリジナル北京語版のビデオは81分と短いバージョンであり、国内ビデオの方が長くて(こちらがいわゆる全長版)、食堂での乱闘シーンなどが大幅にカットされています。中文クレジットですが国内ビデオとは違い、タイトルの出方なんかも凝っていて良いですね。(国内の方が新しいものです)独EUROVIDEO盤はワイドスクリーンでとても見やすかったです。この作品はワイドでなくてもそんなに気になりませんが。
オープニングの曲は"Fight at Diablo Pass"(from Duel at Diablo 1966 By Neal Hefti.)という曲で西部劇らしい勇壮な音楽でインパクトのある曲です。(「龍の忍者」などにも使用されています)この映画に関しては効果絶大でありました。要するにカーヤンの見せる動きにピッタリと合っていますね。
そして、この映画は酔拳の爺さん・サイモン・ユエンが出演した作品の1本になりますが、高齢かつ多忙だったためかあまり動きがなくラストではなんと座ったままの出演でした。(この「睡拳」では吹き替えじゃなくてちゃんと本人がやってる部分もまだ動けている方だとは思いますけど。)この爺さんが出ているだけで映画のヒットに繋がるんですからねぇ。70年代後半のサイモン・ユエン作品も最近は大分視聴が可能になって来ました。唯一未見だった『老頭拳頭大饅頭』(79)も先日やっとの事で見れました。(内容的には??ですけどね(苦笑))またいろいろチェックしてみたいと思います。

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廣東鐵橋三

2011-03-02 00:01:09 | 七十年代作品【1979】

     グアンドンティエチャオサン
原題   廣東鐵橋三        Cantonen Iron Kung Fu

公開日 1979/2/15(木)      超力影業公司 作品
                1,020,687HK$ 1979年度第49位
スタッフ&キャスト

監督 李超(リー・ チウ)

出演 梁家仁(レオン・カーヤン)
   高飛(コー・フェイ)
   王鍾(ウォン・チャン)
   丁華寵(ティン・ワーチョン)


解説

主に70年代にショウブラザースで俳優として活躍し、その後は武術指導、監督、そしてプロデューサーと映画人街道を突き進んだリー・チウが「必殺のダブルドラゴン」(80)とほぼ同時期に監督した作品で、主演のレオン・カーヤン(「激突!キング・オブ・カンフー」)が広東十虎の一人で伝説の武術家・鐵橋三の若き日を演じている。鐵橋三は本名を梁坤といい、鐵線拳の使い手だった。この映画が製作された79年頃はちょっとした鐵橋三ブームが訪れており、映画の題材として鐵橋三を使うケースが比較的多く、『洪拳大師』(79年版)『痲瘋怪拳』などに登場している。 

ストーリー
舞台は広東の河口にある町。萬金運輸で働く日雇い労働者、阿坤こと鉄橋三(梁家仁)は人々から三哥と呼ばれ親しまれていた。今日は仲間の一人で海發商店の巨漢・大力勇(胖三)と力比べをして得意の呼吸法で勝利してみせた。阿坤に賭けた同じ商店の正英が勝ち、弟分の鉄蛋(丁華寵)は賭けに負けてしまった。鉄蛋が騒いで逃げていると、野菜売りの阿義(李超)に衝突。鉄蛋に代わり阿坤が阿義と手合わせするが決着せず、今度は鉄蛋が仲を取り持って二人に言う。「タイプの違う2人の武芸者がいる。そこで腕前を見せてみな」。2人はその話に乗って腕を披露し武芸者を翻弄。意気投合した2人はそれ以来仲良くなった。阿坤たちが酒を飲んでいると肉屋の豬肉榮(荊國忠)もやって来て一緒に騒ぐ。突然、人相の悪い凄腕の男・趙洞(馬金谷)が店に現れた。邱萬金という男をを探しているという。萬金運輸のボスの事だが、それを聞くと立ち去った。鉄蛋は奴等の行動や萬金が5年も顔を見せない事を不審に思う。すると、林大爺こと海發商店の主・林大海(王侠)と番頭が店に来る。阿坤は店を手伝って欲しいと言われるが、今の収入や仲間を捨てられぬと断った。次の日、阿坤たちの前に謎の男・葉財(王鍾)が仕事を求め顔を出した。阿坤は海發商店へ行くといいと助言する。一方、趙洞の影のボスは悪事をし始めていた。通行料を徴収すれば大儲け出来るが林大海がいると邪魔になると言って暗殺を企てる。また、金軒という人物を炙り出すため生死台を設け、挑戦者を待った。血気盛んな阿義は生死台に上がるが、趙洞に強打され重傷を負い動けない状態に。それを知った阿坤は大爺を振り切って生死台へ行ってしまう。大爺が止めに入るが、その間に阿義が息を引き取った。阿坤は阿義の死で大爺から洪拳を習う決意をするのだった。若旦那の趙子龍(李登財)が一人生死台に上がっていると葉財が参戦。子龍の鶏拳は葉財の相手ではなかった。その出来事を話すと影のボスの怒りが爆発。その夜、大力勇と正英が殺されてしまう。次の日、番頭の林富が趙家を尋ねると、金軒が海發商店にいるのでは?と疑われる。しかし林富は葉財という男が働いているが金軒という名前は知らなかった。その林富を尾行していた鉄蛋は趙洞に見つかり殺される。夜、趙洞に唆された林富は林大海に毒入りの茶を飲ませ趙洞を呼びつけ殺してしまう。師匠・林大海の死を知った阿坤は趙洞を倒す。そして憎き趙洞を倒した阿坤を皆が”鉄橋三”と呼ぶようになっていた。阿坤は復讐の為、洪拳の修行に励む。名の知れた”神補”こと金軒も行動を開始する。ついに姿を現した邱萬金(高飛)は葉財、即ち金軒が6年間追い続けていた悪党だった・・・。。

