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最近ちょっとお疲れ気味

ブラジルでの工場見学(その9) Tupy Fundicoes Ltda.

2009-09-05 13:51:49 | 海外ものづくり事情
 ブラジルの鋳物産業は自動車生産台数の伸びと共に急成長しています。中でもブラジルの鋳物業界のトップメーカーが、サンタカタリーナ州ジョインビレ(Joinvile)のTupy Fundicoes Ltdaです。1938年、ドイツ系移民によって作られた同社はもともと継手用鋳物の生産から始まったのですが、1959年にフォルクスワーゲンがブラジルで現地生産を開始したことから、自動車向けの鋳物部品の生産が始まり、以後ブラジルの自動車産業の発展と共に同社は成長を続けています。
 生産能力は、ジョインビレの本社工場が年間38万トン、サンパウロ州のマウア工場が7万トン、の計45万トンです。2005年のブラジルにおける鋳物生産量は約290万トンなので、実にTUPY1社でブラジル全体の15%以上のシェアを有する計算になります。


 本社工場入り口です。残念ながら工場内は写真撮影禁止でした。
 歴史的にドイツとの関係が深かったことから技術的にドイツの影響が強い、ということでしたが、工場内の様子は日本の大手自動車用鋳物メーカーの工場と大差ないという印象でした。また、途上国では大卒のエンジニアが製造現場に入ってワーカーと共に働くという例は少ないのですが、Tupyは製造現場を重視する姿勢を採っていて、大卒のエンジニアについても現場を5年から10年経験させている、ということでした。もしかしたらこの辺りがドイツ流なのかなと思いました。

 Tupyが生産している鋳物製品は、自動車用のシリンダーブロック、パワートレイン、ブレーキ部品、ブレーキシステム、継手などです。最大のユーザーは米国系のディーゼルエンジンメーカーのカミンズで、ブラジルに進出している日系自動車メーカーとも取り引きしています。鋳物専業メーカーとしてはTUPYはシリンダーブロックの生産で世界一の規模だということでした。
 なお、Tupyは生産した鋳物の半分以上を国外に輸出しているのですが、中国に対しても輸出を行っていることが面白いと思いました。輸出先は中国最大の自動車メーカーの第一汽車で、シリンダーブロックを輸出しています。中国は世界一の鋳物生産大国であるにもかかわらず、地球の裏側のブラジルからわざわざ鋳物を輸入するというのは奇異な印象を受けたのですが、Tupyの説明によると、精度が要求されるシリンダーブロックの生産は中国では出来ないため、同社から輸入しているのだということでした。世界中どこにでも中国のものづくり産業の影響が及んでいるということを感じた工場見学でした。

※なお上記の内容は2006年1月に同社を訪問したときに伺ったお話を基にしており、現在は 事情が変わっている点があると思います。