クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

羽生市役所は“羽生城内”に建っている? ―城跡と庁舎―

2023年07月29日 | 羽生城跡・城下町巡り
夏空が妙に眩しくて、思わずカメラを向けてパチリ。
夏空の下に建つのは羽生市役所の庁舎。
昭和49年に建造されたもので、当初は白い建物だったが、
平成の終わり頃に現在の色に塗り替えられた。

かつての城内に、現代の庁舎が建っている自治体が散見される。
羽生市もその一つに数えていいと思う。

現在の羽生市役所庁舎が建っている場所は、往古は沼の中だった可能性が高い。
浅野文庫蔵諸国古城之図「先玉」には、東南北を覆う沼が描かれている。
『新編武蔵風土記稿』には「何れも城ありし頃固めの沼なりし」と記され、
「正保年中改定図」には「要害吉」とあるのは、
沼地や湿地を天然の堀として守りを固めていたからであろう。

そのような天然の堀の中に現在の庁舎があるとすれば、
広義の意味での「城内」と捉えてよいだろう。
この庁舎から北に少し歩けば、「羽生城址」碑の建つ古城天満宮が鎮座している。

ただ、往古の人は、まさか現在地に庁舎が建つとは夢にも思っていなかっただろう。
そもそも、葛西用水路より東は人家が少なく、寂しい場所だったという。
幼い頃、「川向こうへ遊びに行ってはいけない」と言われて育ったと、古老たちは異口同音に話す。
駅前通りが完成するのも戦後だし、沼もあちこち残っていた。
葦や蘆が生い茂り、「子供心にとても怖かった」という。

駅前通りが完成し、その道沿いに店舗ができ、
庁舎や新興住宅が建つようになったのは、実は比較的最近のことだ。
いまでは自分の子どもに「川向こうへ行ってはいけない」と言う親はいないだろう。
いざとなれば警察署はあるし、24時間営業のコンビニもあるのだ。

地面はアスファルトに覆われ、車や人が行き交う。
ただ、豪雨が降ると、市役所付近はたちまち水がたまって昔の沼地の名残が見られる。
とはいえ、排水機能が整備され、その光景を目にするのも短時間となっている。

昭和49年に庁舎が建って以来、幾度も夏が巡っている。
古き時代は遠く離れ、羽生城が廃城してから410年が経とうとしている。
戦国時代は寒冷期だったという。
往古の人たちは、現在の庁舎もさることながら、
40度に迫る暑さにびっくりするに違いない。
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