 

 


今回、悪役の馬金谷がかなり目立っていました。しかし、ボスのコーフェイがなかなか顔を見せなかったりバトルもしないのでまだかまだかと先を急ぎたくなりますねー(笑)。展開は主人公の仲間たちがいとも簡単に殺されてしまうのです。これは安易でちょっといただけなかったかな?

ウォン・チャンVS高飛なんて珍しい対戦もあったりしてこれは良かった!今回のウォン・チャンの役は神補。補頭もそうだと思いますが、つまり捕り物の長のことで、補頭などは邵氏の武侠片などでも頻繁に出てきますね。すぐに思いつくのが『萬人斬』でしょうか。ウォンチャンは補頭とか警察が向いているタイプだと思う。


 
これは『廣東鐵橋三』のスチール写真のある資料でありますが、とにかく梁家仁が凛々しく別人のように見えた。この資料では『廣東鐵橋三』が梁家仁作品の筆頭に挙がっている。海外では『癲螳螂』にも人気があったが、この『廣東鐵橋三』も中国語圏では人気があったのかも知れない。今回の見せ場、梁家仁VS高飛はとてもいい。私が梁家仁をはじめて見たのは多分、「スリーピングモンキー睡拳」になります。○○拳という名前なのでジャッキーではないものの、その他の拳シリーズの1本になりますね。この「睡拳」もリストを見れば79年製作ということで当時のテレビ放映以来ちゃんと見ていないですが、久しぶりに見てみて是非感想などを書いてみたいと思います。

 

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霊幻少林拳

2011-02-16 23:59:20 | 七十年代作品【1979】

     マオ シャン ジアン シー チュエン
原題   茅 山 彊 屍 拳

The Spiritual Boxer Part II              『霊幻少林拳』(DVD)

邵氏兄弟有限公司 作品 1,271,091HK$ 1979年度第36位

公開日 1979/2/15(木)        



監督  劉家良(ラウ・カーリョン)
脚本  倪匡(ニー・クワン)
出演  汪禹(ワン・ユー)
    黄杏秀(セシリア・ウォン)
    劉家榮(ラウ・カーウィン)
    劉家輝(リュー・チャーフィ)

スタッフ&キャスト

解説
73年ブルース・リーが去り、74年にマイケル・ホイという新しい喜劇のスターを生んだ香港映画界は翌75年、次なる巨匠となるべくラウ・カーリョンを登場させた。処女作「マジッククンフー 神打拳」(原題:『神打』)を発表したラウ・カーリョンはコメディ功夫映画の潮流を起こす。そのラウ・カーリョンが79年にキョンシーとカンフーをミックスさせたドタバタ・アクション・コメディを製作した。これが「霊幻少林拳」Spiritual Boxer Part2である。(当初は『神打小子』のタイトルだった。)数年後にはラム・チェンインがハマリ役の道士を演じた「霊幻道士」で一大キョンシーブームを巻き起こすことになる。主演はショウ・ブラザースのスター、ワン・ユー。共演は「少林寺三十六房」リュー・チャーフィほか。武術指導にはカーリョン監督とその助手にウィルソン・タンの名が挙がっている。

