くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

ある日、病は突然に!(7)~アバスチン眼球注射

2014-05-11 19:12:34 | 健康のためなら死んでもいい!?
左眼網膜のレーザー光凝固をしてから二~三日すると、
施術する前よりも視力の低下が感じられました。
特に朝起きてからしばらくは視界のかすみが強く、
午後から夜にかけて少し改善するように感じられました。

レーザーから一週間目の検診では、
自覚症状に現れたとおり、黄斑部の浮腫が大きくなっていました。
但し、これはあらかじめサインした同意書に書かれていました。
レーザーの治療初期には黄斑部の浮腫が拡大し、
一時的に視力が低下することがあるそうです。
また、朝起きたときに視力が低下しており、午後になって回復するのは、
就寝時は横になっているので眼に水分が溜まりやすいためのようです。

このまま、しばらく様子をみるか、
もっと積極的に浮腫を抑える薬を注射するか、
どちらでも構わないと医師は言います。
前の病院では、二度の経過観察で鬱々とした毎日を過ごしました。
もうあのような鬱屈した日々はまっぴらごめんでしたので、
即座に、「注射してください」とお願いしました。

本来、「アバスチン」は抗がん剤として使われている薬です。
「がん」では、急速に増殖するがん細胞に栄養を供給するため、
新生血管を作る働きのある物質(AEGF)がどんどん分泌されます。
その働きを抑えるための薬が「アバスチン」なのですが、
眼疾患での新生血管や黄斑浮腫の発生もVEGFが関与していることから、
眼疾患の治療にも広く使われるようになったそうです。

抗がん剤として使用するときは点滴で全身に投与しますが、
眼疾患ではごく少量を眼球に注射するので副作用はほとんどありません。
ただし、本来は「がん治療」で保険診療が承認されているため、
眼疾患での使用は保険適用外となり保険がききません。

健康保険が適用される「ルセンティス」という薬もありますが、
こちらは保険適用後でも一回5万円以上もする高価な薬です。
これは「アバスチン」の数倍もの価格です。
(アバスチンは自費診療のため、病院によって費用は異なります)

医師は、「経験上、どちらの薬も効果は変わらない」と言います。
薬価が高い方が良く効くというわけではないし、
保険適用外だから感染症や副作用のリスクが高いというわけではないようです。
そもそも「ルセンティス」は「アバスチン」を元に作られた薬です。
製薬会社は、これまで広く普及していた安価な「アバスチン」を、
眼疾患の治療でも保険が適用されるように申請はせず、
新たに薬価の高い「ルセンティス」を眼疾患専用薬として申請したのです。
そう知ると、なんだか製薬会社の恣意的なものを感じます。

もちろん、保険適用外であるということは、
万一、不測の副作用が生じても自己責任だということです。
しかし、この病院では過去1000件以上の患者にアバスチンを注射しましたが、
感染症や重大な副作用は一件も発生していないと言います。
そこで同意書に署名し、「アバスチン」を注射することにしました。

前の病院で注射したステロイドは、
細くて長い針で眼の裏側に薬を注射するものでした。
今回は眼球に直接針を射し、眼の中(硝子体)に薬を注射するものです。

処置室の椅子に座って背もたれが倒されると、
麻酔薬が点眼され、目の周りを洗浄綿で消毒されます。
まぶたを器具で開いたままにされ、
さらに頭を横向きにして眼球を流水で洗浄されます。
洗浄はステロイド注射にはなかった処置です。
眼球に針を刺すので、より厳重な消毒が必要なのでしょう。
そして再度、薬を点眼されて顔をシートで覆われます。

眼を強いライトに照らされ、視界は真っ白です。
「左上を見ていてください」と言われ、
目を動かさないように必死で左上の空間を凝視していると、
「チクッ」とした痛みが眼にあり、針を刺されたことがわかります。
するとすぐに目の前に透明の薬品が広がっていくのが見えました。
まるで水の上に流された油が広がっていくようです。
ついつい、広がっていく薬に気を取られ、
眼球が動きそうになるのを必死でこらえます。

針が射されている時間はほんの数秒。
注射の後はすぐに軟膏らしい薬が塗られ、眼帯をされたので、
眼の中に広がった薬がどうなったのかはわかりませんでした。

その日は感染症予防のために眼帯を外さないよう指示され、
抗生物質の内服薬と殺菌点眼薬を処方され帰宅しました。
帰路、何度も何度も人や物にぶつかりそうになりながら。



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