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徳島県美郷を訪問してきました(その3) 梅酒編

2010-04-17 23:25:08 | Weblog
 徳島県美郷は、2008年に和歌山県みなべ町と共に全国初の「梅酒特区」に選ばれた地域です。特区に選ばれた地域では、農家のような中小事業者でも業務用に梅酒を作りやすくするということで、酒造法が定める最低製造量が大幅に引き下げられたのですが、美郷で梅酒を造って販売しているのが東野リキュール製造場という小さな工房です。こちらを3月31日に訪問して来ました。

 東野リキュール製造場を営んでいる東野さんは、関西地方で大手化学メーカーのエンジニアとして勤め、退職後に故郷の美郷にUターンしてきた方で、現役時代は制御装置の開発や製品の分析などを担当してきたのだそうです。もともと趣味で自分が納得できる梅酒作りを追及してきた東野さんは、故郷が梅酒特区に選ばれたという話を聞き、税務署から酒類製造免許の認定を受け、自宅近くの納屋を梅酒工房に改造して東野リキュール製造場を立ち上げたのです。


 東野リキュール製造場は広さ12平米の小さな工房で、年間1.5キロリットルの梅酒を生産しています。今までの私の工場見学の中でここが最も小さいところかもしれません。家庭での梅酒作りに使う8リットル瓶で漬けている梅酒メーカーは日本ではここだけです。ちなみに酒造法では酒造用タンクというものは場所が動かないことを前提にしているため、簡単に人の手で場所が移動する8リットル瓶で販売用の梅酒を作るということについて税務署はかなり法の解釈で苦労したそうです。


 東野さんが作っている梅酒は「白竜峡」と「高越山」の2種類です。梅そのものの風味を生かすことにこだわる東野さんは、収穫してその日のうちに洗果された梅を24時間に漬けています。梅の漬け込み作業は妹さんの応援を借りていますが、成分の分析、瓶詰め、ラベル貼りまで、すべて東野さんと奥さんの2人だけで作業を行っています。ちなみにラベルにもこだわり、大阪のデザイナーに制作を依頼したとのことです。
 価格は500ミリリットル瓶で1本2500円と、おそらく日本で最も高価な梅酒ですが、大変に手間がかかっているのでほとんど利益は出ないそうです。しかも東野リキュール製造場でしか買うことができません。しかし儲けのためではなく、こだわりの梅酒を造ることで生き甲斐を感じること、梅酒を買い求めに訪れる様々な人と出会って話ができること、そして故郷を訪れるお客さんが少しでも増えて故郷に貢献できることが、東野さんご夫婦にとって梅酒作りの楽しみになっているとのことでした。
 私も現地で試飲させてもらいましたが、確かに梅そのものの風味が実によく生かされており、味の深みは大手メーカーが作る梅酒とは比べものになりません。お土産に「高越山」を1本購入したところ、是非飲み比べてみてください、と東野さんから「白竜峡」をサービスで頂いてしまいました(ありがとうございました)。


 趣味として梅酒作りを楽しむだけでなく、いろいろな方々との出会いを楽しみ、さらに故郷の地域おこしに貢献することを喜びとする東野さんご夫妻の姿は、実に素敵だと思いました。

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2 コメント

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Unknown (ぐるぐる)
2010-04-19 10:07:48
いいところですね。
夢やロマンがって、余裕もあって、東野さんの生き方がいいです。
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Unknown (kunihiko_ouchi)
2010-04-21 06:05:31
おはようございます。コメントありがとうございます。
素敵な生き方だと思います。梅酒も大変美味でした。
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