ストーリー
その昔、湘西地方では旅人が死ぬと死体を道士が故郷まで連れて行く”茅山術”と呼ばれる風習があった。主人公・范振元(汪禹)は半人前の道士だが運ばれて来た死体を洗って清め、帽子と服を着せて出発の準備に余念が無い。しかし、親族たちは死人の帰還が遅れ、このままでは腐ってしまうと大騒ぎしている。道士が数日間不在だったためだ。”神拳”とも呼ばれる振元の師匠・陳五(劉家榮)道士は、酒と賭け事に明け暮れる毎日だった。振元が賭博場から師匠を連れ戻すと、怪しげな禿げ頭の死体(劉家輝)があとから運ばれて入ってきた。そして辰の刻、9体のキョンシーを連れて一行は出発する。途中、検問所があった。そこにいた警官たちは脱獄犯・章傑を捜索しているというのだが、キョンシーの恐ろしさに逃げ腰になる警官たち。山を越え、町に着いた一行は宿を取りキョンシーたちを法術を使って安置させ、寝ることにした。すると、宿に菲菲(黄杏秀)が現れた。振元たちのあとにこっそり付いて来たのだった。女人はダメと分かっていた菲菲は男装していた。一方、師匠の陳五は町の賭博場へ繰り出していた。そこで大勝ちしている陳五を元締めの許(徐少強)が黙って見過ごすはずがなく乱闘になった。駆けつけた振元は師匠から指令を受けたキョンシー拳で連中を片付ける。しかし、足を負傷してしまった陳五に代わって振元と菲菲の二人ががキョンシーを先導することに。「陰人上路、陽人迴避」を唱えキョンシーたちを連れて歩く。禿げ頭のキョンシーを怪しむ菲菲たちだったが、実はこの男こそ鷹爪拳の使い手・章傑で脱獄してキョンシーに化け、検問を突破、復讐の為この地へ侵入していた。彼は悪人・周(李海生)に罪を着せられ投獄させられたのだった・・。

 pdfファイルダウンロード

 


今回は70年代後半のキョンシー作品でした。

古くは 王天林監督の『湘西屍記』(56)がありますね。
『湘西屍記』より

清朝の官服を着たキョンシーじゃなくていわゆるコンシーが沢山見えますね。
 
但し、台湾での事情は少々異なります。

こちらの海報は「霊幻少林拳」よりも早く製作されたジョセフ・クオ監督の『湘西劍火幽魂』です。
上部に書かれている記述に注目していただきたい。これは『湘西屍』を改編したのがこの『湘西劍火幽魂』であるという事と思います。ジョセフ・クオといえば自らの作品に手を入れ、改編するのが十八番ですがこの作品もそうなんですよね。

この『湘西劍火幽魂』は台湾で78年5月4日から6日間公開された記録が残っており、78年に改編された模様です。現在見ることが出来る『少林兄弟』と同じものと思われますが元の作品『湘西屍』(77)はおそらく現存しておらず詳細は不明となっています。(『少林兄弟』の別名が『湘西屍』というケースもありますが、この場合は当然元の映画を指しているはずです)

ところで、最近の映画ではキョンシー映画に縁のあるユン・ワーも出演した『彊屍新戦士』(2010)が作られて、これはワイヤー、ワイヤーな感じのアクションホラー映画ですね。こちらは先月、VCD、DVD、Blu-rayがやっと発売されました。みんなー、くまきんきん先生も出ているぞよ!(笑)

最後に、キョンシーフィーバーを振り返えらせてくれる一冊の本をご紹介します。
つい先日出たばかりですが「キョンシー電影大全集」という本です。 (120本以上に及ぶ作品を網羅し、それぞれストーリー&レビューが掲載されています。)とても読み応えのある本ではないかと思います。
レンタルビデオが全盛だった当時の数々の作品を思い出しました(笑)。なつかしいですね。

 

