昨日の新聞によれば、今春大学を卒業した56万人のうち、
就職をしたのは36万人で、率にして64%を切る水準だといいます。
だから若者の雇用をとりまく環境は依然として厳しいと。
「危ない大学」 海老原嗣生ほか 著 / ㈱洋泉社 刊
しかし、文部科学省の「学校基本調査」によれば、
四年制大学の新卒者の正社員就職数は、
バブル期(1980年代後半)で29万4千人/年。
2008年は39万人、リーマンショックの09年でも38万人でした。
したがって、今年の36万人という数字が、特に悪いわけではありません。
これに対し、大学の数はこの25年間で7割増加(460校→780校)、
大学生の数も6割増加(185万人→289万人)しています。
1980年代には25~26%だった大学進学率は、今や50%超。
しかも子供の数は減っているのに、です。
つまり、大学新卒者の就職率の悪化は、
不況で大卒者の採用が激減しているわけではなく、
求人数はそれほど減っていないのに、大学生の数ばかりが激増したため、
就職率が相対的に悪化しているというわけです。
また、大学が増えても学生が来なければ学校経営は成り立ちません。
そこで、昔なら成績が振るわず大学に進学できなかった学生層を取り込みました。
さらに、OA入試や学校推薦入試、一芸入試など、学生が入学し易いようにした結果、
日本の大学生の学力レベルは大幅に低下していくことになりました。
なにしろ私立大の場合、一般入試(学力試験)で入学するのは半数以下。
OA入試の9割、推薦入試の3割以上には成績基準さえないといいます。
これが週刊誌や新聞で記事になるような、分数計算ができなかったり、
アルファベットが読めなかったりする大学生が増えた原因というわけです。
企業が、採用基準を下げることは絶対にありえません。
したがって、大卒者の就職率は、「いわずもがな」というわけです。
こうして物事を別の角度からながめてみると、
新聞に書かれていることは、一面から見たことでしかないことがわかります。
ネットにせよ、週刊誌にせよ、書籍にせよ、
私たちはいろいろな切り口で検証した情報に接する必要があります。
身内に大学生がいなければ、
教育関係者でもない限り、このような本を読む機会は少ないでしょう。
そうすると、どうしても自分が学生だった頃の大学を基準に比較しがちです。
しかし、それは適切な比較ではありません。
「大学を出たのだから・・・」という考え方は、もはや幻想にすぎません。
大学生はしっかりと自分の立ち位置を自覚する必要があるし、
親の世代も今の大学は、かつての大学とは別物であることを認識する必要があります。
そして何より社会自体が、
今の日本において「大学とは何か」「大学生とは何者か」、
考えを改めなおす必要があると感じたのでした。
大卒だからといって、本当に大卒レベルの学力や上梓気力をもっている絶対数が少なくなってきている現われだと思います。だから、大卒でも採用したいレベルではないので、採用されないということ。
以上