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モンキーフィスト猿拳

2011-02-07 23:45:59 | 七十年代作品【1979】

     ザー ジア シャオ ズ
原題   雜家小子     Knockabout

公開日 1979/4/12(土)        嘉禾電影有限公司 作品
                  2,830,519HK$ 1979年度第11位
スタッフ&キャスト

監督  洪金寶(サモ・ハン)

出演  元彪(ユン・ピョウ)
    洪金寶(サモ・ハン)
    梁家仁(レオン・カーヤン)
    劉家榮(ラウ・カーウィン)

解説
兄弟分をなくした若者が、死に物狂いで修行して乞食の師匠に伝授された最高拳“猿拳"を使って仇討ちする姿を描くカンフー映画。ユン・ピョウの初主演作品で、香港映画界の重鎮サモ・ハン・キンポーが監督・共演した。1980年、日本においても劇場公開されている(東宝東和配給)。80年代後半には英語プリントのVHSが発売され収録時間は92分となっており、劇場の上映時間と同じ長さとなっている。2007年発売の国内盤DVDは104分のロングバージョン。

ストーリー
ペテン師稼業の小寶(元彪)と大寶(梁家仁)の2人は今日もカモを探す。そして換金屋の阿偉(陳龍)から銀貨を巻き上げる事に成功する。しかし、金を肥乞丐(洪金寶)に横取りされてしまった。カジノではニセ金を使い、カジノの用心棒たちに袋叩きに遭ってしまう。次のカモを見つけるが、そのよそ者の男は一枚上手であり警察隊長(麥嘉)も現れ失敗に終わる。小寶たちの手口が通じなかった男・賈武刀(劉家榮)はカンフーの達人でもあり彼に弟子入りすることに。実は賈は老狐狸と呼ばれた指名手配中の悪党だった。賈の弟子となった2人はカンフーが上達するとカジノに仕返しに行った。2人で茶を飲んでいると役人が悪人グループの聞き込みをしていた。ビラを見た小寶は師匠の居場所を教えてしまう。賈を捕まえに来た役人・老虎狗(火星)はついに老狐狸を見つけた。その後、小寶は師匠がその役人を殺すところを目撃してしまい口封じに殺されかかるが、戻ってきた大寶が賈を押さえ付け小寶の身代わりとなって殺されてしまう。逃げ出した小寶は、そばに肥乞丐がいる事に気付く。肥乞丐は猿拳の大家だった。大寶の仇討ちの為、最高拳である”猿拳”を必死の思いで身に付けた小寶は、乞食に扮した警察官・肥乞丐と協力して賈を倒すのだった。

 

サモ・ハンが「燃えよデブゴン」シリーズで人気絶頂だった80年代当時、ゴールデン洋画劇場で「燃えよデブゴン5」として放送された。初放送は85年2月16日(土)と若干出遅れ、香港電影百科にも放送の記録が載らなかった。この吹替版が秀逸で、当時、香港映画の日本語吹替で活躍されていた目黒裕一氏がユン・ピョウの声優を演じ、まだ21才と若かったユン・ピョウにピッタリで個人的にはとても気に入っている。(目黒氏は「ヤングマスター」に続きユンピョウ声優は2度目。)

乞食のサモ・ハンがユン・ピョウの師匠をつとめたのは「酔拳」の影響であったと思われるが、サモ・ハンのインタビューによれば当初乞食の役は無く、サモ・ハンが主役だったものをユン・ピョウ主役に変更したとの事。78年11月撮影開始し、サモ・ハンが武術指導を担当。ラム・チェンイン、ビリー・チャンも助手で参加することになり『醒目仔蠱惑招』で洪家班が誕生する直前の作品となる。
この映画の脚本はラウ・ティンチーが完成させた。(冒頭でチャン・ルンの父親としても登場している)ジョン・ウーも在籍する香港電影編劇家協会のメンバーでもあったティンチーはゴールデン・ハーベストで「Mr.BOO!ギャンブル大将」や「ヤングマスター」等多数の脚本を担当した。

国内でも数種類のDVDが発売されたが、英国盤DVD(HKL製)には唯一、赤バックフッテージ"Back-to-Red"が収録されている。
なお、香港公開前の79年4月3日(火)、『雑家小子』記者招待会に駆けつけたのがジャッキー・チェン。サモ・ハン、ユン・ピョウら出演者一同に混じって記念撮影している様子が記録されている。

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